表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
7/42

実録!ハニトラ!デストロワイヤル!

有害指定都市ツチューラ市 電子町 国道406号線 午前07時36分。



朝の通勤ラッシュを快適に走る一台のヴェルファイア。トヨタの高級ミニバンに相応しい優雅かつ安定感。後部座席は旅客機のファーストクラス並みの座り心地である。

ちょっとした『成功者』の証であるのだろう。


この高級ミニバンを運転するのは。


ツチューラ市内の電子町でIT企業を営む『高橋』である。

この時間帯のこの道は、今更ながらにいつも渋滞である。まぁ自分は社長だし、ちょっと位遅刻しても問題はない。すると、ふと目に入った喫茶店『キャロル2』の看板。

いつの間に出来たのだろうか?

深く考えず、『キャロル2』の駐車場にヴェルファイアを入れる高橋。朝の通勤ラッシュを避け、ちょっとモーニングでも食べて行こうとの事であろう。

スマートキーでロックをし、店の扉を開けようとした。


その時・・・・




!?



中から一人の男が出てきた。



そして、


「高橋じゃねぇかよ!」


と、声を掛けてきた。


懐かしい顔である。

中から出てきた男の名前は、高橋が高校時代にアルバイトをしていた時の、居酒屋『花魁』の店長だった『タケシ』である。

そのまま頭だけ下げ、知らんぷりしても良かったが、それはタケシに対して失礼である。半ば社交辞令的な感じで、「お久しぶりです。先輩」と挨拶をした。

かなりのクソ真面目な高橋に対して、当時から破天荒であったタケシ。今でもロックミュージシャンの『氷室』を彷彿させるビジュアルをしている。


「本当に久しぶりだなぁ!今何してんの?」


軽い世間話を振るようにタケシが訪ねてくる。


「はい。すぐそこの『ブリリアント・スポット』とゆう会社を経営してます。」


「へえ!そんじゃ社長かよ?スゲェじゃん!」


若干、オーバーではないか?と疑いたくなるようなタケシのリアクションだが悪い気はしない。

だって、当時のタケシは自分の上司であったが、今ではどう見ても遊び人風情の風体のタケシより自分のほうが、社会的地位や何もかもが上である。

気分を良くする高橋。そしてタケシが、


「とりあえず中に!この店知り合いの店でさぁ、俺、顔が利くんだよね!」


高橋は思わず吹き出しそうになる。


銀座や赤坂の高級クラブで顔が利くなら分かるが、こんな田舎のチンケな喫茶店で顔などと笑わせる。


とりあえず昔の上司との世間話をして自分のポテンシャルを見せつけ、優越感に満たされ、重役出勤も悪くないだろう。そんな風に軽く考えた高橋であった。



・・・・



まさかこの後、タケシが自分を地獄へ引き落とす張本人になろうとは、夢にも思わない高橋であった。



そして・・・・



他愛ない昔話をして、店を出る二人。勿論会計は高橋がもつ。そしてタケシが、


「いや~、すっかりご馳走になっちゃって。御礼に俺がお世話になってる『建設会社』の社長を紹介するよ!その人メッチャ金持ちでぇ、金払いもいいんだ!次の仕事に繋がるから」


たかがモーニングを奢った位でそこまでしてもらう訳には行かない。高橋がやんわり断ると、


「頼むよ。高橋社長。俺に恥かかせないでよ」


急激にタケシの形相が変わる。

そして口調も強めだ。

まぁ建設会社のタケシが今働いている会社の社長で次の仕事に繋がるなら悪くはない。


「じゃあせっかくなので」


と高橋が答えると、「そうこなくちゃ!」とスマホを取り出し電話するタケシ。


「もしもしぃ、あの社長、以前お話した俺の例の後輩。ええ。話つきましたから。今から伺います。はい。」


と、電話を切るタケシ。


高橋はちょっと不安を感じる。

『話つきましたから。』ってどういう事だろう?

あれこれ考えながらタケシが運転する『ポンコツ底辺DQN仕様』のワゴンRの後ろにヴェルファイアで付いていく高橋であった。






有害指定都市ツチューラ市 絶対安全農村区域クサレガ丘一丁目。午前08時48分。



のどかな農村地帯に佇むごく普通の一軒家ではあるが、高橋の心の警戒のサイレンが鳴る!


言葉を無くす高橋。


「(何だ、この家)」


庭に停車されている古い暴走族仕様の三台の車に、黒塗りの古いセンチュリー。そして明らかに様子がおかしい、あちらこちらがベコベコのプリウス。まるで人でも引き殺したような佇まいのハイブリッド車。

そしてその一軒家には膨大な数の監視カメラ。


思いだした!



タケシは当時妙な名前の暴走族に加入していた!


たしか、『フレンチ・ブルドッグ』!


嫌、


高橋は、駐車されている内の一台の、古くて赤い暴走族仕様の車のフロントガラスの文字を見ると、


『CRAZY BUTTER DOG69』と表記してある!


そうだ!



罵多悪怒愚(バタードッグ)』である!


高橋にその世界はよく分からないが、武闘派の暴走族と聞いた事がある!『ツチューラ工務店』と書かれたプレートがぶら下がる玄関前にタケシが立つと、


『ガチャッ』


とロックが解除され、ゆらりと現れた一人の男。





!?





鮮やかな金髪。全盛期の『的場浩○』を彷彿させるリーゼント。そして爬虫類を連想させる微妙な顔に乗るシャープな鋭いメガネ。年配なのか只の若作りなのか分別できないが、恐ろしく狂暴そうである!


この男が・・・・



罵多悪怒愚(バタードッグ)』総会長の『梅豚』である!




高橋は暗雲に足を踏み入れた気分だ・・・・



しかし、ここは建設会社だ!きっと玄関に出て来た『昭和な男』は、現場の作業員かダンプの運転手で、奥には紳士的な社長が迎えてくれるに違いない!



しかし、その金髪リーゼント(梅豚)は、タケシと高橋の背後を油断なく伺っていて、高橋に一瞥をくれると、




「まぁ入れや」



と、ボソリと呟いた!あっけなく打ち砕かれる高橋の思い・・・・



明らかに主人の客を招き入れる使用人の態度ではない!

嫌な所に来てしまった・・・・


タケシはニヤニヤしながら玄関を上がる。

高橋もそれに従う。


玄関には土佐犬の置物や、弥勒菩薩の像。そして甲冑などがディスプレイされ、鷹の剥製が玄関脇にある出窓に鎮座している!

こんな室内の作りを、何処かで見たような気がする!


先導する金髪リーゼント(梅豚)に漂う、ある種の独特なる異様な『戦闘的威圧感』。

身長はそんなに無いが、シルバーのネックレスがちらつく首筋から足にかけて軽く付いている筋肉が絶妙な不気味さを醸し出している!廊下を歩き、手前のドアを開ける金髪リーゼント(梅豚)。すると其処には、






!?





L字型のソファーに黒のガラステーブル。

一人掛けのリクライニングチェアには、虎の敷物が巻き付けられている・・・・


そうだ・・・・



映画でよく見る『暴力団』の事務所にそっくりである。



それより高橋が驚いたのは、奥の社長ディスクに座る恐ろしく美しい、この下品な異空間には似つかわぬ一人の美女。

『妖艶』としか表現出来ない・・・・。

茶髪のロングのストレートに、はち切れんばかりの胸元が強調された黒のワンピ。やはりこの女性も若作りなのかよく分からない。年齢不詳である。すこぶる美女には違いないが・・・・


このディスクに座っているという事は、この女性が『ツチューラ工務店』の社長なのだろうか?

ディスクの上には中型のトリプルモニター。一つは監視カメラ用であとの二つはPC用であろう。するとその女性が立ち上がり、満面の笑みで高橋に、


「お忙しい中すみません。お越し頂き、光栄です。ゆっくりしていってくださいね」


と、その女性はスラリと細い腕で名刺を差し出してきた。慌てて自分の名刺を取り出して差し出しす高橋。


この女性、見た目よりも常識がありそうで、知的な印象である。紳士的な社長じゃなく、知的で美しい女性だった。

さっきまでの恐怖を忘れさせる位、この美人の存在感は絶大である。そして女性の名刺に目を移すと、


筆文字で、『ツチューラ工務店』と一番上に書いてあり、その下に小文字で、『代表取締役特別補佐』と不思議な肩書き。そして、




『梅姫』と書かれている・・・・。



はて・・・・?


これは何と読むのだろうか?


素直に『うめひめ』だろうか?


すると、



「あっ、ごめんなさい!『姫』って書いて『マナ』って読むんですよぉ~、完全に『当て字』ですよねぇ(笑)」



・・・・。


当て字とゆうか、完全体の『キラキラネーム』であり、無理矢理にもほどってモンがある。すると、


「高橋涼介さんってゆーんだぁ。素敵な名前!『デキる男』って感じしますよね!」


あまり突っ込む隙をあたえず、マナがベタ誉めする。

少し恥ずかしそうに高橋は「そ、そんな、何処にでもある名前じゃないですか」と返す。


若干デレている!

男は美人に対しては、油断、そして隙ができる!

高橋はその典型である。


「まぁ、謙遜しちゃって。フフフ。立ち話もアレなんでお掛けになって下さい」


マナがL字型のソファーのコーナーの部分に高橋を座らせ、ソファーの片隅にタケシ、そしてマナが座り逃げ道を塞ぐ。そして一人掛けの『虎ソファー』に金髪リーゼント(梅豚)が座る!


そしてタケシが紹介する。


「ウチの社長の『梅豚』さんだ。」


すると梅豚はテーブルの上にあった缶ビールの蓋をあける。その手の指には『ワッカ』のような入れ墨と、規則正しく整列されている『ホクロ』のような入れ墨が施してある。

梅豚はおもむろにタバコに火をつけ、おもいっきり吸い込み、高橋に煙を吹き付ける!

タバコを吸わない高橋は、全開に気分が悪くなる。

そして梅豚が口を開く。


「俺達、昔、族やっててよぉ、オメェも知ってっぺ?高橋よぅ、『罵多悪怒愚(バタードッグ)』つーの、あ?」


いきなり初対面の人間に対して『オメェ』である。しかし、口論などに発展したら何をされるかわからない!

適当に高橋は、


「あの県南地区で暴れ回ってた『罵多悪怒愚(バタードッグ)』ですよね?」


と、よせばいいのに合いの手を入れてしまう。


「んだっぺよ。んでぇ、龍二っつークソ野郎が引っ張ってた愚連隊がチョータレてのさばってやがってよ、ウチの若い衆が恥書かされて黙ってらんねぇってんで、しゃんめっつってぶち殺した。んでぇ野郎ら解散よぉ」


早口の巻き舌で訳の分からない事をまくし立てる梅豚!

高橋が解析する。

ようするに人の命を奪った話をしているのだ!

調子に乗って梅豚が続ける!


「男はやるときゃ全開で仕事も殺人もしなきゃなんねぇ。んだ、オメェにいいモン見してやる」


すると梅豚は、奥の和室から長さ1メートル30センチはあるであろう白鞘に収まった日本刀を取り出して来た!


兼元(かねもと)業物(わざもの)だよぅ。」


そう言うと、スラリと鞘から刀を抜く梅豚!


「かなり血ぃ吸ってんだよ。ククク」


と、ギラつく眼差しで日本刀自慢をする梅豚!


高橋は背筋が薄ら寒くなり、カタカタと震えがくるのを自覚しだす!生まれて初めて対面するアウトロー。

目の前にいる男は只の元暴走族ではない!現在も頭が暴走進行中の狂人である!一言でも言葉を間違ったら、すぐさま殺されて、この男は咥えタバコで雑談しながら穴を掘り、高橋を笑いながら埋めてしまうだろう!

とんでもない人と関わってしまった!

そんな事を高橋が考えていると、


「社長さんにビールとツマミ買ってくっから。タケシ、行くぞ」



???


どうしたとゆうのであろう?


急に席を立つと梅豚はタケシを連れて出て行ってしまう。



意味不明だ。



しかし・・・・。



事実上、この家には高橋とマナの二人っきり状態。

ますますパニックになる高橋。


すると、


「あ~あ。また出掛けちった。梅豚くん」


退屈そうに欠伸をするマナ。

あからさまにさっきとは態度が違うマナ。

意味深に高橋を見つめ、ミニのワンピからアラワになるセクシーな生足をあざとくギリギリラインで組み換えるマナ!

そしてマナは色々話始める。

若い頃はサクランボ町でNo.1キャバ嬢だった事や、そこで知り合った大手企業の社長と恋仲になり、数千万貢がせた話など、エロなカラダを故意的に揺らせながら語り尽くす。


そして、


「高橋くんってITって事はアプリの開発も出来んだよね?アタシに教えてくんない?」


そう言ってディスクに座りPCを起動するマナ。


急にそんな事を言われても高橋は困る。

アプリの開発には特殊なソフトや技能が必要で、すぐに素人がどうにかできるものでもない。

高橋がそのように説明していると、


「あっ!PCがフリーズしちった。高橋くん、何とかしてよ」



甘えた声で懇願してくるマナ。


高橋が背後に周り、マナの手をとりPCをアシスト!


すると椅子に仰け反り胸の谷間を見せつけ高橋を官能的に見つめるマナ!



危ない!



高橋は急に我に帰り、「失礼します」と物騒な家を出る!「何を考えてるんだ俺は!」と自分を責めながら愛車のヴェルファイアに乗り込もうとしたその時!





!?




高橋の背後にいつの間にか梅豚が立っていた・・・・。



そして怒りにまみれた形相で、


「社長さんっちゃ気楽な商売だな?真っ昼間っから人の女に手ぇ出してよ。あ?」


高橋は苦笑いを浮かべヴェルファイアで颯爽と逃げた。



悪夢の始まりである・・・・



その日の深夜、タケシから「ちょっとツラ貸せ」と例の物騒な一軒家に呼び出された!

外からでも分かる。何やら家の中が賑やかだ。宴会でもやっているのだろうか?高橋が中に入ると梅豚が陽気に、



「おっ?イケメン来た!入れ入れ!」


と上機嫌である。


昼間の事は怒ってないのだろうか?


しかし・・・・


梅豚、タケシ、マナに加え、厳つい男が三人増えていた・・・・



一人は格闘家も顔負けのイカつい体型で、紺色の戦闘服に身を包み、梅豚を『オヤジ』と呼び絶対服従といったかんじで、捲った袖口からは刺青が覗く!

梅豚がタバコを咥えたら直ぐにデュポンのライターで火をつける。無言の圧力をかけてくるこの青年は『ユキヤ』と呼ばれている。昼間マナが話をしていた。自分の親衛隊にユキヤとゆうアブないヤツがいると・・・・。


もう一人は油ギッシュな『とっちゃん坊や』風で、見た目は一般市民風だが目の瞳孔が開き、「なーんでですかーーっ」と意味不明な奇声を上げている!よく見ると左手の小指が欠損している!この男は『タックン』と呼ばれている。



そして・・・・




!?





身長180後半。若干後退した坊主頭にパンイチ姿・・・・。

刺青は手首から足首までビッシリ・・・・。

棲んでいる空気が他の『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバーとちょっと違う!とゆうかかなり違う!

表現し難い危険なオーラを撒き散らし、この男に比べたら梅豚ですら遅れた後輩じみて見える!

この男は・・・・。

死刑部隊『罵多悪怒愚(バタードッグ)』副総長兼『敵地急襲抗争隊』将軍・・・・。

アッチャンである!

マッカランをラッパ飲みし、妙な粉状の薬物を床にぶちまけ、掃除機のように吸引している!



・・・・。




もう高橋は生きた心地がしない・・・・



すると梅豚が、


「まぁイケメンくん。一杯やりたまえ。」


とゆうと、マナが冷えたグラスを用意する。


その高橋のグラスにタックンが「タッハッハッハ」と不気味に笑いながらビールを注ぐ!


ここで総会長の梅豚が乾杯の音頭をとる!乱れたシルクのシャツの胸元からは極才色を施した刺青が丸出しである!



「ウチの会社もテメェら役立たずのお陰でここまで来れた!もう俺達『罵多悪怒愚(バタードッグ)』に逆らうヤツなんか誰も居やしねぇんだ!俺達ゃ永遠の殺人鬼よ。未来永劫に屍積み重ねる為に!『罵多悪怒愚(バタードッグ)』乾杯!」



全員が「乾杯!」とグラスを上げた・・・・!


見事な統率力で凄まじい音頭である!



それからは普通に雑談しながらみんなで飲んだ。梅豚もアッチャンやタケシと他愛ない会話を交わしていた。



しかし・・・・


梅豚が囁き始める・・・・


「高橋くんも分かんだろ?俺はマナにベタ惚れでよぅ、本当に好きで好きでたまんなくてな・・・・」


ここで囁きから唸りに変貌した!



「昼間の事はどーなってんだ!?テメェ!」


そう叫ぶとジョッキをテーブルに叩きつけた!

粉々に砕け散るジョッキ!


「オウ!コラ!テメェ俺の女に何しやがる?あ?高橋ぃ、シャレんなんねぇ事しやがって!只じゃおかんぞ!アアッ?」


梅豚の急な豹変に瞬時に体が硬直する高橋!


ホウキとチリトリでサッサとかたずけるユキヤ。


タケシが間に入る。


「ちょっと梅ちゃん、待ってよ。高橋は他人の女に手ぇ出すようなヤツじゃないって!」


先輩!ナイスフォローで感涙高橋!


しかし、


「アア?んじゃ何だよ!?タケシィ、俺ゃ見たんだぞ?二人でイチャイチャチチクリあってんのをよぅ!んでもテメェ、ペラペラアゴ回すんか?アア?コラ!タケシィ!」


するとタケシはうつむいて黙ってしまう!


「じゃあアタシも言わしてもらうけど!」


突然マナが食い込んでくる!


「毎日毎日さぁ、梅豚くん!アンタどこ飲み歩ってんの?アタシだってそんな放置プレイされたら他の男に目が行って当然じゃん!ちょっと位高橋くんと仲良くしてもよくない!?」


猛烈に旦那に食ってかかる情婦!

すると・・・・


おもむろに梅豚はマナの髪を鷲掴みにし、『バシーーン』と猛ビンタを食らわせた!


「じゃあ俺の前で高橋とヤル度胸あんのか!?このヤリマンがあ!」


すると、


「ゴメン!梅豚くん!もうしないから!だから許してぇ」


と、マナは号泣し、梅豚に抱きつく!

これでは!


梅豚が爬虫類の笑みを浮かべる!


「ほ~ら、高橋くん。マナが認めたぞぉ?面白くなってきたなぁ?しっかりヤキぶちこんで殺してやっから覚悟しろよ。」


しかし、高橋も言わなければいけないが、マナが認めてしまっては既成事実は完成で、言葉もでない・・・・。


「まずはタケシィ!テメェからケジメとっからよ!テメェが連れてきたクソガキの不始末なんだからよ!アッチャン殺れや!」


するとアッチャンは猛獣のようにタケシに襲いかかり、手のひらをテーブルの上で広げさせ、包丁を取り出し、


「ヨゥ!タケシィ詰めぇや!コルァ!」


アッチャンはカン高い声で叫ぶと、タケシの指を切断しようとした!高橋が止めに入るとすかさず梅豚が唸り回す!


「コルァ!高橋ぃ、テメェが仲裁に入るほどデッケェ人間か?それともマナを元通りの体に戻せんのかよ!?そんくれーの甲斐性ねぇんなら黙っとけや!」


もう高橋は、涙と鼻水を垂れ流し、「すみましぇん!すみましぇん!」とひたすら謝り続けた!


しかし、梅豚が、


「もう腹括れや!クソガキャア!」


すると梅豚はテーブルを跨ぎ、高橋の胸ぐらに強烈な蹴りをぶちかました!高橋は一瞬何が起こったのか分からず、目を白黒させている所に、梅豚の狂犬の膝が高橋の鼻骨に炸裂し、血液が辺り一面に飛び散る!


「ぶち殺しちまうぞ!コルァ!」


梅豚は高橋の顔面、首筋、肩から頭に無差別の殺人パンチをくりだす!高橋は喧嘩もした事がないし、暴力も振るわれた事もない!途方にない梅豚の暴力になすすべがない高橋!

すると殴り疲れたのだろうか?梅豚は、


「人見て女に手ぇだせや!クソ野郎!」


と高橋に一蹴りくれると部屋から出て行った・・・・。

後に続く『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバー。

茫然自失の高橋。

部屋に残ったのはタケシのみ。

そして・・・・


「オメェもドエライ事してくれんな?あ?俺も犯人扱いじゃねぇか。どう責任とんだよ?」


穏やかにキツイ口調でタケシが詰めてくる。

高橋は流れる血液を手で拭いながら答える。


「責任って・・・・。どうしたらよろしいですか?」


涙を流し質問する高橋に対して


「んなモン、テメェで考えろやっ!こっちの身まで危ねぇじゃねぇか!要するに自分が出来る事言えよ。精一杯の『誠意』さえ見せれば梅ちゃんもおとなしくなってくれっから。どうすんの?」


どうすんの?と急に言われても・・・・


高橋は頭を巡らす・・・・


こういった場合、誠意=金である。あきらかに狂暴な梅豚の暴力を背景にタケシは金銭の要求をしている。

手持ちの金は30万ちょい。これでチャラになるとはとても思えない。なので高橋は、


「今ある30万と、足りない分は後日持ってきます。なので勘弁してください。」


するとタケシの顔が明るくなる。

この場はこれで凌いで、後日警察に駆け込めばいい。


「そうそう。その言葉が欲しかったんだよ。じゃ、この借用書にサインして。あとこの共同合意書も。あと白紙の小切手も預かるから。車もね」



!?



なっ、何と!


金以外に会社まで乗っ取るつもりなのか?


借用書や車はまだ分かるが、共同合意書まで・・・・

白紙の小切手がどうゆう事になるかは、疲労困憊しているとはいえ、高橋は経営者だ。それ位分かる。みすこしたのかタケシは、


「いいよ。警察に駆け込んでも。そんかわり俺達が本気で動いたら五分もたねぇ。家族親戚皆殺しにしてやる。」


淡々と書類を段取りしながらタケシが散歩でもするように呟く。コイツらなら本当にやるだろう。自分の愛する妻や子供、親兄妹に親戚達。木っ端微塵にされる。警察に行った所で二手三手遅い捜査の隙をつき、このゴロツキ達に殺される。全て言いなりになるしかない。




・・・・。



段々目の前が暗くなって行く高橋であった。






これは、全て『罵多悪怒愚(バタードッグ)』が絵図を書き、全員でそれぞれの役目を果たした壮大な恐喝事件。美人局と言われたらそうかもしれないが、計算付くで、高橋はマナの手に僅かに触れた程度。勿論男女の関係にはほど遠い。場面でマナも他の『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバーも役を演じただけ。プロのゴロツキ達が見事に世間知らずの経営者をハメた演劇。最初から高橋とタケシの再開から仕組まれたものであり、その後もほぼ台本通り。やはり『罵多悪怒愚(バタードッグ)』もプロの名に恥じない。このようなプロにかかれば無知なゆとり経営者など、秒で丸裸である。男は美人には注意である。



高橋くんのその後は誰も知らない。



・・・・。



株式会社ブリリアント・スポットは経営者がマナに代わり、順調経営である。



合掌。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ