表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
26/42

親友よ ~風雲アッチャン御殿~

有害指定都市ツチューラ市 超暴力団警戒区域 極悪町 アッチャン帝国付近。納豆街道バイパス 午後21時57分。



暗闇を疾走する1台の黒のプリウス。


二車線の道を、通行する車をアミダのようにスリ抜けて行く。


一歩間違えば命がヤバい。


時には他車にブツけながらも車線変更し、抜けて行く。


この危険なプリウスを駆る男は・・・・・・。



罵多悪怒愚(バタードッグ)』総会長 梅豚である。


やがて側道の、車が一台やっと通れる道に入っても、スピードを落とさない。

そして暗黒の住宅街に侵入すると、そこかしこに『この男に注意!』とアッチャンのポスターが張られていて、新築だが何やら怪しい二軒が向かい合っている中心の細い砂利道に入って行く。そこは街灯すらなく漆黒の闇である。プリウスが300メートルほど進むと・・・・・・。





!?





四方が3メートル位の壁に囲まれ、有刺鉄線が張り巡らされた一軒の長屋。


恐らく建てられたのは、昭和30年代。


かつては周辺にも同じ長屋が建てられていた集合団地であったが、時は流れ、時代が変化し誰も借り手がなくなった。そしてこの長屋団地の大家は全ての長屋を取り壊し、アパートを建てようと思ったが、この家の主だけは頑なに立ち退きを拒否し、ここに住み続けていた。そんなこんなしてるうちに、大家は他界してしまった。

なので無料(タダ)でここに住んでいる。


迷惑な話である。


この家の家主はあの『罵多悪怒愚(バタードッグ)』副総長のアッチャンである。




・・・・・・・・。




それにしてもスゴい家である。


四方を囲っている壁もさる事ながら、屋根には『金の(しゃちほこ)』が鎮座している。


昔、名古屋城で『金の鯱』盗難騒ぎがあった。


あの犯人はアッチャンである。


屋根外壁共に真っ黒に塗られたポンコツ長屋との超絶ミスマッチにより、不気味なコントラストを演出していた。


外壁は全て鉄板張りで、窓があったであろう部分も鉄板で塞がれ、何故か小さな穴が無数に開いていた。


庭にはアッチャンのケンメリ。そしてマドカの初期型アルト。

その後にはアッチャンのGS400。マドカのZ250FTが綺麗に駐車されている。さらに後ろにはツチューラでは伝説のZ400FXがシートを被され保管されていた。



梅豚は手に木刀を持っていた。


殴り込みにきた訳ではない。



梅豚は慎重に、アッチャン御殿の庭の入り口を木刀でツンツンしている。やがて、


ガッシャーーン!


と、トラバサミが飛び出てきて、木刀を真っ二つに粉砕した!


そして庭に侵入し、玄関の『特殊防弾製』のサッシをおもいっきり蹴りつける。



「おーい!アッチャーン!入っとー!」


そしてサッシの取っ手に手を掛け、足を壁に掛け、全身全霊の力を込め、サッシを開ける作業に入った。半分くらい開いただろうか?この鋼鉄の扉をアッチャンは毎日開け閉めしている。


やがて軽やかに、カラカラカラ~とサッシが開いた。




「おう!梅豚!来たのか」



やっとアッチャンの登場である。


内部を見渡すと・・・・・・。



玄関には身長180センチ位の『小型牛久大仏』に『人体模型』。玄関マットとして敷かれている『ベンガル虎』(狩猟禁止)の敷物。思ったより中は広い。


廊下を進んで行くと、新築顔負けのフローリングが広がっていて、マドカがチョコンと座っていた。



「梅さん、いらっしゃい♪」


マドカが愛想良く迎えてくれた。


「おう!おめでとうな。マドカ」


「ありがとう総長♪今 日本酒持ってくるからゆっくりしててね♪」


・・・・・・・・。


いきなり日本酒である。


しかし、外観と似合わない可愛く豪華な室内。床暖房に太陽光発電。最新式だ。とても昭和の骨董物件とは思えない。

部屋はこのリビングと奥に『愛の寝室』、玄関からの廊下に風呂とトイレがあるのみ。

ここまで大掛かりなリフォームと外観武装するなら「家一軒くらい買えよ」と言いたい。


でも置いてあるものがヤバい。


専用の建具には『対戦車ライフル』5丁に『散弾銃』2丁が立て掛けられ、その他『ミサイルランチャー』に『C4爆弾』。第二次大戦中の『ロシア製地雷』まである。



日本刀などはオモチャのようにネクタイで束ねられ無造作に置かれていた。


家具は昭和に作られたであろう、ブラウン管の巨大テレビ。あとは白いちょっと大きめの可愛いテーブルのみ。


テレビはもう地デジで映らない為、VHSで『アンパンマン』のビデオを流していた。


かつては今、床暖房でぬくぬくゴロゴロしているこのクソジジイ2匹も、別のアンパンマンでラリラリしてたクチである。


反省してほしい。


そして「テレビくらい買えよ」と言いたい。



梅豚がマドカが持ってきた日本酒をすすりながらアッチャンに問いかける。


「あのさーアッチャンさ、俺なりに色々お祝い考えたんだけどな・・・」


「いーよ。さっきマナさんとオメェにいっぱい金もらったから」


アッチャンがダルそうに言う。

マドカも


「そーだよ!あんないっぱい。ホントありがたいよ」


安室奈美恵にクリソツのマドカも感謝を延べる。


「それじゃ俺の気がすまねぇ!総会長として、ほんで親友(ダチ)として!」


熱くなる梅豚。


「んじゃ、どーすれば気ぃすむんだ?」


ワカランチンの梅豚にイライラしながらアッチャンが問う。


「殴りてぇだろ?アッチャン俺の事」



!?



アッチャンが梅豚を殴る・・・・・・。


ある。アッチャンが梅豚を殴った事が一度だけ!



それはそれは大昔。


梅豚とアッチャンが小学校2年の時。


地元の祭りに梅豚、アッチャン、タケシは繰り出した。

その時アッチャンは、縁日で『カラーヒヨコ』を購入した。アッチャンはそのヒヨコを大切に育てていた。


しかしある日。


梅豚とファミコンをして遊んでいたアッチャンは急にもよおしウンコに行った。アッチャンのウンコは長い。

やがて梅豚は例によってファミコンに『飽き』、「お腹すいた」とアッチャンのヒヨコを『焼き鳥』にして食べてしまったのである!

激怒したアッチャンは、泣きながら梅豚にメガトンパンチを放ち、梅豚は泡を吹いて気絶してしまったのだ。



・・・・・・・・。


それ以来、アッチャンは梅豚を殴っていない。


その話を梅豚は懐かしく思ったのか、目線をブラウン管テレビの上に移した。




!?




ブラウン管テレビの上にはなんと、『ワニ』と『カメレオン』の合の子のような、身体を伸ばしたら160センチはあろう巨大な爬虫類がテレビの熱でキモチ良さそうに寝ていた!


一体何の生き物であろう?


罵多悪怒愚(バタードッグ)』内部情報によると、この爬虫類は『地球外生命体』ではないか?と囁かれていたり、ただの『小ワニ』だ、とか『南米製大型カメレオン』とか色々憶測を呼んでいた。


アッチャンがペットショップから『永遠レンタル』してきた時はトカゲくらいの多きさで、『ポチ』と名付けたが、みるみる巨大化して凶暴になっていった。

今では『無惨』と呼ばれている。

エサは一日チワワ一匹である。

残忍な牙も、週一でアッチャンが鉄ヤスリでゴリゴリ研いでいる。強靭なアゴの力は人間の腕など、一噛みで食いちぎる。

アッチャンはこの生物を、拷問にも使用し、重宝し可愛いがっていた。


梅豚は遠い眼をしながら「この大トカゲを食えばまたアッチャン俺を殴る気になるだろうか?」


などと呟き始めた!


ヤバい!


完全に『ゾーン』に入り込んでる梅豚!


マドカはそそくさと、『ポチ』いや『無惨様』の口に知恵の輪のような鎖の口輪をはめ、寝室に避難させた!


アッチャンは何故か『女の子座り』をし、両手で顔をふさいでいた!


きっと大切な『ポチ』いや『無惨様』を瞬時に梅豚に『乱暴ナイフ』でズタズタにされてると思ったのだろう。


「オイ!マドカ!連れてくなよ!トカゲ置いとけ!」


響くような大声でマドカに命じる狂った梅豚!


「ヤダ!アタシ アッチャンから聞いてヒヨコの事も知ってんだかんね!ポチの事食べる気だったでしょ?」


負けじと返すマドカ!


「ウルセーテメー!俺のアッチャン取りやがって!」


「はぁ?何それ?ホモ?オソロのピアスなんてしちゃってさ!」


「もういい!アッチャン コイツと別れて俺の子産め!」


もはや支離滅裂である!

アッチャンはまだ『女の子座り』に『顔面両手隠し』である!

無能である!


「やめてよ!このキチガイ!マナさんに言い付けっかんね!」


事態は終息不能になりかけたその時!


梅豚のスマホが鳴り出した。


着信はタケシからだ。


「はい!こちら自殺110番!」


こんな電話の出かたもないであろう・・・・・。

話にならない・・・・・・。


マドカが梅豚からスマホをヒッタくり、一連の流れをタケシに説明した。


すると、スピーカーに切り替えた梅豚スマホから、タケシがナイス提案を出す!


《じゃあ、梅ちゃんに名付け親になってもらえば?それ以上のお祝いってないんじゃね?》


さすが『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の頭脳である。


これにはアッチャンもマドカも納得せざるを得なかった。

通話を切ると、梅豚は上機嫌である。

アッチャンも正常に戻った。

マドカは嫌な予感しかしていない。


梅豚は


「よし!これから俺が一つづつ名前言うから。気に入ったら頷け!いいな?」


頷くアッチャンとマドカ。


「レイナ」


「まてーい!そりゃ俺が入れあげてたキャバ嬢の名前じゃねぇか!」


ムッとしてるマドカ。当たり前である。


「エリザベス」


「ここは日本だ!第一どんな字書くんだよ!」


アッチャンが喚き散らす!


ため息しか出ないマドカ。


「ノータリンのクセにウルセーな!じゃ『和子』!」


「昭和か?イジメられっ子確定じゃねぇか!誰がノータリンだコノヤロウ!」


これでは、永遠ループになってしまう。流れを変えようとするマドカ。


「ちょっと、さっきからいい加減にして。男の子の場合は?」



・・・・・・・・。



どんより沈む梅豚とアッチャン。



『男の子』とゆうパワーワード。



避けていたのである。



アッチャンとマドカの息子だ。


梅豚は想像を巡らす。




まずは、生まれて30分後、新生児室にて隣の赤ん坊と目が合ったのなんだので最初の殺人。


3才になるかならないか位で、中東の麻薬カルテルとマシンガンをぶっぱなしての血の抗争を繰り広げ、その後中東の麻薬利権を制圧。中学に上がる頃には、尖閣諸島の付近にある油田を堀り上げ、世界を牛耳る『暗黒大統領』になっている!



想像した梅豚は怖くなり、『女の子座り』をし『両手で顔面隠し』をした。



・・・・・・・・。



このポーズは一体何なのだろう?


気付いたら梅豚と同じ事を考えてたのか、アッチャンもまた同じポーズをしてる・・・・。



あきれながらマドカが進行を急かす。


「ほら、総長!男の子の名前!」


「う、う~ん、タケシ」


「・・・・・・・・。」


「ユキヤ」


「・・・・・・・・。」


「タックン」


「・・・・・・・・。」


もう人の名前ですらない。それはアダ名である。サナダムシの。



そのまま朝になり、結局みんなで考える事となった。



いずれは『罵多悪怒愚(バタードッグ)』を背負ってたつ新たな命はマドカの腹の中でこのやり取りをどう思っただろうか?


・・・・・・・・。



様々な人達の思いを乗せ、新たな命はすくすくと育って行くのであった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「はい!こちら自殺110番!」 [気になる点] もう人の名前ですらない。それはアダ名である。サナダムシの。 [一言] 今回も楽しませて頂きましたw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ