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カシラ文字U  作者: 梅屋卓美
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狂犬始動編

有害指定都市ツチューラ市 絶対安全農村区域クサレガ丘一丁目

午前6時31分。


のどかな農村地帯。ぱっと見は普通の一軒家。しかし・・・・


フェンスには有刺鉄線が巻かれ、家の回りには膨大な監視カメラ。庭には黒塗りの高級外車、そして旧車。

分厚いドアは防弾製で、まるで要塞である。ノブには『ツチューラ工務店』のプレートがぶら下がっている。

ドアを開けて中に入ると玄関には・・・・

虎と龍が戦っている絵。観音菩薩の象、土佐犬の置物に巨大な壺。何に使うのであろう?怪しげな水晶が飾られている。

廊下を歩いて中に進んで行き『事務所』と書かれたドアを開けると・・・・


立派な神棚。甲冑、サイドボードの上には日本刀が二振りと象牙の角、梅の大門の額が置かれ、L字型のソファーには虎の敷物。大理石のテーブル。そして中央には麻雀卓が置かれ、南部鉄の灰皿には吸い殻がうず高く満載している。


そう。


あの映画でよく見る暴力団の事務所にそっくりである。

部屋の一番良い位置にある一人掛けのリラクゼーションソファーには・・・・




!?



パンイチで煙草を吹かすリーゼント頭の中年!

鮮やかな刺青!

サムライが龍に鎮座し、自在に操る絵柄・・・・

『雲龍九郎』が描かれている!

その刺青は手首から太腿まで及ぶ!

この男がっ!


死刑部隊『罵多悪怒愚(バタードッグ)』総会長。


梅豚(うめぶた)』である!


80インチのテレビからはNHKの教育番組が流れている。

この男、受信料は払わないが、受信はしっかりしている。

そして大理石テーブルに置いてある缶ビールを朝っぱらからカックラッている。

テーブルの上のスマホがさっきから唸りっぱなしだ。

しかしフルシカトを決め込む梅豚。


「クソメンドクセー」


梅豚は思う。だってそうだろう?

真面目なアウトローはまだ寝てる時間だ!

そんな時間に電話してくるのは非常識極まりない!

なので着信履歴も見ない!


このようなまったく意味不明の自己中的論理を展開し、梅豚は日々生活している。


・・・・。


すると・・・・




地鳴りのような轟音が鳴り響いてくる!!


梅豚庭園に二台の旧車が流れ込んで来た!


二台共に日産スカイライン。


一台はケンとメリーの愛称を持つ通称『ケンメリ』。

ボディーは白で、後部には『ナックルライン』と呼ばれる暴走族定番の線がエグく入っていて、ブッといホイールにタイヤは超引っ張りで、車高は言うまでもなく、火花が散るほどのシャコタンである!!(盗難車両)。


もう一台は通称『ジャパン』。

鮮やかなブルメタに全塗され、やはり超シャコタンの街道レーサー仕様である!(正規購入車両)。



搭乗人物は・・・・



ケンメリから降りてくるのが『罵多悪怒愚(バタードッグ)』副会長の『アッチャン』。

その容貌は893なベビーフェイス。今時何処に売っているのであろうか?『クマさん』がプリントされてるセットアップを着ていて若干後退した坊主頭である。


ジャパンから降りて来たのが『罵多悪怒愚(バタードッグ)』本部長の『タケシ』。

アッチャンとは対称的な知的な顔。ファー付きのコートを羽織り、ロッカー風。オールバックの髪型でナルシストっぽい。



二人は梅豚邸に入って行く。

そして開口一番、


「アーーーッ!俺が大好きな『みんなの歌』終わっちったのぉ!?梅豚ぁ、録画しといてくれたぁ!?」


アッチャンが叫ぶ。



・・・・



バカである・・・・。


「あぁ。アッチャンゴメン。忘れた。」


欠伸をしながら答える梅豚。

項垂れるアッチャン・・・・


「もう、梅ちゃん、電話ちゃんと出てよ?緊急時とか困んだからさ。まぁ今に始まった事じゃねぇけど」


落胆した感じでタケシが呟く。


そして勝手知ったる我が家のように、アッチャンが冷蔵庫から缶ビールを取り出しタケシに投げる。

二人共、梅豚の幼少からの幼なじみで、梅豚がダミーで経営している『ツチューラ工務店』の社員である。


と、梅豚はテレビをDVDに切り替え、オキニの映画『グーニーズ』を見始める。梅豚はこの映画を物心ついた頃から計二万回はみており、当然幼なじみのアッチャンとタケシもそれに付き合わされ、一万回は見ている。

大の中年男三人が朝っぱらから酒を飲み、古っい洋画観賞をしている・・・・

日本が『中年層対策』をしないのはこの三人のせいであろう。



すると。




また梅豚のスマホが唸りだす。




大切?な映画鑑賞を邪魔されたのと、さっきのタケシの小言で不機嫌気味の梅豚が乱暴に電話に出る。



「ウルセーんだよっ!!誰だテメェ!?」



・・・・



こんな電話の出方をするヤツは地球上で梅豚を含め二人位であろう・・・



電話の向こうは・・・・




「朝から元気じゃねぇか、梅豚」



低くドスが効いた声・・・・

そう、社会に溶け込めないこの声は・・・・


念のためにもう一度唸り飛ばす梅豚!


「誰だテメェこの野郎!」


「俺だ。龍二だ」






!?





電話の主はあの指定暴力団『五代目銀龍会』の『龍二』である!!

コイツは梅豚達『罵多悪怒愚(バタードッグ)』の、そして梅豚個人の幼い頃からのライバル的存在で、中学生の頃から暴力団事務所に出入りし、暴走族は通らずそのままヤクザになった。

罵多悪怒愚(バタードッグ)』とは血で血を洗う抗争を繰り返しており、今でも梅豚達の天敵である!

通称『ツチューラの龍』!!


梅豚の中に流れるドス黒い血が、歪んだ精神と共に交錯し、直ぐ様暴力衝動にスイッチが入る!



「オイコラァ龍二ぃ!テメェとはダチでもなんでもねぇんだ!用事ねぇんだよ!気安く電話してくんじゃねぇ!殺すぞ!」


ハナから要件など聞く気もない梅豚!


しかし、


「お前が用件が無くてもこっちにはある。今から駅前の喫茶店『キャロル』まで来い。悪い話じゃねぇからよ」



それだけ言って龍二は電話を切ってしまった。



タケシが怒りを抑えながら梅豚に、


「龍二の野郎。梅ちゃん、アイツ何だって?」


「今から駅前の『キャロル』に来いだとょ!チョウタレやがって!ブチ殺す!」


感情が先走る梅豚。


アッチャンも(それ)に同調する!


「オウ!あのクソ野郎!直ぐ行くぞ!銀龍会も皆殺しだぁ!」


ブチギレ狂犬二匹に対し、タケシは冷静に、


「まぁ待ってよ、二人共。とりま龍二との掛け合いは俺に任せてよ♪あとは現場合わせでさぁ♪」


罵多悪怒愚(バタードッグ)』No.1の切れ者タケシの考えに任せれば間違いはない。



三人はそれぞれの愛車に乗り込む!



梅豚の愛機はGX61マークⅡ。通称『61(ロクイチ)』。


純正カラーの超シャコタンに絶滅危惧種ホイール『テクノレーシング』が履かされている!


梅豚はキーを捻る!引き摺るような音のセルが鳴り響くと、ワンオフストレートマフラーからは爆竹のような鋭い『1G(ワンジー)』の音が吐き出される!

釣られるように、アッチャンのケンメリとタケシのジャパンもエンジンを始動させる!『L型』エンジンが落雷のように悲鳴を上げ、梅豚の61を先頭に、軽快なダブルアクセルを切りながら走り出す!



狙いは『龍二』



何故か?



それは(かたき)だから・・・・



狂犬達がド派手に始動する!



血飛沫(ちしぶき)を撒き散らしながら・・・・

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