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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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CRAZY BUTTER DOG LADY MANA

有害指定都市ツチューラ市 京楽町 キッチン居酒屋『三郎』午後13時24分。


駐車場には、相も変わらず下品な昭和のシャコタン達。


総会長の梅豚のGX61マークⅡ。副会長アッチャンのケンメリ。本部長タケシのジャパン。特攻隊長ユキヤのS30Z。親衛隊長タックンの910ブルーバード。


どれも見事な『化石』であり、よくぞ現代まで残っていたものである。

この『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバー達が駆る車両は、下品な改造が施されてはいるが、どれも普段乗り出来る位の改造であり、みんな普段の足としても使用している。

皆、総会長の梅豚が提唱する、『80S,ヤンキー仕様』を忠実にそして頑なに表現、再現し、情熱を注ぎ込んでいた。

梅豚の思考は、『現代の車は良く出来ている!しかし個性がミニミニで、すぐ飽きちゃう!』との事。要するに自身の『エゴ』をメンバーに押し付けているだけだ。

遊びの趣味の車ならまだいいが、このような昭和の車を普段乗りするのは想像を絶する。

まず、車両自体が現代の道路状況に合わない為、運転する度に疲れてしまう。止まらないブレーキ、重いハンドル。そして段差の度に心臓が飛び出しそうになる程のシャコタン等々。

しかし『罵多悪怒愚(バタードッグ)』のメンバー達は物心ついた頃からの真正の車好きだ!平成産まれの車など秒で飽きる!そして乗り換えを繰り返していたら、社会経済は潤うが、『罵多悪怒愚(バタードッグ)経済』に支障をきたし、財布にも精神にもよろしくない!無駄金をバラまいているだけで、インチキ中古車販売店のATMのようなモンである!

そう考えるとイライラするし、腹もたつのでみんな旧車に落ち着いている。



しかし・・・・



このキッチン居酒屋『三郎』なる店・・・・



広大な敷地にポツンと建てられた外観はハリウッド映画にでも出て来そうなログハウス調。


駐車場の片隅には、年代物のアメリカ製のトラックが置かれ、年代物の『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の車両達と不協和音をきたし、物凄くカオスである。


そして店内に侵入すると、やはりハリウッド映画チックなバーカウンターがあり、スタローンが号泣し、トラウトマン大佐に甘えだしそうな内装である。

店員は、調理担当の若造一人とウェイトレスの恐ろしく地味な子リスのような女だけ。人件費削減なのだろう。オーナーは年に一度顔を出せばいいほうである。

ランチ時なのに客は・・・・





!?





金髪リーゼントの中年!その回りに集うヤンキーなジジイ達!


梅豚率いる『罵多悪怒愚(バタードッグ)』である!



梅豚を含め五人が全員作業服姿で、胸には『ツチューラ工務店』と刺繍が金文字で入っている!鳶職のようなビシッとした作業服も『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバーが着ると特攻服にしか見えない・・・・。

そして何故かタックンだけが『見習いの電気工事士』のようなダサダサの平ズボンである。イジメであろうか?それとも趣味なのかは謎である。


そして飛び出すキチガイ梅豚の弾丸セリフ!


「昨日ユキヤと行ったキャバのクソアマがよぅ、生意気ヌカしやがったから水割りぶっかけてやったよ。あの店に義理できたからよぅ。アッチャン、タックンと行って消火器撒いてミカジメ取って来いよ」



正気の沙汰ではない会話を、淡々と話す梅豚。


真っ昼間から働き盛りの中年五人が、店内に流れている80年代の名作『バック トゥザ フューチャー』を観ながら酒をカックラッている。



・・・・



この国はもう駄目かも・・・・


しかしそんな事はどーでもいい狂人達のトラッシュトークは勢いを増して加速する!


「殺しちゃマジ~からよ。アッチャン上手く操縦しろよ?タックン。ついでにその店の女よ、ウチのデリに何人か引っ張って来いよ?給料もボーナスも倍んなんぞ?ハハハッ」


嬉しそうに梅豚に同意し、アッチャンとタックンを焚き付ける本部長のタケシ。

キレ目なのたろうか?フライドポテトを鷲掴みで食べながらタックンは、「な!な!な!なっ!なーーんでですかー!」と絶叫し、自身のドMっぷりを遺憾なく発揮させるタックンの瞳孔は『ガン開き』である。


「えっ!?殺しちゃ駄目なの?アタシ上手くやれるかなぁ?ちょっと自信ないわね」


何故か『オカマ口調』のアッチャン。全力893フェイスからのこのセリフは水爆級の破壊力だ!

聞いていると気が変になりそうである。一番まともなユキヤがヘッドフォンで音楽を聴いているのも納得である。


こんな会話を聞きながらも、ウェイトレスの『子リス女』は素知らぬ顔である。もう慣れているのだろう。



すると梅豚のスマホが、



ビィーーン!ビィーーン!ビィーーン!



と北朝鮮からのミサイル警報のような音で唸りだした!


一瞬にして『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバーと店内に緊張が走る!


しかし慌てるメンバーを横目に、何故か梅豚は嬉しそうである。痙攣しそうな顔でタケシが梅豚に尋ねる。


「梅ちゃん、まさか?」


「ああ。姫が御帰還だ」


ざわつく店内をよそに狂気の塊が鬼気迫っていた。







有害指定都市ツチューラ市 京楽町 国道23号 同時刻。



猛スピード&超爆音を奏で、疾走する一台の赤のマークⅡ。

あまりにも整備されていない道路を、着地寸前のドシャコタンがバウンドし、アスファルトと金属が豪快にぶつかる音が重なり、爆音に拍車を掛けている。


真っ赤に全塗装され、サイドには白のナックルライン。トヨタ純正リップスポイラー。車高調、ヤマト製サイドステップ、板ッパネにロンシャン9j10j。フェンダー叩き出し。トラストのタコ足からはワンオフのストレートで抜く!フロントガラスには、

『CRAZY BUTTER DOG69』の切り文字ステッカー!

通称『弾丸道路に一つ星の赤い彗星』!

車種は、


GX71マークⅡ。


梅豚のマークⅡの次世代機・・・・



このマシンを自在に操るのは・・・・










!?






ポヨンポヨンにアップにした茶髪!黒でスリットが入ったミニのギリギリドレス!推定Fカップの魔乳!顔はあの『田中れ○な』にクリソツ!


この『ダイナミック・ヤンキー・姉ちゃん』が!



本作品のヒロイン・・・・



そして・・・・




梅豚の愛妻!




マナである!




まさに、満を持してド派手に登場!



そして車内では、小径ハンドルを小刻みに揺らし、豪快に延長されたシフトノブを操り、車両の安定を図るマナ。

信号が赤にかわる。

通行人達が驚きの視線を投げ掛けてくる。

当然だろう。

珍しい車を珍しい女が運転している。

マナは左右確認すると、信号はまだ赤なのに、意図的にダブルアクセルを繰り出し加速する!


この先のキツメのS字コーナー。



マナは5速、4速、3速とシフトチェンジ!

猛烈に唸るストレートマフラーからは炎が吹いている!


これは意図的なアフターファイヤーではなく、只単にエンジンがヤバいだけである・・・・。


ギリギリドレスからのパンチラを拝まされたドライバーは、今日だけで14台が前方不注意で全損である!


アクセル全開のままクラッチを切り、シフトを5速にブチ込む!

もちろん『レブチン』してしまう!

今日のランジェリーは黒のようだ・・・・


大人である!


そして美人だ!



この世はデッカいアドベンチャーであり摩訶不思議である!


梅豚のようなダメ中年ほど、必ずと言っていい確率で、超絶美人を連れている!

無駄な地上波で無駄な分析番組で、特集でも組んでもらいたい!それほどマナは美人である!


しかし、前途のように、やはり梅豚の愛妻。マナはかなり『アレ』な女子である・・・・。


フロントガラスに貼り付けたスマホホルダーから巧みにスマホを操り、友人である『リサP』に電話をかける!


「もっしぃ?リサ?うん!今、成田から帰るとこ!ギャハハァ!海外で何してたかってぇ?『悪い仲間と悪いことをする為に、悪い国に行ってた』なんてどう?ニャハッ!冗談!また落ち着いたら連絡すんね!」


ちなみにアクセル全開である・・・・


リミッターカットをしているのであろう。メーターは180で止まったままだが、タコメーターは上昇し続けている!

かなりの狂いっぷりである!


マナは海外に行っていたらしい・・・。

『悪い仲間と悪いことをする為に、』と言っていた・・・・。


おそらくクスリの密輸や密売などの『貿易』の仕事だろう。そして銃火機の調達や人身売買などのドス黒い仕事だ。

この程度の仕事など、マナには牛乳配達並みの簡単な事であり、帰国してからのほうが大変なのだ。

自分が留守の間、我が『旦那様(梅豚)』はちゃんとしていたのだろうか?嫌、あの梅豚の事である!きっと連日飲んだくれて、キャバクラ三昧に違いない!まさか自分が留守の為に、自分によく似たキャバ嬢と!ホニャララ!

マナは頭がグリグリになってきた!

気分を鎮めないと、意図的に老婆を引き殺しそうだ!


ドリンクホルダーに突き刺さっている缶ビールを開け、クピクピ白い喉に流し込む!これは!?


『超飲酒運転』である!


マナは海外からでもマメに梅豚に電話もしたしLINEもした!

しかし、出やがらないのである!

返信は一回のみ!

マナの『ちゃんとご飯食べた?』の問いに『うん』の二文字のみ!連絡無精にもほどがある!『超ムカつく』が今日の『夜の夫婦の営み』にて清算させよう。まさに『ペロペロバター犬』にさせて、懺悔でアメーンである!(意味不明)。


そして見えてきた!


キッチン居酒屋『三郎』の看板!



少し開けた窓からは懐かしいツチューラの匂い。

マナは吸っていたセブンスターを、チューリップ型の灰皿でもみ消すと、シフトを落とす!猛烈な爆音に拍車がかかる!すると『三郎』の砂利の駐車場に『罵多悪怒愚(バタードッグ)』のメンバー達が整列している!


アッチャン、タケシ、ユキヤ、タックン!



懐かしさにマナの大きな瞳から、涙がこぼれ落ちる・・・・



そしてアクセル全開で駐車場に突っ込み、サイドブレーキを思いっきり上げ、ドリフトでダイナミック駐車するマナ!




ズササササササァァァァア!



マークⅡのぶっといタイヤが強烈な砂ぼこりをあげる!



一斉にむせる『罵多悪怒愚(バタードッグ)』一同!



砂ぼこりが収まると、真っ赤なマークⅡのドアをタケシが開ける!そして、


「お帰りなさい!マナさん!」


と、挨拶すると、『お帰りなさい!』と後に続く『罵多悪怒愚(バタードッグ)』一同!



スラリと長い脚で、ドシャコタンから降りてくるマナ。

やはり息を飲むほどマナは美しい・・・・。


「ただいま。タケシ。ご苦労様だね、ありがと」


ちょっと眠そうな目線と口調でタケシに呟く。

辺りにはマナの愛用の香水、『CHANEL』の『EGOIST』の甘い香りが包む。


「い、いえ!とんでもないっす・・・!」


いつでも冷静沈着なタケシすら、マナの妖艶な雰囲気に飲み込まれている。



すると僅かに残った砂ぼこりから一度見たら忘れないインパクトのあるシルエット!




!?




梅豚である!



クシャクシャにデレデレの顔で、


「姫ぇ・・・!」


震えた声でマナを呼ぶ梅豚!



たまらずマナは、梅豚に猛烈に突進し、抱きついた!



しっかりマナを受け止める梅豚!


梅豚の胸でしっかり深呼吸するマナ。梅豚の加齢臭は三割増ししたようだが、今夜お風呂で、大型犬を洗うように洗浄し、香水を振りかければいい匂いになる!

大切な人ほど、そばにいる時は、そのありがたみに気付かない。しかし離れてみるとそれに気付き、愛しくなる。


幼い頃からいつも一緒だった梅豚とマナ。


互いの深い絆。そして愛。



アッチャンやタックンは二人を見て、号泣している!






しかし・・・・






これが美男美女なら様になるが・・・・





マナは年は重ねているが、二回りは若く見えるので美女だが・・・・




梅豚である・・・・

初老の金髪リーゼントの『ド☆チンピラ』である・・・・


まるで・・・・


客観的に見ると・・・・



カボチャとダイアモンドが抱き合ってるようにしかみえず、誠に見苦しい・・・・。


なので、二人きりの時イチャコラしてほしい・・・・。








ゴトン!






!?





あまりのマナの乱暴運転の為、せっかくのワンオフマフラーがマークⅡから外れてしまった・・・・。(推定30万)。







・・・・。





とにかく!



これにて『罵多悪怒愚(バタードッグ)』フルメンバーとヒロインが結集!




メンバー紹介的な章はこれが最後!




次回、衝撃的に狂犬達が牙を剥く!




こうご期待!






後日談。




翌朝、梅豚くんは20キロ痩せてミイラのようになってましたとさ。めでたし、めでたし。



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