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変な人白書  作者: 紅頭マムシ
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第四話 長谷部高校の生徒会

 名門長谷部高校には優秀な生徒達が集まっている。であれば、優秀な生徒達によって構成された長谷部高校生徒会ももちろん優秀なチームである。本日も長谷部高校生徒会は問題なく活動を行っていた。


 放課後に入り、生徒会室にも夕日が差し込むようになった。その中、会長と飯田は二人して書類整理の作業を進めていた。


「なぁ、飯田君」

「なんでしょう会長」

 会長は一旦作業の手を止め、飯田を見つめた。飯田は書類に目をやっていてその視線には気づいていない。


「飯田君、ここ最近の私のことなのだが……なんだろう、君を見ているとなんともこう……ドキドキというかワクワクというか、いや悶々というかムラムラというか……なんとも形容しがたい謎の想いがこみ上げるのだ」

「そうですね。聞くところによると、確かにそれは形を成していない、要領を得ない謎な想いですね」飯田は素っ気く答えると、書類の束を机の上にトントンと当てて綺麗に角を揃えた。それを置くとまた次の書類に目をやる。


「私はこの想いが何なのか、ここ半月程たっぷり時間を要して考えたのだ」

「はぁ……」

「君、何か気づかないか?私のような妙齢の女子が、君のような男子に寄せるこのような複雑な想いと言えば」

「はぁ……」

 飯田は作業に集中するばかりで、会長の話には魂のこもっていない返事を返す。


「ズバリ、コレは恋ではないのか。そう思うのだよ私は」

「へ?」

 ここでやっと飯田は会長の顔を見た。会長の美しい二つの瞳は真っ直ぐに飯田を見ている。


「会長、仕事しましょう」

「おい!飯田君!」と言うと会長は机をバンと叩いて立ち上がった。「君、乙女の告白にそのリアクションはないだろう?」

「まぁまぁ、だってホラ、会長もそういうの初めてでしょう。その複雑な想いって本当に恋心なのでしょうか、と思いまして」

「確かにな」と言うと会長は腰を降ろした。「確かに私には恋の経験がないから、これが恋と言えるのかどうか確かな自信はない。ないが、ないなりに半月も君への思いを色々考えた結果がコレなのだ。というか君、なんで私に経験がないと知っている?」

「ああ、それは全くの勘……でもなく、見て知ったことを分析したらそうではないのかと……」

「ふふっ、さすがに我が右腕だけあって君は分析力に長ける。ちょっと失礼を言われた気もするが、まあ良しとしよう」

 ここで作業は一旦止まって二人は恋の謎について談義することになった。


「しかし、不思議だな。私は父のような人が良いと常々想っていたから、年上好きのはずなのだが、それがどうして君のような後輩男子にこういう想いを寄せることになったのだろう」

「いや知りませんよ。あと何気に恥ずかしい心の内を告白していませんか?」

「いや待てよ。そう言えば君にはどこか父を見るような……」言いながら会長は飯田の顔をジロジロと見る。

「飯田君……君のお父さんは今どこで何をしている?」

「いや、家にいますよ。今朝も一緒に朝ごはん食べて会話しましたし。ちょっと何を疑っているんですか?」

「まさかと想ってな。他人にしては……」

「だったら19時くらいにお父さんは帰ってくるから確認すればいいでしょう?」

「え、いいのかい?君の家にお呼ばれしても?」

 飯田を見る会長の目は輝いていた。


「え……マジで来るつもりなのですか?」

「君って奴は、冗談で異性をお家に招いたりするのかね!」

「ええ、いや……じゃあ、どうぞ」

 会長は嬉しそうだったが、自分で攻め込んでおいて家にいけるとなると照れてしばらく黙り込んでしまった。


「お母様は、その大丈夫なのかい?急に夕方に訪問者があっては不都合では?」

「いや、別に大丈夫だと想います。あ、今日おでんを仕込んでいるっていうから、じゃあ食べていきます?」

「ああ、しかし急に家に上がり込む女なんて不躾で図々しいと思われないだろうか」

「大丈夫ですって、会長はそんな女じゃないって僕は知ってますから。親もすぐに分かりますって」

「そっそうかい、ありがとう……」

 なんだコレ、なんかとっても恥ずかしい。会長のことを自分でフォローしておきながらそんなことを思う飯田であった。


「その、飯田君はおでんには辛子をつける派かい?」

「ええ、まぁ多めにつける方ですかね」

「そうかそうか、ピリリとして美味しいよね」

 会長は照れ隠しで用意した場繋ぎの会話の中で照れ笑いを見せた。このどうでも良い辛子談義で見せた会長の笑顔に、今日一番の彼女の可愛いさを見た飯田だった。

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