令和餓狼伝 其の漆 鬼謀
超排他的農村漁村区域 出解村 『暴力寺 竜宝寺』午後14時12分。
情報は機械から機械へ。よりデジタルに時代は変貌してきた。
便利になった分、利点もあれば欠点もある。
あれから数ヶ月。
梅豚率いる『罵多悪怒愚』は、身を潜め、虎視眈々と、Uチビ率いる『狂犬連合』との最後の決戦にそなえていた。
情報は人から人へ。より『罵多悪怒愚』は時代の流れに添い、地下組織となっていた。
前回の『狂犬連合』強襲の時から梅豚は通信の手段を絶った。
PCやスマホは便利だが、ある意味こちらの動きは相手に筒抜けで、危険である。
なので『罵多悪怒愚』主要メンバーはツチューラの不明区域にある『エリア51』に在住させ、その他のメンバーには重要事項は手紙で知らせるとゆうアナログ方式をとった。
これならば、ハッキングやGPSなどの脅威はない。
苦肉の策略である。
梅豚は悔しかった。
何が?
隙を見せた自分自身に。
そして仲間を危険に晒した事。
そして幼なじみであるアッチャンがくれた大切な家を木っ端微塵に吹き飛ばされた事だ。
殺意。
この思いを痛切に抱いたのは、これが初めてであろう。
チンケな半グレに、ここまで愚弄された。
自分も老いたのか?
それもあるかもしれない。
何だかんだで梅豚も四十半ばである。
しかし・・・・´
「殺す!」
相手が甥のUチビでも!
古くからの仲間であり『罵多悪怒愚』親衛隊長のタックンも惨殺された。
もうUチビを殺し『狂犬連合』を潰す大義名分は十分だ。
そして梅豚は此処に居る。
八十畳はあるであろう、ご本尊が鎮座する内陣。
室内はほぼ金無垢で、ガレージにはフェラーリにカウンタック。
駐車場には普段乗りであろう新型のLS。
この『墓じまい』がブームの現代にしてはかなり儲かっているようだ。
それもそのはず、この寺の住職の裏の顔は『武器商人』である。
それだけではなく、人身売買や臓器売買にも深く精通してるようである。
目の前でダンプカーに人が撥ね飛ばされ、揉み手をしながら「毎度っ!」と言ったのもここのクソ坊主である。
八十畳の内陣に、十二支が彫り込まれたデカイテーブルを向かい合わせで座る二人の男。
!?
鮮やかな金髪!鋭利でクリア塗料でも塗ったかのようなテカテカなリーゼント!赤と黒のボーリングシャツからはカラフルな刺青!キズだらけの顔面!
『罵多悪怒愚』総代会長 梅豚である!
そしてその向かいには、スキンヘッドのサイドにトライバルタトゥー!金無垢の三連ブレスに金無垢ROLEX!そして金の袈裟!
『暴力寺 竜宝寺』住職 金蛇である!齢七十超!
金蛇は、じっと梅豚から渡されたメモに目を通している。
神妙な顔だ。
そしてメモから目を離す。
いつの間にか梅豚の背後に座っている若い娘に視線を移す。
今までは其処に居なかった。
気配すらなかった。
足音すらしてない。
この稼業に長く携わっている金蛇にも、この少女の気配がわからなかった。
年の頃は十代後半。
金髪にミニスカとハデハデだ。
身体はムチのように引き締まっている。
おそらくこの少女は・・・・・・
「おい」
梅豚が金蛇に声をかける。
「何、ボサッと見とれてんだ?テメェ」
相変わらずの梅豚の口調だ。
「いや、その娘は?」
金蛇が普通に返す。
「俺とマナの娘だ。文句あんのか?コラ」
梅豚とマナの間には子供は居ないはずだ。しかし少女は、昔のマナによく似てる。
そんな事を考えながら金蛇が少女を見つめていると、とたんに梅豚が唸りだしてくる。
「スケベヅラして人の娘眺めまわしてんじゃねぇぞ!ナマクラ坊主!エロ女見たけりゃサクランボ町行けや!オウ」
不穏な空気が内陣を包む。
そこで少女が空気を変えた。
「まあいいじゃねぇか梅ジイ。いくらでもアタイを眺めさせてやりゃあ。老い先短けぇこのハゲジジイにゃいい冥土の土産になんだろうからよ」
放ったスラングはトゲだらけである。
恐ろしく口の悪い少女の名はカグラ。
今は『罵多悪怒愚』の親衛隊長だとゆう。
他のメンバーも彼女には一目置いているとの事。
それはそうだろう。と金蛇は思った。
見た目はカワイイが、きっと中身は『ターミネーター』か『ランボー』である事は容易に想像がついた。
金蛇は話を本題に移す。
「梅豚。お主はいつまでお家騒動を続けるつもりだ?他の破落戸共も迷惑しとるぞ!Uチビは甥じゃろうが。殺し会う以外の解決法はいくらでもあろうが」
梅豚の顔に怒りが走る!
「ウルセーんだよ!このタコ坊主!さっさとブツ用意しろや!金はテメェのいい値でかまわねぇからよ!」
苛立ち、喚き散らす梅豚を横目に金蛇は、梅豚が持ってきたメモを破り捨てた!
「テメェ!何しやがる!殺すぞ!」
梅豚は腰の『乱暴ナイフ』を抜いた!
その時!
「静かにせい!」
雷のような金蛇の怒声が響いた!
そしてしんみりと話し出す金蛇。
「あれは90年代の初頭じゃったか?台風のように日本、そして国民も元気があった。勿論お主達ワルガキもな」
金蛇がノスタルジックに語る。梅豚は赤ラークに火を着けた。
金蛇は続ける。
「メチャクチャな時代ではあった。しかし温かかった。温もりがあった。特にアウトローの中にはな」
普通の住職が言えば様にもなるが、武器商人や臓器売買を生業とするナマクラ坊主の説法には、説得力に掛けてしまう。
「ボケたか?金蛇。もういい。テメェが用意しねぇなら、マナが作った爆弾でツチューラごと吹き飛ばす!」
梅豚の脳がゾーンに入る!
「やめろ!もう無関係な市民を巻き添えにするな!」
「知った事かよ。バカ野郎」
梅豚は立ち上がり、帰ろうとした。
立ち塞がる金蛇!そして一つの提案を出す!
「どうじゃ?ここは一つ、原点に帰り、暴走族同士の喧嘩でケリをつけてみては。武器アリ。しかし火薬は無しじゃ」
どや顔でほくそ笑むナマクラ坊主。
梅豚は顎に手をおき考えている。
金蛇はわかっているのだ。梅豚は・・・・・
希代の暴走族である事を。
「ちっとオモシレーかもしんねぇな。おい!金蛇!Uチビとは連絡つくんだろーな?」
金蛇が笑顔で何度も頷く。
「行くぞ!カグラ!帰って作戦会議だ!」
そう言うと、梅豚とカグラは謎の軽自動車で去って行った。
金蛇はため息と共に「やれやれじゃのう」と呟いた。
そして夏には似つかわしくない一陣の冷たい風が吹いた・・・・




