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ごめんなさい

ほわほわした要素はない。

ブシャァァァァァ、ビシャッ、ドサッ。


 血しぶきをあげながら飛んできたオークの上半身が俺のすぐ傍に落ちた。

衝撃で内臓的なものがはみ出た。

ついでに俺の顔に赤いものが飛び散ってかかったのですが。


 グロすぎる。

さっさとやめてればよかった。


 30分ほど前にアイシャから、このほわオンには俺とアイシャの二人しかプレイヤーは存在しないと言われた。

そして他プレイヤーに出会える場所に戻ることはないと。


 その時点で、じゃもういいですってゲームやめてもよかったんだが、もう少し試したいことと、ひょっとして俺もアイシャも知り合いではない全然知らないプレイヤーがいるかもとも思ったので、アイシャに適当なクエストを受けさせて少し遊ぶことにした。


 アイシャが何のクエストをするか迷ってる最中に、運営会社に連絡をとるためにGMコールを試してみたりもしたが何も起きなかった。


 街中にいる人は全てNPCだった。

あと悲しいことに俺のアイテムを保管しているはずの倉庫管理NPCに話しかけてみたら俺の所持品は全て倉庫から消えていた。


 そんなことを気にする状況ではないと思うが地味につらかった。

今までそれなりに時間かけて集めてきた装備とかあったのに…


 オーク討伐に行くとアイシャが決断してしまったので、俺は街でNPCが売っている一番性能のいい装備を適当に買ってそれを身に着けてオークのいる森まで来た。


 Tシャツジーパンの上にローブを羽織って盾と杖を持ってるたぶん変なコスプレをしたおっさんにしか見えないだろう俺は、アイシャが倒しまくってる二足歩行の豚の化け物、いわゆるオークがゲーム時代には見せなかった壮絶な死にざまを前にドン引きしてる最中でございます。

 

「あはは!他に人がいないから自由に狩れて楽しいですね!」

「あの…アイシャ…アイシャさん」

「あ、ヴォルさん支援魔法切れたのでお願いします」

「アッ、ハイ」


 俺はアイシャの身体能力やら魔法攻撃力やらとにかくひとしきりパワーアップする支援魔法をいろいろかけた。


「よーし頑張りますよー!」


 魔法をかけ終えるとまたアイシャが虐殺をはじめてしまった。

さっきまであったオークの死体はもう消えていた、よかった。


 このほわオンはいろいろとおかしい。

モンスターは血しぶきや臓物をまき散らしながら死ぬという描写はなかった。

こんな名前のゲームにあってたまるか。

ただし倒して数十秒で消えるのは元のほわオンと同じ仕様。

さっき俺の顔面にかかった血も消えてる。


 言ってみれば、ただひたすらリアルにしただけのほわオンというところだろうか。


 ビチャッ。

また半分に千切れた死体が飛んできた。

吐きそう、ゲームの中なのに。


 しゃがんでうつむいてたらいつの間にかオークが一体すぐ傍にいた。

手にもったこん棒を容赦なく俺に振り下ろしてくる。


 ドシッというダメージを受けたときの音が響いてやや視界が揺れた感じがしたが別に痛くはない。

俺のHPもほとんど減ってない、10くらいは減ったか。

レベル差を考えたら当たり前のことではある。


 オークは二回目の打撃を俺に与える前に死んだ。

横から飛んできた黒い槍が頭を吹き飛ばしたのだ。

きついって…限界だわ、もう無理。

 

「すいません、1匹逃してしまって…あれ、どうしたんですかヴォルさん、うずくまって…」

「いや…ちょっと気分が悪くて…」

「えっ!それは大変です、すぐ帰りましょう!」

「もうここでログアウトしていい?」

「はい、私もそうしますから!」


 アイシャは随分慌てた様子だった。

俺はメニュー画面を呼び出してログアウトを選んだ。

視界にログアウトまであと10秒というカウントが出てそれが0になると一瞬、めまいのような感覚がした。


 気づくと白い岩の前で座り込んでいた。

アイシャの家の二階だ、なんとか水晶がある部屋の。


「ヴォルさん!大丈夫ですか!」


 隣でアイシャが心配そうに俺のことを見ている。


「ああ…さっきよりはいいが…かなり疲れたな…」

「ごめんなさい!ごめんなさい!私、ヴォルさんと二人で遊べると思ったら夢中になって…」


 アイシャは目に涙を浮かべている。

本当に心から俺のことを心配して謝っているようにしか見えない。

 

「ちょっと横になって休んでいいか…」

「は、はい!ゆっくり休んでください、本当にごめんなさい」


 はじめて見た必死に謝るアイシャの姿に意外なものを感じたが、一刻も早く横になりたかった俺は寝室まで行くとベッドに倒れこんだ。


………………


………


 いつの間にか窓の外は暗く、夜が訪れていた。

ベッドに倒れた後、結構寝ちゃってたみたいだな。


 俺はちゃんと布団に入った状態で寝ていて布団をかけなおしてくれたのであろう人物はすぐそばで、ベッドにしがみつくような恰好で床に膝をついて器用に寝ていた。


 涙のあとを残した寝顔を見ながら思う。

この美しく、狂っていて、ただのおっさんに執着する彼女…アイシャは一体何なのだろう。 


 出会ってから意味不明なことばかり続いてもう二日もたってしまった。

俺は本当に元いた場所に帰れるのか。


 寝る直前には帰れたら二度と関わりたくないくらいに思ったけど、この寝顔を見ていたらなんか…なんだ…微妙な気持ちになる。


 まぁ…もう少しくらい一緒にいてもいいか…

帰る方法もわからないし…


 それに、まだ二日しかたってないしな。

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