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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
23/42

狂暴忌憚

有害指定都市ツチューラ市 完全風営法除外区域サクランボ町 午後24時02分。



凍てついたアスファルト。


経年劣化による建物の傷み。


数々の酔っぱらい達を飲み込んできたこの街独特の腐敗臭。



北関東一の繁華街は、妙な武漢肺炎により一層の過疎化が進み、退廃している。



其処を歩く一人のヤクザ。


40歳前後であろう。


その業界にしては、今では若手である。

この御時世自ら進んでヤクザになろうというヤツはいない。

反社への風当たりはキツく、もはやヤクザというだけでパクられてしまう。

まったく損で不器用な生き方だ。

厳しい渡世に身を投じて生きるその男の名は・・・・。



広域指定暴力団『七代目菱山組 五代目銀龍会』若頭。


シンジである。


コイツは、あの『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の天敵『龍二』の若い衆で、実質『五代目銀龍会』内ではNo.2である。

しかしこの組も構成員が十人たらずまで減少。シノギはほぼ薬物のみと冴えない日々を送っていた。

昔のように、客引きに挨拶されたり、商売女にチヤホヤされるわけでもない。

鬱屈した気持ちでメインストリートを歩いていると。





!?




黒に金線のアディダスのジャージに白髪の初老?の男。

まあ、何処にでもいる。

しかし、その男の手は・・・・・・。


成人男性の死体を引き摺っている!

死体はまだ死後硬直が始まってないのか、グンニャリしている!まだ殺したばかりなのだろう!


これはほっとけない!

シンジが白髪男の肩を掴み声をかける!


「おい!ジイサン!待てや」





!?





驚愕。


静寂。



雲に隠れていた(おぼろ)な満月の光が男の顔を照らす。



白髪の男は、まだ『ジイサン』とゆうには若い。


切れ長の二重瞼の眼球は、底知れず、残忍で暗くて深い。


死線。


死闘。


死人。


あらゆる『死』を乗り越えた眼。


そしてその顔は、『路線図』のように傷が切り刻まれている!


シンジはこの男を知っている!


あの殺戮テロ組織『罵多悪怒愚(バタードッグ)』総代会長。




『梅豚』である!



シンジは聞いていた!


梅豚はあの『陣野兄弟』に奇襲をかけられ、鉈でメッタウチにされたが、『陣野兄弟』と仲間と家族を皆殺しにした上、飼育してた犬まで殺したらしい!


その後遺症で、顔面傷だらけとゆう訳だ。


ゆっくり口を開く梅豚。



「あ?誰だ?テメェ」


相変わらずだ。シンジを知らない訳がない。


「今日も一段と狂ってんな?まさか俺を忘れ、グワッ!」


シンジの左足に強烈な痛みが走る!


梅豚の手には、刃渡り5センチ弱のナイフが握られている!


やはりすぐに躊躇(ためら)いなく刺してくる!


話など最初から通じる相手ではないのだ!



そして、


「ん?テメェ!龍二んトコの小僧か?アァ?」


激痛でしゃがみこんだシンジの顔面に、容赦ないサッカーボールキックが炸裂する!


狂っている!


梅豚は前回の教訓を生かし、こうして夜な夜な人間狩りをしているのだ!


徐々に人垣が出来てくる!


過疎っていても此処は北関東一の繁華街なのだ!




・・・・・・・・。





しばし顎に手をあて、考慮する梅豚。


やがて楽しそうに


「テメェにいいモン拝ましてやる」


と、呟くと腰から大型サバイバルナイフ、通称『乱暴ナイフ』を皮の鞘から抜く梅豚!


そして信じられない光景が!


クルクルと大型ナイフを手首でボールペンを回す要領で回転させる梅豚。

次には両足を肩幅に開き、腕を大車輪の如く回転させ始めた!

三回転、四回転!

そのスピードはどんどん増し、大型ナイフが地面に擦る度に火花を散らす!


やがて梅豚の腕が回転を止めると・・・・・・。




!?




梅豚から奇妙な蒸気が上がり、青白い光が体からうっすら発光している!


そして梅豚は、大型ナイフを顔面の近くまで持ち上げ、左手でグリップを包み、右手でグリップの底を押さえる!



すると





「全集中。『(じゃ)』の呼吸。(さん)(かた)




「䥝(みなごろし)!」




フッ!




残像となり梅豚が消える!



青い閃光が鋭利な角度で交差し、人垣に斬り込んで行く!



シュッ!


シュッ!


シュッ!


シュッ!


青い閃光が男女四人の首を通過した!



すると


ボン!


ボン!


ボン!


ボン!


と、四人の首が切断される!




!?





「まだまだ終わらねぇぞ!コラ」



光の速度に変化した梅豚は、容赦なく技を繰り出す!



「全集中!『(じゃ)』の呼吸!()(かた)


キャバクラの外壁にあり得ない角度で足を付き方向転換する梅豚!


花魁剱(おいらんけん)


赤線の光が、今度は緩やかで艶やかな曲線を描き人垣に斬り込んむ!



シャン!


シャン!


シャン!


また軽快な音が鳴り響くと、


ボン!


ボン!


ボン!


と、三人の首がぶっ飛んだ!




締めにかかる梅豚!


超高速域に乗った身体を停止させねばならない!



「速度減少!急急如律(きゅうきゅうにょりつ)!」



すると急激に梅豚の速度が減少する!



(れい)!」



まだまだ高速域な自身の身体を完全停止させる為、路駐してある型落ちベンツに自らを叩きつける梅豚!




ガッシャアアアアアアアアアアン!



一瞬地面ごと揺れを感じ、辺りに煙と血の臭いと死体が蔓延する!


シンジは我が目を疑う。



これは夢であろうか?



梅豚が繰り出したマンガのような技。




・・・・・・・。




ドスドスドスドスドス!



凄まじい足音が鳴り響いてくる!



「なーんでですかー!なーんでですかー!なーんでですかー!なーんでですかー!なーんでですキャアアアァ♪」


死体を踏みつけ、絶叫しながら修羅場に突入してくる『とっちゃん坊や』な男!

口癖の『なーんでですかー』にはリズムが付き、更にはメロディーまで付いてグレードアップしている!


罵多悪怒愚(バタードッグ)』親衛隊長『タックン』である!



梅豚の腕をとり起き上がらせながら


「ダメですぅダメですぅ!この技は身体に掛かる負荷が物凄いんですからぁ!こんな小物相手に繰り出しちゃあ勿体ないですぅ」


説教をカマしている。



タックンの後に続くように、古いベコベコのセンチュリーがやはり死体を踏みつけ、のっそりと侵入してくる!



後部座席のドアを開けるタックン。


すると



「いい感じじゃない。新しい技。鮮やかに血の海」


後部座席で煙草の煙を吐きながら恍惚とする梅豚の愛妻『マナ』。



シンジは震えが止まらない!



そんなシンジを嘲笑い、センチュリーに乗り込みながら梅豚は



「おいガキ。龍二に言っとけ。明日の朝 ウチに顔出せってよ」



そしてタックンもセンチュリーの助手席に乗り込むと、悠々と去っていく。



人々が正気に戻るまで暫くかかりそうだ。



罵多悪怒愚(バタードッグ)』はまた新たな旋風を巻き起こし進んで行く。



鮮やかな鬼になって・・・・・・。





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