羅刹の街 第二章 〜狼達の鉄槌〜
有害指定都市ツチューラ市駅前『喫茶キャロル』午後14時16分。
古ぼけた昭和の風情たっぷりの店内。
店主の趣味の枯れたロックシンガーのポスター。
テーブルがわりの古いゲーム筐体。
そこに座る一人の超絶美人。
女優『北○景子』クリソツである。
紺色のスカートスーツの襟には、プラチナ製の小さな『龍』が型どってあるバッチを着けている。龍の三本の爪に握られた玉には『義』と彫り込まれている。大幹部用の代門だ。
この女性は・・・・
大陸系マフィア組織『義怒羅』総長代行『凛』である。
今日は『罵多悪怒愚』の総会長梅豚の妻であり、実質的指導者『マナ』との久しぶりの会合である。
凛もマナに色々聞きたい事がある。
自分達をこのツチューラに呼び寄せ、暴れさせている真実を、凛は幹部を通して聞いた。
勿論、其れなりの多大なる報酬は『罵多悪怒愚』側から受け取っている。
自分達『義怒羅』は近日、準暴力団指定を警視庁から受けており、シノギも儘ならない状況下にあった。
『罵多悪怒愚』の話は受けるしかなく、メンバー数人が長期刑でパクられても元は取れる。
きっと服役中の自分の夫である『梁』も理解してくれる筈である。『義怒羅』が受けた任務は、単純にアウトロー達の駆逐であり、一般市民がどうのとゆう話ではないのだ。
凛は思う。
『罵多悪怒愚』
そしてそれを牽引する梅豚とマナ。
知り合ったのは、凛が16歳、マナも同い年の頃だ。梅豚は一つ上の17歳で、既に脂が乗った不良少年であり、『罵多悪怒愚』もその狂暴さに拍車を掛け、県下はもとより、県外にまでその名を轟かせていた。
きっかけは、都内からツチューラに遠征した『義怒羅』のメンバーと『罵多悪怒愚』の小競り合いで、当時から恋人同士であった梁と凛が梅豚と話をつけに行ったのだ。
噂に聞いた『罵多悪怒愚』総会長梅豚。
梁が話を口にした次の瞬間に梅豚は背中から『角材』を取り出し、梁を血祭りに挙げた。そして為らいなく橋の上から叩き落とした。そんな梅豚の後ろで爆笑していたのがマナである。常軌を逸していて、尚且つ性根がひん曲がった女とゆうのが、凛がマナにもった第一印象。梅豚は只の狂った卑怯モン。しかしその頃のJKマナは、16歳とは思えないほど妖艶で不思議な色気を振舞いていた。梅豚も金髪や茶髪が全盛時代に珍しい、真っ赤なカラーのリーゼントで、異彩を放っていた。
愛機は七色使いのギンギラ族仕様CBX400F。
まるで漫画から飛び出したようなヤンキーカップルだ。
この時梅豚は、自分の狂気の暴行に一切根を挙げなかった梁を気に入り、仲良くなった。
それはそうであろう。梁には熱い大陸系の血が脈々と流れており、それは凛も一緒だ。
マナと凛も当然の如く仲良くなり、よくお互いの家に行ききし、お互いのチームの集会にも参加した。
マナの当時の苦労も良く知っている。職業が暴走族の梅豚にはカツアゲ位しか収入がなく、マナは高校に通いながら夜は水商売で働き、梅豚を支えたのだ。そうしながら、マナは梅豚の卓越した殺人スキルを見いだし、それを着実に実行させた。『罵多悪怒愚』のメンバー達にも梅豚を崇拝させ、従わせた。
そして出来上がった怪物が梅豚を筆頭としたアッチャン、タケシ、ユキヤ、タックンであり、見事な『殺人集団』を形成させた。
そして時代はアナログからデジタルへ・・・・
情報も異常と思えるほどに進化し、完全ネット社会に突入。
マナは持ち前のPCスキルを生かし、海外との貿易に着手。主に武器弾薬などである。
そして・・・・
ロシアのテロリストから教授した大量破壊兵器の開発・・・・
『関東条約』の決まりから、凛もマナの指導下、武器弾薬の開発に着手し、『義怒羅』を武装化。一子乱れぬ集団に夫が不在の中、成長させた。
しかし・・・・
『罵多悪怒愚』がやろうとしている事は・・・・
理性の線が切れた大量無差別殺人。
止めなければ。友として。そして仲間として。
そんな事を凛が考えていると・・・・。爆竹のような排気音。
そして。
カランカラン♪
キャロルの古いドアがカウベルの音と共に開く。
!?
ロングのサラサラの金髪。胸が強調されたミニのワンピには、所々に虎柄があしらわれている!
タレントの『田中れ○な』をセクシーにした容姿のこの『ダイナマイト・ヤンキー・女』は!
『罵多悪怒愚 県國領土攻略隊』最高指導者!
そして梅豚の最愛の妻!
マナである!
相変わらずである。
CHANELのEGOISTの香りを漂わせ、凛の前に腰を降ろすマナ。
そして金無垢のゴツゴツジッポでセブンスターに火をつける。
ゆっくり紫煙を吐きながらマナは、
「で?話って?」
何事もないように呟く。
あくまでも凛は他人であり、マナは『罵多悪怒愚』のメンバー以外には恐ろしく冷たいのだ。
そんな事、凛は分かっている。
そして話を切り出す。
「ちょっと、マナ。どうゆうつもりよ?アンタんトコは。一般市民巻き込んで、何すんのよ」
至極真っ当な事から入る凛。
しかし、何処吹く風のマナ。スマホをポチポチ弄りながら興味無さげに、
「目障りなんだよ。警察も一般人も。だからこのツチューラをアタシらの住みやすい『國』にするだけ」
物凄く手前勝手なマナの思考に凛は腹が立ち、声を荒げる!
「そんな考えが通ると思ってんのかよ?一般人の血と屍見てアグラかくほどアンタのダンナはバカなの?」
一瞬の刹那。マナに殺気が宿る!
「あ?警察に亭主持ってかれちまうようなマヌケにウチの人悪く言われたくねぇな。冤罪引っ張ってあと何年檻だ?オマエのバカ亭主」
綺麗な眉と眉の間にシワを寄せマナが吠える!
他人を見下し、徹底的に相手の心を抉る残虐な口調は、梅豚にソックリで、さながら『梅豚 女バージョン』である!
もう話にならない!
凛はバックの中から拳銃を取り出すとマナに銃口をむけ、
「スベテ取リケセ。ジャナイト殺ス」
静かに凛が母国語で呟く。もうあの頃のマナじゃない。
一緒に楽しく過ごした最愛の友では・・・・・・。
目の前に居るのは『別の何か』だ!
しかしマナは、
「ギャハハ!そんな事しても手遅れだよ。聞こえない?」
マナが耳に手を当てる。
「アタシには聞こえんだけど。今から始まるツチューラ市民の『鎮魂曲』が」
!?
外からはヘリの音!そして爆撃音!
凛は慌ててキャロルの外に飛び出す!
空には視界で確認できるだけで三機の妙な迷彩を施したヘリが飛び回っている!
あちこちが『火の海』である!
勿論、真っ先に爆撃したのであろう、ツチューラ署方面からも大量の火の手が上がっている!
ツチューラ署には連日の暴力沙汰で、留置されている『義怒羅』のメンバーもいるのだ!
しかし、もう手遅れであろう。
もはやツチューラはリアルな戦場と化した!
人々は焼かれ、灰となっていく!
凛はあまりの非現実的な光景に、その場にへたりこんだ。
そしていつの間にかマナが背後から、
「フフ どう?アタシが開発した『D-5648クライム弾頭』。少量の核が配合されてて良く燃えるでしょ?」
楽しそうに呟きながら、マナが駐車してある愛機に向かう。
絶望に言葉を無くした凛。
すると、爆撃音に混ざり二十数台の暴走族仕様の単車が駅のロータリーから、キャロルの駐車場に流れ込んで来る!
『罵多悪怒愚 武装単車隊 悪戯遊侠曲』である!マナの護衛であろう!
真紅のGX71マークⅡのドアをマナは開けながら、
「凛!アンタも共犯だよ!ボサッとしてないで兵隊集めな」
激を飛ばしながらマークⅡで去っていくマナ。
するとロータリーで嘲笑うかの如く、白煙を上げながらドリフトで二回転、三回転するマナのマークⅡ!
すると『罵多悪怒愚』メンバーが、
「スゲェな・・・・マナさん。まるで『真紅の稲妻』だ」
と、恍惚の表情で溜め息混じりに吐き出した・・・・
そしてマークⅡに続き、猛烈な爆音と市内を壊滅させる爆撃音と共に走り出す『罵多悪怒愚 悪戯遊侠曲』。駅前ではパニックになる人々やサイレンの音や追撃に向かう自衛隊のヘリなどで騒然としている!
もはや無限の殺戮地獄である!
「タスケテ、ダレカ・・・・」
声にならない声で凛が呟く。
野良犬が狼に変貌し、歴史を変えた瞬間であった。
有害指定都市ツチューラ市 辺境区 同時刻。
少年は空を見上げていた。
妙な迷彩模様のヘリが自衛隊のヘリと追いかけっこしている。
見た事も聞いた事もない光景に、少年は興奮する。
昔、曾祖母に聞いた戦争の話。
このツチューラにもアメリカ軍が爆撃に来たとゆう。
そんな事を思い出していると。
強烈な光に辺りが包まれ・・・・
辺境区と共に焼け爛れる少年であった・・・・。
同日 総理官邸 官房長官発表。
xx日、ツチューラ市が未確認飛行隊により核弾頭による爆撃を受けた。ツチューラ市民約14万人中、半分の7万人が死傷し、瓦礫や残骸による行方不明者を含めると死傷者数が計測不能な前代未聞のテロ行為発生。
国家始まって以来の歴史的大規模なテロ行為と断定し、アメリカ合衆国との連携の元、犯人グループ特定を急ぐと共に、原因解明と使用された少量の核を含む爆弾の入手経路や構造についても全力の研究と調査を進める方針。自衛隊が未確認飛行隊を追尾したが、7分後見失った。官邸での緊急会議では、某独裁国家が絡んでいるとの軍事評論家の意見もあり、国交断絶や経済制裁も視野に入れ、この世界初の残虐行為に対処して行く所存であり、誠に遺憾の意である事を表面する。
以下略。
『罵多悪怒愚』による『D-5648クライムハンマー爆撃作戦』は成功に終わった。
そしてツチューラには、核の冬が到来し・・・・・・
魑魅魍魎が闊歩する『羅刹の街』と化すのである。




