矛盾聖戦(一般)
ある所に黒い羽根と白い羽を持った【天使】がいた。その天使は黒い羽根が原因で天界から追放された。
【それ】は行き場を失い魔界に向かった。
しかし、いや当然と言うべきか、魔界からも追放された。
【それ】は人間界に向かい、破壊と殺戮の限りを尽くした。人々は恐れ、ある者は神に、ある者は魔王に願った。【あれ】を止めてくれと。
しかし、神は直接手を出すことは出来ない。そこで選ばれた150人に『聖魔殺し』の有効打となる、【神聖術】を授けた。
150人もの『聖魔殺し』達は一斉に【それ】の討伐に向かった。しかし、結果【それ】に与えたダメージは
黒い羽を1枚剥いだだけであった。対する『聖魔殺し』は死者138人、負傷者9人、そして黒い羽に触れた3人となった。
黒い羽根に触れた3人は、髪が黒くなり【神聖術】が使えなくなった。
次に魔王が50人に【魔法】を授けた。その中の一人に、黒髪の者がいた。
そして、また『魔術師』達は一斉に【それ】の討伐に向かった。またもや結果は死者42人負傷者7人の結果となった。
その時の戦果も白い羽を1枚剥いだだけに終わった。
黒髪の者は白い羽に触り、髪がこの世のものとは思えないほど白くなり【魔法】を使うことが出来なくなった。
代わりに【聖魔術】を使えるようになった。黒でありながら白く、白でありながら黒い。
矛盾を孕んだその規格外の【聖魔術】はついに、【それ】の封印に成功した。
しかし、封印は完全なものではなく、180年後に復活してしまう。
これが一般的に伝えられている『矛盾聖戦』である。
そして今年で封印が施されてから178年後となる。未だに【聖魔術】使いは表舞台には現れていない。
しかし、密かに【聖魔術】を使える者は存在した。
白髪の母親と黒髪の父親との間に生まれた子は、178年前の英雄と同じこの世のものとは思えないほど白い髪だった。唯一違う場所は、その背中に黒い翼と白い翼が生えていることだろう。【それ】と同じように。
白い翼は触れた者の傷を癒し、心に神への信仰を植え付ける。
黒い翼は触れた者の精神を傷つけ、心から神への進行を無くす。
同時に触れた場合どうなるのだろうか、答えは簡単。【矛盾】に、体が耐えられず崩壊する。
当然人前に出れるはずもなく、16年間隠されて育ってきた。16年の間勉学に励み、体を鍛え、【聖魔術】を研究し続けた。その研究の結果【聖魔術】はこの世の法則に反し、矛盾を孕み、当たったものを消滅させる。使える技は“絶黒の白”ただ一つである。
これを喰らったものはどこまでも黒く光り輝く空間に閉じ込められ、精神を苛まれる。これを喰らったならば、あとは速く心が壊れることを待つばかりである。
これ程の技を持ってしても180年しか封印することが出来ない【矛盾】にすら対抗する【それ】があと2年で復活してしまう。その事に恐怖した。
若くして、この世の矛盾に触れ、たった一人の【聖魔術】の使い手となった少年は、180年前の事実を知るために旅に出た。