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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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死神のワルツ

有害指定都市ツチューラ市 駅前名店街付近 午前09時22分。



朝の過疎過疎の元商店街の歩道に、今時珍しい『赤い羽募金』を募る二人の男性。


罵多悪怒愚(バタードッグ)』特攻隊長のユキヤと親衛隊長のタックンである。


タックンには汚い字で『ひゃくえん』と書かれた募金箱が首からぶら下げられ、ユキヤは赤い羽が詰め込まれた『ミニ四駆』の箱を持っている。一体何を企んでいるのか?


簡単である。


アッチャンのタバコ代を稼いでいるのだ。


名目上は、恵まれないチビッ子達となってはいる。が、『罵多悪怒愚(バタードッグ)』がましてやアッチャンがそのような事を考えるはずもなく、早い話がこれは一般人に対する『恐喝』である。二人は遥か昔から強制的にアッチャンにこの『募金活動』をやらされおり、万が一「そのような事できませんよ」などと口にしてしまったら、鉄球のような、そう、あの『浅間山荘事件』で機動隊が使用した巨大鉄球のような拳が飛んでくる!

当然の如く、小学生でも騙されないであろう、こんな詐欺で一銭も得られるはずもなく、結局自腹でアッチャンに現金支給のハメになるのだ。まったく!困った人である!


タックンが無差別に通行人に声をかける。


「赤い羽募金、お願いしまーーす!全世界の恵まれないチビッ子の為に!そしたらアナタもきっと幸せになりまーーす!」


もはやヤケクソである。


タックンは普通の見た目だが、ユキヤは『ド☆チンピラ』な見た目であり、何の説得力もない。傍目(はため)からは、通行人に嫌がらせしているとしか思えない。シカトされるとタックンは、


「なーーんでですかーー!」


と、例のセリフ。


ユキヤはため息と共にタバコの煙を吐き出し思う。



「幸せになりたい」


と・・・・。


無理である。


梅豚、アッチャン、タケシが超高齢化し、歩行困難になり、ボケ老人になるまでは! 地元暴力団が話す。


「ハッハッハ。アッチャンとタイマン?無理。アイツが100歳になるまで待て」


暴力に特化した人間がこのように言うのだから間違いない。あきらめて場所でも変えたほうが効率が良さそうである。


その時。







!?





バリィバリバリィバリィー!バリッ!バリィバリバリィバリィ!




猛烈な、落雷のようなL型エンジンの巨大な直管サウンドが響き渡ってくる!只でさえ過疎の商店街のシャッターが一斉に閉められ、過疎に拍車がかかり、一般人はまるで戦時中の『B29』が爆撃に来たかのように逃げ惑い、ヤクザは来た道を全力で逃げ、パトカーまで裏路地に逃げ込む!


優雅にセンターラインを跨ぎ、ゆっくりと貫禄たっぷりに制限速度を遵守し走行してくる白い『ケンとメリー』のスカイライン。通称『ケンメリ』。

ちなみに日本は左側通行である。しかしこのケンメリだけは何故か真ん中通行が許可されている。

ボディはエグいドシャコタンにナックルライン。チンスポに板っパネ、図太いタイヤがボディとツラツラに納められており、エアクリは取っ払い、ソレックスにタコ足のフル武装!毎日変わるナンバーは折り紙のように畳んである!この神をも恐れる勇姿は!



・・・・・・・・



罵多悪怒愚(バタードッグ)』副会長兼『敵地急襲抗争隊』最高指揮官。



アッチャン登場である!



しかも隣には『罵多悪怒愚(バタードッグ)』総会長兼『ツチューラ工務店』代表取締役社長 梅豚が鎮座している!



何事であろう?


この二人がツルんでいるとロクな事がないのは今更だが、とても現実離れした光景が空気をピリッと張り詰める!



アッチャンはケンメリをユキヤとタックンの前に停め、上半身を乗り出し、


「何やってんだ!?テメェら!殺すぞ!」


と、二人に怒鳴り散らす!




・・・・・・・・。


いつもの事である。



この場合のアッチャンの「殺すぞ」は一般社会の「おはよう」と一緒である。わかってはいるユキヤであるが、殴りつけてやろうと毎度思う。が、それは二万年早い。隣に鎮座する梅豚は、廃刊雑誌『ヤングオート』の88年2月号を熟読している。不可思議な現象であるが、梅豚は毎月廃刊雑誌ヤングオートを未だに愛読している。天然なタックンはさておき、『罵多悪怒愚(バタードッグ)』内での唯一常識人を自称するユキヤは、この梅豚やアッチャンの人知を超越した行動が理解不能で、混乱をきたす時がある。今更ではあるが。


「おう!テメェら乗れよ!」


とアッチャンがケンメリの後部座席をアゴで指し叫ぶ。


素直に従うユキヤとタックン。


すると、


バシーーーン!


強烈な張り手がユキヤに飛んでくる!


「バカ野郎!俺のケンメリちゃんは『出禁』なんだよ」


とさっそくアッチャンの暴力が炸裂する!


「それは『土禁』じゃないのですか?」などと言える筈もない。隣のタックンを見ると、既にキチンと正座し、靴は頭の上に乗せている。アッチャンの暴力を事前に察知し対応している。「狡猾なヤツだな」とユキヤは思う。きっとタックンは長生きする筈である。


二人を乗せ、アッチャンはゆっくりとケンメリを走らせていく。センターラインにキッチリ跨がらせて・・・・。


梅豚にアッチャン。


二人を見ると、梅豚の手は乾いて茶色くなった血液にまみれ、足元にはやはり血塗れのバールが転がっている。アッチャンの手も同じようだ。この二人の事である。暇潰しにヤクザの事務所でも襲撃してきたのだ。梅豚がタバコに火をつけながら、


「フフフ。お前らアッチャンのタバコ代稼ぎか?あんなん誰も金入れてくんねぇだろ」


当然の事を梅豚は呟き、ジャージのポケットからクシャクシャになった札を取り出し、ユキヤにくれてやる。一瞬アッチャンの目が光った!札の枚数を数えたのだ!抜かりない!梅豚が『アメ』アッチャンが『ムチ』である。そして駅前付近になると、


「アッチャン、俺此処で降りっから。マナと待ち合わせしてんだ。オメェら、しっかりアッチャンの面倒みろよ」


と、ユキヤとタックンに言うとさっさと降りてしまった。



・・・・・・・・



そしてユキヤの眼前にはグローブのような手が突き出されている。分かっている。さっきの梅豚からのこずかいを渡せとアッチャンは無言で言ってるのだ。全額渡すユキヤ。今に始まった事じゃない。よくある光景だ。それにしてもユキヤは気になる。さっきからユラユラ揺られているこのケンメリ。この車は、アッチャンが農家のジジイのガレージから永遠にレンタルし、ユキヤにカスタムさせたのだが、問題はその下品なカスタムではない。所々に設置されているファンシーなぬいぐるみや小物類。どう考えてもアッチャンの趣味ではない。この手の野蛮人は、好きな女が出来たり、付き合う女が出来るとすぐわかる。何故か?



バカだからである。



ユキヤはタケシから聞いていた。アッチャンによる先日の『朝鮮部落壊滅事件』。


その時アッチャンと一緒に戦った『マドカ』という女性。


その女性は、『反日団体 撲滅協議会』なる武装組織の現総帥で、あの朝鮮部落に団体数名と乗り込んだが、仲間は皆殺しにされ、そして女一人、数日間生き延びたとゆう女傑であり、かなり戦闘に特化してるとの事。卓越した武器のスキルで敵を皆殺しにする。事実、アッチャンと朝鮮部落を壊滅させた・・・・



冗談じゃない!



狂った女はマナだけで充分だ!



アッチャンとマドカが付き合うとゆう事は、『ヒトラー』と『フセイン』が血縁関係を築くようなモンである!


あっとゆうまに最凶 最悪コンビの誕生である!



阻止せねばならない!



そんな事を考え、ユキヤがソワソワしてると


「何だ?テメェ。妙な事考えてんじゃねぇだろな?」


ツチューラ警察署に『この男を見かけたら避難してください』と書いてあるポスターに載っている男が問いかけてくる!


考えている!


思いっきり考えている!


アッチャン マドカの壊滅ストーリーを!



色々策略を巡らすユキヤであったが、あいにくユキヤは腕っぷしや単車、車のスキルはあっても、悪知恵を働かす知能はなく、いい案がうかばない!考えているうちに『キッチン居酒屋 三郎』に着いた。ここの支払いもユキヤとタックンだ。次々と容赦なく注文してくアッチャン。そしてビールや肉などを掃除機のようにたいらげてく!この男、遠慮とゆうモンを知らないのだろうか?一通りアッチャンは成人男性五人分の量を消化すると、下らないヨタ話や武勇伝じみた会話を始める。適当に流しゃいいモンを、タックンは真剣にアッチャンの話にのめり込み、調子に乗らせる!ユキヤはイライラする。このタックンは自分に嫌がらせをしているのだろうか?そんな事を考えていると、






!?




店の入り口に、梅豚とマナが立っている。


梅豚とマナのやかましいマークⅡの音がしなかった。プリウスで来たのだろう。



嬉しくてハシャギ出すアッチャン!



「おう!梅豚!マナさん!このクソブォンクラ共じゃつまんなくてよぅ!早く座れよ!とりあえず生か?」




!?



突然、梅豚とマナの後ろから一人の女性が飛びだした!小柄でまさに『安○奈美恵』にクリソツ女!背中にはゴルフバッグのようなケースを背負ってる!この中には『対戦車ライフル』が入っている!この戦闘系女子は!



「うわぁ、マドカ!」


アッチャンがしりもちをつき、後ずさる!


するとマナが、


「ニャハハ、アッチャン驚いた?駅で会ったから連れてきちった」


悪魔的な行動をとるマナ!すると、



「キャッ。アッチャンたら!マドカだって!夫婦みたい」


と、アッチャンを羽交い締めにする!嫌、抱き締めるマドカ!積極的である。


狼狽するアッチャンを大型犬をあやすようにシャカシャカして手懐けるマドカ!若干後退した坊主頭をなで回し頬擦りまでしている狂人マドカ!そしてされるがままの殺人鬼アッチャン。


大爆笑の梅豚とマナ。


奇声をあげるタックン。



此処に最凶 最悪のカップルが誕生した・・・・。





徐々に意識が薄れるユキヤであった・・・・。








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