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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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ギャンブルーレット

有害指定都市ツチューラ市 絶対安全農村区域 クサレガ丘一丁目午前09時04分。


のどかな農村地帯に佇むごく普通の一軒家。しかし、よく見ると要塞である。ここは・・・・


罵多悪怒愚(バタードッグ)』総会長、梅豚とマナの住居兼アジトである。

先日、マナは海外から久しぶりにこの家に帰って来て驚愕し、そして激怒した!

それは、二人で協力し、建設した念願マイホームが、自分の留守中に酷い有り様になっていたからだ!

ゴミが散乱し、そこかしこにランダムに投げられた酒の空き缶。台所には洗い物の食器が、腐敗臭を放っていた!

それだけならまだいい!


落ちていたのである!


金髪の巻き髪が!


そして、梅豚のトゲトゲの『クリスチャンルブタン』の財布にお金を追加し、内助の功を見せつけようとしたマナ!

しかしそのお下品な梅豚財布には!


ぎっしりとキャバ嬢の名刺が束になり、輪ゴムで固定され、詰め込まれていた!

もう許せない!


そして相も変わらず梅豚は、パンイチで家中を徘徊している!そして食事をしながらの喫煙!この梅豚の癖は、何度マナが注意しても治ることがなく、半ば諦めてはいるのだが・・・・。


それは今に始まった事ではない!

しかし、浮気は許せない!

マナは極度のヤキモチ焼きで、自分の愛すべき旦那様が、売女と浮気していたかと思うと、脳の血管が破裂しそうになる!



なので、朝っぱらからこんなことはしたくないのだが、マナはパンイチの梅豚を徹底的に詰め、木刀でヤキをブチ込んだ!


しかし、このロクデナシ(梅豚)は、「やめてくりぃ~」と言うばっかで、決して自白しようとしない!罪を認めないのだ!

木刀が折れる頃、丁度マナの手も疲れてきたので、ヤキは一時中断し、梅豚を正座させ、尋問に移る!


「浮気したんだろっ?サクランボ町の売女と!えっ!?どうなんだよ!男らしく素直に認めろよ!この人害野郎!」


美しい見た目からは想像もつかない暴言が、マナの口から吐き出される!


「だっ、だきゃらぁ!浮気なんてしてないってぇ!俺は生涯女は『(マナ)』だけなの!」


捨てられそうな子犬のような目で、マナに懇願する梅豚。



・・・・。



これは浮気の確率は50%であろうか?

急にマナは梅豚が可哀想になってきた・・・・。

愛すべき旦那様をこんなに酷く叩いてしまった・・・・。

きっとかなり痛かっただろう。(当たり前だ!)


するとマナは泣き出してしまった!(情緒不安定)。

泣きながら流血した梅豚を手際よく包帯で手当てしていくマナ。結果、梅豚は『ミイラ男』になってしまい、梅豚かどうかの判別も不能になってしまった・・・・


そして飛び散った血痕を、クイックルワイパーで掃除しながらマナは、「ふ~う。そういえば例の件、今日だったよね?ガッツリ稼いできてね!アタシが散々海外で稼いでる間、アンタ遊んでたんだから。ねっ?キャハハッ」(超情緒不安定)。



これは梅豚が悪いだろう。


悪い癖のB型思考。


身から出た錆である。



梅豚はアディダスのシャカシャカジャージを身に纏うと、そそくさと家を出て、社用車?のプリウス・ミサイルで急発進して現場に向かう。

現場と言っても、建設現場ではない。

今日は、あの指定暴力団『菱山組』の二次団体『銀龍会』の賭博が某所で行われる事を『罵多悪怒愚(バタードッグ)』は事前に情報をキャッチ。

後は簡単。かちこんで、ブチ殺し、売り上げを頂戴するだけの単純作業である。

散々マナにヤキを食らい、ミイラ男にされてしまった・・・。

梅豚のイライラは頂点に達していた!


あとは、このエナジーを金と暴力に変えるだけだ!

梅豚はプリウスのアクセルを全開に踏み込んだ。









有害指定都市ツチューラ市 神寝町 古民家 午後14時31分。





古い住宅地にある、くたびれた平屋の古民家。

その三軒先の角のゴミ捨て場の脇に、プリウスが停車している。運転席に梅豚。助手席にタケシ。後部座席にはアッチャンとタックンが座っている。

マナにミイラ男にされてしまった梅豚については、誰も触れなかった。今からする『強盗(タタキ)』は、顔バレしない事が重要なので、ミイラ男の梅豚は好都合だ。

タケシが段取りを説明する。


「みんなに合わせて説明は簡単明瞭。すぐわかる。まず、入り口の見張り二人を俺と梅ちゃんで日本刀でぶった斬る。そしたらアッチャンとタックンは中にいるやつをやってくれ。最悪殺してもいい。その隙に俺と梅ちゃんでそこにある金全て奪う。そんでさっさと撤収。タックン、例の物は?」


タックンは懐からゴソゴソと、ビニール袋を取り出すと、

「これでいーですかーぁ?」

と、百均で購入したC級以下のホラー映画でも使わないであろう、ペナペナのスケキヨ風マスクを五つタケシに渡した。半ば呆れるタケシ。このタックンとゆう男は、百均で重要な仕事道具を買い、経費削減とでも思ったのだろうか?しかし別に構わない。ハナからヤクザ相手に見バレを隠し通せるとも思っていない。バレたら殺すまでの単純ストーリー。

五人がマスクを装着する。(梅豚はあまり意味ナシ)

しかし、マスクの後部を止めるゴムが、物凄くユルイ。

すると梅豚がダッシュボードの中からアルミの粘着テープを取り出した。あまりきつく巻いてしまうと、取り外しが困難になるため、全員が軽めに止める。



アッチャンがプリウスのトランクから、日本刀を取り出すと梅豚とタケシに渡し、アッチャンとタックンは木刀である!



準備万端である!




梅豚がゆっくりプリウスを走らせる。

門の入り口に見張りの男が立っている。

見張りは二人の筈だから手間が省ける!


梅豚はプリウスを猛加速させ、入り口の男を引き殺した!

軽くドスンと音がしただけである!


そして各自、日本刀と木刀を手に古民家に突入して行く!


まず、玄関前のチンピラを梅豚が袈裟懸けに切り裂く!

血の狼煙が舞い上がる!

同時に、タケシ、アッチャン、タックンが突っ込んで行く!

賭場を開いているのに、ここの者は丸腰らしい!

タケシが向かってきた上半身裸の刺青男をぶった斬る!


すでに梅豚の足元には二人の男がボロゾーキンのように横たわっている!そしてズンズン奥に侵入する!


奥の賭博が開帳されている部屋は真ん中に白くてデカイ布が敷かれ、サイコロやマメ札が転がっている!ヤクザ映画のワンシーンをショボくした感じだ!

アッチャンは木刀が折れてしまったのだろう。素手で五人の男を相手に乱闘をカマしている!


梅豚がぐるりと辺りを見回す。現金は帳場のテーブルの上だ!すると・・・・



タックンが金縛り状態で動けないでいる!



その前に佇む男は・・・・





年季の入ったオールバック。

グレーの背広に赤シャツ。

ラインストーンがちりばめられた眼帯。




そう。





『五代目銀龍会』組長!




龍二だ!




隻眼の鋭い目で、タックンを蛇に睨まれたカエル状態にしている!躊躇わず龍二に突っ込んでいく梅豚!


梅豚はシリポケから取り出した『熊スプレー』を龍二の片眼に噴射した!

たまらず両手で目を抑える龍二!

そのがら空きの腹に鋭い梅豚の鉄板入り安全靴が炸裂する!

すでにテーブルの上の現金はタケシが回収済みだ!


撤収である!


しかし、動ける者はいないだろう。



四人はプリウスに飛び乗り速攻バックレる!

全開で走るプリウスの前に老人が飛び出してきたが、ためらわず撥ね飛ばす!

本当に梅豚は息を吐くように人を殺す!


ハンドルを握り、マスクを外しながら梅豚がタケシに問う。


「現金は?全部で幾らだ?」


ため息混じりの落胆した感じでタケシが答える。


「ざっと、700万位。強奪した装飾品もパチが多いね。1000万も行かないよ。」


「あ?オメェが算出した額の半分もねぇじゃねぇか。何人殺したと思ってんだよ?」


怒りで弾けそうな梅豚!しかし、


「大丈夫だよ。ヤツらは独特の太いシノギもってるでしょ?」


『こんな事は想定内』とばかりにタケシが呟く。


「シャブか?」


欠伸をしながら梅豚が聞く。


「そう。それを強奪したらデカイよ。暫くは遊んで暮らせるね!しかしあそこに龍二が居るとはねぇ」



700万を四人で割っても幾らにもならない。


梅豚は帰ったらまた「この甲斐性ナシ!」とマナに怒やされるのである・・・・。



梅豚は憂鬱な気分でアクセルを踏んだ。







一方、襲撃を受けた賭場の古民家では・・・・





漂う鉄錆のような血の臭いと、吐瀉物の激臭。


うめき声や悲鳴が屋内に響き渡る。



熊スプレーにより、眼光が一時的に見えない龍二は思考を巡らす。ヤツらは間違いなく『罵多悪怒愚(バタードッグ)』だ!

多少狂ったかもしれないが、ほぼ台本通りの展開だったはず。物凄い『強盗(タタキ)慣れ』である。

こんな大胆かつ俊敏で残忍な手口はヤツらしかいないだろう。

怒りを通り越し、龍二は笑うしかない。


そして、



「やるじゃねぇか。梅豚。」




梅豚達『罵多悪怒愚(バタードッグ)』も龍二率いる『銀龍会』も存在して行く事が今回の話の基盤になったギャンブルのようなモンで、そしてルーレット。殺って殺られての連鎖である。

屍を積み重ね、前に進むしかないのだ。


罵多悪怒愚(バタードッグ)』は暴力団を巻き込み、血で血を洗う抗争に突入して行く。



ツチューラのアウトローのテッペンに立つため!


血の歴史を築いて行くのである。



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