カシラ文字U外伝 閃光のパッソル~共同戦線~
199X年代初頭。
有害指定都市ツチューラ市内、有限会社ツチューラ工務店。資材置場。午後16時15分。
キビキビと働く熊のような少年。
頭はトウモロコシのような金髪リーゼントパーマに、ニッカポッカを腰履きし、ラチェットレンチでコキコキと下品なバイクを整備していた。
そう、この全開ヤンキーの少年は・・・・・・!
暴走、暴力、暴政、殺戮過激團『罵多悪怒愚』特攻隊長!若かりしユキヤである!
この時15歳!
中学生にして、『罵多悪怒愚』の大幹部に抜擢されていた!
その実力は言わずもかなである!
喧嘩の腕前、バイク車の改造スキル運転スキル共に、ネットがまだ普及していない90年代に、独学で身に付け、天才の領域へと達していた。
整備してるバイクは、ホンダの伝説の名機CBX400F。
オーナーは『罵多悪怒愚』総代会長であり『狂い屋』の異名を持つ梅豚である!
前オーナーは、ユキヤの実兄のユキオだ。
亡きユキオの魂と志しを梅豚が継承していた!
ユキヤは亡き兄の、いや、現在では自分の親代わりである梅豚の超絶下品なCBX400Fを整備しながら、
(なんて下手くそな運転しやがるんだ!兄貴も総長も!)
心で毒を吐きながら一見とてもキレイだが、傷だらけの『罵多悪怒愚』フラッグシップマシンをメンテナンスする。
説明するまでもないが、梅豚は運転がヘタである。
そして喧嘩もあまり強くない。
しかし、卑怯な喧嘩やゲリラ戦や殺人。そしてヤクザ顔負けのアコギな商売では驚く程の才覚を見せ、あっという間に『罵多悪怒愚』を前人未到の殺戮過激團へと変貌させた。
この資材置場も、若干17歳で梅豚が築き上げたツチューラ工務店の広大な敷地だ。
これが後の梅豚へと繋がるのである。
其処に・・・・・・・。
ビビビビビビーーン!
ドノーマルのダサい原付サウンド。
しかし本人に『原付』は禁句である。
次の日から悪質なイタズラ電話にてノイローゼにさせられてしまう。
原付から降りてくる茶坊主は!
『罵多悪怒愚』親衛隊長。
タックンである!
またの名を『Mr.ドラッカー』!
今日もキメているのであろう、目付きはギンギンである!
ユキヤはタックンを見ようともせずに呟く。
「珍しいッスね。タックンがここに来るなんて」
そうなのである。
タックンは普段はあまり、この資材置場には顔を出さない。
答えは簡単である。
梅豚やアッチャンが必要以上にタックンをイジメるからだ。
・・・・・・・・・。
「ユ、ユキヤくん!」
突然大声を出す茶坊主!
「はい?」
ユキヤが振り向くと、前方5cmの距離にタックンの顔が迫っていた!
・・・・・・・・・!?
背筋が薄ら寒くなるユキヤ。
(この茶坊主はホモか?)
慌てて仰け反るユキヤ!
凄まじい反射神経である!
しかしズイズイと迫ってくるタックン!
そして
「ユキヤくん!僕のパッソルを宇宙一速いバイクにしてくれませんか!」
!?
「無理!」
呆気ないユキヤの回答である。
当たり前だ。
ここでタックンの愛機、ヤマハパッソルの基本スペックを紹介する。
1976年に本田技研工業がロードパルを発売。その対抗車種が、この『パッソル』である。
部品のユニット化、プラスティック素材の多用による製造工程の簡略化は、車重とコストの軽減にも大きく貢献するメカニズムやスタイルである。
動力性能は低かったが問題とはされず、女性がスカートを履いても乗れるというコンセプトの下、より親しみやすさに重点をおいた商品設計がなされており、平滑なステップ面を設け足を揃えて乗れるスルーステップを実現した。テレビコマーシャルには庶民的なイメージを持つ八千草薫を起用、「やさしいから好きです」というキャッチフレーズが[1]、主婦などにも広がりヒット商品となった。1978年には上級車種としてパッソーラが、1981年にはパセッタが発売された。
主要諸元
エンジン:強制空冷単気筒2ストロークエンジン
総排気量:49cc
最高出力:2.3馬力/5,500rpm
車両重量:45kg
変速機:無変速オイルバスチェーン式
クラッチ:自動遠心クラッチ
ブレーキ:前後機械式ドラムブレーキ
発売当時価格:69,800円
※参考資料@Wikipedia
と、あまり、とゆうか、設計時点でスピードを出すことよりも、便利さを追及した原付であり、これで宇宙一のスピードなど、いくらユキヤでも無理がある。
先日のカワサキオヤジとの一件もユキヤは聞いていた。
「速く走りてぇんなら、別のバイク探したらどおッスか?こんなダセェ骨董品捨てて」
すかさずタックンは奇妙なゼスチャーを見せる!
「ユキヤくん!メッ!」
と、口元でX印を出す狂ったタックン!
また、ユキヤは背筋が薄ら寒くなる!
そうであった!パッソルをディスる事は厳禁である!
ユキヤは心を持ち直す!
そして考慮する。
このタックンは単車の運転が出来ない。
いや、ギヤ付きのバイクが何故か乗れないのだ。
だから梅豚に命じられ、ユキヤはこのパッソルをゴミ集積所から拾ってきて5分で直した。そしてナンバーを着けた。
その時のタックンは物凄く喜び、ユキヤに感謝の意を述べたのだ。
ユキヤはわかっていた。
タックンが誰よりもこのパッソルを愛し、大切にしている事を!
毎日磨き、自分で出来るメンテは自分でやり、そしてオイルはカストロを入れ、燃料は無意味にハイオクをくれていた。
いつも幸せそうなタックンとパッソル。
「やっぱり無理なんですね・・・・。コイツじゃ」
ため息混じりに俯くタックン。
・・・・・・・・・・。
ユキヤは無性に腹がたってきた!
卑屈なタックンに!
そして何よりも、ユキヤ自身が作り上げた(約5分)このパッソルを侮辱したダサイダー達に!
いくら冴えなくても、この茶坊主は天下の『罵多悪怒愚』の親衛隊長である!あの梅豚の大参謀なのである!
走りの屈辱は走りで返す!
相手のダサイダー達は『罵多悪怒愚』の名前もだしたという!
『罵多悪怒愚』が暴力だけではない事を見せてやる!ユキヤの闘志に炎が宿る!
「3日待って下さい!」
「えっ?」
希望が失われたかと思ったタックンの心に光が差した!
「3日でコイツを宇宙一速いパッソルに仕上げてみせますよ!カワサキオヤジだかタカサキオヤジだか知らねぇが、ブッチぎってやりましょう!」
感極まったタックンは、指パッチンし、カカトでリズムを刻みながら、
「なーーんでですかー♪なーーんでですかー♪なーーんでですかなーーんでですかなーーんでですかーあ♪」
と、シャネルズばりに歌いだした!
もはや末期的症状ではあるが、ユキヤは気にせずチューニングプランを頭の中で作り出す!
このパッソルに『悪魔の鉄槌』、すなわちハーレーのピストンを組み込む!
そしてユダ。ヒトラー。
二体の悪魔を憑依させる!
これで宇宙一速いパッソルが完成する!
野心を燃やすユキヤであった!




