愛すべきロクデナシ ~激震~
有害指定都市ツチューラ市内 荒巻町 『わんわんオートサービス』ユキヤのヤード 午後16時23分。
あの日から梅豚はおろか『罵多悪怒愚』メンバーからも何の連絡もない。
思案にくれるユキヤ。
自分は間違っていただろうか?
ひたすら自問自答を繰り返し、日々を送っていた。
その時。
『わんわんオートサービス』敷地内に入ってくる超高級車。
この車はツチューラではまだ見かけないLSの最新型。
何処かのショップが金に物をいわせ仕上げたコンプリートカー。
その値段は軽く四桁は行く。
運転するのは・・・・・・
『罵多悪怒愚』本部長タケシだ!
プレハブ小屋から外に飛び出すユキヤ!
「タケシさん、どーしたんスか?これ。この辺じゃまだ出回ってないっしょ?」
興奮気味に尋ねてくるユキヤを呆れた目で見つめるタケシ。
そして、
「こんなモンどーでもいい。時間ねぇから簡単に言うぞユキヤ」
「はぁ」
「梅ちゃんが襲われたぞ、今病院で生きるか死ぬかの瀬戸際だ」
「!?」
言葉にならないユキヤ!あの梅豚が!?
「昨日サクランボ町で キャバクラ三軒ハシゴで全滅させて泥酔してフラフラ歩ってっトコ後ろから鉈でメッタウチだ」
「・・・・・・・!」
そんなバカな!
「オメェは『罵多悪怒愚』抜けた人間だからあんま言いたくねぇけど」
少し間をおくタケシ。そして、
「犬は一度受けた恩は死ぬまで忘れねぇってな。テメェは犬以下かよ」
「・・・・・・・・。」
そう言ってタケシは去ってしまった。
・・・・・・・・。
とんだ大バカ野郎だ!自分は!
ユキヤは思い起こす!
梅豚、アッチャン、タケシ、タックン。そしてマナ。
いつも一緒だった!
朝から晩まで大騒ぎし、気絶するまで酒を飲んだ!
『罵多悪怒愚』が暴走族時代に、ユキヤの実兄ユキオが梅豚に託したCBX400F。それを梅豚は自由自在に駆り、ユキヤは左右に揺れるテールランプを追いかけた。
直管の音にパトカーのサイレン。
一番ユキヤは年下だからイジられながらも可愛いがられていた。人生の半分以上どこで飯を食ってる?
誰に育ててもらったんだ?
梅豚とマナである。
辛く悲しい事が多かったが、いつも腹いっぱいに飯を食わせてくれた!
ユキヤは引っ掛かっていた何かがわかる。
今までは自分が梅豚を守ってると思ってた。
それは慢心だ。
守られていたのは自分である。
先日のピーコとの揉め事も、梅豚はユキヤを助けに来たのだ。そしてユキヤの為にガチなタイマンを張った!
去って行く梅豚の背中が悲しげだったのもわかる!
一刻も早く梅豚の元へ行かなきゃならない!
ユキヤは手近にあるだいぶ年季の入った黒いセンチュリーのリムジンに乗り込む。
これは以前梅豚が、「古いセンチュリーのリムジンが欲しい」と言っていたので誕プレであげようと売却せずに取り置きしていた車だ。
この車で行くのが相応しい。そしてキチンと謝ろう!
タケシの後を追いかけるユキヤであった。
今なら兄がなぜ梅豚にユキヤを託したのかわかる!
行こう!愛すべきロクデナシのところへ!




