羅刹の街 第四章〜鬼子と鬼子の恋時雨〜
昔、遥か昔。
昭和が終わり、新時代の平成を迎えた頃・・・・
ネットやスマホもない。
物凄くアナログな時代に、
運命の悪戯的に出逢ってしまった、
鬼子と鬼子の恋のラプソディー。
過去に想いを馳せる。
ちょっと時間の巻き戻しだ。
秒針を指で回してみる。
狂狂と・・・・・・
199x年 有害指定都市ツチューラ市 流行商業区域 モール5910有料駐車場。午後26時47分。
鉄錆びの味。
アスファルトの小石も混ざったニガイ味だ。
何回この味を噛みしめたろうか?
殴られ蹴られ、叩きつけられ、転がされた梅豚は思考を巡らせる。
今日も負け戦だ。
いつもと変わらない。
いつもと変わらず、適当な不良に一人で喧嘩をふっかけたが、見事惨敗。
しかし酷くヤられた。
喧嘩相手の二人組は嘲笑い、捨て台詞を吐き、とっくに去っていた。「クソ弱ぇな。文句あったらいつでも来いよ。兄ちゃん」
・・・・・・・
情けない・・・・
左目は腫れて塞がっているし、鼻や唇からの出血も止まらない。歯も数本折れている。
立てるか?
僅かに力が入る右手を軸に、生まれたての子馬のように立ち上がろうとする梅豚。
しかし、惨めに尻餅を付いてしまう。
諦め、ジーンズのポケットからセブンスターを取り出し、ジッポで火を着ける。
吐き出す煙は、鉄錆びの味だ。
「クソがよ・・・・」
鉄錆びの味と共に梅豚は毒づいた。
復讐?
容易いだろう。
アッチャンやタケシを連れてくれば一瞬でカタがつく。
しかし、それではダメだ。
己自身、強く有らねば、生きては行けない。
そう、
『罵多悪怒愚』総会長として。
若かりし日の梅豚である。
この時、十七歳。
血を流し過ぎたのか?
梅豚は朦朧とし、倒れてしまう。
心を暗闇が覆い、無心になる。
そして、いつもの妙な世界に引き摺り込まれる。
一筋の光の先を辿って行くと・・・・
!?
妙な『猫耳』?を付けた形容し難い『フリフリ』な服を着たショートカットの女が一人・・・・。
梅豚はラリってる訳ではない。
とっさに
「何だ?テメェ」
と、威嚇する。
しかし『猫耳女』は怯む所か、楽しそうに、
「君、超弱いねw」
と、ヌカして来た!
これ以上ない侮辱だ!
人間、正直な事を言われると腹が立つ!
「ウルセー!妙チクリンな耳着けやがって!女だからって容赦しねぇぞ」
吠える梅豚!
・・・・・・。
梅豚はよくこの現象が起こる。
夢でも現実でもない不思議な世界。もうひとつ違う『別次元』の世界に入り込んでしまう。
よく分からないが・・・・
猫耳女が続ける。
「キミさぁ~、何で弱いのに素手で向かってくの?そんでいつもボコボコ。いい加減気付けよw」
「分かってるよ!凶器持てばいいんだっぺ?でも素手喧嘩で、自分を試したいんだよ。俺だって暴走族なんだから」
挑発的な猫耳女に、少年らしい返答をする梅豚。
しかし青い梅豚に厳しく言葉を投げる猫耳!
「認めたくないモンだな。自分の若さ故の過ちってヤツを」
「そ、それって!?シャアか?」
瞬時に『アムロ風』に返す梅豚!
猫耳は半ば呆れながら、
「はぁ~、とにかくキミも暴走族のリーダーなんだから、これ以上負けは許されないよ?どんな手段を使っても勝たなきゃダメ。仲間が離れてくよ?」
「・・・・・・・・」
「戦いとは、常に二手三手先を読むものだ」
「まっ、またっ!シャアかっ?」
「・・・・。キミは『鬼子』と呼ばれ、小さな頃から蔑まれてきたね。流れる血に逆らわず荒ぶればいい。狂暴に残忍に」
猫耳の言葉が、梅豚に突き刺さる!
梅豚の胸の鼓動が早くなる!
猫耳の声がこの暗闇を切り裂く!
そして道を照らす!
いつの日か今の言葉が、俺のものになれば・・・・
なればいいな・・・・
ナレバイイナ・・・・
なりますように・・・・
ナリマスヨウニ・・・・
すると・・・・
!?
猫耳が梅豚の額に手を当て、念を込め祈る。
「もっと祈って」
猫耳が強く投げ掛ける!
ナリマスヨウニ・・・・!
すると梅豚から、途方もない精神力と悪知恵が土石流のように溢れだしてくる!そして、
「明日、『ツチューラ文化』に行ってみて。其処にキミとよく似た『鬼子』がいるから」
と、梅豚にステキなプレゼントを与え、徐々に遠ざかる猫耳。そして梅豚の意識もリアル世界に戻ってくる。
元のモールの駐車場に戻っている梅豚。
何事もなかったように立ち上がろうとすると、
ゴロン・・・・
梅豚の足元に無造作に転がっている極太の木刀。
刀身には『鬼子開心 支離滅裂』と彫り込まれていた。
木刀を握り、不敵に微笑む梅豚。
あの、爬虫類の笑顔。
鬼子と忌み嫌われた笑顔。
いつの間にか痛みも消えている。
行くのだ。
同じ鬼子に逢いに・・・・。
翌日。有害指定都市ツチューラ市真横町 『ツチューラ文化女学院』午後13時12分。
退屈。
めっちゃ!
先公が訳わかんない事喋って。
授業って?
意味あんの?
結果、誰も聞いてねーし。
女子高だし!
男子いねーし!
周りチャラいし!
つまんねー!
カレシほしー!
・・・・・・・
こんな事を『偏差値底辺』な『ツチューラ文化』の教室の一角で考えてる一人の女子。
コギャルの全盛期に『短ブレ』の『ロンスカ』でキメてる、かなり浮いたJK・・・・
・・・・
やはり・・・・
マナである。
この時、十六歳!
既に妖艶な色気を醸し出しており、とても十六歳には見えず、悪い言い方だと老けていて、これでは同年代とは合わない筈である。
しかし、マナはモテモテで、ラブレター(古っ!)は軽く2トントラック一台分は届くし、告って玉砕した男は数知れずおり、アダ名は『不沈空母』である。ロンスカに隠された脚が、また想像力を掻き立てるのだ。
二階の窓際の一番後ろの席で、ボンヤリしてるマナ。
すると・・・・。
物凄い直管の音が鳴り響いてくる!
数台規模である!
来た!
ツチューラ文化恒例!『学校流し』だ!
一斉に窓際に集結するツチューラ文化女子!
通常の女子高と違い、ツチューラ文化は学校全体が『中二病』をこじらせており、まだまだヤンキーがモテた時代なのだ。この『学校流し』は現役の暴走族がメインで、今では考えられないが、本人達はカッコいいと本気で思っていて、バイクでコールをおもいっきりカマす為、授業は一時中断。暴力教師が飛び出して行き刈る事もあったのだ。
マナは『またバカが来た』と溜め息が出るが、校内のボルテージは上昇し、先公は消えてしまう。
どうせ授業にはならないのだ。
やがてその『迷惑集団』は、校庭に侵入してきて、騒音を撒き散らす。
一人のバカ女が、「珍しいぃ~『罵多悪怒愚』じゃん」と歓喜している!
????
『罵多悪怒愚』?
変わったチーム名称である。
マナは思う。
弱そうだしダサい!しかも何気に卑猥だ!
きっと豚みたいなヤツがリーダーで、『アンパン』をキメて『ラリラリ』の『超絶ダサ坊』達であろう!(←ここまで言う?)
「梅豚くんだ!ちょっとカッコよくなってない?」
バカ女が絶叫してる。
やはり『豚』がリーダーか!
どれどれ、家畜のツラを拝んでやろう。マナが一ミリの優しさで校庭を見つめたその時!
!?
スリムで華奢な体型。
見たこともないようなド派手なバイク。
赤髪のリーゼント。
その下には傷だらけの小さな童顔が乗っている・・・・。
・・・・・・。
全然『豚』じゃない!
しかもありふれたヤンキーともかなり違う!
何だろう?
わからない。
やってる事は只の暴走族だ。
しかし、梅豚と呼ばれる少年は何故か・・・・。
何故か胸を打つ・・・・。
・・・・・・
その後『罵多悪怒愚』と呼ばれた、梅豚を含む三台のバイクは稲妻のように去っていった。
マナは不思議な気分だ。
一瞬、梅豚と目があった気がした。
気のせいだろうか?
すると、
「ねぇマナ。見た?今の暴走族」
マナの数少ない友人、『リサP』が話しかけてくる。
リサPはセオリー通り、ミニスカートにルーズソックスでギャルギャルしてる。
「う、うん」
曖昧に返すマナ。
リサPが続ける。
「あの『罵多悪怒愚』ってさぁ、赤髪の梅豚くんが頭張っててぇ、その後ろ走ってた坊主のアッチャンが副長。三台目のニケツの運転してたのが本部長のタケシくん、後ろ乗ってたのが、えーと確かタックスくん。(←誤字)梅豚くんの参謀だってさ」
やはり、かなり変わった暴走族のようだ。
ますます興味が沸いたマナは、リサPからさりげなく情報収集を目論む。
「ふ~ん。でさ、『罵多悪怒愚』は有名?そんで強いの?」
まずはミーハーな質問を飛ばす。
「チームはまだ新しいけど、元は出解村の不良達に代々受け継がれてきた『狂犬連合』が母体だって。梅豚くんの代になって『罵多悪怒愚』に名前変わっただけだから有名だね。んで全員がムチャするし、ヤクザとも平気で喧嘩するから強いんじゃないかな?」
やっぱり!
想像通りのキチガイだ!梅豚は!
しかし、リサPも、現代風に言えば『ググった』のか?と聞きたくなるほどで、この情報量が少ない時代によく調べたモンである。
・・・・・・!
まっ、まさか!
リサPも梅豚を?
マナの心がざわつきだす!
「リサ。まさかアンタあの梅豚、くん好きなの?」
首を縦に振った瞬間、襲ってやろうと思ったマナだったが、
「キャハ、ありえねーし。アタシはタケシくんがいいなぁ。ちょっと『竹○内豊』入ってんしぃ」
マナはホッとする。
たった一人の友人を無くさずに済みそうだ。
そんなマナを、訝しげに見つめるリサP。
そして見抜いた!
「あーーーっ!マナ、梅豚くん好きんなっちったのぉ?いよいよ『不沈空母』も女に目覚めたかぁ?い~んじゃない?梅豚くん!ライバル多いよ~?」
教室中に響くデカイ声のリサPの頭を、マナは薄っぺらの通学カバンでぶっ叩き、教室を後にする!
「痛ってぇなぁ~、マナ!あとひとついい忘れたんだけど」
「何だよ?放送宣伝車!」
「『罵多悪怒愚』は全員入ってっかんね!」
「何がだよ?」
「彫りモンだよ。刺青!」
・・・・・・。
マナはそのまま教室を後にした。
刺青?
今では、旧車會などをやっている若者や、ちょっとヤンキーなヤツなど刺青を入れている者はさほど珍しくはないが。
当時はまだ刺青の敷居は高く、タトゥーすら普及していなかったのだ。和彫りなど入れてるのはヤクザ位で、本当に珍しかった。
歩きながらマナは考慮する。
『罵多悪怒愚』はかなり特殊だ。
リサPが言っていた、役付けも『副長』やら『本部長』やら『参謀』などヤクザっぽい。
直接話がしたい。
あの梅豚と。
マナは授業をバックレ、きっと逢えるであろう場所に向かった。
有害指定都市ツチューラ市駅前ロータリー。午後14時46分。
数分前から、かすかに小雨が降りだした。
ここなら梅豚に逢えるはず。
そんな予感がマナにはする。
色々話がしたい。
こんなに男に興味を抱いたのは初めてだ。
それくらい梅豚のインパクトは強烈だった。
とりあえず雨を凌ぐ為、バスターミナルの屋根の下で、セブンスターに火を着けるマナ。
この時代は何処でも喫煙OK!未成年もOK!なのである!
雨も上がり、また日差しが照らしてきた頃、ロータリーに不気味な車が入ってくる。
車高だけオトした、ダサダサのエスティマ。
運転席と助手席には、茶髪の猿男が二匹。
その二匹が、マナを見ながら何か車内で話している。
そしてゆっくりバスターミナルに近づき、マナの脇に停車する。無謀にもアタマ悪そうな声でマナに、
「そこのカッコいいロンスカのカノジョ!俺のビシキマなエスティマ乗ってかない?」
「どこまで行くの?送ってくよ?カノジョちょっとさぁ『工○静香』に似てね?よく言われるっしょ』
・・・・・・
呆れた。
もっとマシな声のかけ方があるだろう。
猿男の顔面偏差値は8点である。
車高オトしただけの、ダサダサエスティマでビシキマとは笑わせる。
マナには梅豚に逢うとゆう大切な使命がある。
このようなクソ雑魚は一刻も早く駆逐せねば!
「ウルセーよタコ猿。テメェのツラみてモノ言ってんのか?勃起の遮断機上げてツバ飛ばして喋んなよ。気持ち悪ぃな」
一刀両断に切り捨てるマナ。物凄いセリフだ!
しかし、なすすべがなく、激昂する猿男達!
「なんだと!?クソアマがぁ!拐ってマワしてやっからよお」
猿男二匹が、憤怒の表情で車から降りてくる!
ダッシュボードのプレートには『ツチューラ苦愛』の文字が!
ツチューラ市内をナワバリとする、窃盗、強姦、薬物何でもアリの愚連隊だ!
男達は、マナの細い腕をとり、引き摺ってく!
ヤバい!
マナはパニックになるが、最悪、こんなクソ野郎共に無賃乗車されるなら、舌を噛みきり自害してやる!
腹を括った!
その時!
ロータリーを疾走してくる一台の単車!
ブオオオオオォ!オンオン!ブオオオオオォ!
物凄い爆音で、エグい改造車!さっき見たばっかりだが懐かしい!乗車してる赤髪のリーゼント!
小柄なシルエット。
マナは泣きそうになる・・・・・・。
梅豚だ!
その表情は暗く、怒りに沈んでいた。
そして猿男二匹を睨み付ける!
赤髪も相成り、火の玉のようである!
男達の手は、マナから既に離れていた。
梅豚から舞い上がる怒りの炎に、たじろぐ猿男二匹。
コイツらは、昨晩、梅豚をボコッた二人組。
しかし、今は完全に梅豚に貫禄負けしている。
此処からは不良同士の喧嘩である。
梅豚は歩み寄り、マナの前に塞ぐように立つ!
鉄壁防御!
今のマナは、世界一安全な女だ!
焦りながら猿男が梅豚に掴み掛かる!
「テメェ!またボコしてやっか?ああ?」
と、梅豚の長袖Tシャツの胸ぐらを掴み引っ張った!
すると
色鮮やかな刺青が胸元からチラリズム!
(わぁ!キレイ!)
マナが思った次の瞬間!
ゴォキャァア!
梅豚のヘッドバッド(頭突き)が猿男に喰らい込む!
血を吹き出し、倒れ込む猿男!
「あ?気安く触んじゃねぇよ。クサレハンチク野郎」
覚醒に怒りが加わった狂犬は、無双の鬼と化す!
そして背中からは、猫耳女から授かった木刀を抜く!
そしてもう一匹の猿男に、情け容赦なく振り下ろした!
ガコッオ!
「ギャアアアアアアアア!」
血飛沫が、噴水のように舞い上がる!コイツはマナの手を強く掴んだ!許せない!
「ブチ殺しちまうぞ?コルァ」
梅豚は、メッタウチに木刀を叩き込む!猿男は段々、只の肉塊に変わっていく!
そして最後に木刀の先端の尖った部分で、猿男のコメカミを貫く!
断末魔の叫びもなかった・・・・。
梅豚の圧勝。
これが不良、暴走族の喧嘩!
・・・・・・。
マナは梅豚を見つめる。
梅豚は何事もなかったように、血で汚れた木刀を、猿男のジャージで拭いていた。
辺りを血の臭いが蔓延する。
梅豚は振り向くとマナに、
「だっ、大丈夫?強く掴まれてたよね?仇取ったよ!コイツは多分一生植物人間だから・・・・。あれ?」
マナは泣き出してしまった!
怖いんじゃない!
嬉しいのだ!
しかしパニックになる梅豚!
「俺、余計な事したかな?グヌヌ!ゴメンよ」
「違うよ!何であやまんの?嬉しいんだよ」
涙を拭い、心境を話すマナ。
「とにかく助かったしスゴく感謝だょ。アリガト」
素直な笑顔を見せるマナ。
梅豚は・・・・。
「べっ別にいいよ。これくらい」
超照れている!
マナは今度は正面から梅豚を見つめる。
身長は168位。
黒のロンTには、ポップでカワイイドクロがプリントされている。下は黒のジーンズにNIKEのスニーカー。ウォレットチェーンなどをぶら下げている!そして数々のシルバーアクセに極めつけの『シド・チェーン』!
わかった!
マナは理解した!
梅豚には、ヤンキーテイストの他にパンクロックのテイストがちりばめられている!
それが他のヤンキーと一線を画しているのだ!
髪も、金髪や茶髪ではなく、信号機のような赤!
そしてマナがスゴく気になる・・・・・・
バイクである。
フロントには、船の先端部分のような『ヒサシ』が付けられ(ロケットカウル)、驚きのカラーリングは、『炎』のような模様で、細かく繊細で、ちょっと見でも五色は使われている!その模様は、ボディ全体に及ぶ。そしてエナメル質の背もたれが付いた長いシート(三段シート)に、テール部分には『ギャルの付け爪』のような空高く延長されたカウル(超ロングツッパリテール)が装着されていた。
・・・・・・・。
見事お下劣。
だが、ここまでくると、アートには違いない。
まるで低俗雑誌『チャンプ道路(仮名)』の世界観!
マナは梅豚に訪ねてみる。
「これってさぁ、何てバイクなの?」
「CBX400Fだよ。友達の形見なんだ」
大切そうにタンクを撫でる梅豚。
・・・・・・
きっと命のように大切なバイクなんだ。
永遠に大切にするんだろうな。
マナが考えてると、
!?
おびただしいサイレンの音が響いてくる!
この一連の騒ぎで、通報が入ったのだ!
梅豚がCBXに跨がる。
そして
「乗んなよ。パクられるよ」
と、後部を親指で指しながら呟く。
三段シートに飛び乗るマナ!
そして梅豚の腰におもいっきり手を回し、背中に顔を密着させる!ホンワカ洗剤の香り!梅豚は華奢に見えるが、フムフム。やはり男だ!しっかりした骨格!
・・・・・・・。
大胆な『姫』である・・・・。
「あの~、そんなくっ付かなくても・・・三段シートあるし・・・まっ、いいか」
梅豚は深く考えず、CBXに火を入れる!
キュルルルルル!
ブオン!オンオン!ブワンバババババ!
泣くようなセルの後に、意図的にコールをカマす梅豚!
周囲からは蔑みの視線。
テメェらは風景の一部だ!バカが!
ギアを一速に叩き込み、クラッチを離しながらCBXを走らせていく!そして梅豚は車体を倒し、来た道を、ロータリーを逆走して行く!
ブワァァァァァァアン!バンバンボーー!ババンバンボーー!
狭い一方通行のロータリーの道を、『トリプルアクセル四回転』を繰り出し、狂ったように加速して行く!
マナの心臓は破裂しそうだ!しかし怖くない!
真っ正面からパトカーが向かってくる!
ぶつかる!
危なーーーい!
梅豚は、縁石ギリギリにCBXを寄せ、背中からさっきの木刀を取り出すと、
!?
バキャァァァァァアン!
と、パトカーのフロントガラスを叩き割った!
そして右足を上げると、二台目のパトカーのミラーを、
バコン!
と、蹴り折った!
警察が何やら叫んでいるが、
バァンババババババ!オンオンオンオン♪ブワンバババババ!ババンバンボーー!
嘲笑うかの如く、コールを切り、CBXを自由自在に操り、去っていく梅豚とマナ。
二人は疾風になった。
有害指定都市ツチューラ市 並河町 ファミレス『ゲスト』午後16時22分。
騒然とした駅前から一転。
静かな店内。
奥の席に座る梅豚とマナ。
それにしても凄い!
マナは感心してしまう。
梅豚は、愚連隊の猿二匹を半分殺し、マナを助け、パトカーまで一瞬で潰した。
物凄く危険に慣れている。
そして暴力と武器の高いスキル。
国家権力をも恐れぬスタイルは、ヤンキー漫画の主人公でも敵わない!
マナは決めている。
この人を旦那にする!
そしてさっき一緒に見た景色をまた見るのだ!
主人公の梅豚は、
・・・・・・
レモンティを『ふーふー』しながらスプーンで飲んでいる。
・・・・・・
猫舌なのか?
しかしマナにはとてもいとおしい存在。
まだ出逢って間もないが。
マナは悪戯に、両手をテーブルに乗せ、指を組み、その上に小さな顔をチョイナナメにチョコンと乗せた。
!?
こ、これはあざとい!
なんて小悪魔だ!
通常の男は、マナにこのポーズをされると、勝ち目のない暴力団にも立ち向かっていくし、火の中にも飛び込む!
梅豚も例外ではなく、スプーンで飲むレモンティの速度が倍速になっている!
完全に今はマナのターンである。
そして、
「ホント、今日はアリガト。梅豚くんが来てくれなかったらマジでヤバかったな。何てゆーかさ」
「いいよ。あんくれー。俺には新聞配達だ。でも何で俺の名前知ってんの?」
「クラスの子に聞いたんだょ。昼間学校流し来てたでしょ?そんでだよ」
「ふ~ん」
梅豚は感心無さげに、セブンスターにジッポで火を着ける。
マナと同じタバコ。
「昨日さ」
「ん?」
「さっきのヤツらにボコされてさ。んで」
ワンテンポおく梅豚。
「気ぃ失った時、頭ん中に指令が来たんだ」
随分不思議な事を言う。マナが返す。
「何て?」
「明日『ツチューラ文化』に行けって。そしたら其処に俺と同じ『鬼子』がいるってさ』
!?
鬼子・・・・
マナもよくそう言われ、父にぶたれた。
母が出て行ったのを、マナのせいにして現実逃避したかったんだろう。
まさか梅豚からこの言葉を聞くとは。
とても嫌で、思い出したくもないが、その言葉が梅豚と繋いでくれたんなら悪くない。
「それアタシだよ。その鬼子って」
梅豚は無言である。
「よくそう言われて親父にぶたれたんだ。オマエは鬼子だって。そんでね」
梅豚がマナの口を押さえる。
「いいよ言わなくて。それ以上聞いたら俺は親父さんを殺しちゃうし、マナが傷つくのは凄く痛いんだ」
!?
梅豚はマナの名前を知っていた!
他は言葉にならないほど嬉しい。
「いっ、嫌ね、仲間に聞いたんだ!あの窓際のロンスカの子誰って!そしたらタケシが知ってて!だからぁ!この際俺と、」
今度はマナが梅豚の口を押さえた!
「アタシが、ずっとそばにいてあげんね♪」
こうして最強の二人が結ばれた。
一卵性夫婦の誕生である。
そして現代。
二人共、ジジイとババアになってしまったが、その絆は永遠である。
出逢ったあの時の出来事は、摩訶不思議で、よくわからないが、きっとあの猫耳が、神がかり的な技で、魔法でもかけたのだろう。
マナがPCで、曲を聞いている。
とても、とても優しい曲だ。
キレイなメロディーが流れ出す。
《そして 君が知らずに 幸せな灰になった後で
僕は今更 君が好きだって・・・・》
ちょっとロックなイントロに乗せ、不思議な曲が走りだす!
《大人になりたくないよなんて大人ぶってさ
駆けた 少年の日 どうやら僕に訪れた悪戯は
相当タチの悪い 不老不死のおせっかい
神様(猫耳)ステキなプレゼントをありがとうなんて
到底的外れな 幼い冗談の奥に 大事に隠した
片思いは察してくれないんだ
追い越してく戻れない情景 好きな人にさよならを
いつか見た夕焼けは あんなにキレイだったのに
恋なんて呼ぶには 穢れすぎてしまったよ
そして血が流れて 世界が灰になった後で
僕は今でも ふいに君を思い出すんだ》
赤髪の不良少年と茶髪のロンスカ少女が、手を繋ぎ夕焼けを霞ヶ浦沿いに歩いて行く。
その先は、
メトロポリス・ツチューラ。
両思いの鬼子が二人寄り添って・・・・。
RESPECT SONG 『地球最後の告白を』by kemu




