令和餓狼伝 其の玖 狂い咲き六号國道
有害指定都市ツチューラ市 真横町ボーリング場跡地 午後23時46分
かなりくたびれた様子のボーリング場。
かつての賑わいが遠い昔のように佇んでいる。
しかし今、かつての賑わいを取り戻しつつある!
昭和から令和へとタイムリープしてきたかのようなオヤジ達!
『罵多悪怒愚』一同の面々である!
暴走族仕様のバイクがズラリと規則正しく整列してる!
梅豚の化けバブ。アッチャンのGS。タケシのCBR400F。ユキヤのZ400FX。カズキのCBX400F。その他のメンバーのザリ、ゴキ、インパルス、RZ250、XJ400Dの計10台。
そして武器運搬用のGX71クレスタ。
壮観としか言い様がない。
これくらいは旧車會で見れるかもしれないが、決定的に違いがある。
全員特攻服である!
そして手に手に日本刀や釘バット、鉄パイプ等で武装している!
もはやキチガイ沙汰で、ギャラリー達のボルテージも上がって行く!
やはり一際目を引くのがマナである。
上はサラシに下は白のホットパンツ。
そして白ロングの特攻服を纏っていた!
背中には『罵多悪怒愚』のデカ文字!
さらに『女帝』と刺繍が施され、右腕には『街道踊り娘』左腕には『女部隊頭』の腕章が付けられている!
そして手には日本刀を持っていた!
梅豚も今日の為に特攻服を新調した。
当時着ていた特攻服は家と共に焼け落ちてしまったからだ。
やはり梅豚も白ロングで、ねじりハチマキにタスキを胸から背中にくくりつけている。特攻ニッカに足は地下足袋である!
カグラも特攻服を身に纏っているが、まるでマナのコピーロボットのようである。
・・・・・・・・・・。
そして他のメンバーは当時の特攻服である!
アッチャンは黒のロングを着ているが、当時よりかなり太ってしまった。なのでズボンのウエストが入らず不様な為、黒ロングの前ボタンをしっかり留めて何とかゴマカシていた。
梅豚、アッチャン、タケシ、ユキヤがバイクが整列している前に集まり、地べたに座った。
感慨深く梅豚が呟く。
「とうとうきたな。この瞬間が。まさかまた特攻服着て喧嘩するなんてよ」
梅豚にタケシが続く。
「いいんじゃね?大層な祭りになったね~ギャラリーもいっぱい。ホント昔を思い出すよ。ね?アッチャン」
「オウ!やっぱいいな!この感じ!なんかよぅ、妙に血が騒ぐんだ・・・・殺しちまいてぇってよぅ」
アッチャンがゾーンに入っている!
梅豚はアッチャンを無視し、
「アタマの俺が一番安いバイクってどーよ?もっと他になかったんけ?ユキヤ」
不平不満を口にする梅豚。
「勘弁してくださいよぉ、これでも俺頑張ったッスよぉ」
ユキヤが泣きそうな声を出す。
「まあまあ梅ちゃんいいじゃない。今日のメインは殺し合いだから。今日の戦略を言うね」
タケシの口元にみんな集中する・・・・・。
「皆殺しだよ」
梅豚の背筋に電流のような衝撃が走る!
沸々と戦闘の血液が上昇してくる!
怖くはない。むしろ嬉しくすらある。
しかし、出発する前に一言、みんなに言っておかねばならない事がある!梅豚が考えていると、
「ほら!梅ちゃん!オマワリ来るよ!その前に懐かしの演説ブチカマシちゃってよ!」
タケシが急かす!
そしてユキヤがGX71の前にビールケースを置く。
梅豚が木刀を担ぎ、そのビールケースの上に乗った!
『罵多悪怒愚』一同総勢18名がその前に集まり座る!
そして後方からハイビームで照らす!
後方からのハイビームの熱源は、梅豚をシルエットにして照らし、不思議なビジョンを形成した!
不様な生き様でもいい!
生きるのが下手だって時代遅れだってかまわない!
人のレールから外れてるって事は・・・・・
決して恥ずかしい事なんかじゃない!
梅豚があらん限りの大声で叫ぶ!
「テメェら気合い入ってっかあっ!」
「押忍!」
全員が梅豚に合いの手のように続く!
「これからぁ!六国流してぇ!狂犬連合皆殺しにすっからぁ!テメェら気合い入れていけよおっ!」
「押忍!」
「それからぁ!この半年間みんなには肩身が狭い思いさせちまったけどよぉ!今日で全部終わりにすっからよぉ!」
「押忍!」
何故かみんなの目元が光ってる気がする・・・・・。
満月の間からタックンが微笑んでる気がする・・・・・。
梅豚は大きく息を吸い込む!
そして
「エンジンかけろぉーっ!」
最後は怒号に変わった!
『罵多悪怒愚』のメンバー達が、それぞれの単車に跨がりエンジンを始動する!
直管のバイクと車合わせて11台が始動しコールをすると、まるで地鳴りのようである!
梅豚の後ろにマナが飛び乗る!
ユキヤの後ろはカグラだ!
辺りを排ガスとガソリンの匂いが充満してく!
ユキヤとカズキが真っ先にボーリング場を飛び出し、右車線、左車線の一般車を止める!
その間を梅豚を先頭に『罵多悪怒愚』が悠々と抜けて本線に出ていく!鼓膜が破れそうな程の爆音だ!
初めて生で見る本物の暴走族にギャラリー達のスマホを持ってる手が止まっている!
そして慌てて自分達の車で『罵多悪怒愚』を追いかけるのであった。
※
『罵多悪怒愚』は旧6号線を時速3~40キロで蛇行運転や空ぶかしを繰り返し、傍若無人に暴走した。
そして6号バイパスに出て、数キロ下り方面に走ると・・・・・
!?
おびただしい数の無数のヘッドライトが揺れている!
現れた!『狂犬連合』である!
梅豚は瞬時に判断する!
「来やがった!マナ!頼むぞ!」
「うん!」
梅豚は化けバブのギアを落とし、フル加速で『狂犬連合』に突っ込んでく!
先頭のバイクが徐々に間合いに入ってくる!
マナは日本刀を鞘からぬき、タンデムステップに仁王立ちになる!
そしてすれ違いざまに対向車の男を真っ二つに切り裂いた!
転倒したバイクは火花を散らして後方に流れてく!
狼煙は上がった!
「テメェら皆殺しだぁ!」
互いに叫びながら、抗争は渦中に入ってく!
アッチャンは鉈を振り回し、相手の首をハスってく!
タケシは釘バットを相手の頭に叩きつける!目玉が飛び出し、あっという間に惨劇を作り上げる!
血の匂いが充満し、死体の山が出来上がる!
ユキヤも日本刀で応戦!そしてカグラに叫ぶ!
「マナさんの!マナさんの護衛につけ!」
カグラはサバイバルナイフで男の腹を切り裂くと、マナの元へと走ってく!
そして先頭の梅豚とマナは、かなりの苦戦を強いられていた!当たり前だ!梅豚はマナを守りながら戦っているのだ!マナは気は強いが、カグラのように戦闘に特化していない!
じゃあ何故マナを危険を犯してまで連れてきたか!
一つはタックンの仇を取らせてやりたかった事。
もう一つは、長年の親友でもあり、現在はUチビの彼女であるリサPとのケリを本人がつけたがっていた事だ!
アタマの女同士、タイマン勝負である!
そしてマナを庇いながらの戦闘中の梅豚に隙が出来た!
敵はその一瞬の隙をつき、マナに大きくバールを振りかぶった!危ない!
グサッ!
男の額にサバイバルナイフが突き刺さった!
カグラが放ったナイフである!
まさに間一髪だ!
「マナさん!アタイの後ろから離れないで!梅ジイ!早くUチビ誘きだせ!このままじゃこっちがヤバい!」
そうであろう。
『狂犬連合』は予想以上の数である!
『罵多悪怒愚』の倍以上だ!
梅豚は咄嗟に、化けバブに取り付けられた拡声器のマイクを持ち叫ぶ!
《コラ!Uチビ!いつまでも逃げてねぇで出てこいや!ビビってんのか?マザコン野郎!》
すると、ゆっくり単車の群れを掻き分け前進してくる下品な車・・・・・!
その不気味なシルエットは・・・・・
セリカXX!
Uチビの愛機である!
そしてゆっくりと運転席と助手席のドアが開く!
!?
痩せ細り、黒茶色に染まった特攻服を纏った男が降りてきた!
この特攻服は梅豚が『狂犬連合』の八代目総長から受け継いだ物で、『罵多悪怒愚』の暴走族時代も、この特攻服で修羅場をくぐった!
てっきり、爆破された家と一緒に焼け落ちたかと思っていたが、Uチビはチャッカリ盗んでいたのである!
ちなみにこの特攻服の黒茶色は、人間の血液である!
「テメェ、Uチビィ・・・・」
さすがの梅豚も驚いた!
特攻服の事ではない!
Uチビの変貌ぶりにだ!
かつては若い頃の梅豚に瓜二つであったが、今はまったくの別人である!
これは尋常ではない!
覚醒剤をやっているのだ!
しかもかなりの中毒になっている!
そしてUチビは・・・・・
驚く梅豚を嘲笑っていた・・・・・。
助手席から降りてきた女は、ゴスロリファッションのリサPだが、こちらもかなりのポン中のようである!
マナも言葉を失くしてる。
みんな殺し合いを一度中断し、自身のアタマ達の事の流れを見つめていた・・・・・。




