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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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カシラ文字U外伝 閃光のパッソル~伝説始動~

90年代初頭。有害指定都市ツチューラ。


日曜の朝、ツチューラ市内某所。


バイク愛好家たちが集まる小さなバイク屋のツーリングオフが開かれようとしていた。


集合時間10分前、既に来ているメンバーは7人。

その輪の中へ、タックンは愛車のパッソルで乗り付けた。


「おはよう!タックンです!今日はよろしく!」

元気よく自己紹介する。


「…あ、おはようございます」

「タックンさんって高校生で『罵多悪怒愚バタードッグ)』って暴走族に入って親衛隊長をやってるんですよね?凄いですね…」


なぜか皆の視線が泳いでいる。


「遅くなってスイマセ~ン!」


ZZR1400に乗ったオッサンが大きな声を出しながらやってきた。


「幹事のカワサキオヤジです。今日は皆さんよろしくお願いします」


この人が今回のオフの主催者であり、某バイク屋の店長でもあるカワサキオヤジさんだ。


「あ、どうも!タックンっす。よろしく」


タックンが挨拶をすると、カワサキオヤジは眉間にシワをよせて、タックンとパッソルをジロジロと見てきた。


「え~っと…タックンだっけ?君さぁ、今日どこに行くか知ってる?」

「え…?富士山を見ながらそば食うオフっすよね?」

「うん。で、君のバイク…それ原付だよね?」


何が言いたいのかわからない。愛車を原付呼ばわりされてイラっときたタックンは言った。

「何が言いたいんスか?」

「高速道路に乗るんだけど…原付じゃ乗れないよね?」

「…大丈夫っスよ!ブン回せば皆さんに迷惑かけないくらいのスピードは出ますし」


!?



爆笑の渦が起こった。そしてカワサキオヤジは苦笑いしながら言った!

「原付は高速道路を走っちゃダメなんだよ。それにそのスピードメーター見てごらん」

視線を落とす。そこには40km/hが限界のメーターがあった!

「高速道路は80~100km/hくらいで流れてるからね。君の原付じゃついて来れないよ(苦笑」


タックンは泣きながら家に帰ると、そのまま枕を濡らして眠ってしまった。


目を覚ますとタックンは午後10時、電話の受話器を上げてあのバイク屋の番号に電話をかける。


タックンは偽名を使って『カワサキオヤジ(クセ)ぇんだよ!死ね!』と現代では考えられない暴言を吐いた!


すぐにカワサキオヤジからの返答があった!

『タックンだね。当店のルール通り、君を出禁にします!』






『うん。で、君のバイク…それ原付だよね?』

『高速道路に乗るんだけど…原付じゃ乗れないよね?』

『原付は高速道路を走っちゃダメなんだよ。それにそのスピードメーター見てごらん』

『高速道路は80~100km/hくらいで流れてるからね。君の原付じゃついて来れないよ(苦笑』

『タックンだね。当店のルール通り、君を出禁にします』


・・・・・・・!!







「うぅ…夢か…」

タックンはあれからほぼ毎晩のように、あの日の悪夢にうなされている。


時計を見ると、午前0時をちょっと過ぎたころだった。

冷たい水で顔を洗うと、ベッドに腰掛けてため息をつく。

「僕のパッソル…50ccだけど…本当に遅いのか?」


(夢に出てくるZZR1400に乗ったあのオヤジは、いつも僕のパッソルをバカにしやがる!)


だがどうしてもタックンにはパッソルが遅いバイクだとは思えなかった。


梅豚のCBX400Fと並んでも負けない堂々としたスタイル!

ヤマハが生んだ強制空冷単気筒2ストロークエンジン!

ライダーの意志と共鳴する自動遠心ミッション!

女性がスカートで乗ってもパンチラしない上品なステップスルー!

こんな素晴らしいバイクが、どうして世の中に認められないのか?


本当に高速道路に乗れないくらい遅いのか?

そりゃZZR1400と比べれば、少しは遅いのかもしれないが…


「そうだ!」

頭の中にひとつの提案が浮かんだ 『パッソルが速いってことを証明してやる!』

そう決めたタックンは、着替えて『安全第一!お金も第一!ツチューラ工務店』とゲスい表記がされたドカヘルとキーを持つと 家族が起きないように静かに家を出た!


相棒に跨ると、あの場所を目指して走り出す!

パッソルの実力を試す場所、タックンとパッソルの魂が一つの壁に挑戦する場所、高速道路へと…


ウインカーを点滅させ、インターチェンジへと進入していく!


もちろん原付は高速道路に乗ってはいけないという法律を知らないわけじゃない。


(だけどこれは、僕とパッソルの挑戦なんだ)

もう戻ることなんかできない。


発券機から券を抜き取ると、スロットルを全開にして走り出す!

「行くぜ!パッソルの実力を証明してやる!」


初めて走る高速道路。


だが父の車で何度も来ているので、どういう場所かは理解している。

メーターの針はまもなく40km/hを指そうとしている!

しかしトラックや車に次々と追い越されていく!

やっぱりパッソルは遅いのか…?いや、違う!まだ実力は発揮されていない!

「まだだ!パッソルはこんなもんじゃない!」


前傾姿勢になると、前方を走るおばあちゃんの軽自動車(ケーヨン)を睨みつける!

行ける!追いつける!追い越せる!

ここからは一瞬が勝負の世界だ!

右のジャンケンファックミラーを見て、後方からの車がないことを確認する!

右のウインカーを出す、そして目視 素早く車線を変更すると、フルスロットルでエンジンのパワーを開放する!


「行っけぇぇぇぇぇ!!!!!!」

並んだ!そして抜いた!

パッソルが軽自動車(ケーヨン)に勝利した瞬間だった!


軽自動車(ケーヨン)の排気量は660ccある。


CBR600RRよりも上だということなのだ!

その軽自動車(ケーヨン)に勝ったということはつまり パッソルは、CBR600RRよりも速いということになる!


激しいバトルを終えたタックンは この先2kmにあるサービスエリアの看板を見つける。

「少し休もうかパッソル…」


夜のサービスエリアは静寂に包まれていて 戦士が休息を取るには最適な場所だった。


「僕達勝ったんだぜ。お前も疲れただろ?ちょっと休もう」

パッソルを二輪の駐車場に置くと 建物の中へと入り、食堂でうどんを注文する。


さっきのバトルで、かなりエネルギーを消費したから栄養補給だ。

あとでパッソルにも給油してやろう。

(今日は頑張ってくれたから、特別にハイオクを入れてやろうかな)

そんなことを考えていると、食堂のおばちゃんから声がかかる。

「3番のうどんでお待ちのお客さま~」


熱々のうどんを頬張っていると、誰かがタックンの肩を叩いた。




!?





振り返ると警察官が二人、タックンを見下して立っていた!

「あっちに停めてある原付は君のか?」

「…原付というか、パッソルッスけど…」

「ちょっと来い!」

「な!な!な!なーーんでですかーーー!」


.........。


食べかけのうどんを残し、タックンはパトカーのほうへと連行された!


午前6時、連絡を受けたタックンの父が警察署まで迎えに来た。

そして殴られた!



伝説は続くのである!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦士が休息を取るには最適な場所 [気になる点] タックンは泣きながら家に帰る [一言] せめてうどんは最後まで食べてもらいたかったw
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