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コムラードの街

最近もう3000文字超えてても別にいいかという気がしてきた。

 一夜明けて翌日、朝から早速ミュセに「今日は私がモモと荷台に乗るからアンタは歩きなさい」と言われて俺は今ジグルドたちと共に馬車の横を歩いている。

よくわからないが昨夜から俺に対してミュセの態度が変わったように思える。


 無言で睨みつけてくるから、遠慮なく文句を言ってくるように進化…進化かな?まあそうなった。

たぶん俺のこと死ねばいいのにとか内心思っていた人が、死ね!と直接言ってくるようになった感じ。

俺が中学生くらいだったら泣いてる自信がある。


 夜中の見張りも手伝おうと思ったのに「私たちは見張る側、アンタは見張られる側」と言ってテントから出るなと言われ、おかげでぐっすり寝たが、なぜ俺は見張られる側なんだろうという疑問は残った。


 ジグルドとロイに「ミュセが尋常じゃなく冷たいんだけど、あれか、パーティーの誘い断ったからそうなのか?」と一応聞いてみた。

そうしたら二人ともそのことじゃないからあまり気にしなくていいと言った。

じゃあ何が原因なのか教えてくれと頼んだら、気まずそうな顔をして簡潔に教えてくれた。


 要約すると俺は怖がられていたらしい。

そして昨日怖くないとわかったので今までの反動でああいう態度なんだと。

女心は複雑すぎてちょっとわかんねえな。


「パーティーのことはよ、おれはまあ断られるんじゃねえかなとは思ってた」

「そうですねぇ、ちょっと欲ばりすぎましたねぇ」


 二人には一応俺からミュセには断ったと伝えてある。

ミュセは微塵も俺をパーティーに入れる気はなくなったようだが。


「ボクたちとヴォルガーさんでは力に差がありすぎますからねぇ」

「ああ、ヴォルガーに釣り合う実力をつけるのが先だったな」


 俺はつまり高く評価されすぎて、逆に扱いに困る存在になっていたのか。

冒険者としてはジグルドたちのほうが全然上だと思うけどな、とフォローしようかと思ったが嫌味っぽい気がしたのでやめた。


「うーん、せめて俺も冒険者になってから意見すべきか…」

「お、なんだ?冒険者になる気も少しはあるのか?」


 おっとつい考えが口に出てた。

今のところは無いんだが、サバイバル技術を磨くという点ではいいかもしれないと思っている。

昨日の野営はジグルドたちにまかせっきりだったしな。

決してミュセが儲かると言ってたことが気になり続けてるわけではない、たぶん、きっと。


「街で落ち着いて余裕ができたら冒険者のことも考えてみようかなとは思っている」


 だからもし冒険者ギルドとかいう場所で会うことになったらよろしくとか適当に答えておいた。

二人とも、こちらこそ、と返してくれた。


 そんなことを話ながら移動してたんだが、日が暮れてきて、あれもうすぐ完全に日が暮れるけど今日は野営しないのかなとタックスさんの様子をうかがうと「街が見えましたよ、あれがコムラードです」俺の方を向いてそう言った。

あ、本当だ、なんか見える。

ナクト村から遠かったような気がしたがこれ車で移動なら半日もかからないだろうなー。

コンクリート舗装された地面はないんだけども。

 

 外壁で囲まれた街は出入口に門番が立っていて、おお、普通の鎧きた兵士だ、マジで兵士いる、とか変な感動をしつつ俺はタックスさんと門番がやり取りしているのを眺めていた。

そしてあっさり街に入れた。

パスポートが必要ですとか言われなくてよかった。

ここ着くまでそういうこと何も考えてなかったわ。


 街中を見るとうわ、人多いなとまず思った、いや日本の都会に比べたら全然いないけどもナクト村から比べたら人口密度が違う、大体あっちは隣の家まで畑何個分も距離が平然と空いてるのに対しこっちは建物が密集して建てられている感じだ。

当然畑はない。


 石畳で舗装された道を進むタックスさんの馬車の隣で、はーやっぱ街は違うなあ、なにせいろんな店があるしあそこなんかほらナイフとフォークの看板があって『テムテム料理の店』とか書いてあるし、いやテムテム料理ってなんだよ、と心の中でつっこんだがふと違和感に気づいた。


 これ日本語じゃねえか。

そういやこの世界で字見るのはじめてだぞ。

ナクト村じゃ看板はあったけど絵がかいてただけだ。


 そういや会話も今までずっと日本語だよな。

なんで違和感感じてなかったんだろう、日本人ぽい顔してたの俺だけなのに。

え、実は今までのこと俺をだますための盛大なドッキリで実はここは異世界じゃなくて日本のどこか…なわけないよな。


 混乱しながら街行く人を眺める。

耳を澄ませるとやはり聞こえてくるのは日本語だ。

肌が白い人もいれば浅黒い人もいるし、髪の色だってバラバラ。

あと…エルフいた、ミュセみたいな緑髪でスレンダーな美人とかイケメン。

人間10人みたら1人エルフみるかどうかくらいの割合だけど。

しかし「もーほんまいややわー」とか言って人間のおばちゃんと談笑していた美しい女エルフを見て膝から力が抜けてこけそうになった。


「よし、タックスさんの店までついたし、おれたちはここでお別れだな」


 ジグルドの声で気づかされたがいつの間にか目的地に着いていた。


「ジグルドたちはどこへ?」

「どこって、もう護衛料も貰ったし、おれたちは冒険者ギルドに行くのさ、ホーンウルフのボスを倒した証拠に角も見せなきゃならんからな」


 そ、そうか、そういえば調和の牙の護衛はそれのついでだったんだ。

 

「ヴォルガーさん!また会いましょうね!絶対ですよ!肩こりになったらここ来ますからね!」


 俺がパーティーの誘いを断ったことを最後まで不満げに思っていたモモがそう言った。

ここは別に治療院ではないのだが。

あと街でそれ勝手にやったら怒られるらしいので黙っててほしいんだが。


「モモ、ヴォルガーさんに治療を頼むのはいいですがここは教会がありますから、内密にですよ」

「一人で勝手に来ちゃだめよ!行くときは絶対私と一緒よ!治療と称して何されるかわからないからね!」


 ロイがちゃんと注意してくれた、まあ来たら治すけどさ。

ミュセはなんだおい、俺のこと完全にそういう目で見てるのか。


「ああ、皆も体に気を付けて、ミュセは頭をどこかで治してもらったほうがいい、俺には無理だ」

「ああああん?なんですってええ!」


 暴れるミュセを他の皆で抑えながら調和の牙は街中へ消えていった。

街中でミュセ単品で出会ったりしたら嫌だな。


「いやはや賑やかな人たちでしたねぇ」

「ええまあ、そうですね」

「ではヴォルガーさんも仕事の話は明日にして、今日はもう休める場所に案内しましょう」

「あ、助かります」


 馬車の荷物は既に誰か知らない人が運びだしていた、若い男だ、従業員だろうか。

まあ何も言われないから紹介は明日ということかな。

タックスさんが店の前から移動しはじめたので慌ててついて行く。


 店の中へは入らず、店の裏に来た。

倉庫のようなものとは別に離れのような建物がある。


「あそこを使ってください、元々は従業員の家族用なんですが今は空いてますので」

「はあ、では遠慮なく」


 じゃさっきの人は何なの?従業員じゃないのか?


「良ければ今日の夕食はご一緒しませんか?後で呼びに来ますので」

「え、じゃあ是非お願いします。いやなんか悪いなあ」

「いえいえ、構いませんとも、ではまた後程」


 そしてタックスさんは店のほうへ戻っていった。

はーいろいろあって疲れた気もする。


 あっ、ジグルドたちのことで忘れてたが文字のこと聞けばよかった。

まあいいか、後で。

それより早く中入って荷物おろして休憩しよ…


 俺は離れっぽい小さな家の中に入った。

おっと靴は脱がなくていいんだった、たまにまだ忘れて脱ぎそうになる。

入ってすぐ調理場があるな、かまども…いずれ使い方教えてもらおうかな。

こっちの部屋はなん…


 調理場の向かいに入口からは見えない部屋があるのでのぞき込んだ。


 知らない人がいた。


「うう~ん…」


 こっちに背を向け、椅子に座ってテーブルに突っ伏している。

テーブルの上は何か飲み物の瓶が転がって…酒くさっ、酒飲んでるこの人!

緩いウェーブのかかった長い金髪と今のうめき声からすると女性のようだが…


「あの、すいません…」

「だれぇ…?トニーなの…?」

「いえ、トニーじゃないです」

「ああそう…じゃあお酒持ってきてねぇトニー…」


 どうやら相当酔っているようだ。

こっちを見ようともせず机に突っ伏したまま酔っぱらいの受け答えをする。

いやマジで誰なのこの人、タックスさんの奥さん?

でもトニーって言ってるし…やっぱさっきの従業員の家族なんじゃ…


 どうしたもんか考えていると、その酔っぱらった女の体がグラリと傾いた。

危ないっ!倒れる!慌てて駆け寄って体を支えた。


 そしてようやく顔を少しあげたその女はかなりの美人だった。

が、美人だとか言うよりもっと気になることがある。


 この女…Tシャツを着て、ジーパンを履いている。

日本で見慣れた感じの。


「え、おい、アンタこの服はどうしたんだ!」

「…おええええええっ」


 その女は俺の問いに対する答えの代わりに、ゲロを吐いた、最悪だ。

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