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何言ってんだこいつ

新たな街の出番はなかった

 アイラちゃんの話を一通り聞き終えた後、私たちは元いた場所に戻して欲しいとウェリケ様に頼んだ。

ここでアイラちゃんが思い出したことが真実かどうかは結局のところヴォルるんにしか分からないから、これ以上私たちだけで考えたって何もわからない。


 それにヴォルるんとはぐれてしまって丸一日が過ぎてる。

ヴォルるんが行方不明になるのはこれで三度目だから、なんだか慣れつつあるのか、以前のようにものすごく心配とかはしていない。

ずっと一緒にいたからわかるのよね、ヴォルるんは一人になっても、どこでだってやっていける人なんだって。


 本人は一人じゃどんな弱い魔物も倒せないって言ってたけど、そんなの関係ないわ。

倒せないなら逃げればいいだけだもの。

今まで危険に立ち向かってきたのは、自分以外の誰かを守るためよね。

たぶん一番弱い私が一番守られてると思う。


 だから本当は私なんか傍にいちゃ駄目なんだろうけど、それでも私はヴォルるんから離れたりなんかしないわ!

なぜなら私が諦めきれないからっ!

どれだけ迷惑かけようともヴォルるんの傍にいると既に誓ったのよっ!

…迷惑だから傍に寄るなって言われた事ないからたぶん、大丈夫、嫌われては無いと思うの。

もしそれを言われたら泣く、いや死ぬかも、即死だわ。


「一人でにやにやしたり、急に落ち込んだりして気持ち悪いんだけど…それを止めて落ち着いて聞いてくれる…?さっき言われた元の場所に戻すって話…もう数日待ってくれないかしら…」

「ほあっっ!?」

「…ヴォルガーを転移させようとして倒れたときに…ごっそり魔力を失ったのよ…同じ場所にもう一度転移させるための魔力がまだ回復してないの…」


 そんなぁ、それじゃこの家で特にやることもなく、悶々としながら過ごさなきゃいけないの?

美味しいごはんもなしに?


「待て、昨日の夜はこの家から転移していただろう」

 

 あ、そう言えばウェリケ様は昨日、自分の家に帰ってたわね。

 

「…それはここのすぐ近くなのよ…近場なら…転移できるわ…」

「結局ここはどこなんだ?マグノリアから大分遠いのか?」

「…ここはルフェン大陸の南の海」


 えっ、ここは海の上!?島だったってことなの!?


「の遥か上空に浮かぶ島」

「はるか上空っ!?」


 島って空に浮かぶのっ!?

私は驚いたんだけど、アイラちゃんとマーくんは大して驚いてなかった。

アイラちゃんは思い出してたからなのかもしれないけど、マーくんなんでそんなに冷静なのよ。


「なるほど、空中庭園と言ってたのがコレか…」


 一人で納得しないでよっ!

くうちゅう…なに?なんて?


「ここから一番近い街なんかはわからないか?」

「…ベルポイ…だったかしら…確かそんな名前の街があるわ…」


 よく知らない街だった、まあ私はそもそもコムラードに来るまでリンデン王国の王都から出たことなかったからほとんどの街のことを知らないんだったわ。


「ベルポイか、それなら分かるな」

「リンデン王国最南端の街ですね」


 知らないの私だけ!?


 そして話し合いの結果、私たちはそのベルポイの近くに転移させてもらうことになった。

ウェリケ様もそこならすぐにでも私たち全員と魔動車や漆黒号も含めて送れるみたい。


 でもそんなところに行けたって、ヴォルるんとはぐれた場所からは遠すぎるから意味ないんじゃないかと思って、そのことを口にしたんだけど


「ベルポイからまずコムラードに行きましょう、そこでラルフォイさんから通信クリスタルを借りてヴォルさんに連絡すれば居場所がわかります」

「もしかしたら既に向こうから何か連絡してきているかもしれんしな、我らがまさかコムラードに戻るとは思っていないだろうが、まあなにか助けを呼んでもらうために自分の居場所くらい伝えてるだろ」


 頭のいい二人がわかりやすく名案を出してくれたので納得したわ。

通信クリスタルはヴォルるんがずっと持ってたはずだから、私たちと一緒にこっちには来ていない。

これが備えあればなんちゃらってやつね!あって良かった通信クリスタル!

コムラードに行ったらラルフォイさんにうんとお礼を言わなくっちゃ!


 あっ、コムラードに行くってことはタックスさんやトニーにも久しぶりに再会できるってことじゃない!


 やったぁ…って浮かれてたらヴォルるんに悪いわよね…でも二人に顔見せに行くくらいなら、ヴォルるんも許してくれるわよね…帰って来たのに何も言わずにまた街を離れるのも、ねえ、それはそれで失礼だと思うのよ。


「ディーナさん、何をうんうん唸ってるんですか、早く魔動車に乗って下さい」


 とりあえず考えるのは後にして、家の外に行き魔動車に乗る。

私は運転席へ、助手席はアイラちゃんが乗る予定なんだけど、私には早く乗れって言ったのにまだ乗り込んで来ない。

少し離れた所には漆黒号にしっかり跨るマーくんがいる。

準備よし!でもまたあの気持ち悪いのが来るのかと思うと少し憂鬱。


 というかアイラちゃんは何してるのよ。

助手席の方に体を寄せて窓から外を見ると、家の前でウェリケ様と何か話をしてるみたいだった。

なんだろう、お世話になったから最後の挨拶かなー。

私はさっきちゃんと言ったわ、乗る前に。


 少し待つとアイラちゃんが魔動車に乗り込んできた。

そして、あっ、なんかぐにゃあって景色が、と思ったらあの気持ち悪い感覚が…おえっ。

ハンドルを握って下を向いてたら、いつの間にか転移魔法は終わっていた。


 これ何度やっても絶対慣れる気がしないわね…ヴォルるんが嫌がってた理由が分かる気がするわ…

アイラちゃんとマーくんは転移魔法の感じについて特に何も言ってなかったけど二人はなんで平気なのかしら…いえ、やせ我慢してるのかもしれないわね…あの二人の性格を考えると。


「ふう…アイラちゃん、ウェリケ様と最後何を話してたの?お別れの挨拶?」

「ん…いえ、なんだか…励まされたという感じでしょうか」

「頑張れ頑張れ~~って?」

「そんな呑気な感じではなくて、えっと…過去なにがあったとか、女神アイシャが何をしたかったのかとか…そういうの全部忘れて、ただのアイラとして生きてもいいと、そう言われたんです」

「そっかぁ、よく分からないけどそれもいいわよね」

「よく分からないなら適当な相槌やめてくれませんか?」


 なぜか怒られたわ。

なので話題を変えようと思って魔動車の外を見ると、遠くに街があるのが見えた。

あれがベルポイかしら。


「あっ見て、あそこがベルポイじゃない?」

「恐らくそうですね…あ、マグナさんが前に」

「良かった、マーくんもちゃんといるわね、なんか手を振ってるわ」

「いや手を振り返してにこにこしててどうするんですか、あれは移動するからついてこいって言ってるんですよ!」

「あ、ああそうなのね、じゃあ私たちも…」


 魔動車を動かそうと思って、起動するためのボタンを押す。


『ワッツ!?座標、現在時刻ともズレが発生しています、何が起きましたか?』

「ティアナちゃん!喋れるようになったのね!」


 それまでずっと黙ってたティアナちゃんが突然喋り始めた、壊れてなくて良かったわ。


『ヴォルガーの反応がありません、彼はどこへ行きましたか』

「あ、その…ヴォルるんとは色々あって離れ離れに…」

『ヴォルガー!ヴォルガーは私を捨てて行ったのですか!なぜですか!」

「いや違うのよティアナちゃん、そうじゃなくて…」

「マグナさんが走り始めました、早く追わないと」


 マーくんにおいていかれないように慌てて私も魔動車を動かす。


『私の何が不満でしたか!アアア、ピーーーーーーーアンケートにお答えください、イチ、ナビゲートを担当する音声にご希望はありますか?ある場合、よろしければ具体的な声優名についてお教え下さい…声優に希望が無い場合は人格モデルの例に沿って…』


 私がマーくんを追いかけている間、ティアナちゃんは良く分からないことを延々喋り続けていた。

アイラちゃんも何のことだか分からなかったみたい、だから私たちはとりあえず聞かなかったことにして無言で魔動車を走らせた。


 ティアナちゃん…やっぱり壊れたのかもしれないわ。


 ………………


 ………


 どこにも寄り道せずひたすら魔動車を走らせて、私たちはコムラードの街へついた。

ベルポイも、途中で見つけた村も、たぶんタックスさんがヴォルるんと初めて会ったナクト村だと思うんだけど、遠目に眺めただけで立ち寄ることはしなかった。


 気にはなるけど、いまはそれより大事なことがあるからね。

それに行くならヴォルるんと一緒に行きたいもの。


 コムラードの門番さんは魔動車を見て「あーあんたらかぁー、最近それ見ないと思ったらずっと出かけてたんだなぁ」とのんびりした様子で門を通してくれた。

マーくんの漆黒号には「なんだそれ、ああ?なるほど、これを一人乗り用にした感じなのか、え、いいなぁそれ、どこで買えるんだ?」と興味がありそうな感じだった。

でもマーくんは「オーキッドで売ってる」とだけ言ってさっさと中へ入って行ったわ。


 それとずっとうるさかったティアナちゃんだけど、コムラードに着く少し前に静かになった。

本格的に壊れたのかもしれないけど…私にはどうしようもないわ、直すとしたらまたオーキッドまでもっていかなきゃだめそうだし…

でも静かになってくれたおかげでタックスさんのお店があるところへ無事魔動車を運び込めた。

うるさいままだとタックスさんになんて言えばいいかわからなかったからね。


「ディーナ姉ちゃん!アイラちゃん!」

「トニー!元気だった?」


 トニーは魔動車が店に近づいた時点で店の中から飛び出して来た。

その時ちょっと轢き殺しそうになって焦ったわ。


 そのままマーくんと会話して、私たちを敷地内の、かつて魔動車を置いてた倉庫まで誘導してくれた後、魔動車から降りた私たちに手を振りながらトニーは元気に駆け寄って来た。


 久しぶりの再会に少し涙が出そうだった。

今まで何をしてたのとか、どこへいたのとか次々に質問が飛んでくる。

落ち着いてトニー、私は一度に一つのことしか考えられないわ。


「ねえ、それよりタックスさんは?お店の中?」

 

 答えるのが面倒になったのでこっちから質問をする。


「今はモレグとメルーアを連れて隣街のスタベンまで行ってるよ」


 じゃあいないのね…残念だわ…あといつの間にかモレグさんとメルーアさんのこと呼び捨てになってるわね。


「じゃあ店に今誰もいないんじゃ?まずくない?」

「あ、それは大丈夫、マリンダさんがいるから」

「マリンダさんは家政婦さんでしょ」

「今は店番もしてるよ、ちょっと前から一緒に住んでるから」


 な、なんてこと、少し街を離れてた間に何が起きたのかしら…


「ところで姿が見えないけど、先生は?」


 うっ…やはりヴォルるんのことを聞くわよね…ええ、わかってたわ。


「ええとそれはね、なんていうか…」

「おい、悪いが我は先に冒険者ギルドへ行くぞ」

「ええっ、待ってよマーくん!私も行く!アイラちゃん、悪いけどトニーにヴォルるんのこと説明しておいて!!」

「ちょ、えっ?私だけ置いて行く気ですか!?」


 ごめんね!でも私よりアイラちゃんのほうがうまく説明できるから!

心の中でそう謝って私は冒険者ギルドへ向かった。


 はぁはぁ…や、やばいわ…最近移動のほとんどを、魔動車という便利な乗り物に完全に頼りきってるせいで、自分の足で全力疾走するのがこんなに辛くなってるなんて…おえっ。

昨日から何回吐きそうになってるのよ私は。


 息も絶え絶えにギルド前にたどり着く、たぶんマーくんは私より大分先に着いてると思う。

もうラルフォイさんと会ってるのかな…そう思いつつギルドの扉を開けるとそこにはミーナさんに抱きしめられて固まっているマーくんがいた。

  

 なあにこれえ。


「マグナさん…っ!何かあったんじゃないかって…もう会えないのかとっ…、ずっと心配してたんですよっ…!」

「あ、お、え、いや、お、うん」


 …久しぶりに帰って来たから感激されてるのかしら…かなり大げさな感じだけど…

でも人目もあるのにすごいわよね…ギルドにいる他の人たち全員見てるわよこれ…


 いや、一人だけ見てない人がいるわね。

受付に座った、やや顔がふっくらした…いやあれよく見たらニーアさんだわ。

以前見た時と顔が違って見えたからすぐわからなかった。


 彼女だけはギルド内の中央で抱き合う二人から目を逸らしむしゃむしゃと何かを食べていた。

とりあえずマーくんのことはそっとしておいて、暇そうなニーアさんに話しかけようっと。


「ニーアさーん、久しぶりー」

「ん?ああ、メンディーナさんか、あなたも帰ってきてたのね…ごくごくっ、ぷはーげふっ」


 ニーアさんは皮袋を咥えて水か何か一気飲みした後、おじさんのように息を吐いた。

目が荒んでるんだけど…大丈夫かしら…


「何か色々聞きたいことが盛りだくさんだけど、まずラルフォイさんに会わせて欲しいのよ」

「ギルマスに用事?今二階にいるけど来客中なんで後に…ああ、何の用事で会いに」

「あーもうまたこんなに食べてる!駄目ですよニーアさん!」


 カウンターの向こうで頭がひょこひょこ動いている。

背が小さいから顔が見えないわ…なんで子供がいるのかしら。


「キャメさん…だって見てよあれ、なんなの?ここ冒険者ギルドなのよ?男と女がイチャつく場所じゃないのよ?」

「そうですけど、これでミーナさんも元に戻るんだからいいじゃないですか、少しくらい」

「はい、そうですね、どうせそんな機会もない私がひねくれてるだけですからね」

「拗ねないで下さいよ…あっ、もう今日の分のドーナツは終わり!」

「かっ、返して!今日はまだ5個しか食べてないのに!」

「既に食べすぎですよ!!」


 ニーアさんはドタドタとカウンターの向こうで何かを追いかけて走り出した。

なんだろう…机や積んである木箱の陰からひょこひょこ頭が見えたり、ひゅっと小さい手足が飛び出たりする。

やっぱり子供がいるわね…ニーアさんとさっき話してた子だと思うわ。

キャメさんて言ってたわね、子供にさんづけして呼ぶのは変だからキャメサンという名前の子供なのかもしれないわ。


 忙しそうなのでニーアさんに取り次いでもらうのはやめることにした。

ラルフォイさんの部屋は知ってるから勝手に行こうっと。


 そろそろと二階へ上がる階段へ近づく。

普段は勝手にここ上がっちゃうと怒られるんだけど、今はニーアさんもミーナさんも他の冒険者たちも見てないから誰も私を止められないわっ。


「ラルフォイさーーん!大至急!大変な用件があるので中に入れてくださーい!」


 ラルフォイさんの部屋の前でそう叫んでから扉を開けた。

あ、ノックするの忘れたわ。

いやでも叫んでるから伝わってるわよね。


「あ」


 扉を開けたら中でラルフォイさんがソファーに座り、誰かと向い合せになって会話をしていた。

そうだった、ニーアさんがさっき来客中だって言ってたわ! 

 

「メンディーナさん!?いつここへ!?」

「さ、さっき帰ってきました」


 物凄い驚かれた、今度からちゃんと返事があってから入るようにしよう。


「とりあえず中へ入って下さい」

「いいんですか…?」

「ええ、貴女がいるということは…ふう、これでどうやら無駄な捜索を出さずに済みそうですね」


 とりあえず入っていいと言われたのでそろそろと部屋の中へ。

ラルフォイさんと話をしていたのはエルフ族の男の人だった。

どこかで見たことあるような気がするわ?

でもエルフ族って大体皆、顔が整ってるから見分けがつきにくいのよね、私の勘違いというのも十分ありえる。


「やあ、前に少しだけ会ったな…覚えてるか」

「あ、えーと、そのうー確かーあのー」

「ディムグライアだ、オーキッドで会った」


 ああ!あの人ね!マーくんが連れてきて、ヴォルるんと一緒にダンジョンへ行った人!


「すいません、会ったことあるとは思ってたんですけどすぐ名前が出てこなくて…」

「いいんだ、人族から見るとエルフ族は大体同じに見えるらしいからな」


 ふう、どうやら怒ってはいないようね。


「ところで今日はなんでまた一人でここへ?珍しい事もあるんですね」

「一応下にマ…グナさんもいるんですけど、ミーナさんと抱き合ってて忙しいみたいで」

「…なるほど、大体理解しました」


 えっ、今ので大体わかるの?すごいわーやっぱりギルドマスターだけあるわね。


「ヴォルガーさんはどうしてますか?」

「そのことで今日は来たんです!!」

「え?はあ…」


 私はヴォルるんとはぐれてしまったことをラルフォイさんに伝えた。

マグノリアを旅している最中にウェリケ様の魔法で全然別の場所に飛ばされて…と言おうとして大事なことを思い出した。


 危なかった…そう言えばウェリケ様のことは内緒だったわ。

あの家のことがあるから、ウェリケ様のことは絶対他の人に言っては駄目だと、あそこから出る前に何度も念を押されたんだった。

ウェリケ様からは一度言われただけなんだけど、アイラちゃんとマーくんから何度も言われた。


 だからウェリケ様のことを言わずに説明したんだけど…


「…ええと、何かよく分からないけどたぶん魔法でいきなりベルポイの近くへ飛ばされた…ですか、ヴォルガーさん以外のすべてが」

「そうなんです!」

「どんな魔法なんですか…ディムは何か分かります?」

「そうだな…転移かもしれないな」


 ディムさんは転移魔法のこと知ってるんだ!?

えっ、じゃあ女神様がそれを使えることも気づいてるの?


「滅多にないがダンジョンの奥深くや、人気のない自然の中に遠く離れた二つの場所をつなぐ穴のようなものが自然発生することがある、その穴に入ると一瞬でそれまでとは違う場所へ移動してしまう、エルフ族ではその現象を転移と呼んでいる」

「へぇ、そんなのがあるんですねぇ…」


 女神様の魔法とは別の話みたいだわ、ディムさんて物知りね。


「基本的に人がいる場所では発生しないため知らないのも無理はない…私が最後にそれを見たのも60年ほど前になるな」


 60年…ディムさんは今何歳なのかしら…き、気になるわ…


「マグノリアは未開の部分が多い、運悪く転移現象に巻き込まれたのかもしれないな」


 私たちがヴォルるんとはぐれたのはそれの仕業ということになった。

本当は違うんだけどさすがの私もここでそれは違うというほど馬鹿ではないわ。


「ヴォルガーさんだけ巻き込まれなかったのが不可解ですが」

「あいつ自体が不可解な部分が多い生き物だからな」

「それもそうでしたね、ならそういうこともあるのかもしれませんね」


 ヴォルるん…この二人にも変な風に思われてるわよ…

私はそんなこと思って…いたことがあったとしても今は全然そんなことないからね?


「とにかくそれではぐれてしまったので通信クリスタルを使って連絡を取りたいんです!」


 ラルフォイさんに通信クリスタルを貸してくれるよう、頭を深く下げてお願いした。


「んん?ヴォルガーさんの持っていた通信クリスタルは壊れましたよね?」


 顔を上げると、何言ってるんだこいつ、みたいな顔でラルフォイさんとディムさんの二人が私のことをみつめていたわ。


 でもたぶん、私も同じような顔をして二人を見ていたと思うわ。


 通信クリスタルが壊れたって、なに?

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