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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

災厄が来た

作者: 孤独

「だ~から、終わらないって言ってるだろーが」


そーいうと、こう返される。君はまったく、馬鹿だねぇという顔をし、眼鏡をあげる。


「法令通りです」


やべぇ、こいつ。

殺してぇ……。


◇       ◇


「明日、上層部の連中が来る?帰れよ」


現場の人間は当たり前のように、上の人間が嫌いである。とにかく、嫌いである。

なぜなら


「邪魔」


その大まかで的確過ぎる一言で表せるからである。まぁ、中には良い意味でいい加減な奴が来たりもするので、そん時はそん時なのだが。面倒なのが来ると、本気でメンドクサイ。


「法令順守?道路交通法?コンプライアンス?余計な仕事回すんじゃねぇよ」

「朝からいるくせに、夕方になったら飲み屋に直行するクズ連中じゃねぇか。お前等来る日、いつも配達が夜遅くまで周るんだよ」

「仕事の邪魔しに来てんじゃねぇーよ。10人近く連れてきといて、手伝わずに邪魔ばっかの口出しと校長先生の真似事して。ちったぁ、手伝えよ」


誰しも馬車馬の如く働きたいわけじゃない。少し楽するかでズルと不正の合間をぬって作業をするものだ。なんでそんな事をするかって?今日一日、終わらねぇ仕事量なんだよ。

言わせんな、恥ずかしい。


「住吉さんが来ます。ですので、皆さん。明日は普段通りホワイト企業を演じてください」

「うわぁー、あいつが来るのかよ。嫌なんだけど、無駄にうぜぇから」

「あれ、本気でムカつくんだけど。お前、それしか言えねぇのかって。頭良いのか知らねぇーけどよ、馬鹿は確定だろ」



そんなこんなで。

上層部がやってくる。お前等の仕事がちゃんと法令通りの仕事をこなせているかのどうか、そういったところのチェックをしに来るのだ。そして、言わなくてもみんな分かっている。

この仕事、まともにできるわけねぇーだろ。

そして、上層部が来る朝。

奴の持っている、災厄さいやくの笛の音が響くのであった。


ピーーーーーーッ


「時間前です!!時間前の着手はダメ!!時間前に職場に入らない!!そこの廊下でストーップ!!コンプライアンスを守りましょう!!法令通りに!法令通りに!!」


住吉だぁ……。災厄さいやくだ、こいつ。


「守らない人は始末書!及び、その上司も問責です!!職場ルール、社会のルールを守りましょう!!法令通りに!法令通りに!!」


言っている事は100%正しい。そう思ってあげられる。

口で言っている事は。無駄に役職の地位が高いため、この日だけは守ってあげて。時間になったら職場に入って、準備をする。

……ひとつ言うが、始業時間に”準備”ですからね?



ピンポンパンポーン


「おーっし、荷物の仕分だ」

「急げーー!」


朝の遅れた時間を取り戻そうと、この日の人達は駆け足で”準備”をし、仕事の体制をとる。荷物のチェック抜きで始まると、なかなか苦しい。ここは現場でも色々と議論になっている。

配達地域によっては荷物のばらつきとか、時間帯指定とかも……


ピーーーーーーーッ


「ストップです!!まずは私達のミーティングから入りましょう!その後に皆様で今日のミーティングを開いてください!どのように迅速な行動をし、今日を終わらせるかの話は大切です!!」

「だから、テメェ!!今日、荷物の量とかまだなんも分からないのに、ミーティングなんかしてどーするんだよ!?」


開始早々に意味のないミーティング。

ほとんど、挨拶と茶番だけ。現場の人、イライラである。


「シャーラップ!黙れという意味です!!愚民共!!私語は厳禁!ミーティングをします!!」


普段ですら、ミーティングなんて後回しなんだよ。っていうか、なんもわかんねぇのに話しってなんだよ。今出勤しているみんなを集めて、住吉は前で彼が連れてきた連中を呼び、


「本部から来ました、住吉です!そして、こちらから順に、木村、秋吉……」


お前等の自己紹介なんてどーでも良いだろうが!!ぶっ飛ばすぞ、コノヤローーーー!!こっちはテメェ等の顔見飽きてんだよ!!帰れ、コラーー!


「あー、イライラするぅぅっ!」

「これから車出すのに、メッチャクチャ、イライラするんですけど!!」


いつも意味のないミーティングが3倍増しで行なわれ、午前の配達時間も迫ってきている。道順に並べる時間が減れば、配達時間も短くなってしまう。そうなれば、午後からの負担が大きい。

それでも仕方ない。


「あー、時間ねぇから!午前配と希望配、あと会社。ともかく、そこから当たろう!道順はあとだ」

「そっすね。昼も早く帰ってこねぇと、住吉うるせぇーし」

「すいません!午前配多いんですけど、手伝ってくれません?」

「分かった分かった!」

「っていうか、それでも周り切れる自信ない!」


準備の時間がない分、仕事の時間を延ばすや早める事はちょいと難しい。

いつもなら30分前に車で現地に向かうのに、まだ完全に荷物のチェックや道順が終わってない。会社の隣の家とかを素通りしたり、午前配以外で同じ荷物が届いている場合もあるのにだ。

ない時もあるけどさ。優先順位通りやって、ゆっくりやるしかないという選択。これしかとれない。ご利用されている会社に迷惑がいく。



ビイイィィッ


「なんだよ!!うっせーな!!」


もう配達員は隠し切れない。もうすぐ、13時になろうとしているところで会社からの電話。普段、この時間帯で電話が入るというのは、クレームくらいしかないんだが。今日は絶対に住吉だって分かってしまう。こんな、こんな……。



『時間外作業禁止です!!12:45までには会社に戻り、そこで45分間の休息をとって、13:30より午後の作業を開始にするのです!!』

「うるせーーーなぁ!!まだ、配達終わってねぇんだよ!!戻ってくるから!!黙ってろ!!時間ズレてもいいだろうが!!」


テメェが朝から邪魔してんのが悪いだろうがっ、この野郎ぉぉっ。全然、進んでないんじゃボケェ!


そーいうイライラを持って、帰ってくる配達員達。住吉のおかげか、そのせいか。まったく仕事が手についていない。これじゃあ、今日いつ終わるんだ?そう思っている配達員は多し。

ひとまず休憩中に、飯を食べたり、……


「こら!そこのあなた!!」

「は、はいっ!?」

「ちゃんと野菜も牛乳も摂りなさい!そんなパンだけで、この辛いお仕事ができるのですか!?そして、そちらの方も!カップ麺だけで乗り切ろうとしているんですか!?ダメですよ!」

「そ、そんなところまで言わないでください。好きにさせてください!」


トイレにいったり……


「風邪をひいたら大変ですよ!外のお仕事が終わったら、必ず手洗いをしてください!」

「分かった分かった……」

「1人でも風邪をひいたら、周りに感染すると思ってください!」

「だからって、トイレの前に張り付くな!鬱陶しい!」



タバコを吸ったり……


「喫煙者の皆さん!終わりましたら、ファブリーズを制服に拭きかけ、5分間の歯磨き、3回の口・喉洗いを実施してください!お客様にタバコ臭がしたら、ご迷惑になるのですよ!」

「こんなところにもくんじゃねぇよ、住吉!」

「気持ちよくタバコ吸わせろぉぉっ!」


休憩時間なのに、住吉のせいでまったく休憩になんねぇぇぇ。


「うざいんですけど!あれ、メチャクチャうざいんですけど!」

「住吉は本部の災厄さいやくと呼ばれる男だからな……」

「現場指揮をさせたら、絶対にアカン人間だ」


出てくる愚痴のほとんどが住吉で埋め尽くされる。これを体験した職場の一同は皆、”住吉だけは絶対来るな”って祈りようになる。


ピーーーーーーーーッ


「作業を開始してください、休息が遅れた方は終わり次第、作業を始めてください!それと、今から全体ミーティングをします!いる方は全員参加してください!」


午後もすんのかよ!!なんの話しがあんだよ!!


「あんた方の仕事はなんですか!?法令通り!こんな業務の仕方では、法令通りに守れません!!あなた方はなんのために働いていると思うのですか!?なんのために法律があり、会社のルールがあり、仕事があると思ってるんです!?自分達でちゃんと行動してください!」


テメェの文句が言いたいだけのミーティングかよ!!こっちはお前のせいで、まったく仕事が手についてねぇんだよ!ミーティングばっかりで、どう仕事をするんだよ!

お前の仕事って、人の邪魔をする事だからいいよな!!


午後の開始もこんなミーティング(?)で10分遅れての開始。もうここまでやられたら、現場の大半は諦めて長丁場の仕事に持ち込む。

現場担当の責任者はこんなミーティングが終わって、自分達の配置に向かいながら、部下に伝える。


「安全運転、確実な配達……な!無事故でやる!」


めっちゃ短くて、的確なアドバイス。これこそ最速と言える。

普段のこの時間なら出発準備が整っているのに、まだ出発できる状態じゃない。それに加えて、


『すみません、まだ荷物来ないんですか?正午頃に来ると思ってたんですけど、……いつお届けにきますか?』

「申し訳ございません。こちら、15:30頃にはお届けに参りますので~」


お客様も待っている状況。配達ルートも指定時間や要望が追加されて、いつもと同じく変わっていく。配達中に要望が来ることも珍しくない。

そりゃあ、普段の仕事なら到着していた荷物が届かないんだから、察するものがある。別の御宅に配達されてたら、イヤなもんあるし。それが当たり前でなきゃいけない仕事だからな。



ブロロロロロロ



こうして、今日も夜遅くまで、……遅くはなったが、お客様の元には何事もなく荷物を届けるのである。会社まで無事に戻っても、後処理があって、30分以上……。

8:00から仕事始めて、20:30ですか……。準備ができてたり、意味のないミーティングがなきゃ、18:00には終わってもおかしくない。


「あ」


家まで駅2つ。

その駅前のある飲み屋の前で団体様がいるなぁって思えば、


「ははははは、住吉さん!今日も良い声出してましたねぇ!」

「バーカ!あれくらいしなきゃダメなんだよ!法令通りって言ってやりゃいい!」

「現場の人間なんて使い潰すんだよ!あんな馬鹿な仕事を、嬉々とする連中なんだ!」

「俺だったら、ぜってー辞める!」

「じゃあ、もう1件!仕事に差し支えないよう!0:00まで飲むぞーー!」


見たくもないが、馬鹿デカくて分かりやすい声で見てしまった。せめて、駅を代えて飲んでくれと言いたい。こんな連中が交通安全とかも言ってるんだからなぁ。

全員とは言わないけど。


「まったく」


こっちも、あんた等の事を見てるんだぞ。

このお話でも出てきてますが、仕事の”準備”についてなんですが。

これ、自分の会社のところでも議論になってるところです。



中の業務の事なんで、詳しくは書きませんが。

平たく言えば、荷物の仕分、確認です。

担当が今日配る荷物の量や、荷物の住所確認が基本メインです。出されている荷物の中には、住所間違えがあったり、記載漏れがあったりするのは珍しくないんです。あるいは、まだご入居されていない荷物が来てしまうなど。

配達員の考えも色々とありますが、自分としてはお出しされた荷物をどうあれ、確実にお届けするのが仕事と思っているので、これを疎かにすると迷惑が出るのを知っています。その確認があるかないかで、業務の質が劇的に変わりますね。

なんだかんだで安全かつ早くやるための、必要な業務なんです。

サービスと言えばサービスですか。そこまで負担じゃないんですが、時間は20分かかるか。量にもよりますが。通勤で不慮の遅れで遅刻すると、仕事に影響が出るのでわりと早めに会社に来ているんですけどね。満員電車もヤダし。


これ抜きでやると、業務に響く時間は1時間くらいは掛かるんですけどね。午前配達などの考慮もあるし、自分は慎重派なんで。



まぁ、管理者からすれば。「それは仕事なんじゃない?これはダメ」って言われるわけなんですが。

じゃあ、しませんよ。ってしたら。

仕事開始早々、こう言われるんですよ。


「仕事遅くなってない?」

「こんなところに荷物を置かないでよ!取りに来て!」

「早く仕事してください!」


……よりによって、なんで管理者が言うんでしょうかね?

そー言われるのは、凄く困るんですが。

こっちとしては勤務時間をもう少し早くしろって言ってるんですが、金とか色々あるから断られるんですけど。人増やしてくれ言うより、マシじゃんって思ってるんですが。難しいですね。


たぶん、法律守っていたら人員足りないから補充を考える……って事になればいいんですが。会社も会社で、経営ってのがありますし。経営者も働いている方も、それくらいは良いだろって思ってた事が急にダメになったんで、てんてこまいです。


また別に、人員増やしたくない短編でも書きたいかな。こっちもこっちで気持ちは分かるから、頑張るんですけどね。うん。

ストレスが溜まっていた。



ちなみに、住吉みたいな方は早々いません。(自分も1度あっただけです)

本部が現場の人間に口を出すことは滅多にないです。

こいつが基本例外なだけです。

のほほんと、見ているだけです。それでもちょっとイラっと来るけど(笑)。翌日に結果を報告されますね。

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