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名は体を表す

この人の名前だけは最初から考えてました。

 ゲロの聖女とタックスさんはアイシャのお願いをかなえる度に授かったという数々のレアアイテムで栄華を極める日々を送っていたわけだが、それはある日突然終わりを告げる。


 アイシャの注文…神託がなくなったからだ。


 それまでしょっちゅうあったものが突然無くなる。

しかしその日までの出来事の結果、神殿にはレアアイテムを求めるお金持ちの貴族やらが列を作って並んでるような状態であった。

おい次の神託はまだかまだかと貴族や神官たちに催促され、焦った聖女は毎日アイシャに呼び掛けて祈りを捧げていた。


 で、そのかいあってか再び神託があったのだが告げられた内容は


「貴女など知りません、毎日うるさいので私への呼び掛けをやめなさい」


 神殿に響いた声を聞いた人たちは、時が止まったように固まった。

やがて、もうレアアイテムの配布はないですよ、という状況に気づいた人たちから戸惑いのざわめきが広がってそれはいつしか聖女を非難する声となった。


 この女が何かアイシャ様の怒りを買うようなことをしたんだな!そうに違いない!


 怒れる人たちによって、哀れ聖女は神殿から蹴り出され、命からがらタックスさんの元まで行き、なんとか王都から逃げだした。


 タックスさんから聞いた悲しいお話を要約するとこんな感じだ。

ちなみにタックスさんは神託が途絶えたあたりから何か嫌な予感がして少しずつ財産を金に換え、逃げる準備をしていたらしい。

そしてこのコムラードで店を買ってちょうど再出発したところ。


「いやはや、話がうまくいきすぎると思ってたんですよ、ですから、こんな降って湧いた儲け話はそのうち突然終わりが来ると感じてましてねえ」


 タックスさんの言葉になかなか凄い人だな、長生きしそうだなと俺は感心した。

それと同時に、これはあれだな、俺のせいになっちゃうのかな、と心配もしていた。


 あと…再び神託があったということは、アイシャが転生したってことなんだろうな…

俺も話してみたい気もするが「あなたなんか知りません」と言われるかもしれないと考えると恐ろしい。

いやきっと言われるだろう、でなければ転生刑の意味などないのだから…


「これが私がお話できる全てですな」


 俺の目をまっすぐ見てタックスさんが話を締めくくった。

次は俺に話をしてくれということだろう。

さて、どうしようかなと思いつつゲロ聖女を横目で見る。

彼女は部屋の隅で体育座りをして何かぶつぶつ言っているのでそっとしておこう。


「わかりました、では俺が何を知っているかですが…実はですね、俺の故郷にも彼女と同じように夢で神託を受けた人がいたんですよ」

「本当ですか!」


 いえ嘘です。


「その人は俺の身近な知り合いでして、女神様から何か品物を用意するように頼まれたがどうしたらいいかわからないと俺に相談に来たんです」

「私と彼女の関係のようですね」

「ええ、ですが生憎、故郷の島にはあまり人もいませんでしたので女神様に言われた物を用意するのが難しかったのです、ですからその知り合いは再び夢で神託を受けた際、正直に用意するのは無理だと女神様に伝えました」

「そ、その人はどうなったのですか」

「…どうなったと思います?」

「え、まさか女神様の怒りを買って死んだなんてことは…」


 タックスさんは青ざめた顔でそう言った。

品物を用意しているのはタックスさんだったから、そこが一番気になるところだろうという気がしていた。


「そんなことはありませんでしたよ、ただ単に、では別の人に頼むと言われたらしく、それっきり何もありませんでした」

「そ、そうでしたか…」


 心底ホッとした様子だ。

まあ本当に何もないだろうと思う、だってたぶん今のアイシャは何も覚えてないんだから。


「Tシャツとジーパンという服はその時に聞いた物ですね、他にもいずれ食べ物や必要な道具を頼むかもしれないとも言われたそうですが、無理だと伝えた時点で恐らく頼む相手を、そっちに変えたんでしょう」

「そういうことだったのですか、たはは、不思議な縁もあるものですなあ」

「ええまったく」


 こんなもんでいいかな、バカ正直に、あ、その神託は俺がアイシャに頼んでやってもらってたんですよとか言うよりは信用してもらえそうだ。

それに…俺のせいでちょっと自暴自棄になってる人がすぐ傍にいるので怖くて本当のことは言えません、許してください、お願いします。


「…今の話本当なの?」


 元聖女様がこっちを見て言った、嫌な意味でドキッとした。


「俺もその知り合いが言うことを聞いただけだから、そいつが本当のことを言ってたかどうかはわからないね」


 だから俺にはどうしようもないよ、と言った感じに答えてみる。

彼女はそれを聞いて何か考えるように少しうつむいた。


「…きっと騙されてるんだわ」

「どういう意味かな?俺がタックスさんや君をだましてると?」

「いいえ、アイシャ様よ、アイシャ様はきっと悪い男に騙されてるんだわ」


 滅茶苦茶ドキっとした、なんで急にそんなことを言う!?

主に騙されてたのは俺のほうなんだぞ!


「だっていろいろおかしかったわ!食事も二人分頼まれたし、最初の服とは別に男物の服も頼まれたのよ?後の物も人が使うようなものばかりだった、きっとアイシャ様は男に貢がされていたのよ」

「た、確かに用意していて妙だなとは思いましたが男に貢がされてとは…相手は神様ですよ…」


 タックスさんは何をバカなとは思いつつもうまく説明できないのだろう。

彼女の言うことに反論できないでいる。


「そして飽きられて捨てられたんだわ、だから神託とかどうでもよくなって私にあんなことを言ったのよ…私も今まで色んな男に騙され、貢いだ挙句、捨てられてきた経験があるから間違いないわ」


 おっとぉ、自信ありげに立ち上がって言ったけども、それは胸を張って言えることじゃないぞぉ。


「あー…えっと…じゃあ仮にその悪い男が全ての元凶だとしたら、君はどうするつもりなんだ」

「見つけたら殺してやるわ、女の敵だもの」


 よし!俺がアイシャと生活していた秘密は墓まで持っていこう!決定!


「はぁ、でもきっと私なんかじゃ無理ね…だって私は何の取り柄もない、何をやらせてもダメな女だもの…私も騙されて弄ばれるに決まってるわ…」


 立ち上がったと思ったらまた床に座っていじけはじめた。

めんどくさい女だな…現代日本人にありがちなメンタルの病気だろこれ。


「この人ずっとこんな感じなんですか?」

「ええ、男に捨て…別れるたびによくこうなります、今回は原因が違いますが」


 見た目はいいのになんで捨てられるんだろうな。

やっぱ付き合うと面倒なタイプなのかな。


「そういえば彼女の名前は?」

「メンディーナと言います」


 メンディーナ、めんでぃーな…めんどぃな…


 こんなにも名は体を表してるやつは初めて見た。

このどこにむかってるかよくわからない話を見てくれてありがとう。

ブクマが増えてることと評価してくれた人がいることに気づきました。

すごい…すごくない?


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