羅刹の街 最終章~D・I・Jのピストル~
有害指定都市ツチューラ市 駅前 『喫茶キャロル』 午後13時26分。
相変わらずな、昭和な風情の店内。
時代は『失われた30年』の堕落の平成を終えて『令和』をむかえてもこの店は頑なに時代に適応しようとしない。
それも頑固な店主の意地なのであろう。
某ロックスターのポスター。
様々な昭和の不良達に愛されたアンティーク品の数々。
テーブルがわりの当時物ゲーム筐体。
説明する必要も今更ないが、ここはあの『罵多悪怒愚』の『巣』である。
閑散とした店内の奥には・・・・
!?
赤髪のリーゼント。
crazy butter dogと可愛くプリントされた長T。
クロムハーツを身に纏った小柄で細身の体躯。
あっさりした小顔には切れ長な目が座っている。
・・・・・・・・。
若かりし頃の『梅豚』に瓜二つのこの少年は・・・・
『罵多悪怒愚』武力抗争隊『友極會』隊長で梅豚の甥っ子。
『Uチビ』である!
目の前にはクリームソーダとチリドッグ。
Uチビの大好物である。
これさえあれば生きて行ける。
表の駐車場にはド派手なセリカXX!
BGMは『BLANKEY JET CITY』の『ロメオ』だ!
紙ナプキンで口を拭い、セブンスターに火を着ける。
ゆっくり煙を吐き、Uチビは考慮する。
『今日は誰をイジメてやろうか?』
ゴキゲンなBGMに乗せ、悪知恵をスライドさせる。
Uチビはとても『悪い事がしたい』のだ。
これも狂暴なDNAが作動している。
仕方ないであろう。
このUチビは、まだまだ青いが、殺人集団『罵多悪怒愚』の『最新型のピストル』であり、梅豚から直々に武力抗争隊の『友極會』を任されている。
十代にしての異常なほどの狂暴性は群を抜き、ツチューラ、そして『罵多悪怒愚』内部でも恐れられている。
流れるロックンロールでノリノリのUチビは、スマホを手に取り、『友極會』副長兼『撲殺天使』首領の『ケンゴ』に電話する。共に『罵多悪怒愚』別動隊である。
「ケンゴか?暇だからよ、ヤクザの事務所襲撃行こうぜ?仮設された警察署でもいいな」
・・・・・・・。
電話越しにケンゴの溜息が聞こえる。
《あのなぁU。オメェよ、アッチャン先輩の家に部屋住みさせられたのに全然懲りてねぇな》
随分と全うな事を言うケンゴ。Uチビにしたら苦い過去だ。しかし、
「眼中ねぇよ。梅豚なんか。それよりアッチャン家からAK47(カラシニコフ)盗んできたんだ。ヤクザや警察蜂の巣にしてやろうぜ」
・・・・・・・
電話越しのケンゴもこのUチビの提案は、かなりテンションが上がる内容であった。考えこむケンゴ。すかさず、
「んじゃキャロルで待ってっから。すぐ来ぉよ」
有無を言わさず通話を切るUチビ。
強引さまで梅豚にそっくりである。
店内を流れるロックンロールの歌詞が、Uチビの思考とリンクする。
『ねぇ アンタ少し変だよ~♪』
ケンゴが来るまで暇である。
Uチビは、腰に挟んだレンコン式の拳銃を『ゴトッ』とテーブルに置く。
この拳銃は、叔父の梅豚が『飽きた』との理由でUチビにくれた物だ。
梅豚は当時幼いUチビの前で、この拳銃をぶっぱなし人を殺害して見せた。記憶は薄いが、確か金銭絡みだ。
その時ある男を監禁部屋で拷問し、転がしていた。
うろ覚えだが、その時の梅豚のセリフは、
『ハシタ金コイツから取り立てるより、殺しちゃったほうがスッキリする』
と、次の瞬間、ソイツの頭をこの拳銃で吹き飛ばした。
それは爆発に近かった。
男の顔面が木っ端微塵になった。
そしておびただしい血液は、男の隣に腕組みして立っていたマナの白い脚にミートソースのようにブッかかった。
梅豚とマナはとても楽しそうに笑っていた・・・・。
美学・・・・。
魅力的なマナの白い脚にブッかけられた血塗れミートソース。
エロチックで甘美・・・・。
その時初めてUチビは、生身の女で勃起した。
それは今でもハッキリ覚えていた。
あれからUチビも、数知れずの殺人を重ねた。
『例の場面』を再現しようと目論んだ事もあった。
しかし梅豚のように鮮やかには行かなかった。
越えてやる!
叔父に負けない殺人鬼となり、マナに負けない美女を連れ、この羅刹の街で登り詰める。
権力。
暴力。
金力。
人力。
幸い、梅豚が下地は作ってくれた。
あとは面倒な『罵多悪怒愚』首脳部を引退させ、Uチビが跡目を継ぐだけである。
すると、
猛烈な地鳴りのような爆音。
キャロルの駐車場に、弾頭のような紫の塊が突っ込んで来た!
二枚ドアのケンメリ。
デッパ、ワークス、タケヤリ、延長っパネ。
見るもおぞましい怪獣のような旧車。
・・・・・・・。
ケンゴである。
坊主頭にゴリラマッチョな体型。
コイツはどことなくアッチャンを連想させる。
キャロルの店内に入ってきてUチビの前に腰をおろすケンゴ。
そして店主にトカゲ入りのテキーラを注文する。
イカレてる。
ケンゴはトカゲテキーラを一気に半分ほど飲み干し本題に入る。
「で?AK47、アッチャン先輩からパクってきたんか?」
興奮気味のケンゴである。早くマシンガンから『真っ赤な野イチゴ』を放出させたいらしい。
「当たりめーだろ。あんなアッチャンのウスノロの目をだまくらかすのなんか訳ねぇんだよ」
事もなげに吐き出すUチビ。
「んじゃ早く誰か殺して『試し撃ち』すっぺよ!なっ?ヤクザでも警察でもいいからよ」
まくし立てるケンゴ。しかし、
「うるせぇな、この早漏野郎がよぉ」
ダルそうに呟やくUチビ。
何をするにもCOOLに行きたい。
『罵多悪怒愚』本来のやり方をUチビは変えていきたいのだ。
「やっぱドラマチックにやりてぇだろ?ロックな感じでよ」
やはり姿形は梅豚にそっくりだが中身はだいぶ違う。梅豚はこのように屁理屈を述べたりはしない。
ケンゴは理解不能な様子で、視線をキャロルの駐車場に移した。
その時。
!?
駐車場のUチビのXXとケンゴのケンメリの前で、不気味な延長自撮り棒でドヤ顔で撮影を決め込む『短ラン』に『ボンタン』の学生服姿でチリチリパーマの一人の中年男。
その中年男は命知らずな事に、二人の愛機を我が愛車の如くベタベタ触りまくっている。
こいつは?
ケンゴがUチビに、
「オイ。U。アイツ」
ケンゴの視線を追うUチビ。そして、
「ケケケ。『奥野』のバカじゃねぇか」
嬉しそうに立ち上がり、万札をレジに置き店をでる二人。
・・・・・・・・。
相変わらず、学生服姿の中年男の奥野は、二人の愛機を触りまくり、写メを撮りまくっている。
写メは全然かまわないが、人の車を無断で触るなどは言語道断。他人の彼女に痴漢してるようなモンである。
しかし、そんな事はどうでもいい奥野。
鼻息を荒くし、あろう事かドアノブにも手を掛けた!
奥野は許せないのだ!自分以外、こんなイジった旧車に乗るなどとゆう事が!自分が若い頃の片落ちが、今は旧車になり膨大な値段がついている!凄く欲しい!しかしビンボッタレ奥野に買える額ではない!じゃあどうするか?
写メを撮りまくってネットで拡散し、妙な掲示板に匿名で嫌がらせをするのだ!
これがこの気持ち悪いジジイの主な活動だ!
現にこの手のヤツは大多数存在し、自分の意にそぐわない改造を施した車やオーナーにネットの匿名性を生かし攻撃する!残酷な書き込みや、本名晒し、時には家族まで晒して悦に入っている。
じゃあ自分で買えば?
無理。
買えない。
何故?
貧乏だから!
・・・・・・・・。
ゴミ野郎である。
背後から迫るUチビとケンゴにはまだ気づかない奥野。
何やら今撮りまくった写メをネットにあげてるようだ。
真後ろまで来たUチビにまだ気づかない。
そして暗く残忍な声をかけるUチビ。
「オイ、コラ」
瞬時に『ビクン』となる小動物奥野!
それを見下ろすUチビとケンゴ。
奥野はジリジリ後退りながら、
「ハ、ハハハハァ!これキミ達の車だったの?カッコよくイジってんね!アハハァ」
・・・・・・・・。
Uチビは、XXの紫の七色ラメが吹かれたボディを確認する。
至るところにこの小汚いジジイの油ぎった指紋が、鳥の糞のように付着していた。
ケンゴのケンメリも似たような状態だ。
ケンゴは怒りの形相で、奥野を問い詰める!
「あ?俺達の車 指紋でテメェの小汚ねぇ頭みてぇにベタベタんなっちったじゃねぇか。どーしてくれんだよ?」
殺す気のケンゴの剣幕に奥野は
「アハハァ、これくらいの事で怒るなよ ちゃんと磨くからさぁエヘヘェ」
すると、急激に浮上する奥野の体!
Uチビが、奥野の襟首を、猫掴みするようにリフトした!
「これくらいの事だ?この野郎」
憎々しげにUチビは奥野を引き摺っていく!
「ヒイィイ、やめろぉぉぉお 頼むからぁぁぁあ」
情けなくUチビに命乞いするヘタレ奥野。
ゴキャア!
瞬時に、キャロルの駐車場入り口の、ガードレールに頭を叩きつけられる奥野!
血が噴水のように舞い上がる!
「ぎゃあああぁ!痛いよお!痛いよお!」
泣き叫ぶボンクラ奥野!
ここまでのヘタレも珍しい。喧嘩を仕掛けたのは奥野だ。
他人の車をイタズラして、冗談では済まされない。
Uチビは、腰からレンコンを抜き出すと、奥野に照準を合わせる。一思いに殺したほうが世の為である。
すると。
!?
この空間を切り裂くように、侵入してくる一台のマルーンの旧車。910ブルーバード。
こ、コイツは!
・・・・・・・。
『罵多悪怒愚』親衛隊長兼密偵。
タックンである!
例によって絶叫するタックン!
「殿下ぁぁあ!なーんでですかーー!」
ちなみに『殿下』とはUチビの事である。
タックンはいわゆるUチビのお目付け役的な役割も、梅豚から任命されていた。
「ダメです!ダメです殿下ぁ!簡単に殺しちゃあ」
Uチビは、うっとおしさに思わず舌打ちする。
「チッ、ウルセーな。コイツは俺達の車ベタベタ触ってネットで晒そうとしたんだゼ?殺さねぇと『罵多悪怒愚』の看板が泣く」
ケンゴもUチビに続き、タックンに意見する。
「タックン先輩。黙っててもらっていいっすか?このダニ野郎だけは早く殺さねぇと」
するとタックンは表情一つ変えず、
「だから簡単に殺しちゃあダメって言ってるじゃあないですかー。苦しめて殺さないと」
!?
何と!
タックンは、Uチビの拳銃でズドンとゆう殺しかたでは、ぬるいと言っているのだ!
するとブルーバードのトランクから、道具を持ちだしてくるタックン。
その道具は・・・・
!?
チェーンソーである!
タックンはヒモのようなスターターを「ふん!ふん!」と引っ張り、
コココッ!スココッ!バイーン!バイーーーン!
と、チェーンソーのエンジンを始動させた!
そしてチェーンソーをUチビに渡すタックン。
「ささっ、殿下。どうぞっ!一思いにバラバラに切り刻んじゃいましょ!さあ!さあ!」
蒸気した顔で、Uチビに殺しをせがむ狂ったタックン!
Uチビは、拳銃や刃物などの殺人の経験はあるが、チェーンソーでバラバラ殺人の経験はない!
しかしケンゴも見てるし、自分は時期『罵多悪怒愚』の総会長だ!
・・・・・・。
やってやる!
覚悟を決めたその時!
!?
Uチビの手からチェーンソーを優しく取るタックン!
そして、バイーーーン!ンン!バイーーーン!
と、あっという間に奥野の首を木こりのように切断した!
ゴロゴロ!と、ケンゴの足下に転がる奥野の生首!
「うおっ!」
さすがのケンゴも思わず声を上げる!
奥野の首の断面からは、噴水のように血液が飛び散る!
硬直化し、動けないUチビ!
いつも、のほほんとし、バカにしていたタックンがあっという間に修羅場を構築した!
そして何事もなかったかのようにチェーンソーを片付けているタックン。
そして、
「さぁ、二人とも。本家に帰って総長と遊びましょう。マナさんが晩御飯を作ってくれます。今日もカレーです」
・・・・・・・・。
Uチビはしみじみ思う。
これが第一線で、屍を積み重ねてきた『罵多悪怒愚』本隊、大幹部タックンの恐ろしさ。
梅豚。
アッチャン。
タケシ。
タックンより上のこの三人はこれ以上の、どれほどまでに広大なる力を持っているのか?
Uチビは嬉しい。
俺の『罵多悪怒愚』!
D・・・・ドキドキするような
I・・・・イカれた
J・・・・人生
羅刹の街で築き上げる!
愛すべきドクロの血と共に!
RESPECT SONG 『D・I・Jのピストル』by BLANKEY JET CITY




