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村の酒場にて2

これもう後半酒場じゃないわ。

「もう~ミュセ離してください~!」


 ミュセロレリアに守られるように頭を抱えられたモモは

ジタバタもがいていた。愛くるしいだけで効果はなさそうだ。


「ほらモモ暴れないで大人しくして」


 そう言ってモモを抱きしめる手を緩めないミュセロレリアは、だんだんと息が荒くなっているような気がする。

モモの後頭部に顔をうずめたと思ったら今度は頬ずりをはじめた。

仮にここが日本で俺が同じことをやったとしたら通報まったなしだ。


「ハァハァ、あーモモかわいいーいい匂いースーハースーハー」

「すいませーん、ミュセレロレロさんが大変危険な状態ですので早く引き取ってもらえますかー?」


 これはいけない、と思って向こうのテーブルにいたロイという男に、この犯罪予備軍を連れて行ってもらおうと声をかけた。


「誰がミュセレロレロですってぇ!?」


 ロイは笑い声をあげてこっちを見ているだけで何もしてくれない。

なんて役に立たないやつだ。

ミュセなんとかが俺のこと睨みつけててより危険な状態だというのに。 

 

「あのーどうかしたんですか?」


 俺の隣にいたキッツがさすがに様子を見かねてか口を挟む。

いいぞ、さすがイケメンだ。


「いや俺もよくわからんのだけど、そこのモモって子が俺と話をしたいみたいで、ミュセロリロリさんはそれが気にいらないみたいなんだ」

「ねぇ、貴方わざとでしょ?わざと間違えてるわよね?」

「なんのことです?」


 ロイの笑い声がより一層大きくなった、聞いてるならなんとかしろ。


「………ふうん」


 とぼける俺に対してミュセロレリアの視線がより冷たいものとなる。

やりすぎたかな?しかし俺は謝らないぞ。むしろ謝れ。


「…風よ、我が呼び掛けに応じ力となれ<ブリーズ…」

「やり過ぎだミュセ、何を考えてる」


 何かぶつぶつ言いだしたミュセロレリアの肩を、ジグルドが掴んでいた。

確かこいつがパーティーのリーダーだよな。

さすがリーダー!頼りになるう!


「…ちょっと『そよ風』で脅かしてやろうと思っただけよ!ふん!」


 ミュセロレリアはうーうー言ってるモモを抱えて元の席に戻っていった。


「迷惑かけて悪いな、あいつはモモのことが絡むとおかしくなるんだ」

「はあ、まあいいですけど」


 俺もちょっとからかったし。


「変なちょっかいかけないように言っておく」

 

 ジグルドも自分のテーブルに戻っていった。


「…ヴォルガーさんて初対面の女の子によく絡まれますね?」


 キッツに言われてそういやケリーも最初怒らせたのを思い出す。


「俺はたぶん悪くないぞ?」


 しかしキッツは苦笑いで、そうですか、と返してきただけであった。


 ………………


 ………


 カイムとキッツは酒飲んで食事が長くなりそうなので、ほおっておいて先に宿に帰ることにした。

タックスさんは飲んでなかったので俺と一緒に酒場を出た。

 

 宿までの道中、タックスさんから扱ってる商品のことなどを中心に話を聞いた。

明日いくつか宿の前で売るらしい。

この村じゃあまり買いたいものがなかったので少し楽しみにしている。


 ある程度の生活必需品はもう雑貨屋に降ろしたそうだ。

そっちは別にどうでもよかった、雑貨屋で見たことあるやつだろう。

それ以外の、何か珍しいものに期待している。

ただまあ、あまり大きなものは買えないなあ。

宿借りてる状態だから…


 宿の前でタックスさんは馬小屋に馬車の様子を見てくると言ったのでそこで別れた。

ケリーとココアが一応管理してくれているが馬小屋は隣のサムのものらしい。

だからサムの家に近い。


 サムとあまり話はしたことないけど意外と世話になるんだよな…

あいつの作った野菜を宿で毎日食べてるし、奥さんに俺の服頼んでるし、今は俺が買うかもしれないタックスさんの荷物を馬車ごと預かってるし。 

さすがに高価なものは馬車から降ろして宿にいれたみたいだけど。


 サムに何か礼をしたくなったがあいつ超健康なんだよなあ。

タダで治療くらいしか俺にできることないのに。

まあ健康なのはいいことか。


 どしんっ。


 ぼーっと考えごとをしてたら何か俺のケツにぶつかった。


「うー、急に止まるからぶつかりました」


 モモだ。おっさんのケツに小さい女の子がくっついている。


「あ、ごめん、大丈夫かい?」


 もうこの子に敬語を使う気にならなかったので普通に聞いてしまった。

というか調和の牙の4人は敬語使う必要ないな。もはや。


「大丈夫ですっ、あのっ、少しお話いいですか!」

「それはいいけど…」


 俺は辺りを見渡す、他のメンバー、特にあのエルフはいないのか気になる。


「他の仲間の人は?どうしたの?」

「皆酔っぱらって大変だからわたしだけ先に戻りました。

ロイは笑い転げてうるさいし、ジグルドはカイムさんたちと話をはじめちゃって…ミュセは酔っぱらってわたしの顔舐めるし…」


 エルフの人はもうダメなんじゃないですかね?

それたぶん酔ってなくてもやるよ。


「そう、じゃあとりあえず宿に…」


 入って話をする?と言おうと思って、何かこれ客観的に見たらおっさんが小さい子を宿に誘ってるってすごいやばいなとか考えていたら


「走ってきてちょっと暑いので、そこでもいいですか?」


 モモは宿の前にある木のそばを指さした。

確かにちょっと暑いんだよなあ、クーラーが欲しい夜もある。

外なら幾分まだ涼しい。

ただ、地べたになるけど…まあいいか、ここならまわりからも見える。


 俺は頷いてそこにあぐらをかいて、モモは隣で体育座り。

しかし座ったのはいいがモモはもじもじ手を組んだり地面を指でぐりぐりしたり何だその空気は。


「えーと…話って?」

「あっ、ええとヴォルガーさんは…村の人を治療したって聞いたんですけど…そのう…」

「うん、そうだよ、それがどうかした?」

「治せない人はいなかったんですか?」

「一応みた人は全部なおしたかなあ」


 そこでまたモモは黙ってしまった。何が言いたいんだろう。


「…その、何か不味かった?俺あんまり常識知らなくて、回復魔法使う人たちからしたらやっぱ迷惑なのかな?」

「いえいえ!そういうことじゃないんです!わたしは立派だと思います!」


 そうか、イチャモンつけられるわけではなさそうだ。


「そうじゃなくて…その、わたしも回復魔法は使えるんですけど、どうしても治せない怪我というか病気があって…それを治せないかなって思って…」

「え、そうなんだ?仲間が誰かそうなのか…?」

「いえ、わたしがそうなんです…」


 えっ、どういうことだろう、見た感じ健康そうだが。


「力になれるかわからないが教えてくれるか?」

「はい、実は…」


 モモはちょっと間を開けて立ち上がるとこう言った。


「肩こりを治す魔法を知りませんか!」


 ぷるんと揺れるおっぱいを見て、ああー…と俺は思った。

でかいと凝るらしいな。

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