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変な人白書  作者: 紅頭マムシ
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第三十八話 究極サービス 愛のお裾分け

 十代後半、とある春の日のこと。俺は猛烈に悩んだ。


 自宅の自室の勉強机に向き、俺は頭を悩ませる。勉強なんて一つもしない俺が勉強机に向かって何を思うのか。それは青春の悩みについてだった。


 クラスのマドンナひろみちゃんからラブレターをもらった。これはとんでもなく嬉しい。

 戦場で彼女が微笑めば、対立し合う両軍兵士の荒んだ心もほだされ、皆が武器を下ろすのではなかろうか。そんな女神的破壊力を持つ笑みが最強に似合う超絶美少女、それがひろみちゃんである。これを振るアホがこの地上にいようか、否いるはずがない。


 俺も彼女が好き。答えは出ている。出ているが、そうなるともう一方の答えを出すのが難しい。

 

 時代に押し寄せる波は必ずしも一つとは限らない。乗って嬉しい大波ならいくつでも来れば良い。それがサーファーの心理なのだろう。まぁ俺はずっと丘にいて海なんて見たこともほぼないのだが。

 多くのクラスメイトには嬉しいだけのこと、そしてこの俺にとっては幸か不幸か、クラスにはもう一人のマドンナがいた。それがようこちゃん。

 そう、実は問題はもうひとつ、言い換えると、ラブレターはもう一通届いていた。ようこちゃんからだ。


 命の終わりを迎えた枯れ木も蘇らせるほどの美貌が彼女にはある。彼女が通った後には生命の息吹きを感じるのだ。あの景気の悪い面を下げて学校に来るオタク連中も、彼女が廊下を通った後にはイキイキとした顔になる。死にかけの連中をも活気づかせる復活の女神、それがようこちゃんだ。なんともファンタジックなヒロイン性がある。


 やばい!どっちも良い!

 どちらか一方を取り、一方を捨てる。そんなことは出来ない。当たり前の人間心理で言ってそんなことは出来ない。

 どっちも良い、どっちとも付き合いたい、どちらも幸せにしてあげたい。

 浮ついた心からではない。真なる愛から俺は二人を同時に幸せにしたいと思った。


 俺が好きになったヤツ、俺のことを好きになったヤツは、余すこと無く皆幸せになって欲しい。この願いが野蛮か?罪なのか?

 いいやそんなことはない。これは博愛、ピースフルの精神だ。俺が欲しいのは愛と平和。

 そうだ。答えは出ているではないか。


 がしかし、目の前に押し寄せる愛の内、どれか一つに絞ることをせず全部を愛すことは、世間一般的には非難の対象となる。

 どうしてだ。そこに真の愛があれば、複数に愛のお裾分けをして何が悪いというのだ。

 今年はたくさんアサリが獲れた。ならばお隣さんにも分けてあげよう。だってそうすれば皆でハッピーになれるもん。

 この定義をそのまま愛のあり方にシフトするだけのこと。なぜそれが世間様に叩かれるのか。


 よし、変えよう!だったらこの俺でそんな世界を変えよう。ゆがんだ世界は、歪み無き真っ直ぐな世界に戻そう。

 俺は世界を変える。そのためには国のトップに立とう。社会規範を変えるのだ。


 かつてチャップリンはこんな感じのことを言った。一人殺せば人殺し、でもたくさん殺せば英雄だと。同じことをしていても、時と場合によっては評価のされ方、価値観が違ってくる。これだ。根っこの価値観を変えるのだ。悪が正義に、正義が悪に、サイコロを振るがごとく、世の裏と表もコロコロとひっくり返すことが可能だ。


 そして現在、俺は総理大臣になり社会規範を変えた。

 一人が複数の愛を思うがままに所有する。逆に複数が一人を狙うも良し。今はそんな世の中になった。ここに辿り着くまでには、語り尽くせぬ長き戦いがあった。

 

 今俺の横には、かつてのクラスマドンナのひろみ、ようこの二人以外にもまさこ、やよい、かよこ、しほみ、きよえ、スンヨン、ジャネット、マクミラン、などなど幾人のも美女が勢揃いしている。


 ハッピーだ。まだまだ俺には、お裾分け出来る分だけの愛のストックがある。

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