さよなら、僕の愛しき人よ
いつの頃からだったか、君を想うようになったのは。
いつの頃からだったか、君しか見れなくなったのは。
ありきたりの日常、当たり前の日々。
それがとても幸福であったことを君は知らない。
『こんな世界つまらない』
それが君の口癖だった。
『そうだね』
本当はそんなことなかった。でも、君に嫌われたくなかった。
いつも君は嘘つきだった。弱々しい姿しか皆は知らない。多くの人が知るその姿が君の真実になってしまうのが、とても悲しかった。
どうして君が嘘をつくのか、どうして君は本当の姿を隠すのか。どうして僕にだけ本当の姿を見せてくれるのか。
それが特別であって欲しかった。僕に特別な感情を抱いて欲しかった。
『貴方ってつまらない』
血に染まった床しか僕には見えなかったけど、きっと君は泣いてた。それが嘘か真か、もうどっちでも良かったけど。
僕の想いは君に届かないまま、僕の想いは消えていくだけ。
君が遠くへと消えて、僕は遠くへと逝くよ。
『さよなら、僕の愛しい人よ』
この声が届いたなら、未練などなかったのに。