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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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令和餓狼伝 其の陸 ~橋姫の眼光~ 後編

有害指定都市ツチューラ市 完全風営法除外区域サクランボ町 午後24時02分。



酔っぱらいの小便と嘔吐したゲロの臭い。


妙な疫病の影響で、かつての北関東一の繁華街の面影はない。


コンビニの横の極細の脇道に入って行くと、様々な老舗のキャバクラ、風俗店などが、当時の面影を残し佇んでいる。


その中でも、異彩を放つ一軒のbar。


経年劣化した看板には『ぶんぶん』と書いてある。


台風でも来たら落下しそうな位にボロクソである。


中に侵入して行くと、




!?



やたら図体がデカイ熊のような男。


その横にはド派手な日本女がカウンターに並んで座っている。


そう、この二人は。



罵多悪怒愚(バタードッグ)』特攻隊長ユキヤと、今のところ肩書きナシのカグラである!


二人は本日『狂犬連合』No.2のケンゴが、この店に来店するとの情報をキャッチし、殺害する為やって来た。


店内は、お客もまばらで、過疎である。


カウンターの中にバーテンが一人である。


そのバーテンは妙な『卍』のネックレスをしていた。


すかさずカグラが毒を吐く。


「おい、ユキヤ、見ろよコイツ『鉄十字(アイアンクロス)』のネックレスなんかしてやがるぜ?ゲシュタポ野郎が」


ボトルから、グラスにジャバジャバウイスキーを追加し、フルーツ牛乳を飲むように一気に煽りながらカグラが言う。


不快な形相をあらわにし、カグラを睨むバーテン。


気まずそうにウイスキーを啜るユキヤ。


しかし、本日のカグラの服装。


黒のタイトなミニドレス。ミニなのにさらにスリットが入っている。

その両腿内側には、ガンホルダー。その中には『ベレッタF92』が納められている。


猫顔にロングの鮮やかな金髪に目が強調されたメイク。


マナにソックリである。


楽しそうにカグラがユキヤをからかう。


「どーしたんだよ?ユキヤ。浮かねぇツラして。この店内の豚小屋みてぇな臭いが気になんのか?それともアタイの股ぐらにぶら下がったベタベタした鉄の臭いか?」


カグラが笑いながら言う。


「んなんじゃねぇよ。色々場面を想定して考えてんだよ」


ユキヤがイライラしながら返す。


(この女には緊張感がねぇのか?それとも酔っぱらって思考が回らねぇのか?)


内心ユキヤは思った。


「想定だ?んなモン関係ねぇよ。暴れ回ってドグサレ共をブチ殺す。そんだけだ」


カグラが笑う。


先日の『梅豚邸爆破事件』からカグラはこの調子である。


ユキヤは疑問を口にする。


「お前『罵多悪怒愚(バタードッグ)』に来る前はどうしてたんだ?全うな高校生だったとは思えねぇ」


すぐさまカグラが返す。


「クソセンコーみてぇな事言うな?んなモン 低脳のガキの頃 オマワリに半殺しにされてから、ドブみてぇな生活だよ」


ウイスキーを白い喉に流し込み、


「貧乏なクソガキには信じられんのは仲間だ。兄貴もアタイも孤児だかんな。でも貞操観念はしっかりしてんだぜ?日本(ジャップ)のメスが仲間に淫売(いんばい)扱いされんのほど悲しいモンはねぇからな」


歪曲した理論を展開し、グラスを照明に当て、恍惚としている少女の表情は、すでに達観した大人のそれである。


(とんでもねぇガキだ)


呆れながらユキヤもグラスを煽る。


「お前はどうなんだよ?ユキヤ。他の『罵多悪怒愚(バタードッグ)』のメンバーは みんなドタマのボルトがブッ飛んじまってんけどよ、ユキヤだけは かろうじてビス一本で止まってやがる」


コイツは普通に喋れないのだろうか?


ユキヤは


「俺は『罵多悪怒愚(バタードッグ)』が好きだからよ。それ以上でもそれ以下でもねぇよ」


普通である。


「なんだよ そのゲロみてぇな答えは。アタイが正直に言ってやる。仇取りてーんだろ?クサレヤクザに殺されちまった実兄ユキオのよ。つまんねぇ偽善じみた返答してんなよ。タコが」


!?


ドン!


ユキヤがテーブルを叩く!


「テメェみてぇなガキに何がわかる?あんまモノ知らねぇでアゴ回すと殺すぞ」


感情的になるユキヤ。


カグラは少し表情を変え、


「わかるよ。わかるから言ったんだ」


ユキヤは感情のボリュームを下げ、正面に向き直る。


カグラが続ける。


「お前にとって、ユキオは拳銃。お前は弾丸だ。銃を無くしちまった弾丸は銃を探さなきゃなんねぇ。『罵多悪怒愚(バタードッグ)』がお前にとっての銃だったんだろ?」


「・・・・・・・・。」


「だからお前は弾丸の如く飛び回る。いつも梅ジイの二手三手先読みしてな。『陣野兄弟事件』からさらにその思いは強くなった。違うか?」


「あん時は完全に俺の下手打ちだ。陣野んトコ アッチャン先輩と突っ込んだのだって生きて帰れっかわかんなかったかんな」


「フン。陣野兄弟。低脳野郎が自分を棚上げして、アイデンティティを得ようとしたら、あっという間に軍歌好きなバカが一匹出来上がる。その典型だよ。アイツらは。よくいるタイプだ」


軽々と思想まで捲っていくカグラ。そして


「でもUチビはアイツらとは次元が違う。正真正銘の狂犬だ。これからも『罵多悪怒愚(バタードッグ)』を苦しめる。そうなる前にカタつける。アタイが終わらせてやる」


強くカグラは宣誓した。




すると、表から数人の騒がしい声が聞こえる。




「おいでなすったぜぇ!憐れな子豚ちゃん達。ブゥブゥブゥ・・・・・・」


楽しそうにカグラが呟いたと同時に、店のドアが開く。



『狂犬連合』副長のケンゴを先頭に、六人の屈強な男達が入店してきた。


一人のバカがデカイ声で自慢気に叫ぶ。


「でもスゲェよな!ケンゴくん!あの梅豚の要塞吹き飛ばしちまったんだからよ」


もう一人のバカも叫ぶ。


「おう!これからは俺達『狂犬連合』の天下だぜ?ガハハ」


ケンゴはそんな事 意に介してない感じで、上座のソファーに腰をおろした。


「全員ビールだ!早く持ってこい!」


また一人のバカが叫んだ。


やはりまだまだガキである。オラついてる。



そこでカグラが口火を切った。



「静かにしろよ。子豚ちゃん達。息がウンコクセーからよ」


男達とカウンターから真っ正面に向き合い、そう吐き捨てた。


激昂する『狂犬連合』達!



「んだと!このクソアマ!拐って輪姦(マワ)すぞ?コラァ!」


一斉に立ち上がる男達!


しかし一人が気づいた!


「こ、この女!『罵多悪怒愚(バタードッグ)』のマナだ!隣は特隊のユキヤだぜ!?」


ざわめき出す『狂犬連合』達。


しかし


「嫌、その女は上手く化けちゃいるがマナじゃねぇ。令和犬士のカグラって女だ」


さすが勢いに乗る『狂犬連合』No.2のケンゴである!

呆気なく見破る!


しかしカグラは


「フフフ。アタイが敬愛する方と間違えられて光栄だよ。焦る事ねぇよ()グソヤロウ。今、お花畑を見せてやる」


余裕で言うと、


「クッ、このクソアマがぁ!」


男達が一斉にユキヤとカグラに踊りかかってくる!


カグラは楽しそうに


「ジルバだ!踊るぜ!ユキヤ!」


と言って宙を舞った!


物凄い脚力である!


しかし、


ぱ、ぱんてぃーが丸見え・・・・・・


そんな考えを払拭し、ユキヤも男達に突進してく!


カグラはガンホルダーから抜いたF92を男達に的確に撃つ!



バキン!


バキン!


バキン!



乾いた銃声が、血みどろの華を咲かせる!


これではジルバではない!ヘビメタだ!


一瞬にて酒場が戦場と化した!


もう既に三匹がお花畑だ!


「ユキヤ!あとの二匹はアタイに任せな!アンタは子豚の大将を殺せ!」


叫ぶカグラ!


ユキヤはケンゴと正面から対峙すると、殺人パンチを繰り出した!

それをケンゴは呆気なくかわすと、ユキヤのアゴに鉄の拳をブチ込んだ!

しかしユキヤはその一撃を耐え、素早くケンゴの背後に周り、首に手を回し、絞め技でロックした!


ギリギリとユキヤはケンゴの首を絞めて行く!



カグラの方は呆気なくカタがついたようだ。



ユキヤが唸るように言った!


「Uチビはぁ?何処だコルァ・・・・吐けよこの野郎」


口から唾液が漏れてくるケンゴ!


「言える訳ねぇだろうが!テメェも同じ立場ならわかんだろうが」


反論するケンゴ!


「んだと!この野郎」


更に絞め上げてくユキヤ!


そこにカグラが


「無駄だよユキヤ。ソイツは吐きはしねぇよ。両膝撃ち抜いてやろうか?そしたら小鳥みてぇに喋り出す」


あっけらかんとカグラが言う。


するとケンゴが


「俺個人は負けてやる!殺せや!だけど必ず『狂犬連合』がテメェら皆殺しにする!覚悟しとれや」


と、ケンゴは命の捨て台詞を吐いた!


カグラは


「ふーん。自分の命捨ててまでメデテーな。あのUチビってそれほどのモンかよ?今のは遺言がわりにUチビに伝えてやる。小豚の大将。待ってな、今 楽にしてやる」


と、言うとカグラは妙な言葉を呟き始めた!




「生者の為に施しを 死者の為に花束を 忠義の為に剣を持ち 悪漢共には死の制裁を しかして我等 聖者の列に加わらん『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の名に誓い、全ての不義に鉄槌を!!」


ユキヤには幻聴であろうか?


遠くから山犬の遠吠えが聞こえた・・・・!



バキン!


・・・・・・・!?


カランカラン・・・・


薬莢が乾いた音をたて床に転がる!


大口径のF92は、ケンゴの脳髄を貫き、絶命させた!


ケンゴを見下ろしながらカグラは


「不幸なヤツはさ『不運(ハードラック)』と『(ダンス)』っちまったとさ」


銃口の煙を息で吹きながらカグラは呟いた。


ユキヤは思った!


コイツはとんでもない訓練を受けた、生粋の殺人マシーンだ!


梅豚、アッチャンと同じ、人知を超越した何かを感じる!


ユキヤは空恐ろしくなった。



其処に



バチパチパチ!




!?




梅豚、マナ、タケシが拍手をしながら入店してきた!



「こりゃまたド派手にやらかしたな~」


梅豚が嬉しそうに辺りを見回してる。


「コイツなんかドタマ一発即死だぜ?梅ちゃん」


何やらタケシも嬉しそうである。



そしてマナが



「カグラ。アンタの素性ちょっと調べさせてもらったよ」



ビクッ!!



それまで無双状態であったカグラがたじろいだ。

マナは続ける。


「アンタはキューバで暗殺訓練を受けたFARCの元ゲリラ。殺人と誘拐の多重容疑で 国際指名手配を受け、アメリカ大使館爆破の容疑もかけられている筋金入りのテロリスト。そして筋金入りの狂犬・・・・」



!?


やはりカグラは只の少女ではなかった!


これでカグラの解せなかった部分も、点と点で結びつく。



カグラが俯きながら言う。



「それでマナさんや梅ジイは?アタイの事嫌いになったの?」


もうカグラは普通の18才の少女に戻っていた。


マナが笑っている。


とても優しい。


母が娘に向ける優しい笑顔で。


そして



「そんな訳ないだろ。そんなアンタを全部ひっくるめてアタシは気に入ってんだ。勿論 梅豚くんもタケシも。そしてユキヤもアッチャンもマドカも。みんなカグラの家族だよ」


カグラの大きな瞳から、涙がこぼれ落ちる。


梅豚が続く。


「カグラ。良くやったな。スゲェ大手柄だ。戦況は大きく変わる。これで俺達が優位に立ったな。これからお前を『親衛隊長』に任命する!依存はねぇな?」


カグラは涙を拭いながら「イエッサー」と軍人らしく敬礼しながら答えた。



マナが大きく手を広げている。



「カグラ!おいで!」


カグラは一直線にマナの胸に飛び込んだ!


そして大声で泣き出した!


マナはカグラの頭を優しく撫でている。


幼いカグラは海外で、幾つもの夜を血に染め、数えきれない人々を殺した。


男。女。子供。対立組織。マフィア。麻薬カルテル。政治家。選挙管理委員。


行き着いた先はコカイン畑とマフィアの警護であった。



憔悴のあまり帰国し、実兄のカズキから『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の話を聞いた。


自分の居場所はここしかないと思った。


孤児であったカグラに感じた経験はないが、梅豚には父、マナには母を感じた。


この二人の為ならと、命の忠誠を誓ったのだ。


番犬にでも猟犬にでもなってやると。



抗争は泥沼化し、佳境へと入って行く!



一人の少女をキーポイントとしながら・・・・・!




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― 新着の感想 ―
[良い点] レビィーとメイドと姉御を彷彿させるキャラが素敵すぎます [気になる点] 「アンタはキューバで暗殺訓練を受けたFARCの元ゲリラ。殺人と誘拐の多重容疑で 国際指名手配を受け、アメリカ大使館爆…
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