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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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令和餓狼伝 其の肆 傀儡 後編

有害指定都市ツチューラ市内 薬剤町 ポンコツアパート 午後24時17分。



タックンは押し入れを開け、中から日本刀、そして黒の『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の乱闘服を取り出した。


そして自身の腹にサラシを巻き付けていく。


特攻ズボンを履き、ショート丈の乱闘服を着る。


背中には上から小さな金文字で



『茨城 天下無双』



そして大文字で『罵多悪怒愚(バタードッグ)



一番下にはまたまた小文字で『crazy butter dog』


袖には誇らしげに『親衛隊長』


と、鮮やかに刺繍が施されていた!



これに袖を通すのは何年ぶりであろうか?



着用すると気分が引き締まり高揚してくる。


タックンはおもむろに日本刀を抜くと、電気の紐を『シュッ』と試し斬りした。ナナメに斬れた。見事である。


この日本刀も梅豚がくれたのだ。



それを乱闘服の背中に入れ、特攻ズボンのベルトで固定した。




今からタックンは奇襲を掛ける。



狙うは『狂犬連合』(ユウ)チビである!


タックンの知るところ、まだ組織形態も曖昧で、叩き潰すなら今のうちである。



アパートを出て、パッソルのエンジンに火を入れる!



・・・・・・・・。



これも単車なら様になってカッコもつくが、ヒョロッとした昭和の原チャだと無様である。しかも跨がっているのは頭ハゲたジジイである・・・・・・。


そんな事は気にせずタックンはアクセルをひねった!


ロケットのように加速するパッソル!


ヤツらはツチューラの外れにあるぶっつぶれた鉄工所をアジトにしてる!特攻(ぶっこ)んで暴れて殺せばカタがつく!


タックンは考察する。


何故、梅豚が『狂犬連合』を継がなかったか。


仲間を殺したくなかったからだ。


現に『狂犬連合』の元メンバーで生きてる者は、一人もいない。


反対に梅豚率いる『罵多悪怒愚(バタードッグ)』は誰一人として死んでない。


其処に仲間を大切にする梅豚と、仲間を手駒くらいにしか考えてないUチビとの差がでている。



タックンは底知れぬ闇を突き進んで行った。






有害指定都市ツチューラ市内 工業地帯 廃工場 『狂犬連合』総本部。『クライシス・フィールド』午後25時32分。



静まりかえった廃工場。


広大な敷地には、おびただしい数の族車の群れ。


それは敷地からもはみ出す程である。


タックンはパッソルのマフラーを消音の為足で抑えながら、自身の計算の甘さを悟る。



まさかこれ程までにUチビは組織固めをしていたとは。


しかし今さら引き返せない!


梅豚や『罵多悪怒愚(バタードッグ)』に恩返しするのは今しかない!


タックンはパッソルのマフラーから足を外すと、アクセル全開で特攻(ぶっこ)んでく!


この戦争の第一陣は自分が切る!


そうすれば『罵多悪怒愚(バタードッグ)』が後に続く!


アウトローは、自分が死んでも必ず仲間が仇を打ってくれる!そう信じているから平気で命も身体も投げ出す事が出来るのだ!


タックンもそうである!


無造作に駐車された族車を交わしながら、煌々と灯りが見える工場へと駆け抜けるタックンとパッソル!


これには『狂犬連合』の雑魚共もパニックになったのだ!


怯える者。驚く者。様々だ。


やはり抗争慣れしていない。


ソイツらを、タックンは右足左足で蹴り飛ばしていく!


腐ってもあの『罵多悪怒愚(バタードッグ)』大幹部の親衛隊長である!こんなガキ共に敗けはしない!


灯りが洩れる工場内に侵入すると、






!?




やはり広大な工場内部にもズラリと車、バイクが並べられ、一番奥の巨大ソファーには、UチビとリサPが悪辣な笑みを浮かべ鎮座しており、その周りには、アッチャン、ユキヤクラスのガタイを持つ化けモンのような男達が、ガッツリ警備していた!


その後ろには畳六畳の巨大な旗『狂犬連合』の文字が踊っており、その旗の前には、男三人と女一人が逆さ吊りにされていた!


しかし臆する事なくタックンは叫ぶ!



「オイ!Uチビィ!ケジメで死んでもらうからよ!」


そう言うと、タックンは背中の日本刀を抜いた!


呆れながら、そして笑いながらUチビは


「何だ?テメェ、梅豚(クソブタ)の犬コロじゃねぇか。テメェも逆さに吊るしてやっからよ」



梅豚を侮辱した!タックンの怒りが、暴走し、爆発する!


「テメェ 今 (なん)つったぁぁぁぁぁぁぁあ!」


日本刀を振り上げ、一直線にUチビに向かってくタックン!


(いくら数いてもアタマ潰せば大人しくなっからよ)


タックンの脳内で梅豚がご教授している!


しかし、



ガシッ!




タックンの腕がロックされた!



目の前に立つ巨大な男は・・・・・、



『狂犬連合』副総長『ケンゴ』である!


あまりにも強力な力で!


動けない!


「危ねぇな、『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の親衛隊長サン。こんなモン振り回しちゃーよぅ」



ゴキッ!



ケンゴの頭突きがタックンにメリ込んだ!


仰向けに倒れるタックン!


その右手を踏みつけ、日本刀を奪うケンゴ!


「オイ!(ユウ)。どーすんよ?コイツ」


ケンゴがUチビに問う。


そして恐ろしいガタイをした男達がタックンを囲む。


Uチビはしばし考え、


「身体起こさせろ」


と、男達に命じる。


男達がタックンの身体を起こす。


「左腕を垂直に横に伸ばして抑えつけろ」


男達はタックンの左腕を横に伸ばして抑えつけた。


Uチビが、タックンが振り回した日本刀を手に取る。



すると、





斬!




!?




タックンの左腕を切り落とした!




おびただしい血液が、タックンの左腕から噴水のように溢れ出した!



「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


タックンが絶叫する!


Uチビは日本刀を投げ捨てると


「殺せ」


と命じた!



すると男達は、檻から放たれた猛獣のようにタックンに襲いかかり、凄まじい暴行を加えた!


ある者は骨を砕き、


ある者はナイフでエグり、


ある者はペンチでへし折った!


途方もない暴力がタックンを駆け巡る!


意識が遠退いていく!


(僕はこんなヤツらに負けるんですか?梅さん・・・・)



暗闇に落ちてゆくタックンの意識。


走馬灯がタックンの意識を繋ぎ止める!



夕焼け空の農道を幼くて小さな梅豚とタックンが自転車で走っている。


とても、


とても優しくて暖かい光景だ。


梅豚、アッチャン、タケシ、ユキヤ。そしてマナ。


マナの料理を六人で笑いながら食べている。


笑いあった日々を・・・・・・。


バカみたいに思い出していた・・・・・・。



(夢をみてたんだ。幸せな夢を。僕は強くなってみんなの役にたちたかったんだ。梅さんが僕に教えてくれた事や僕にくれた時間は無駄じゃないんだ。強くなった僕は梅さんの・・・・そしてみんなの(いしずえ)になるんだ・・・・・)




やがて冷たい感触。





Uチビが、タックンの額に拳銃を当てていた。



「何か言い残す事ねぇか?梅豚(クソブタ)に伝えといてやる」


Uチビは嘲笑いながらタックンに聞いた。


潰れた目をタックンは精一杯開けUチビを見た。


全然梅豚に似てない!


梅豚はもっと優しくて愛嬌がある!


目の前のコイツは心の無い只の抜け殻だ!


タックンは血と涙を流しながら残された力で・・・・!


声を振り絞った!



「テメェにはよ、梅さんや『罵多悪怒愚(バタードッグ)』に勝てねぇよ」


そして断末魔のようにタックンは叫んだ!


「チンコもまともに立たねぇテメェにはなあああ!」


そして口中にたまった血液を「ブッ!」とUチビに吐き掛けた!


「この野郎!」


Uチビが引きがねに力を込めた!


「梅さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」


ズドン!



タックンの意識が途切れた・・・・・・。






有害指定都市ツチューラ市 絶対安全農村区域 クサレガ丘一丁目 梅豚邸 セキュリティ監視室 午後26時05分。


無数の監視カメラの画面を見ながら、部屋住みの『カグラ』がアクビをする。眠い。さっきまで梅豚、マナ、ユキヤと花札をしていた。


マナの側にいれるのは嬉しいが、遊びと酒に付き合うのがなかなかしんどいのである。


でもあと一時間でユキヤと交代だ。


もうちょい頑張ろう!とカグラが思ったその時!




!?



玄関前のカメラに何か映っている!


軽トラから、男が何かを捨て、去って行った!


カグラは手元の『緊急警報』のボタンを押し、外に飛び出して行くと!




・・・・・・・・。




それは人の亡骸であった。


梅豚はその亡骸にしがみつき、号泣していた・・・・。


背中には『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の刺繍。


飛び出してきたマナも亡骸にしがみつき、子供のように泣いた・・・・・・。


ユキヤも目頭を押さえ、メンバーに連絡を回す為家の中に入って行った。






ひとつの時代にピリオドが打たれた。








超排他的 農村漁村区域 出解村 梅家占領墓地 午前9時10分。



あれから数日。


身寄りのないタックンの葬儀は『罵多悪怒愚(バタードッグ)』によりしめやかに、とはいかず、アッチャンが音頭を取りド派手に行われた。


参道には露天まででる始末。


それもまたアッチャンの優しさである。


浴びるように大酒を飲み、エンジンが壊れるまで車やバイクを吹かし、大好きだった歌を歌い、盛大にタックンを送り出したのである。




タックンの墓の前に佇む梅豚。


寄り添うようにマナも立っている。


そしてマナが


「タックン煙になって灰になっちゃったね」


そう呟く。


梅豚は無言である。


マナは静かに激しい口調で


「アイツら、楽には殺さないからね。きっと仇とるから。絶対に。だから許してね」


マナは大粒の涙を流し、タックンの墓前で誓った。


梅豚は線香の煙があがる春空を見上げる。


(・・・・・・。見てろよ、タックン)



梅豚とマナが振り返ると、そこにはアッチャン、タケシ、ユキヤ、マドカ、カズキ、カグラがいた。


大丈夫。


みんないるからさ!









夢はもう見ないのかい?



明日が怖いのかい?



あきらめはついたかい?




バカみたいに 空は綺麗だゼ!




今はもう見れないさ



アイツも変わったな



笑いあった日々を



バカみたいに思い出してみる!



ひび割れ青春


駄々こね少年


忘れちまった浅いキズ


カミサマなんていないゼ


ハナから信じちゃないさ




僕達をこのままで・・・・・!




あぁ もう泣かないで!



君が思うほどに弱くはない!



あぁ まだ追いかけて!



負けっぱなしくらいじゃ終われない!


遠回りくらいがちょうどいい!






SUNKUS Mr.Drucker!






RESPECT SONG 『拝啓、少年よ』by Hunp Back


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[良い点] ロケットのように加速するパッソル! [気になる点] 「梅さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 [一言] crazy butter dog は最強であり最高
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