表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
13/42

羅刹の街 第三章〜Uの系譜〜

有害指定都市ツチューラ市 車高短無法駐車帯『トリヒャク』午後15時03分。



広大なショッピングモールの駐車場に、我が物顔でたむろする旧車の数々。どれも値の付けようがないビンテージカーやバイクばかりである。


先日の『罵多悪怒愚(バタードッグ)』によるピンポイント爆撃は、ツチューラの公的需要施設をほぼ壊滅させ、大打撃を与えたが、このような自分達に好都合な施設は残していた。

警察は無力化し、国家の対応も遅い。


それはそうであろう。


日本一魅力のない都市の魅力のない街がどうなろうと、国家は知ったこっちゃない。

ましてや攻撃したのは、あの独裁国家と見ているのだ。

その国に対し、無礼がないよう『遺憾の意』で口撃しながら機嫌を取るのが先決である。

当たり障りないように・・・・



・・・・・・・・



これが日本である。



国家権力を無力化させる事に成功した、梅豚率いる『罵多悪怒愚(バタードッグ)』は、勢力を拡大させ、続々と県外からアウトローを呼び寄せ、手中に納めていた。

各県境には兵隊を配備し、国家権力が再建できぬよう、万全な対策を実施していた。

勿論、目障りな一般市民の退去は自由である。


現に、市民の半数が消され、治安が乱れまくった羅刹の街に人々は未練がなかった。別の安住な地に飛べばいいだけである。


悪党達に魅力的なこの街は、着実に、そして確実に理想の体制を築き、肥大する。



そして・・・・・・・・



ショッピングモールに集結している旧車の群れは、勿論『罵多悪怒愚(バタードッグ)』である。

その中で一際目を引くS30フェアレディZ。

罵多悪怒愚(バタードッグ)』特攻隊長『ユキヤ』である。


多くの若者を引き連れ、貫禄が二割増し位になっている。ちょっと前なら、これだけの改造車で集結していると、すぐに通報が入り、当局による嫌がらせが始まったが、今は何もない。何かあったら殺すまでだ。その為に、メンバー各位、拳銃や刃物で武装している。


これ見よがしに下っぱメンバーが叫ぶ。


「スゲェッスね!ユキヤさん、あん時のヘリ操縦してたんスカ?」


「ああ。」


面倒な感じで返すユキヤ。

興奮するメンバー。


「パネェッスね!やっぱ『罵多悪怒愚(バタードッグ)』は最強ッス。んでぇ、俺も会長に会わせてもらえ・・・・」


メンバーが言い終わる前に、ユキヤの強烈なケリが飛ぶ!


ドゴッ


「テメェが会長に会えるタマかよ?チョウタレんな、ガキ」


吐瀉物にまみれ、倒れるメンバー。


ユキヤが危惧していた通りだ。

メンバーが増えれば、こんなアホも増える。統率を取るのも大変であり、これが『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の為になるのだろうか?


しかし・・・・


それよりユキヤは気になる。


さっきから、遥か遠くから鳴り響いてくる爆音。


この音は『1G』のツインカムだが・・・・


マナの音じゃない。


ユキヤは自分が組んだ車やバイクの音は、絶対音感で聞き分ける。自分の調律した音じゃない。


もっと過激で暴力的なサウンド。


そして・・・・


その車が空ぶかししながら『トリヒャク』の駐車場に入って来た!






!?







紫メタリックの車体・・・・


散りばめられた七色ラメ・・・・


デッパワークス・・・・


ホースが垂れ下がったハッタリオイルクーラー・・・・


セブンパネがパテ埋めされ、スムージングされたリアには、カリーナテールランプ埋め込み・・・・


交差したボンネット出しタケヤリ・・・・



この悪趣味の限りを尽くした車・・・・





車種は、『セリカXX(ダブルエックス)』!



リトラクタブルヘッドライト(開閉式)は、片方が開かれ、片方が閉じられていて、眠そうな顔つきである。


ユキヤのZの真横に駐車させ、セリカのドアが開く・・・・




其処には!





・・・・






!?








身長約168センチ やせ型


『butter dog69』とかわいいプリントがされた白い長Tにデニム。足元はアディダススーパースター。数多くのシルバーアクセ。そして・・・・



赤髪のリーゼント!



これは!?




若かかりし頃の梅豚に瓜二つ!



この『コピー梅豚』は!




・・・・・・・・。





梅豚の実姉『梅子』の息子、つまり梅豚の(おい)である、

(ユウ)チビ』だ!





そして『罵多悪怒愚(バタードッグ)』武闘集団『友極會(ゆうきょくかい)』隊長!





何とゆう事であろうか?



確かに梅豚とマナの間には子供がいない!



しかし、しっかり受け継がれていた系譜!



罵多悪怒愚(バタードッグ)』も世襲を踏むのであろうか?



そして、のんびりユキヤに近づくUチビ!


ユキヤの顔が複雑に歪む!


コイツは梅豚の甥っ子であり、非常に扱いが困難である!


そんな事は知ってか知らずか『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバーをケリ飛ばして行くUチビ!



「オラ、テメェらボケっとタムロってねぇで『地廻り』して来ぉよ!あ?」


瞬時に発動する『梅』のDNA!


Uチビは年齢十九、あだ名は『極悪小僧』!



嫌な笑顔でUチビはユキヤに、


「ダメじゃん、ユキヤさんよぅ、こんなヤツら相手に油売ってちゃ。梅豚(オジキ)にドやされっと?」


大先輩のユキヤに対してコレである・・・・



ちなみに『罵多悪怒愚(バタードッグ)』副会長、アッチャンの少年期のあだ名が『極悪坊主』である。


すなわち、コイツは梅豚の外観と知能と残虐性、そしてアッチャンの性根と(こぶし)を持つとされており、母は梅子。父もそれなりに鳴らした不良で、まさにUチビは、核兵器級の『最狂混血(ハイブリッド)』である!


しかし、ユキヤもUチビに飲まれる訳にはいかない!梅豚にも厳しく躾るように言われてるし、特攻隊長としてのシメしもある!


「あ?誰に口きいてんだ小僧。会長の甥っ子ってだけでデケェツラしてんなよ」


突き刺さるユキヤの言葉!しかし、


「チッ、エラそーにしやがって。俺ぁ梅豚(オジキ)の名前なくてもアンタよりヤレンぜ?ユキヤくん」


もう黙っていられない!


ユキヤがUチビに、全開の横殴りを繰り出す!


しかし、呆気なく左手で受け止めるUチビ!


「んだよ?このメガトンパンチ」



!?



怪力ユキヤのパンチを軽く受け止め、涼しい顔をするUチビ!かなりの喧嘩スキルである!


流石に十代ながらに、一個大隊を贔屓目(ひいきめ)なしに、梅豚から任命されているだけの事はある!


しかし・・・・


鋭い前ゲリを飛ばすユキヤ。難なく左足で受け止めるUチビ!


が!


素早くUチビの赤髪の後頭部を掴み、前傾姿勢をとらせ、強力な膝ゲリを顔面に叩きつけるユキヤ!


潜血が飛び散り、後方にぶっ倒れるUチビ!



・・・・



やはり年季が違う・・・・


ユキヤの圧勝である。


周囲からは、歓声とも溜め息とも取れる声が洩れる。


ダテにユキヤも『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の特攻隊長を任命され、数十年に渡り、抗争のトップを走ってきた訳ではない!この喧嘩は、血と屍の歴史。


まだまだ若い『罵多悪怒愚(バタードッグ)』にこれからも教えていかねばならない。


すると。






駐車場に入ってくる黒い新型のエルグランド。




静かに『罵多悪怒愚(バタードッグ)』連の前に停車する。


搭乗しているのは・・・・




!?






運転席からタックン。


助手席からはタケシ。


後部中央からは梅豚とマナ。


最後部からはアッチャンが降りてくる!



罵多悪怒愚(バタードッグ)』最高幹部連である!



世界一の悪党集団・・・・






するとタックンが雄叫びを上げながら、


「殿下ぁーーー!(Uチビ)大丈夫ですかぁーーー!」


と、Uチビに駆け寄る!


そして、Uチビを抱擁し、



「ユキヤくん!ひどいじゃないですかぁーー!こんなに殿下の顔面殴って、嫌、蹴ってぇーーーー!」



・・・・・・・・。



異常な過保護っぷりを見せるタックン。


若い頃の梅豚を重ねているのだろうか?



それとは別の意図が・・・・



「しょうがないでしょうが!キッチリ上下は教えねぇと、俺だってやりたくてやってる訳じゃないですよ」


反論するユキヤ。


「な!な!な!なーーーーんでですかーーーーーーー!」


絶叫し、パニックになるタックン。



そんなやり取りを梅豚とマナは『ヤレヤレ』といった感じで見つめ、タケシはエルグランドにもたれ、楽しそうに成り行きを観察。アッチャンは相変わらずスマホゲームに夢中だ。



するとUチビは、


「気持ち悪ぃな!離せよ」


と、タックンを振りほどく。


捨てられた子犬のような表情になるタックン・・・・



そしてセリカに向かい歩いて行くUチビ。


ユキヤが梅豚達に問いかける。



「どうしたんですか?皆揃って。新入り達、ビビってんじゃないっスか」


当然である。



新入りの『罵多悪怒愚(バタードッグ)』メンバー達は初めて見る伝説の幹部達に狼狽している。



梅豚が答える。


「いやぁな、随分と趣味クソ悪ぃXX(ダブルエックス)が走ってたからよ、どんなヤツが転がしてんのかツラ見たくてよ」


角刈りの黒髪になり、年相応になった梅豚が、Uチビに聞こえるようにディスる。


脚が止まるUチビ。


そして自身の愛機、セリカXX(ダブルエックス)を見つめる。


この車は、十八の誕生日に、梅豚とマナが買ってくれた。Uチビはほとんどノーマルのこのセリカを、自身が率いる『友極會(ゆうきょくかい)』のメンバーと、全開でドレスアップした。通常『罵多悪怒愚(バタードッグ)』のメンバーは、ユキヤにカスタムは一任する。


しかしUチビは、梅豚への反発心なのかそれをしなかった。勿論、梅豚がこのような車のイジリ方が大嫌いなのも百も承知で。


Uチビはこの車を、切って張って叩いてドレスアップしたのだ・・・・梅豚とマナがくれた愛機を。



車が可哀想である・・・・。



自分の馬鹿さと無力感をしみじみと感じ、涙をこらえるUチビ。



すると横に梅豚が立っていた。


そして、


(ユウ)。お前の部隊、昨日、自衛隊の駐屯地襲撃したろ?」




!?



まさかっ?


数多くの別動隊を抱える『罵多悪怒愚(バタードッグ)』であるが、部隊を動かすには最高幹部の承認が必要だ。しかも自衛隊襲撃・・・・


無謀にも程がある。


梅豚が続ける。



「こんな危ねぇ時期に自衛隊に突っ込むなんて、何考えてやがる?テメェはたまたま運が良かった。ヘタすりゃ『蜂の巣』だぞ?分かってんのか、コラ」


俯いたままのUチビ。


しかし容赦なく梅豚は罰則の提案をする。


(ユウ)!オメェは罰として、一週間、アッチャン御殿に住み込み!以上」




!?



何と!



これ以上の罰則はないであろう、梅豚の提案!


アッチャン御殿に住み込み・・・・



通常の人間なら数時間で死ぬ!


アッチャンは五分に数十発、人を殴る蹴るの暴行を加える。そして気分次第で爪を剥ぎ、拷問し、鵜飼(うか)いの()にしてしまう。


呆気にとられるUチビ。


これは抗議しなければ!


「ちょ、待てよ!オジキィ!俺、死んじまうじゃねぇか!たった一人の甥っ子を殺すのか?」


振り向きもせず、梅豚は、


「オメェは少し恐怖感が足りねぇ。オフクロが甘やかしすぎたな。アッチャンから学んでこい」


吐きすてる梅豚!


食い下がるUチビ!


「そりゃねぇだろ?おい、オジキに言ってよ!マナ(ネエ)!俺の何が悪ぃ?」


マナは眠そうに、


「坊やだからだよ」


と呟き、梅豚に続き車に乗ってしまう・・・・


美人はこんな時でも美しいから困る!



そして次々と撤退する『罵多悪怒愚(バタードッグ)』。


さっきまでの、気持ち悪い程優しいタックンも、厳しい表情で去って行く。



そう、誰も助けてはくれないのだ。



途方に暮れるUチビ・・・・



そして、




「俺っ!アッチャン!二歳っ!よろしくなっ!ドーーーン」



と、殺人パンチを繰り出してくるアッチャン!



数十メートルぶっ飛ぶUチビ!


倒れたアスファルトの横に



バスン!バスン!


と、穴が開く!



「キャハ、外しちった。むぅ~ん、照準ズレてんのかなぁ」


!?


『安室○美恵』似の女が、対戦車ライフルをぶっぱなして来た!


アッチャンの彼女の『マドカ』だ!



そして・・・・





アッチャンとマドカに連行されたUチビは、少しだけ懲りたようであったが、あの梅豚の甥である。



アッチャンから暴力の所作を学び、さらに狂暴性を増すのであった・・・・。




脈々と流れる『梅』の系譜。




そして、『カシラ文字U』の本当の意味。





お分かり頂けただろうか?













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ