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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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薬物依存苦悩編 (タイムスリップ ミスター ドラッカー)

有害指定都市 ツチューラ市 薬剤町 午後25時03分。



漆黒の闇。風が吹けば倒壊しそうなボロアパート。


外からの灯りを頼りに、部屋に隠り怪しげな動きをする一人の『トッチャン坊や』のような男・・・・


その男は、自らの腕に注射器を慎重に刺し、血を抜き、それをタバコの箱に巻いてあるビニールの上に垂らし粉状のモノを溶かして行く。そしてそれを注射器で吸い上げ、また自らの腕に刺し、ゆっくりと体内に流し込む。


すると、全身が逆立つような感覚。急激にハイになり、気分は『スーパーサイヤ人』である。


ようするに『覚醒剤』をやっているのだ!


この男は・・・・




死刑部隊『罵多悪怒愚(バタードッグ)』密偵兼親衛隊長『タックン』である!


五番目の『罵多悪怒愚(バタードッグ)』!



基本、梅豚は自由主義者で、アレコレ規定は作らず、みんな自由にさせてはいる。


が、


タックンのする『覚醒剤』は明らかに『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の基本概念に反しており、許される行為ではない。


梅豚、アッチャン、タケシ、ユキヤも若い頃はシンナーを吸引し、大麻もやっていたが今は違う。


一応、梅豚達も社会人であり、ツチューラ工務店を経営している。このような『シャブ中』では生活が成り立たないのである。



覚醒剤をやると?




まずは、やる気がムクムク沸いてきて、居ても立ってもいられなくなり、常軌を逸した行動に出たりする。

そして、グリグリに勘繰り深くなり、盗聴や盗撮の類いを異常に気にし始める。例えば、(あの時計の中に超小型のマイクロカメラが仕掛けられているのでは?)等々・・・・


『オマエは政府の要人でFBIやCIAに狙われるほどデッカイ人間か?』と思わず突っ込みたくなるオチだ。


そして『変態セックス』。『変態オナニー』。24時間腰を降り続ける。(男女兼用)


クスリが効いている間は、食欲、睡眠欲が麻痺して二日三日は飲まず食わずは平気で、睡眠も取らなくなる。


やがて『キレメ』になると、以上な食欲、睡眠欲が発生し、混乱をきたす。(個人差はかなりあるらしいが・・・・)



なので、まさに『覚醒剤やめますか?人間やめますか?』の世界である!


この事が原因で、タックンは梅豚から壮大なるヤキ、そして拷問を数知れず受けており、それでも中年になった今も覚醒剤がやめられない。



・・・・




タックンは思う。




みんなもやればいいのに・・・・



こんなに良いモノはない!



罵多悪怒愚(バタードッグ)』でシャブシャブパーティー!でベリーハッピー!





・・・・





このようにシャブ中は勝手に、そして強引に自分の論理を他人に押し付け、廃人街道に導こうとする。

このような人間には近づかない。そして関わらないのが無難である。


タックンは梅豚、アッチャン、タケシと同級生で、少年時代からよくツルんでいる。

梅豚達は小学生から素行が悪いが、タックンはかなりのクソ真面目で、性格も温厚かつ従順。梅豚には絶対服従。

見た目も昔からマジメっ子にしか見えない事から、タケシに『密偵兼親衛隊長』を任命された。普通の一般市民の風貌である為、隠密活動はお手の物。敵対組織の諜報や聴き込みによる内部情報収集に錯乱。謀反を企てる者を『罵多悪怒愚(バタードッグ)』側に寝返らせて殺害する事などが主な任務である。


人懐っこい容姿や性格は、相手の懐に潜り込みやすく、油断もさせやすい。

この容姿がタックンの命を幾度も救っている。

本人の人徳も多々あるのだろうが。



タックンは目を瞑り思考を巡らす。




これ位の覚醒剤常用者となると、キメていて正常。キレメで異常をきたす事になる。誠に恐ろしい薬物である。




少年時代の梅豚との出会いを思い出すタックン。





あれは・・・・






一度タックン脳内でタイムスリップ!








198X年。超排他的農村漁村区域 出解村。大和集落 『煩悩寺』境内。午後16時12分。



此処は『ザ・昭和』。


昭和の雰囲気ではなく昭和なのである。




神主も居ない廃墟の神社にチビッ子達が歓喜を上げタムロしている!其処にいるのは・・・・







!?








『狂犬連合』そして『罵多悪怒愚(バタードッグ)』になる前身の小学校六年生の梅豚率いるチャリンコ暴走族『バター犬』が大量の万引きした駄菓子などの商品をチビッ子達に半値以下で売り付けていた!


手際よく商品に金額を付け捌いていくタケシ。


アッチャンはあまりのバカで計算も出来ない為、もっぱらタケシに『営業』的な任務を与えられていた。



梅豚は・・・・







!?






元賽銭箱の上にあぐらをかいて、タバコを吸っている一人の少年!伸びたスポーツ刈りを『ディップ』と呼ばれる整髪料を使ってプチリーゼントにしている!

MIKI HOUSEのトレーナーに玉虫色のボンタン!

とても小学生とは思えないこの少年が・・・・



小六 梅豚である!




ゲームボーイで『テトリス』をしながらタバコを元賽銭箱でもみ消す!そして『メローイエロー』なる炭酸飲料をクピクピ飲んでいる!

子供ながらに既に『悪の親玉』としての風格を醸し出しており、高校生でも本気でかからねば危ない!


ユキヤは年代、そして学区が違う為まだ面識すらない頃である。



そして寺の入り口で『バター犬』を見つめる『トッチャン坊や』的な少年・・・・


タックンである!



一際目を引く梅豚を憧憬の念、あるいは異性に対するような感情を抱きながらどう取り入ろうか考え、知恵を働かせるタックン。『バター犬』が売り捌く商品を購入してもよかったが、この時タックンには持ち合わせがなかった。

しかし、何としてでもあの梅豚と友達になりたい!


タックンは家や学校でも『梅豚には近づくな!』と厳しく言われていたが、あの梅豚の風貌。

先日テレビでみた『ビーバップ・ハイスクール』のキャラにそっくりで、自分の理想像的な梅豚に完全に魅了された。(←BL)


そんな事を考えモジモジしていると・・・・




梅豚がタックンに向かって歩いてくる!


そして、


「何だ?テメェ。俺らの商品買わねぇのか?それとも金ねぇんけ?あ?」


突然、梅豚に話しかけられ、タックンは狼狽しながら、


「アッ、アッ、あの~、出来れば『ビックリマンシール』を半値で欲しい(15円)のですがお金なくて・・・・」


ちょっと寂しげな、『輪に加われない憐れな子』をとっさに演じる劇団員タックン!すると、


「ふ~ん。オメェんち貧乏け?しゃーねーなぁタケシには内緒にしろよ」


と、ビックリマンをくれた!



あまりの嬉しさにタックンは、


「なーーんでですかーー!」


と、歓喜の声を上げた!すると、



バキィィィイ!


鈍い音と共に梅豚のパンチがタックンに食い込む!



「うるせぇんだよ。クソ野郎。」


そう吐き捨てタックンにワンパンとビックリマンをくれてやると去っていく梅豚。



鼻血を流しながらも、こんなに嬉しかったのは、初恋の娘のパンチラを見て以来である!


しかもビックリマンの中身のシールは超プレミアの『ヘッド・ロココ』であった!

キチンとウェハースもムシャムシャ食べる行儀の良いタックン。



そしてひととおり万引き商品を売り捌いた『バター犬』一同。すると其処に身長の高い少年が意味深な笑みを浮かべ近づいていった。コイツは・・・・




出解村のバカ駐在員(オマワリ)のバカ息子『園部』だ!


コイツは警察の息子である事をいい事に、低学年や同級生に対してのカツアゲやイジメ。物品押収などやりたい放題!相手に居直られると「お父さんにいいつけてやる!」が口癖の親子共々ゴミ野郎である!


タックンも以前(←まだいたの?)この園部に『キン肉マン消しゴム』を押収された苦い過去があった!


そいつが梅豚、アッチャン、タケシにせせら笑いを浮かべ、




「分かってるよなぁ?俺の親父駐在だからよ~♪後で売り上げ半分!持ってこいよ」


心底悪党なクサレ園部!



すると、






バッキャャァァァァァァアン!






!?






突然、背中から取り出した『角材』で容姿なく園部を殴り付ける梅豚!

一撃で血の狼煙が上がる!



「駐在がどうした!?コラァ!ナメてんのかテメェ!アア!?コラァ!オッ?コラァ!アッ?コラァ!親父でもヤクザでも呼んで来いや!コラァ!アア!?」


叫びながらフルスイングで園部を角材でメッタウチの血祭りにする梅豚!

血飛沫が舞い、只の肉の塊になっていく園部!


そして、タケシが、


「梅ちゃん!もうやめとけ!死んじまうぞ!?」


慌てて止めに入る!


梅豚も返り血を浴び、悪鬼の形相である!


上半身をタケシにロックされた梅豚は、自由が効く脚でさらに追い討ちの極み、『サッカーボールキック』を炸裂させる!

アッチャンが焦りながら梅豚の脚を押さえ込む!


この時タックンは初めて暴力の恐怖を目の当たりにした!

「人殺しぃぃい!」と叫びかけた!

しかし梅豚が間違ってるとも思えなかった。


みんなの為に体を張って万引きし、みんなの為に財布に優しい商売も展開してくれた。

一文無しのタックンにもビックリマンシールをくれた。

その上前をはねようとした園部の方がよっぽど悪党だ!


小学校六年生の梅豚が作り上げた地獄絵図。



この事件は、おおらかな時代の昭和でも問題視され、梅豚は補導された。駐在員である園部の親父は梅豚に対して憎しみを募らせ、これから幾年に渡り、梅豚達『罵多悪怒愚(バタードッグ)』をあの手この手で『桜の代門』を武器に追い詰めるが、この事件の約二十年後、園部の親父が警察官を定年退職した直後、惨殺体になって発見された。勿論『罵多悪怒愚(バタードッグ)』による計画的反抗。梅豚に血祭りにされた園部は現在行方不明。

只、悪どいアホな国家権力を傘に着たクソ親子が消えただけで、世間は何も変わらず回り続ける。


この時からタックンは梅豚に忠誠を誓ったのだ!



梅豚の敵なら迷わず息を吐くように人を殺す!


殺人に命を燃やすマシーンだ!


こんな事は通常の神経では出来ない!


だから脆弱なタックンはシャブに頼るしかなかったのだ・・・・













そして現代。






タックンはあれから殺人鬼として成長したが、見事なシャブ中になってしまった・・・・


しかし、転換期は必ずある!





『ガキの頃からこのザマで


寺の賽銭飴で釣ったの始まりに


霞ヶ浦の風に流され


傷の一つや二つと痛みも増える


不良はしても抱いたあの娘にゃ香りがしてた


仏も眠りゃあ朝まで起きぬ


悪さしてきた夜な夜なに


何処まで続くかゴロツキ渡世


天まで登れと龍に乗せ


今宵も流れて香りたつ


オイラはそれでも逃げるのみ!』






今後一切覚醒剤はやらない!




あの時、梅豚がくれたビックリマンシールの『ヘッド・ロココ』は今でも大切にしてるし、ウェハースの味も生涯忘れる事はないであろう。



仁義を欠いちゃあ男が廃る!





固く心に誓うタックンであった!








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