狂気の種
有害指定都市ツチューラ市 絶対安全農村区域クサレガ丘1丁目
梅豚邸 午後13時24分。
毎度お馴染みの物騒で物々しい一軒家。
戦国武将を彷彿させる佇まい。
『罵多悪怒愚』総会長 梅豚の本宅である。
この家の紹介は、何度もしているので省略する。
リビングで梅豚は、愛妻マナに膝枕をしてもらい、ポテチを食べながら80年代の名作『バックトゥザフューチャー』を鑑賞中であった。
梅豚はこの映画に独自のこだわりを持っており、日本語吹き替え版に関しては、92年地上波放送金曜ロードショーバージョンが大のお気に入りである。それを中学時代に録画したVHSをDVDに焼き直し、擦りきれるまで観ている。
ここまで来ると立派なマニアである。
もっと人間として、根本的な部分にもこだわって頂きたいのだが・・・・・。
そんな梅豚を愛妻マナは、指で髪をモシャモシャしたり、唇で耳をハムハムしてる。
・・・・・・・・。
一体この夫婦。
いつまで、そして何歳までイチャつくつもりであろうか?
倦怠期はとうに過ぎたはずだし、もう一緒になって20数年経つ。
まあ、仲がいいのは素晴らしいが、非常に見苦しい事も確かである。
そんな午後の一時の平和な時間。
耳をつんざくような爆音が鳴り響いてくる!
ンバァーンバァーンバババァンバババァンバァーウンンンー♪
妙な息継ぎ呼吸をしてるような絶妙な排気音!
梅豚がボソッと呟く。
「アッチャンのGSの音だな」
皆様のお待ちかねである。
そしてこの物語が、アメブロで連載開始当初から、読者の心を掴み、キャラクター人気圧倒的No.1の!
『罵多悪怒愚』副総長。
『アッチャン』のご出勤である!
満を持して、今日はギラギラメッキのド派手なGS400(盗難車)で登場である!
アッチャンはかって知ったる我が家の如く上がり込み、冷蔵庫からビールを取り出し、L字ソファーの梅豚とマナの横に座る。
そして「土産だ」と、チュッパチャップス二本をテーブルに置いた。「おう。アッチャン悪ぃな」と、梅豚は見もせずに呟く。
「アッチャン今日はバイクなんだね♪春だし暖かくなったもんね。マドカ元気?」
マナもいつも通りにアッチャンに接する。
ちなみにマドカとは、アッチャンの嫁である。
「う、うん」
マナの問いに返事するアッチャンだか、様子が変である。嫌、いつもアッチャンは変なのであるが、今日は何処か よそよそしい。
梅豚がマナの膝から身体を起こし、赤ラークに火を着ける。
「何だぁ~?どしたんでぃ~?アッチャン」
THE・茨城弁のハイトーンで梅豚が問いかける。
このイントネーションは茨城で生まれ、茨城で育ち、悪そうなヤツは大体友達でないと発音できない。
アッチャンは物憂げにソワソワし、モジモジし、ソファーの上に人差し指で『の』の字を書いている。
・・・・・・・・。
これが、十代の清楚系の女子ならまだ様にもなるだろうが、頭髪が若干後退した殺人鬼のクソジジイがやっても、気持ち悪いだけである。
そんなアッチャンにイライラしたマナが
「何なの!アッチャン!ハッキリ言いなよ!」
と、怒声を飛ばす!
夫婦揃って超絶ド短気である!
そんなマナに観念したのかアッチャンは
「実はね、あのね」
まだモジモジしてる!
「何!?」
梅豚とマナが同時に発音する!
「できちゃったみたいなの」
「何が!?」
「子供!」
!?
「エエエエエエエエエエエエェ!?」
梅豚とマナが絶叫する!
まさかのまさかである!
興奮した梅豚が喚き散らす!
「だってよぉ!アッチャン オメェ男だっぺよ!男も妊娠すんのか?」
・・・・・・・・。
そんな梅豚の頭をひっぱたき、マナが
「で?マドカは今何ヵ月なの?」
こうなると、女のほうが冷静だ。
アッチャンは指を三本立てた。
マドカ夫人は妊娠三ヶ月らしい。
これは驚愕である。
あのアッチャンがパパになる。
幼稚園の頃から梅豚とタケシと残虐非道の悪さを繰り返し、傷付けた人間、殺した人間数知れず。アッチャンとやり合ったヤツは運が良くて半身不随。ほとんどがあの世行きである。そして私生活の全てが犯罪で構成されてる。
しかし授かった小さな命である。
いくら親父が殺人鬼とはいえ、子供に罪はない。それは親を選べないから。
マナは堪らず泣き出してしまった。
生まれてくる子供が憐れで泣いてるのではない。マナは嬉しいのだ!
梅豚とマナは、とうとうこの年齢まで子宝に恵まれなかった。それは鬼子同士の宿命的な何かなのだ。
だからマナは『罵多悪怒愚』メンバーを子供だと思い接してきた。だから今まさに孫が出来た気分なのである!
色々マナはアッチャンにアドバイスを提案しだし、アッチャンは「うん。うん」と、マナの話に聞き入っている。
梅豚はこの話に飽きてしまったのだろう。アッチャンのホッペタをツネッたり、鼻の穴に指を突っ込んだりしてる。
すると突然アッチャンが「あ!痛ぁ!」
と、ソファーから転げ落ちた!
・・・・・・・・!?
梅豚がアッチャンの左耳に安全ピンを突き刺したのだ!
猛激怒するアッチャン!
「テメェ、梅豚ぁ!何しやがる!」
アッチャンは人の痛みには強いが、自分の痛みには弱い。
「だってさ、最近アッチャン、マドカと一緒んなってからオシャレになったっぺ?だからこれプレゼントしたくなってさ」
梅豚は右耳のピアスを指して言った。確かにアッチャンはマドカと一緒になってキャラクター物のダサいジャージを着る事がなくなった。
今日だって、ちょいワルオヤジ系雑誌の外人みたいな格好をしている。
梅豚は自身の右耳のダイヤモンドのピアスを外し、アッチャンに突き刺した安全ピンを外してピアスを通しキャッチでロックした。
「何がピアスだ!コノヤロウ!俺にクレイジーハイスクール(謎)みてーな事しやがって!」
激昂するアッチャンにマナが、お土産のチュッパチャップスをペロペロしながら
「えっ!わりとアッチャン似合ってる!カッコいいかも」
マナがアッチャンに手鏡を渡すと、決してイケメンではないが、ベビーフェイスとオシャレ坊主に不思議にダイヤピアスがマッチしている。ハッキリ言って梅豚より全然似合っていた。
「これはドラゴン○ールのフュージョンピアスだな!」
梅豚が自分の左耳に装着されてるピアスを満足げに撫でながら言った。
「フュージョンピアスゥ?」
アッチャンは呟きながら鏡の中の自分に納得してる。
・・・・・・・・。
キモい。
そして、梅豚とマナから多額の祝い金を受けとると、アッチャンは気分良く帰宅した。
マナと二人きりになった梅豚は、リビングをぐるりと見回し、
「この家ってアッチャンが俺達の結婚祝いにくれたんだよな・・・・」
梅豚が感傷的に言う。
マナはティッシュで涙を拭いながら頷く。
梅豚18才。マナ17才の時だ。
当時、二人は家賃3万の、二間の築40年のポンコツアパートに住んでいた。
当然、連日のように『罵多悪怒愚』メンバーがたむろし、手狭になっていた。
そんな時である。
アッチャンが突然、土地建物の権利書をテーブルにバサッとなげた。
「俺からの結婚祝いだ。二人で住め」
と言った。
その物件(現在の梅豚邸)は、当時、ヤクザの親分が住んでいた。が、上部団体の組を絶縁になり飛んだ。
そこに、数人のヤクザが占有し、巣くっていたのだ。
まだ幼かった梅豚とマナは躊躇したが、アッチャンは
「2~3日で放り出す。だからこの家で幸せになってくれ」
と言った。
そしてアッチャンはヤクザを叩き出し、それ以来ずっと梅豚とマナはこの家に住んでいる。
感謝してもしきれない。
幼いアッチャンが命懸けでくれた家だ。
梅豚は
「俺だってアッチャンに何かしてやりてーよ」
そして家を飛び出して行った・・・・。
複雑な気持ちが交差するのであった。
次回!驚愕のアッチャン御殿!初公開!
こうご期待!




