愛すべきロクデナシ ~壊滅~
有害指定都市ツチューラ市内 沼石区 超法規外闇医者『藪沢医院』。ICU内 午後17時47分。
静まり返る病室内。
そして『罵多悪怒愚』メンバー。
タケシ、タックン、Uチビ、ユキヤ。
梅豚は見るも無残な姿になり、ベッドに横たわっている。
包帯やギプス。点滴やチューブに電子機器のような物まで付けられ、虚しく電子音が鳴り響く。
マナは梅豚の手を握り、小刻みに震えながら涙を流している。
これがあの梅豚だろうか?
ユキヤは我が目を疑った。
自分が側に居ればこんな事にはならなかった。
ユキヤと決別した梅豚は、ショックのあまりに隙を見つけて家を抜け出し、大酒を飲み、後方から尾行され、鉈で襲撃された。
情け容赦のない大胆かつ計画的犯行。
『罵多悪怒愚』に内通者がいるとも考えられる。こんな事も危惧し、ユキヤは新規メンバーの増員には反対していた。
それもこうなっては結果論でしかない。
しかし・・・・・・
梅豚が率いる『罵多悪怒愚』は数多くの人々を傷つけ殺してきた。
これも『因果応報』。
だが報復は覚悟の上だ。
だからこそ暴力には屈しないし、身を持って復讐の二文字を掲げ団結する。このような時だからこそ『罵多悪怒愚』本来の研ぎ澄まされた牙で相手を粉砕せねばならない。
ユキヤの脳内で怒りが渦をなし、暴走して爆発する。
(俺が一人で殺してやる)
「会長、マナさんすみません」
ユキヤは病室を飛び出す。
タケシが後に続き声をかける。
「ユキヤ!一人でどーすんだよ」
「大丈夫っスよ。俺だけでカタァつけますんで」
「相手が誰かわかってんのか?」
「んなモン!調べるくれぇ訳ねぇっスよ」
ユキヤの言葉に熱が入る。
タケシが核心に迫り助言する。
「相手はたぶん『ピーコ』に依頼された『陣野兄弟』だ。殺すくれぇじゃモノたんねぇぞ」
「わかりました。タケシさんは会長とマナさんについててください」
病院の出口に走りだすユキヤ。
陣野兄弟・・・・・・・。
コイツらは梅豚達の二個上と一個上の実の兄弟で、親の代から『政治ゴロ』や『総会屋』を生業とし、とにかく残虐な兄弟である。猫を焚き火に放り込んだり、婦女暴行、窃盗は当たり前で、詐欺、暴力団とツルんでの覚醒剤の転売。最近では貧困ビジネスにまで手を伸ばしている。
同じ悪でも『罵多悪怒愚』とはかなり異なる人種である。
ユキヤは少年時代、この兄弟が身の毛もよだつほど怖かった。
当時通っていた『出解西中』の校門前の土地を陣野兄弟が不法占拠し、拡声器を使い、意味不明な怒声を上げて嫌がらせをしていた。そこを通りがかったのが、CBXにニケツした梅豚とタケシである。
タケシに押さえつけられ、兄が右耳、弟が左耳を梅豚に短刀で切り落とされた。ユキヤはこの光景を目にし、嘔吐した記憶がある。そして梅豚とタケシは、陣野兄弟が不法占拠した建物に火を放ち全焼させてしまった。
そんな因縁もあるのだ。
それからもチョイチョイツチューラで悪さをしているとは聞いてはいたが、あまり眼中になかった。
しかし今は早くこの兄弟を見つけて殺すのみである。依頼人のピーコもろとも・・・・・・。
病院の出口の自動ドアが開くと・・・・・・
!?
救急車用の駐車場に停車された一台の古い中型マイクロバスをベースに作られた街宣車。
屋根には前二つ、後ろ二つの巨大スピーカー。そのスピーカーのチョイ後ろに赤色灯が付けられ、鉄板が乱雑に溶接されたシルバーのボディーには『大日本 梅神會』の明朝体のデカ文字に日の丸!
この神聖なる街宣車は・・・・・・!
ユキヤ渾身の傑作にして名作・・・・・・。
『罵多悪怒愚 局地戦闘機』。
通称『雷電☆改』である!
フロントガラスには網が溶接され、微かに見える運転席に座る若干後退した坊主頭の男は・・・・・・・・!
『罵多悪怒愚』副総長!
アッチャンである!
スピーカーからひび割れたアッチャンの声が流れる!
《遅ぇぞユキヤ。乗れ!》
ユキヤの鼓動が早くなる!溢れて流れそうな涙を我慢し、鼻の奥がツンとなる!
やはり、
やはり、
『罵多悪怒愚』なのである!
そして備え付けのハシゴで屋根に登り、室内に入る!
この街宣車は構造が複雑で、横の扉は開かない仕組みになっている。
運転席のアッチャンが叫ぶ!
「行くかぁ!殺し合いによぅ!」
激しい街宣車が怒涛の如く発進する!
マトは・・・・
秘密結社『爆弾党』党首。
陣野兄弟!
殺戮の抗争に突入である!




