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うひゃあかっこいいー

棒読みなかんじで。

 ケリーに連れられて宿の近くの畑まで来るとクワをもったおっさんが、宿のおかみさんであるココアに羽交い絞めにされていた。

どういう状況だ。


「お母さん!キッツ連れてきたよ!」

「ほら!サム!もうキッツに任せて大人しくしときなって!」


 羽交い絞めにされているおっさんはサムというのか。


「は、離してくれ!あいつらは俺がぶっ殺してやる!」


 サムはいきりたってもがいているがココアの拘束をまるで解けていない。

これココアのほうがパワーあるんじゃないか?


「おかみさん、それでゴブリンはどこに?」

「あそこだよ!ほら畑の一番向こう側」


 ああー確かに何かいるぞ、3匹もいるじゃないか。

しかも…何か食ってるぞ…口の周りを真っ赤にして…


「あいつら俺の丹精込めて育てたトマトを勝手に食いやがって」


 トマトだった。まあうん、農家からしたら許せないよな。


「サムさん、あとは僕がなんとかするんで皆と一緒に下がって。3匹もいるとなると、こっちに来たら皆を守りきれない」


 キッツに強めに言われてサムは大人しくなった。

ケリーとココアもそんなサムを連れて畑を離れ近くにある家にすぐ入れる位置まで下がった。


「なあキッツ、大丈夫なのか?」

「わかりません、ちょっと面倒かもしれませんね」


 俺はまだキッツのそばにいる。


「あれははぐれじゃなさそうです」

「はぐれ?ああ3匹いるからか?」

「はい、多少知恵が回るやつが混ざってるみたいです。だから数匹で来たんでしょう。そういうやつは面倒なんですよ」

「ふむ…じゃあ俺も手伝おう」

「ヴォルガーさん素手じゃないですか…僕はまだこれがありますけど」


 そう言ってキッツは腰から短剣を抜いた。


「手伝うと言ってもなんだ、キッツに魔法をかけるだけだ」

「確かに回復魔法があれば安心ですが…確実に狙われますよ、そういう頭があるから面倒なんです」

「いや今ここでかけてあとはキッツに任せるから」

 

 そう言って俺はキッツに支援魔法をかける。


「<ウェイク・スピード><ウェイク・パワー><ディバイン・オーラ>」

「え?え?ちょ、ちょっと!?」


 自分を包む謎の光に戸惑っているキッツ。


「<チェイス・オブ・ライトブレード>」

「二人とも何してるの!?ゴブリンがこっち来たよ!」


 ケリーの叫びでキッツは、ハッ、と俺から視線を外すとこちらに向かって走ってくるゴブリンの存在に気づいた。

ちょっとエフェクトが目立っちゃったせいでバレたかな。


「くっ!逃げてヴォルガーさん!」


 キッツはそう言うとゴブリンを迎え撃つべく駆けだした。

と、思ったら一瞬で3匹の目の前まで行き、本人も驚いたのか慌てて振るった短剣が右端にいた1匹の腕を切り飛ばし、そのままの勢いで隣にいたゴブリンの顔面も刺し貫いた。


 何が起こってるのかまるで理解していない3匹目のゴブリンは、キッツが2匹目の顔面から短剣を抜いた際に軌跡を描くように発生した光の刃に巻き込まれて頭が首から離れて飛んで行った。


 その光景に思わず飛び下がったのだろうキッツは後ろにいた、片腕をなくして血しぶきをあげるゴブリンのこめかみに狙ってかどうかわからないが肘打ちをくらわせた。

結果、そのゴブリンは頭が横から陥没してついでに首が折れた。

こいつが一番悲惨だな。


「すっごーい…何が起きたのかよくわかんなかったけどキッツってあんなに強かったんだ…」


 ケリーが俺の少し後ろで口を開けて立っていた。

サムとココアもこちらに向かって慌てて走ってくる。


「さすがキッツ!なんて強さだ!うひゃあかっこいいー」

「ヴォルガーさんちょっと来てもらえますか」


 無言で歩いて戻ってきたキッツに睨まれた。

なぜだ、褒めたたえたのに。

いてっ、まだ強化効いてるんだから俺の腕を引っ張るな。


「ちょ、痛い痛いって、なんなの?」

「僕の体に何をしたんですか!!」


 その言い方は場合によってはあらぬ誤解を生むのでやめたまえ。


「速度強化と筋力強化に物理攻撃を遮断する魔法をかけた。まあ攻撃されなかったので防御魔法の意味はなかったな」

「短剣から光の魔法みたいなものが出たんですが!?」

「それは…キッツの攻撃に反応して、近くにいる敵を自動的に光の剣で一緒に攻撃してくれるみたいな、そういう魔法」

「なんでそんな物騒な魔法をかけるんです!?」

「3対1じゃ大変かなと思ったんで…」


 支援したのに怒られる俺。

たしかに最初の二つくらいで良かったかなとも思う、いやでも初めて他人に強化魔法使ったし、念のために少々過剰にかけておいた判断は悪くないはず。


「もうこれから怖くて一生剣振れませんよ!」

「じきに効果は切れるから、そんなたいしたことないんで」

「そ、そうですか…いやたいしたことですけど…」


 キッツはまだ何か俺に対して言いたいようだったが、ケリーが恋する乙女の目でキッツかっこよかったねとか言って近づいてきたので、ああまったくだな、じゃあ先に宿に戻るんでご飯できたら呼んでくれと言って俺はさっさと帰っておいた。


 ご飯のときにまた、キッツにぐちぐち言われた。

ケリーの目を見たから、俺は気を使って離れたのに。

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