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変な人白書  作者: 紅頭マムシ
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第四十九話 はじめてのガサ入れ

 今日は日曜日。そしてとっても良い天気。ならば恋する乙女のスケジュールはこれ一択ですぐ埋まる。

 というわけで、ボーイフレンドのケンジくんのお家にレッツゴー!


「お邪魔しまーす」


 初めてケンジくんの家に上がる。こんな初めてのドキドキを前にすれば、否が応でも心がバウンドする。私のCカップもご機嫌にアップダウンを繰り返している。


 初めて入った部屋でする初めての事といえば。そう、ガサ入れだ。

 私は部屋をグルリを見渡す。もうこの段階で色々とおかしい点に気づく。


「ねえねえケンジくん」

「はいはい何だい?」


 私は白い壁に目立つ不自然な黒に気づく。それは4箇所ある。画鋲で開けた穴に違いない。


「ここ、前に何か貼っていたんじゃない?何を貼っていたの?」

「ふふっ、目ざとい。いや、分析力が高いと賞賛すべきだろうか」


 ケンジくんはベッドの下に手を突っ込む。綺麗に巻いて筒状になったポスターが出てくる。


「じゃーん。こんなもの貼ってました~」


 彼が広げたポスターには、胸部に実る果実を派手に見せつけるディープキョンキョンの水着姿が綺麗に印刷されていた。ディープキョンキョンとは、すんばらしくイケてるグラビアアイドルである。


「好き……なんだ?」

「いや~お恥ずかしい……ことは全く無い良い趣味だと思っている」


 ケンジくんは自分にも私にも正直なのだ。


「良いものだとは思うけどさ、仮にも女子を招くのに、こうも強烈なアイドルのベストショットが壁にデカデカとあれば、男子としては色々と気を遣うわけでさ。そんなこんなで、君が到着する20分前に外させてもらった」


 そうネタばらしすると「バレたからにはもう良いよね」とでも言わんばかりに、彼は普通にポスターを元あった場所にセットしはじめた。白い壁を優雅に飾るナイスバディが私に笑顔を振りまく。確かにこれには眩しいものがある。


 次なる気づきに目を向けよう。


「ケンジくんケンジくん」

「はいはい、なんだい?」


 目覚し時計が置かれた棚の上。その時計の横に不自然な箇所を見つけた。


「ここ、周りは埃を被っている」

 私は棚の上に指をスッと滑らせ溜まった埃を確認する。


「でも、なぜかこの四角く囲んだところは綺麗。一体何が置かれていたのかな?」

 

 埃が積もった棚の上に、不自然な四角形が浮かんで見える。四角の内側は綺麗。ということは、ちょっと前までここには四角形の何かが置かれていた。で、彼はまたそれを私の到着前に隠した。


「御名答!」


 彼は押入れを開けると、正解のご褒美といわんばかりに、私に四角形の正体を見せてくれた。


「これさ。ネバリーズオン6の限定版BOXだよ。いや~これの限定版のジャケ写がめっちゃ可愛くてさ。というわけで、目覚し時計の横を占拠する名誉を与えてここに置いてあったんだけど、ポスターと同じ理由でまたしまっておいたんだ」


 にこやかに答え合わせを済ませると、彼はなんとかっていうゲームの限定版BOXをまた目覚し時計の横に置いた。ジャケットには、確かに可愛らしい女子のイラストが見える。


「こういうゲームやるんだ」

「まあね、男子だし。恋は箱の中でも外でも、やれば等しく楽しいものだ」 


 あれ、なんだろう。おかしな事を言ってるような気がするけど、一方では核心を突いた素敵な価値観にも思える。確かに恋とは人生の質を上げる良いものだ。じゃあ良い趣味なのかな。


 とか何とか考える暇もないので、次の謎に行こう。


「ケンジくんケンジくん」

「な~んだい?」


 あれ、何だかご機嫌?

 謎を暴かれるのをどこか楽しんでいるようにも思えるぞ。


「この本棚なんだけど」


 私が指差す本棚にもちょっとおかしい点がある。

 右端から少年漫画が並べられている。そして左端からも。おかしいのは、真ん中に隙間があること。


「不自然な並びだ。ということは、推理するに、この間に何か別の本があったのでは?で、それも私の到着に合わせて隠した」

「すんばらしい!脱帽だ」と言う彼の帽子着用姿は未だ見たことがない。

 

 部屋の端っこに置いてあるダンボールを開けると、ケンジくんは漫画を取り出す。そして元あった場所にそれを戻す。


 本棚に戻ってきた漫画のタイトルは『女子高生は夜な夜なチョメチョメ』だった。なんて男子の心を掴んで惹き寄せるタイトルなのだろう。


「えへへ、まぁこれはやっぱり女子が来るのに置いておくとアレだろ。なにせチョメチョメしてる話だし」

 とか言いながら、彼は全く悪びれる感じもなく、居たたまれない感じも見せない。


「ケンジくんってさ……すごく正直で、すごく男の子なんだね」

「うん。それが人類の美徳ってものさ」

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