束の間の休日1
昨日書いたやつ今日みたら文とか名前とか無茶苦茶で思わず変な笑いが出た。眠かったらしい。
「バジリスクの件は準備に後一週間ほど必要、石化病だった冒険者たちは衰弱していますが順調に回復しているので特に問題はない、以上がラルフォイ様からの伝言です」
朝っぱらから家に来たマリンダさんにそんなことを言われた。
ラルフォイとの関係がバレた今、彼女は堂々と連絡役として使われている。
「あ、はい…どうも…あのところで、まだ俺とディーナのこと監視してるんですかね?」
「はい、しています、それが何か?」
それが何かって、あれ、おかしいの俺ですか?
「…出来ればやめてほ」
「ご安心下さい、家の中までは覗いておりません、今は監視と言ってもこの街から出て行っていないかどうかを確認している程度です、どうしても私の気配が気になるのであれば気づかれないように配慮して監視致します」
あーそんな配慮やめてほしいですね、むしろ怖いです。
「あ、いや…じゃあいいです…」
「そうですか、では私は家政婦の仕事に戻ります」
マリンダさんはそう言って以前と変わらず平然と去っていった。
この状況…慣れてないの俺だけかな…
数日前に俺は石化病の冒険者たちを治療した。
病気の原因であるタイラントバジリスク討伐についてはラルフォイからちょっと待ってと言われた。
ほわオンのときはかいわれとペアで倒したこともあるからつい軽く考えたけど、今は俺だけだしなー。
三節の攻撃魔法を連発できるような人は…この街にいないんだろう。
いたらたぶんもう倒してるもんな。
俺は一応、討伐するなら少人数のほうがいいと伝えた。
正直、数を集めるより、少数精鋭のほうがやりやすい。
たくさんいてもまとめて石化させられるだけだし。
俺がいれば石化は防げるし治療もできるんだけど、人数が増えるとその手間が増える。
ゲーム内では最高で10人のパーティーを一人で支援したこともあるが、今現在、その時と同じ力が出せるかはわからない、装備もないし…
ここはゲームじゃないしミスって誰か死んだら責任とれないよ。
だからラルフォイには、討伐するのであれば、あの石化していた冒険者たちと同程度の強さでは連れて行っても足手まといになると伝えておいた。
今頃頑張って強い冒険者を用意しているはずだ。
マーくんはちなみに討伐するなら着いてきてくれることが決まっている。
4級だけど戦闘は強いからね!
で、ラルフォイがいう準備が整うまで暇な俺は、この数日のんびり過ごしている。
マーくんはまだ昼になると家に来てくれるんだけど、ほぼディーナの訓練が中心になってしまったので、俺は買い物行ったり、俺とディーナとマーくん三人分の飯作ったり、洗濯したり、掃除したり…あれ何だこの生活デジャブかな?
ああ…後ほかにはタックスさんにもラルフォイとマリンダさんの事情を説明したんだけど…
ディーナのことがアイシャ教に伝わってる件については、監視以上のことが無いのであれば特にどうこうする気はないらしい。
何かしようと思ってもできない、という方が正しいだろうか。
できるとしても逃げることくらいなので、そうなるとまた別の街で暮らすはめになる。
ただ具体的な被害がないならいっそ堂々とコムラードで暮らせばいい、そう判断したのだ。
ラルフォイも別段ディーナのことはそこまで重要な件ではないと言っていた。
まーもうないと思うけどーもしまた神託からのご褒美コンボがあったらラッキーかなーでもいちいちそんなあるかどうかわからないことに人員割くのは面倒だから現地の人だけで適当に見張っといてー、みたいな、ラルフォイに来たのはその程度の命令らしい、いや実際こんな軽い感じでは言われてないと思うけども。
だからこそマリンダさんを雇い続ける決断をタックスさんは下した。
真面目に仕事してくれるからクビにするのは勿体ないそうだ。
でも俺はまだそんな状況に今一つ慣れないという今日この頃です。
「おはよーヴォルるん、玄関で何してるのー?」
ディーナが起きてきたようだ。
上はTシャツを着ているんだが、下はパンツ丸出しなのでやめてほしい。
マリンダさんに見られたら爛れた生活を送っていると思われる。
「なんでもない、それよりズボンを履け、それから顔を洗って、歯を磨いて…」
「はーい、もう、毎朝聞いてるから知ってるってば」
じゃあ実践してくれよ!
なんでズボン履いて来ねえんだよ毎回!
昨日なんてそのせいで朝から…いや、思い出すのはやめよう、俺がズボンどころかパンツ脱ぎたくなる。
俺は朝食の支度に専念する。
「あの人たちどうなったんだろう、もう元気になったかな」
「石化病だった冒険者たちか?まだ元気じゃないがこんな風に飯食ってればいずれ元気になるよ」
二人で朝食を食べながらそんな話をした。
ついでにディーナに算数を教えることもある。
俺が言うより先にディーナ自身が言い出したことだ。
勉強を続けたいと。
ただ今日は勉強の話ではなかった。
「ねえ…今日、変な夢見ちゃったんだけど…」
「なんだ変な夢って」
「そのぅ…前にもあった神託みたいな感じで…」
「ええ!?それってアイシャが出てきたのか!?」
まさかまた?なんでだ?もう俺は関係ないのに。
「ううん、アイシャ様じゃないの、見たこともない女の子が出てきて…ヴォルるんみたいな真っ黒な髪をした女の子。でも何も言わなくて、私のことも気づいてないみたいな感じで、うずくまってた」
「え…何その夢…それで?」
「そこで終わり、目が覚めちゃった」
「なんでそれが神託みたいな感じになるんだ」
「うーん?そういえばなんでだろ?よくわかんないけどなぜか前と似てる気がして」
黒い髪の女の子って誰だ?
全然心当たりがない…アイシャとは全く関係ないのか…
それとも単なるディーナの夢か…
ドンドン。
と、玄関のドアを叩く音がした。
「あれ、誰か来たみたい、マーくんかな?」
「いやマーくんは最近昼飯食べに来るけどさすがに朝飯までは食べに来ないから…」
見てくる、と言って俺は玄関まで行った。
またマリンダさんとかじゃないよな。
「よお、朝から悪いな」
「あははは、また何か面白いことになってるらしいですねえ」
そこにいたのはジグルドとロイの二人、『調和の牙』の男連中だった。