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マーくんの冒険5~詰め所の話~

サブタイトルにイレブンとかサーティーンとかつく前にはなんとかしたい

 レックス隊長、と呼ばれた男が我の部屋に来て「悪いが隊の詰め所まで来てもらえるか」と言った。

会いたかった当人に早くも会えた、詰め所で詳しい話を聞かせてくれるようだな。

「わかった」と返事をし、腰かけていたベッドから立ち上がると兵士が我を拘束しようとしてきた。


「待て、やめろ、彼は何かしたわけではない、そういう扱いはよせ」

「ですが隊長!俺は昨日殺されかけました!」

「それにしては傷ひとつないじゃないか」

「そ、それは…」


 昨日の兵士が隊長に向かってなにかわめいているな、あいつ誰かに殺されかけたのか?

弱いくせに槍をすぐ振り回す癖は治したほうがいいな。

あいつ自身のためにも。


「ぐだぐだやってないで早く行くぞ」

「あ、ああ…随分ものわかりがいいな…こちらとしては助かるが…」


 廊下に出るとディーナが兵士二人に両脇を抱えられて立っていた。


「隊長、こいつが仲間の女で間違いありません、宿の主人にも確認してあります」

「そうか、では彼女も一緒に連れて行こう」

「はっ!」


 ディーナが兵士に連れられて我の元まで歩いてくると、小声で話しかけてきた。


「マーくんあのこれ…どうなってるか全然わからないんだけど」

「ああ、昨日リディオン家に伝えておいたのだ、話がしたいから会いたいとな、わざわざ迎えに来てくれるとは思っていなかったが、意外と親切なやつらだ」

「えぇ…これ絶対そういうのじゃないと思う…」


 そういうの、というのがなんのことか良くわからんが、とにかく今のところ全て順調だ。

特に問題はない。


「ではそちらの女性のためにも改めて言おう、私はザミール防衛隊で隊長を務めるレックス・リディオン。昨夜、部下から警備中の住宅付近で不審な行動をとる人物がいると報告を受けた。その件について君たち二人に詳しく話を聞きたい、いいかね?」

「マーくん昨日何してたのおおおお!」

「普通に話を通しに行っただけだが?」

「とりあえずここで騒いでは宿に迷惑だ、二人とも隊の詰め所まで案内する、着いてきてくれ」


 我とディーナはそのままレックスと多数の兵士たちと共にぞろぞろと宿を出た。

宿の外には馬車が置いてあって、それに乗るように言われた。


「歩かなくて済むぞ、良かったな」


 馬車の中でディーナにそう言ってやったのだが、何も返事はせず、一緒に乗り込んだ兵士と我を何度か見比べた後、変な顔で苦笑いをしただけだった。


………


 詰め所まで行くと簡素な机と椅子だけがある頑丈そうな石壁の部屋に案内された。

机を挟んで片側に我とディーナ、向かいにレックスが座り、それからレックスの後ろに二人兵士が立っている。


「よし、それでは詳しく聞かせてもらおうか」


 我がまずレックスに向かってそう言った。


「そりゃこっちの台詞だよ!!」


 後ろに立ってた兵士の一人が言う、例の昨日会ったやつだ。


「…ええと、何か私に話が聞きたいようだが、その前にまず君たちの名前を教えてくれ」

「いいだろう、我はマグナクライゼス、マグナで構わん」

「私はメンディーナ、です…」

「マグナとメンディーナ、街の門番の話によると君たちは昨日このザミールに来たそうだが間違いないか?」

「ああ」

「その後、冒険者ギルドで君たちを目撃した者が何人かいる、そちらのメンディーナは夜までずっとギルドにいたようだが…マグナ、君は途中でギルドを出て、私の屋敷のすぐ傍まで来たそうだな?」

「そうだ、それで用件はそこの兵士に伝えた」


 我に指をさされた兵士は、ビクッとしてその場から少し後ずさった。


「彼が言うには、君は私の家族を攫おうと忍び込んできた賊、らしいのだが?」

「意味がわからん、我がなぜそんなことをする?」

「隊長!こいつはとぼけてるだけです!自分を殺すぞと脅して来たんですよ!」

「お前の部下は頭がおかしいのか?」

「なんだとおおおお!」

「まっ、マーくん!言い方に気を付けて!」


 レックスの後ろに隠れるように立ってた男は息を荒げて興奮している。

少々邪魔だなと思ったので睨みつけてやるとようやく黙った。


「…ふむ、ここからは私が一人で話を聞こう、君らは外で待機してくれ」

「はっ、了解しました」

「ええっ!?なんでですか隊長!!」


 うるさい兵士は不満がありそうだったが、もう一人の兵士に連れていかれ部屋から出て行った。


「え…あの…さっきの人のことはもういいの…?」

「彼の言う通り、君たちが私の家族を狙ってきた賊なら、呑気にこの街の宿屋で寝ているのはおかしいだろう。そちらのマグナが姿を見られたのに何もせず彼を見逃すのも不自然だ。そうなるとマグナは単に私の家の者に話があったが夜遅いのでその時は一旦帰った、そう考えたのだが違うか?」

「そうだ、さっきのやつにもそう言ったはずだぞ」

「…すまん、彼は少々、早とちりする癖があってな…が、しかし君も夜に兵士が警備している場所の真っただ中に突然現れる前に、せめて…冒険者ギルドからでも話を通して欲しかった」

「あああすいません!すいません!マーくんちょっと変わってるので!」


 ディーナは何を謝る必要があるのだ?

あと我よりお前のほうがよっぽど変わっている。

いつも変な服を着ているしな。


「それで、わざわざ警戒中の私の家まで来た用事はなんなんだ?やはり私の娘が誘拐されたことと関係あるのか?」

「関係あるかどうかを調べに来た」


 我はレックスに、我とディーナがザミールを訪れた事情を伝えた。

コムラード付近の鉱山に現れたバジリスクを討伐に行った際、仲間が一人行方不明になったと。


「バジリスクがコムラードの鉱山に出た件は知っている、こちらの冒険者ギルドに応援要請があったからな、残念ながら腕の立つ冒険者は皆出払っててそちらに行った者はいなかったが…それにしてもたった九人でバジリスクの群れとボスを討伐したのか?」

「実際戦ったのは七人だ」

「コムラードの冒険者はどうなってるんだ…1級冒険者がごろごろいるのか」

「違う、一人だけおかしいやつがいるのだ、まだ6級だがそいつが一人いるだけで全体の戦力は10倍、いや100倍にもなる」

「にわかには信じられんが…そんな人物がいたにもかかわらず仲間が馬車ごと攫われたのか?」

「攫われたのはそいつだ、一人馬車の中で寝ていたところを攫われた」

「そ、そうか…強いのかそうでないのか全くわからんな」


 あの時あいつを一人にしなければ…いや、もうこれを言うのはやめようと決めたんだったな。

あの場にいた全員がそう決めたのだ、後悔していても何もならんと。


「ねえ!それでこっちでその人を誰か見てない!?私と同じくらいの背丈の黒髪の男性で…名前はヴォルガーって言うの、コムラードじゃもう全然何も見つからないの!!お願い、何か知ってたら教えて!」


 ディーナがまくしたてるように言った。

いろいろ我慢していたものが溢れだすように。


「すまないがそういった人物のことは知らない、だが私の娘を攫った者とそのヴォルガーという男を攫った者が関係あるかどうかを調べに来たのだろう?これから私がこちらの誘拐事件について話をする、だからまず落ち着いて話を聞いて欲しい」

「そ、そうだったわ…ごめんなさい、つい…」

「いや、私も娘が攫われたと知ったときはいてもたってもいられなかった、気持ちはわかる」


 レックスはディーナが冷静になるのを待つと、娘が攫われた件について語り始めた。


「私の娘は二人いて、年は上が7つ下が5つだ、ある日屋敷の庭で遊んでいるところを獣人族の賊によって連れ去られた」

「獣人族だと?」

「この街の付近にはマグノリアから流れてきた獣人族の野盗がよく現れる。やつらは近辺の畑を荒らし、時にはアバランシュと行き来している馬車も狙ってくる。これは長年、このザミールにおける大きな問題だ」

「ひええ…ザミール怖い」

「…住人もそのように怯えていた、そのため私は問題をなんとかするために野盗の住処をずっと探して来た…そしてつい最近、とうとうその場所を見つけ、大規模な討伐を行った」

「そうか、娘が攫われたのは貴様に対する恨みか」

「恐らくそうだろう、それと獣人族から何らかの…例えば私の首を差し出せば娘は返す、くらいの要求は当然あると思っていた、攫ったことをわからせるために娘の着ていた服が屋敷の近くに捨てられていたからだ」


 確かこのレックスという男は優秀だとラルフォイが言っていたな。

獣人族の野盗にとっては相当邪魔な人物だっただろう。


「しかし、娘を攫った賊からはなんの連絡もなく、ただ過ぎるだけの日々が続いていたのだが、ある日私の娘を保護したと言う、人族の男が屋敷を訪れたのだ」

「そう言えばギルドに依頼もしていたらしいな」

「冒険者と傭兵の両ギルドに依頼はしていたが、訪れたのはそのどちらのギルドにも所属していない妙な男だ。仲間たちと共に行商をしていてアバランシュからこちらに向かっている途中、偶然見つけたというのだ」

「偶然…?実はそいつが攫ったのではないのか?」

「いやそれはない、娘たちも獣人族に攫われたと言っている、それにその行商人も獣人族に襲われたらしい、その際に護衛の仲間が三人死んだが、なんとか返り討ちにすることに成功し、獣人族の連れていた私の娘と共に一度アバランシュに戻り…娘から話を聞いて一人だけ先にザミールまで連絡に来てくれたのだ」

「随分親切なやつらだな」

「彼らにはいくら感謝してもしきれない…仲間も死んで荷物も滅茶苦茶になったというのに30万コルで私の娘を無事にまた私の元へと送り届けてくれたからな」

「さっ、さんじゅうまんんんん!?」


 金の話を聞いてディーナが大げさに反応した。

まあ30万コルというのはそれほどの大金だ。


「30万も払って…それにギルドにもお金だしたのよね!?」

「ははは、まあそうだよ、おかげで今や私の家は色々売り払ってすかすかのからっぽさ、メイドにも給金が払えないので皆辞めてもらって…執事が一人それでもいいと残ってくれたがね」

「た、大変そうね…」

「娘が無事だったことを考えたらなんてことはないさ」


 なんとなく…こいつがお人好しと言われているのがわかってきたな。


「まあ、私の話はそんなところだよ、他に何か聞きたいことがあるかね?」


 話を聞いた限りでは…こいつの事件とヴォルガーの事件は全く別物と思える。


「うーん…あっ、そうだ、この辺の山の中に大きな館とかない?」

「なぜそんな質問になるのか全くわからないが…そんなものはこの辺にはないな」

「そっかぁ…まぁそうよね…」


 ディーナはまだ夢のことを気にしているのか。

どうしようもないやつだな。


「…お前が、その事件でおかしいと思っていることはないのか?なんでもいい」

「私自身がかい?そうだな…これはその…恩人に対することなのであまり言いたくはないんだが…」

「なんだ?やっぱり金をとりすぎか?」

「金はいいんだ、ただ娘を渡してくれた場所が妙でね、アバランシュとザミールの間にある峠に、家の者だけで来てくれと言われたことが引っかかってはいる」

「確かに狙いがよくわからんな、そこは何か特別な場所なのか?」

「いいや、何もない、ただの峠道だ。向こうは仕入れのためにオーキッドに行きたいからアバランシュからあまり離れたくないと言っていた」


 アバランシュとザミールの中間…なんだ?意味はわからないが気になる。


「…他にもう一つ、これは本当に訳がわからないんだが」

「まだ何かあるのか」

「娘がね、攫われたというのに…元気になって帰ってきたのだ」

「…貴様の娘はなんだ、普段は嫌々家にいるのか?」

「そういうことではない!ルル…娘は上がラライア、下がルルイエというのだが、ルルイエは生まれつき胸に病を患っていて体が弱くてな、治せる神官もおらず、私も妻もずっと悩んでいたんだが…それがなぜか帰ってきたときには完治していたんだよ!」


 治せない病気が治った、と聞いて思い浮かぶのはあの男しかいない。


「ヴォルるんだ!それヴォルるんの仕業だよ絶対!!」


 ディーナが叫んだ。

我も同意見だ。


 クク…見つけたぞ…手がかり…!

何でそうなるのかは全くわからんが…!

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