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飯から一転

異世界(恋愛)は違う気がしてハイファンタジーにしておきました。

 出された食事はなかなかうまかった。

パンは固いけど、固いパンがむしろ好きなので

そんなに気にはならない。キッツはスープに漬けて食べている。


 そのスープも見た目は赤くて辛そうだが、食べてみると酸味があってトマトのスープみたいだ。

結構煮込んであるのかややドロッとしてるがいろんな野菜が溶け出している証拠だろう。

たくさん作ってあるんだろうな。


 そして肉。何のかわからんが。

干し肉をコーンと一緒に炒めたものがある。

しょっぱくてパサついてるものに油と甘みを足したんだな。

単純だがこれも美味しい。


「クルトのことは残念だったが…覚悟はしてたからな」


 俺とキッツが料理を待ってる間にカイムも合流した。

そして今、エールとかいうビールもどきを片手にそう言った。

カイムも腹が減ってたようで、村長の家に行った後

急いで宿に荷物を置きに戻ってきたらなぜか俺たちがいたので一緒に席についた。

酒場にいると思って急いでたらしい。


「そうだったのね…クルトさんはもう…」


 カイムはいい。わかるよ。

ただケリーもなんで一緒に飯を食ってるんだろう。

営業中じゃないのか?


 ただこの3人はやはり旧知の仲というのか、ケリーもクルトの死を知って悲しそうな表情をしているので

俺はこうして黙々と料理を食うしかないわけだが。


「えっ、じゃあアンタ神官なの?」


 え?ああ、俺か、ケリーが急に俺に何か言ってた。

飯のこと考えて話の流れを全然聞いてなかった、しんかん?


「アンタはないだろうケリー…俺たちの命の恩人なんだぞ。特にキッツはヴォルガーさんがいなけりゃまず助からなかった」

「あ、そ、そうね、ごめんなさい…えと、ヴォルガーさん」


 ああいやいいけど…随分態度変わるな。

これはあれかな、俺と出会ったときのことを話してたんだな。


「まあ俺も二人に会わなきゃ道に迷ってたしお互い様だよ」


 実際途方に暮れてたしな。


「僕は見てなかったからわからないんだけど、カイムが言うにはヴォルガーさんが凄い魔法を使ってくれたって!」

「ありゃ凄かったぞ、俺もそんなに魔法に詳しくないが教会でも見たことねえ。俺の頭と足の傷もあっという間に治したしな」


 カイムが足を怪我してたことを今知った。

案外適当に<ヒール>しても治るもんなんだな。

それより教会って言ったな、しんかんとは神官、宗教関係のことか。


「回復魔法を使うのは神官だけなのか?」

 

 少し気になるので3人に聞いてみた。

 

「普通そうでしょ」


 うん、ケリーはこういう態度が素なんだろうな。


「冒険者にも使えるやつはいるが、大半は教会か神殿に仕える神官だな」

「街で治療してるだけで暮らしていけますから、わざわざ冒険者になって危ない目に会おうって人は少ないですよ」

 

 なるほど、もしかして俺も神官になれば勝ち組なのでは。


「神官になるにはどうすればいいんだ?」

「ナクト村よりもっとでかい街にある、アイシャ教の神殿に行って試験を受けなきゃいけないとかだったと思うが…ヴォルガーさん、こっちで神官になるつもりなのか?」

「たった今、安定した収入が得られると聞いたので」


 しかし、宗教の名前がアイシャ教かよ。

確か、アイシャは光の女神様だったから、まつられてても別におかしくはないんだけどなぜか、アイドルを応援するオタクの集団というイメージが浮かんでしまう。


「ヴォルガーさんは海の向こうの大陸の人だから難しいかもな」

「そうですね、基本的にそっちの人はこの国で神官は…」


 カイムとキッツの中では俺は完全に別大陸から来た人になっているが俺は海のほうから来たといっただけで本当は違うのに。

まあ遠くから来た田舎者ってほうが色々聞きやすいからこれでいくけど。


「へぇー、向こうの人なんだ、アタシ初めて見た」


 俺もこんな失礼な宿の従業員は初めて見るけどな。


「違う国から来た人は神官になれないのか?」

「あーいや、アイシャ教に入ってるならこの大陸のどこの国でも神官になる試験は受けれるらしいんだが

向こうの大陸の人は試験どころかアイシャ教にも入れない」

「え、なんで?」


 差別よくないよ?


「ヴォルガーさん、気を悪くしないでほしいんですがアイシャ教の偉い人たちなんかは、向こうの大陸の人は魔族と血が混ざってるって信じてるんです」

「魔族…?」

 

 キッツに申し訳なさそうに言われるがなんのことやら。


「黒い髪がその証拠だとか、あ、勿論、僕は信じてませんよ!大体魔族なんてここ何百年も誰も見たことがないそうですし」

「キッツの言う通りだ、冒険者は特に、そんな話は信じてねえ」

「アタシも知らなかったから言われても、ふーんって感じかなぁ」


 何かフォローしてくれてるようなんだが、とにかく神官無理なのか…


「でも別に神官にならなくても回復魔法は使えるんでしょ?だったら勝手に治療して、お金貰ったらいいんじゃないの?」


 お、いい質問だぞケリー。ただそう言われたら俺は法外な値段を

要求する闇医者のような立場に見えてきた。


「別に法の上では問題はないがな。ただ教会のある街でアイシャ教の神官でない人物が、勝手に治療をしていたら目を付けられるだろうから、やめたほうがいいだろう」


 あーウチのシマで何勝手なことしとんじゃいって言われるのか。


「結局、神官って言ってもお金が大事なのね。怪我や病気で困ってる人が減ったら怒るだなんて」


 なんかすいません。お金のためになろうとしてました。


「そういうが神官だって人だから金がなくちゃな…」

「そんなのわかってるわよ!」


 カイムの言葉をさえぎってケリーが怒鳴った、何、急に、こわっ。


「ケリーどうしたんだ?何か変だぞ。もしかして、おかみさんになにかあったのか?」


 キッツが何か気づいたのか心配そうにいうがケリーは黙ってしまった。

あれ、今度は泣きそうだぞ、キッツイケメンなんだからなんとかしろよ。


「…お母さん、今朝、急に倒れたの。本人はたいしたことないって言って寝てるけど、アタシ心配で…」

「なんだって?どうりで姿が見えないと…」


 少し黙った後、ケリーは口を開いて小さい声でそう言った。

そして俺のほうをじっと見ている。


「アン…じゃなくて、ヴォルガーさん」


 アンタって言おうとしたな今。


「何かな?」


 言いたいことは予想できたがまあ一応聞いた。


「凄い魔法が使えるんだよね?」


 この世界の魔法の基準知らないから何とも言えない。


「お金も払います、足りるかわからないけど…お願いします、お母さんの病気を治してください」

 

 うーんまあそうなるよね。

ケリーは実に真剣なまなざしで俺がなんというか見守っている。

まあじゃあ神官にはなれないけど…


「わかった、様子を見てみよう、金は治ったらでいい」

「本当ですか!ありがとうございます!」


 任せとけって感じで答えておいた。

というかこの状況で断れるやついるか?


 しかし困ったな、ほわオンに毒や麻痺、その他状態異常を治す魔法はあったけど病気ってステータス異常はなかったから病気を治す魔法なんて知らないぞ。

それに病気っていってもいろいろあるし…


 3人の期待に満ちた眼差しが重いな。

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