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800年前

説明回みたいになってしまった

 遥か昔、ルグニカ大陸を見守る一人の女神が異世界…地球の日本から多数の人間をこちらの世界へ転移させた。

その数なんと94人。

呼び過ぎだった。


 100名弱の日本人はほとんどが10代の子供で、大人と呼べる年齢の者は10人にも満たなかった。

彼らは女神から魔法の才能を授けられた。

この魔法の才能というのが今現在ルフェン大陸にもある物とは少し違って、正確に言えば『一つだけ魔法を作る才能』だった。


 転移させられた人々は一人一つ、魔法として新たな力を自ら考えて使い始めたのだ。

火とか水とかを操作するポピュラーなものからテレパシーとかサイコキネシスといった超能力者寄りのものまで、さまざまな物があった。

たぶん俺の使う、ほわオンで『盾』に分類されるスキルがそれに近いと思われる。

<ライト・ウォール>とかね。


 ただ、なんでもはできなかった。

例えば「世界を支配する魔法」などと言っても具体的な方法がわからなければ不可能であったし、「際限なく金を作り出す」というような無から無限のエネルギーを取り出すみたいなことも無理だった。


 制限はあったもののほとんどの転移者たちは納得して「ぼくのかんがえたさいきょうのまほう」を作り出していった。


 しかし94人もいれば当然一人くらい考える魔法があった。

「元の世界に帰る魔法」だ。


 結論から言えばそれは可能だった。

ただし実行には莫大な魔力が必要だということをのぞけば。


 魔法というのは魔力と呼ばれるこの世界特有のエネルギーが必要だった。

先ほど述べた無限のエネルギーうんたらと関係がある。

転移者たちが考えて作り出した魔法はその効果に見合った魔力が要求された。


 その仕組みに転移者たちが気が付いたのは全員が魔法を作り終えた後だった。

当の女神が、魔力に関しての説明を全員が魔法を作った後で言い始めたのだ。

そして説明後回しにしてしまったお詫びにもう一つ、自分から魔法を授けると言って「他人の魔力を奪う魔法」を転移者全員に授けた。

最悪である。


 そこから先は「魔力を集めて日本に帰りたい派」「この世界でエンジョイしたい派」「いや今日から俺が新世界の神だ派」など様々なグループに分かれて転移者同士の争いが始まった。 

さらに転移者同士で魔力を奪い合うことが厳しいと感じた者はこの世界の生き物から奪えばいいじゃん!ということでこの世界の種族に迷惑をかけはじめた。

そんな酷いことはさせるか!とこの世界を守るために立ち上がった者もいた。

つまり無茶苦茶になった。


 で、そんな争いに疲れたごく一部の人が、この世界の種族と手を取り合ってこっちのルフェン大陸に逃げてきた、ということだ。


 ちなみにこれはイルザから魔族の話を聞いて俺が独自に解釈したものである。


………


「付け加えると髪が黒い者は『髪を染める魔法』を作ったやつのせいだな、この世界の者にかけて日本人にみせかけ、囮として使おうとしたのだろう、その生き残りがそのまま黒髪を受け継いでいる」


 なんかいろいろこの世界に日本人が迷惑かけてごめんという気持ちになった。

いやでもまあ元はと言えば、勝手に日本人を大量輸入した女神のせいだよな。

何を考えてそんなことをしたんだ。


「元凶の女神はなんていうやつで、なんでそんなことをしたんだ?」

「それはかつての闇の女神だ、ただし名前も、日本人を呼んだ理由もわからない」


 同僚の名前くらい把握しとけよぉ!

と、思ったが事情を聞くとどうやらその闇の女神は「時間を操作して」俺の知る現代の日本から「日本人を大量に呼んで」さらに「新たな生命を誕生させる魔法を与えた」罰としてこの世界全ての者からその存在に関する記憶を消されて永久に封印されたようだ。

創造神が決めたルールをトリプル役満の全無視である。

なので今いる闇の女神は全然違う神らしい。


「なあその時間と異世界人を呼ぶのは話の上でわかるが新たな生命を誕生させるってなんだ」

「ゴーレムとかアンデッド系列の魔物だな、それまでそういう魔物はいなかった、後は…ホムンクルスという人間の偽物を作る魔法を考えたやつもいたんだが、まあ魔物はともかく人間はダメだろうと創造神様が判断して、ホムンクルス製造は今ではどうやっても、精神体のないただの器しかできないようになっている」


 ただの器もできないようにされてたら俺はこうしていなかったというわけか。

器だけ作る許可はしてるのが気になるといえばなるがまあそれは今は置いとこう、考えても意味はない。


「魔族のことはわかりましたが、それはずっと前の話なんでしょう?」

「ルグニカ大陸からルフェン大陸に一部の種族が移ってきたのは800年ほど前だな」

「魔族というのは何百年も生きるような種族なのですか?」

「いや、人族と同じように大体100年以内には寿命で死ぬぞ」

「じゃあヴォルさんが魔族っておかしいじゃないですか」


 アイラは俺と同じく、神殿の一部屋でイルザの話を一緒に聞いていた。

普通に考えたらそういう結論にはなる。


「こいつはつい最近、魔族の元いた世界…日本から呼ばれた」


 正確には魂だけ、それもコピーみたいな感じですけど。


「それは一番偉い神様が禁止したのではないんですか!?誰がそんなことをするんです!」


 イルザはそう言われて、うーむ、と腕を組んで考えじっくりアイラを見た後


「貴女が呼んだのだ」


 ハッキリそう言った。


「…意味がわかりませんが?」


 俺もわからない、アイラはアイシャとは別人ではないのか?


「やはり、何も覚えてはいないのだな…」


 俺とアイラは顔を見合わせて、お互い、はあ?という感じでイルザを見ていた。


「そもそも私がなぜここにヴォルガーを呼んだと思う」

「アイラと俺が魔族かどうか判断するためか?」

「違う、それはロリエたちが勝手に言い出したことだろう、元々はお前がどうやって、私に通信魔法を使って連絡してきたのか知るためだ」


 ああ、間違い電話のせいか。


「あれは通信クリスタルを無理やり使ったらそうなったんだが、確かにそれでイルザのところに通じるのは理由がよく分からんな」

「理由は彼女だ、その時、ヴォルガーの傍にいたのではないか?」

「え、私ですか…いましたけど…」

「それが原因だ」

「もうちょっとわかるように説明してくんない?」

「だから!アイラは姉上、アイシャの力を一部受け継いでいるのだ!」


 …あー…えー…生まれ変わり?とはまた違うのかな…


「アイシャは光の女神だったと思うんだが…」

「そ、そうです、私は光魔法なんか使えません、使えるのは闇魔法だけです」

「姉上はなぜか闇魔法も習得していたと聞く、たぶんそのせいで転生刑のときにその部分は不要だと創造神様が切り捨てたのだろう、それがなぜ今こうして人の形をしてここにいるのかは私にもわからん!だが間近で見て、感じる気配は間違いなく姉…女神アイシャと同一のものだ!」


 なんてこったぁ。

俺が闇魔法をほわオンで教えたせいなのか?


「あの転生刑とか切り捨てたとか全然なんのことだかわかりません」


 あーちくしょう!そりゃそうだ!神様の事情だもんな!

分かったよ、もう言おう、仕方ない。


「アイラ、実はな…」


 俺はアイラに、洗いざらい話した。

俺がこの世界に来て、アイシャと暮らし始めたところから…


 アイラは俺の話を真剣に聞いてくれていたが、途中から顔を赤らめてうつむいてしまった。


 そして俺が一通り説明し終えた後に


「わ、わた、私がヴォルさんと…しあってたのですか」

「ん、いやなに?良く聞こえなかった」

「だからその…愛…愛し合っていたというのは本当ですか!!」

「あ、ああ、うんまあ、本当です」


 その部分が恥ずかしかったのか、子供には刺激が強すぎたな。


「どういうことです!?私は子供ですよ!ヴォルさんはこっ、子供の体に欲情するんですか!?」

「違う!前は大人だったんだよ!それはもう胸も尻も立派な体をしていたぞ!」

「いやらしい事言わないでください!」


 バシンと頬を叩かれた、まあいいロリコン疑惑が晴れるのならば。


「到底…信じられません…」


 …まあそうかな、何も覚えてないなら…ああでも俺の呼び方だけは覚えててくれたんだな…


 アイラはうつむいて固く握りしめた自分の両手を見つめている。

一体今どういう気持ちなのだろう。

心理学を学んだと言うのに、俺にはアイラの気持ちが想像できなかった。


「…あのさ、その、これで俺と一緒に暮らすのはもう嫌かなって思ったなら、アイラがこの先違うとこでもうまくやってけるように色々俺も考えるからさ」


 もしかしたら「前恋人だったから私の面倒を見るとか言って傍においてたの?キモっ!」とか思われて嫌われたかもしれない。


「…少し頭を冷やしてきます」


 アイラはそれだけ言って部屋を出て行った。

今はそっとしておいたほうがいいか…


 バタン、と扉が閉じる音がした後に


「嫌われたかなぁ」


 と何気なくつぶやくと、目の前のイルザがものすごく笑顔になって


「はっはっはぁぁ!そのようだな!!」


 とか言ってきた。


「なぜ人が気にしていることを満面の笑顔で言うのか」

「私はお前が嫌いだから、お前がそうして落ち込んでいるのを見ると気分がすっきりするのだ」

「うんこみたいな神様ですね」

「うん…なんだとぉ!?」


 つい本音が出てしまった。

怒り狂ったイルザが突如としてその手に大剣を出現させると、俺に向かって振り下ろす。


「<ディバイン・オーラ>」


 ガキィィン!!と激しい音がしてイルザの剣は俺に届く前に、魔法で弾かれた。


「なんだこの魔法は!」

「反射的にやってしまうものなんだなあ…とりあえずうんこ呼ばわりしたのは取り消すから、許してくれ」

「次は許さんぞ…今も首をはねるつもりではあったが」

「殺意高いな!?やめろよ!だいたいそっちが俺の傷を抉るようなことを言うから!」

「うるさい、そもお前さえいなければ姉上は転生刑になどはならなかったのだ」


 イルザはアイシャのことがよほど好きだったようだ。

しかし転生刑とはイルザのことまで忘れてしまうようなものなのか。

それだと神様の運営していく上で不便すぎない?


「転生刑ってさ、具体的にはよく知らないんだけど、アイシャはイルザのことも忘れちゃうのか?}


 気になったのでその辺詳しく聞いてみることにした。


「…忘れてはいない、なんというか、人には恐らく理解しがたい感覚だとは思うが…」

「まあまあそこをなんとか教えてくれよ」

「私が転生刑を受けた時は、まるでええと…日記ってわかるか?」

「日記?それくらいわかる、俺はつけてないけど」

「転生した後はまるで自分の日記を書いた後のような感覚になったのだ」


 なるほど、意味は理解できるが共感はできそうもない。

日記を読んだ、ではなくて書いた後、となると頭の中には記憶としてあるんだろう。

ただし本人がいつ書いたのかわからない、おまけに抜けてる部分があるのにもかかわらずそれが何か把握できない、そんなところだろうか。

だから覚えてる部分しか書けない。


「イルザにとってアイシャは『仲が良い』じゃなくて『仲が良かった』みたいな記憶になったのかな」

「そうそう転生直後はそんな感じだった、何でお前わかるんだ、気持ち悪いな」 


 精一杯理解しようとしてやったのに気持ち悪いって酷いな。


「もし仮に今のアイシャに、俺との過去のことを話すとどうなる?」

「無駄だぞ、私たち女神はそういうことができないように造られているし、お前が姉上に会って直接言ったところで頭のおかしいやつと思われるだけだ、まあそんな機会は二度とないがな!私が絶対に会わせないしな!」


 ああそうかい、別にいいよ。

そんなつもりでもなかったし…それより…


「じゃあアイラとアイシャが会うとどうなる?というかアイラの存在は神様側から見てセーフなの?」

「せーふ?どういう意味だ」

「ああえっと…許されるのかってこと」

「…正直わからん、なにせこんなことはこれまでなかった。あの少女が姉上と会って何が起こるかは想像もできん、ただ私は二人が会うと厄介なことになる気がする、だからこのまま何事もなくあの少女には生きて欲しい」

「そっか、イルザもそう思ってくれるなら特に問題ないよ」

「当たり前だ、少し違ってもあれは姉上なのだ!」


 それからイルザはとりあえずアイラのことは内緒にしてくれると言った。

アイラが無事に人として一生を終えてくれればそれでいいらしい。

俺が魔族…日本人ってことも秘密にするようロリエとノワイエに口止めしてくれると約束してくれた。

アンタのためにするんじゃなくてアイラに迷惑がかかるから仕方なくするんだから!勘違いしないでよね!的なことを言われたが、これはきっとツンデレではなくマジで言ってるのだろうと推測できた。

なぜなら、アイラに手を出したら絶対殺すと言われたので。


「まーこれで、アイラは神様関係とは今後会わずに過ごせたらいいとは思うよ」

「はっはっはっ!なあに普通に生きてれば神に会うことなどまずありえん、心配ないだろう!」


 じゃあ俺はなんなんですかね、普通に生きてたつもりだったのに。


「ただ…もしも…もしもだが、彼女が自らのことを知りたいと言ったら…」

「言ったら?」

「水の女神、ウェリケに会いに行け、姉上が転生刑になる前、最後に姉上に会ったのはウェリケだ、何か知っているかもしれん」


 普通に生きるって難しいな。

余計な情報をくれた火の女神に、俺は内心ため息をつかざるを得なかった。

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