令和餓狼伝 其の肆 傀儡 前編
有害指定都市ツチューラ市内 並川町 ファミレス『ゲスト』 午後22時05分。
店内全域を見渡せる一番奥の喫煙席。
向かい合わせに座っているのは『罵多悪怒愚』本部長タケシと特攻隊長ユキヤである。
例によって梅豚、アッチャンは遅刻である。
今から『罵多悪怒愚』会議だ。
ユキヤがタケシに口火をきる。
「タケシさん。マジらしいッスね Uチビが『狂犬連合』復活させたって」
「ああ。証拠に梅ちゃん家のクローゼットから六畳旗が盗まれた。おまけに平成犬士 令和犬士も、ごっそり離脱しやがった」
タケシが忌々しげに言う。
「・・・・。でも誰が盗んだんスカ?総長の家に自由に出入り出来んのは、昭和犬士と最近入ったカグラって小娘だけッスよ」
「そうだな。でもカグラって小娘は、内部事情にも精通してねぇし無理だ。梅ちゃん家に自由に出入り出来て 最近顔出さなくなったヤツっつったら」
ユキヤの頭にその顔が浮かぶ。
「タックンッスか?」
タケシは頷く。
すると、
!?
店内に入ってくる『とっちゃん坊や』な男。
タケシとユキヤを発見すると、
「なーんでですかー♪なーんでですかー♪なーんでですかー♪」と、スキップしながら二人の席に来て、ユキヤの隣に座る。
憎々しげにタックンを見つめるタケシとユキヤ。
そんな事は気にせずタックンが話す。
「やだなぁ、僕の事仲間外れにしちゃってぇ。タケシくんもユキヤくんもエイエイ」
と、人差し指で奇妙な動きを披露するタックン。
目はキラキラとランランに輝いていた。
「よく俺らの前にツラだせんな?お?」
何の悪びれもしないこのしたたかなタックンに、タケシの怒りは爆発寸前である!
するとタックンは立ち上がり、両手を上下におもいっきり振り、両膝を胸の高さにまで上げ『刑務所行進』しながら
「なーんでですかー♪なーんでですかー♪なーんでですかなーんでですかなーんでですかー♪」
と、節をつけながら踊りだした!
タケシもユキヤも限界である!
タケシは鋭い回し蹴りをタックンの顔面にブチ込んだ!
ユキヤも間髪入れず、鉄球のようなコブシを連打でタックンに叩きつける!
たまらず仰向けに倒れたタックンに、二人は容赦ない踏みつけるようなケリと、サッカーボールキックを雨あられのように浴びせた!
そこに運が悪い事に、アッチャンが入店してきた!
その光景を見ると、アッチャンは
「おもしれー事やってんじゃねぇか!俺も混ぜろ」
と、制裁に加わり、タックンは『ボロゾーキン』の『挽き肉』にされてしまった!
「二度と俺らの前にツラ出すな!このドポンチュウ」
タケシが吐き捨てるように言った。
「・・・・・・・・。」
タックンは何も言えなかった・・・・・・。
そこに梅豚が入店して来る。
タックンがザクロのようになった顔を上げ、梅豚に懇願するように
「う、梅・・・・さん・・・・」
と呼び掛ける。
しかし・・・・・・・・。
梅豚はシカトである。
一瞬タックンに向けた鋭い視線は・・・・・・。
驚く程に冷たかった・・・・・・。
タックンはフラフラと立ち上がると、店を出て行った。
梅豚、アッチャン、タケシ、ユキヤはもう普通に笑い話をしており、梅豚も運ばれてきた白ワインを飲みながら、バイクや車、そして先日のアッチャン御殿での話を笑いながら披露していた。
・・・・・・・・。
もう、そこにはタックンの居場所はなかった・・・・・・。
夜風が、ボコボコに痛めつけられたタックンには心地よかった。もうあの輪の中には入れない。
生かして返されたのも『罵多悪怒愚』幹部や梅豚のせめてもの温情なのだろう。
タックンは愛車『パッソル』のエンジンをかけると走り出した。
このタックン、単車の運転が出来ない。
若い頃からだ。
『罵多悪怒愚』の集会ではいつも梅豚のケツにのり、旗持ちをしていた。マナが梅豚のケツに乗る時は、別の誰かのケツで『罵多悪怒愚』の旗を守った。
幼い頃からいつも梅豚はタックンに対し、冷めたような態度で接していた。が、タックンをイジメてたヤツを梅豚は半殺しにした事もあるし、喧嘩の仕方や悪い事、全てタックンは梅豚にご教授頂いていたのだ。
部屋に到着すると、タックンは上着のダウンを脱ぎ、冷たいタオルで顔を冷やした。そしてポケットの財布を床に投げた。
すると、
!?
タックンの財布から一枚のボロボロになったシール。
小学生の時、梅豚がくれたビックリマンシールの『ヘッドロココ』だ!
あの時からタックンは梅豚に忠誠を誓い、いつも遊ぶようになったのだ!
タックンの目から大粒の涙が流れる。
(とんだ大バカ野郎だ!僕は!)
梅豚と居れば怖いモノなどなかった・・・・・・。
自分も強くなったような気がした・・・・・・・。
やがて梅豚も年をとり、変わって行った・・・・・・。
それは誰しもがそうであろう・・・・・・。
其処に若かりし梅豚に瓜二つのUチビが現れた!
タックンは我が目を疑った!
目の前にいるのは、全盛期で、一番カッコ良かった頃の梅豚そのままであった!
そしてタックンはUチビに傾倒していく。
何と言っても梅豚の甥だし、『殿下』と呼び崇拝した。
しかし、結果的には梅豚や『罵多悪怒愚』を裏切らせタックンを利用した。
梅豚、アッチャン、タケシ、ユキヤ、そしてマナ。
タックンが大切な人間全てを侮辱し、命の『罵多悪怒愚』までメチャメチャにした!
もう許せない!
タックンの中の怒りの炎が燃え盛っていた!




