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間違ったグローバルサービス

世界的な規模であるさま。国境を越えて、「地球」全体にかかわるさま。

「私は食器を片付けてきますね」


 朝ごはんを食べ終えると、アイシャは食器類をもって台所から出て行った。


 いや、どこへ行く、流しはそこだろ。

と、つっこみそうになったが俺はショックを受けて呆然としている「フリ」を続けていたので黙ってそれを見送った。


 一人残された俺は席を立つと、台所の流しについてる蛇口をひねってみた。

なんだ、水はちゃんと出るじゃないか。

この立地条件でちゃんと出るのもおかしいけど。


 まあそんなことより…

 

 俺は元の世界に帰れないのか。

そう聞かされたときは確かにショックは受けたが、いい加減いちいち驚いてる場合でもない。


 呆然としたフリを続けたのはもしかしたら、アイシャが罪悪感を感じて態度に変化があるかと期待したから。

結局彼女は最後まで何も変わらずにこにことして俺の世話を焼いていた。


 いい結果とはいえないな。

アイシャにとって俺の精神状態はさほど重要ではない、ということがわかっただけで。


 わざわざそんな芝居をしたのは先ほどのやり取りで、明らかにアイシャが嘘をついていると思ったからだ。


 この家は俺のために用意したみたいなことをアイシャは言った。

でも、これはおかしくないか?


 そもそも俺をここに呼んだのはアイシャの突発的な行動で、オフ会うんぬんの話がなければこうはならなかったはずだ。

あ、そうだ、もし帰れたらかいわれは殴ろう。


 俺のために急遽用意したにしてはアイシャが住み慣れすぎてる。

どう考えても以前から自分が住んでた家に呼んだって感じだ。

なんであんな言い方をしたんだ?


 たぶん、いや、きっとアイシャは自分が嘘をついてる感覚はない。

俺が喜ぶと思ったからそういっただけなんだろう。

それ以外の理由が今のところ見つからない。


 問題はアイシャがそういう感覚で平然と嘘をついてる場合、彼女の言うことをすべて信用してはならないってことだな。

日本に戻る手段がないというのもまだ信じるには早すぎる。

 

「ふふ」


 変な笑いが出てしまった。

今こんなことを考えてる自分も単に事実を認めたくないがゆえに屁理屈をこねてるだけの人みたいだなと思うとなぜかちょっと面白くなってしまった。


 そうこうしてるうちに台所のドアが開いてアイシャが戻ってきた。


「あれ、どうかしました?」


 俺が笑ってるのに気づいたんだろう。

不思議そうな顔をしてアイシャがたずねてきた。


「ん、ああ、この家の水道やら電気は一体どうなってるのかなと、明かりは普通についてるし、蛇口ひねったら水はでるしね」

「家の機能は私の魔力で代用しているんです。だから自由に使って大丈夫ですよ」


 考えてることとはまったく違うことを咄嗟に言ってみたが、魔力とかまたファンタジーな言葉がでてきたな。

やっぱ魔法とかある世界ってことなんですかね。


「へぇ…魔力って魔法とかと関係あるわけ?アイシャも魔法が使えたりするのか?」

「はい!私は光魔法が得意ですね!それで電気も結構相性がいいのか割と楽に使えます。あ、でも水魔法はあまり得意じゃないので…水やお湯を出す程度の簡単なことはできるんですけど…」


 …まるでゲーム感覚だな…気になるし一回見せてもらおうか…あ、ゲームといえば。


「そういえば、アイシャはほわオンでも最初のころはずっと光魔法ばっかりつかってたな」

「それしか自分にはできないと思ってましたから…でも、ヴォルさんがいろいろ教えてくれて!闇魔法が使えるようになった時は本当に嬉しかったです!」

「光だけだと敵倒すのつらいからね、攻撃魔法少ないし、闇は威力ある分消費がきついけど俺とペアなら問題ないかなと」


 光魔法って回復とか支援中心なんだよな。

攻撃魔法もあったけどそれならわざわざ光で覚える意味ないっていうか別の属性で覚えたほうが強いの多いし。

むしろ光魔法で攻撃してたらパーティーじゃ「そういうのいいから」とか言われるつらい目にあうこともなくもない。

そんなクソ雑魚魔法使ってる暇があったら支援魔法使えよという意味である。


 ちなみにアイシャはどうも初めて組んだパーティーでそれっぽいことを言われて以来ソロでやっていたらしかった。


「ヴォルさんが『俺が支援するからパーティー組もう』って言ってくれた時は感動して涙がでました…」 

「な、泣くほどだったんだ…」


 やっぱその辺かなー好かれてる原因。

そこまでとは思ってなかったけど…ていうか


「ふと思ったんだが、アイシャはどうやってほわオンをプレイしてたんだ?」


 つい話に夢中になりかけたがここは異世界…のはず。

ほわオンの運営会社は世界の壁を越えてまでサービス提供してないぞ、絶対。


「それはですね…うーん、説明が難しいんですけど白露水晶にまず自分の魔力を流して…」

「うん、ハクロスイショウとかいう物体が既にわからないな」

「…実際にプレイしてみますか?その方が早いと思います」

「え?できるの?ここで?」

「あ、はい、この家のある部屋で」


 プレイできるの?え…それって…つまり…


 ほわオンを通して元の世界、日本の知り合いに連絡できるのでは?


「是非やってみたいな」

「じゃあ案内しますね!」

 

 まさか…とは思いつつも、俺は期待せざるをえなかった。

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