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とある訳者の創作メモファイル T-151

作者:茶屋ノ壽
 つまるところ、異世界に転移したわけなのです。

 異世界転移というのは、姿形はそのままに、元の世界から、違う世界へとこう、ひょい、とか、ぽん、とか、いうような擬音と共に移動することだそうでございまして。

 タイムスリップとか、テレポーテーションとか、SFとかで語られるお題目とよく似たカテゴリだそうでございます。

 珍しいともうしますか、結構滅多にない状況ではないかとか想像するのでございますが、異世界転移に関わった、神様の予想ですと、20年後にはごく普通の出来事になっておりまして、毎度ばかばかしいお笑いを、という枕詞と、転移とか転生とか、世に現れる頻度が変わらなくなっているとのことでございまして、ほんまかいな?

 生まれは関西に引っかかってもいいのではありませんか?というところでありますが、訛りから指摘されるに、いわゆる似非関西人であるのでは、と分類されるところの私でございます。当年とって19歳の青年でございます。

 各種ゲームが趣味でございまして、とくにはまりましたのが、シミュレーションゲームでありました。それから派生して、テーブルトークRPGというジャンルにハマりまして、ええ、彼女とか作るよりも分厚いルールブックを読み込んで、各種資料を取り込んで凝ったシナリオを作って、悪友たちと、夜な夜な集まって、遊んだものでございました。

 受験勉強を機にその悪友の中でもまあ、まともな部類の方々が、その手の遊びから距離を置いてしましたのと、業界と言いますか、テーブルトークRPGの界隈のブームが下火になってきまして、こう遊び相手に苦労してきた頃のことでございます。
 その時に、新しい概念のゲームである革命的な、トレーディングカードゲームというものと出会いまして。ええ、運命の出会いと言ってもよろしかったかとよろしいかと。

 この辺りで、このトレーディングカードゲームとはどのようなゲームであるのか?とか説明を入れるのが親切ではあるとは思いますが、こちらは、不器用な一介のゲーム好きでありまして、それがしどろもどろに説明するよりは、こう、最近便利になってきました、”インターネット”とかなどでですね、検索エンジンとかで該当の語句から、リンクを辿っていただいた方がよろしいかと、こう思うわけでございまして、あえて説明は避けさせていただくわけでございますな。

 検索候補といたしましては、Magic the Gathering がよろしいかと。聞いたこともないかもしれませんが、米国では最近人気がうなぎのぼりだそうでございますよ。そろそろ日本でも代理店が名乗りを上げて和訳された商品が発売されるのではなかろうかという噂も聞かれてきております。

 あ、意味がわかりませんか、そうでしょうね。いいえ此方のお話でございます。

 閑話でございました。

 出自の説明の途中でございましたね。

 つまりは、こことは違う世界の出身でございまして、いえいえ、プレインウオーカーとかいうような大したものではございませんよ、ちょっとした、ええ、つまらない些細な事故がきっかけで、どうやら元いた世界からはじき出されてしまったようで、そうなのですよ、なんというか、運が悪いのでございましょうね。

 何しろ確率2分の1を、続けて20回外したことがございまして、ええ、コイントスと思ってくださってよろしいですよ?

 対戦相手に本気で悪魔払いを勧められた時には、なんとも言えない笑が漏れてしまったものでございます。

 まあ、それは置いときまして。

 ちょっと運が悪すぎたわけですね。そしたらば、なんと神様に同情していただいわけでして、禍福はあざなえる縄のごとしとは言ったものでして、元いた世界で事故で亡くなった私に、もう一度の出番を与えてくださったわけでございます。

 その舞台がこの異世界と云うものでございますね。

 さらには、今までの運の悪さを帳消しにするために、ちょっとした能力まで授けてくださりまして。
 どんな能力なのか気になる、とおっしゃられるわけでございますか?

 謙遜いたしますと、救ってくださった神様に失礼と成りますので、いたしませんが、なかなかのものでございますよ。

 私のいただきました能力というのは、私が夢中になったゲームであるトレーディングカードゲームの、カードに書かれている内容を、現実のものにできるというものでございまして。まあ、ゲーム的に数値で表現されているものもなどもございますが、それはこううまい具合に世界に適合してくださるそうでございますし、多少イメージによる補正もあるようでございますが、だいたいにおいて、書かれている効果は適切に再現できるそうでございますよ。

 カードの枚数でございますか?
 そこは残念ながら、生前持っていたものに限られますね。
 この場合のそれは、元の世界で保持していた枚数、ということでありまして。

 まあ、はまった途端に活動場所を合衆国に移して、収拾に明け暮れましたので、かなりの量にはなっていると、自負しておりますが。

 弱点は、と聞きますか?

 面と向かって聞かれるのは結構驚きではございますが……そうですね、使用するにあたって、該当のカードゲームのルールには縛られています、程度には答えても問題はないかもしれません。

 あ、材質は柔く見えますが、破れませんし、燃えません。さらには、奪えませんし、私以外には使用できませんので。

 そうそう、今判明いたしましたが、私が直接認識するよりも広く、舞台が整えられているようでございまして。ええ、こちらに影響を及ぼす範囲に対抗して自動的に、カードの能力が設定されているようでございます。

 はい、ですので、戦場を迂回して到達しようとした伏兵も、眼前の軍団と同じく、一歩踏み出した時点で止まっておられますね。

 止めるためのリソースも、唸り声を上げる鉱山の恩恵もありますので、まだまだ持ちますよ?つまりは、このままでは延々と”停滞”し続けることになるわけでございますね。

 少々疑問がございまして、ええ。些細なことではございますが。

 全く進むも退くもできなくなり、立ち尽くすしかない状況が、延々と、まあ、一週間ばかり?続くというのは、こう現実の人間に、どういう結果を導き出すのでしょうかね?

 それとも、いっそ、大地にいながら、この、巨大海獣のお腹におさまりたいと希望いたしますか?

 皇帝陛下。

 こちらとしては、あまり、あの子に人間の味を覚えさせたくはないのですが……。



 ああ、そうですか、引いていただけますか。

 いやあ、誠心誠意、真心を込めて話し合いに臨んだかいがございましたね。

 良いゲームでございました。


ーーー

 以下訳者注意書き

 上記は、異世界より転移したと称する、”あるトレーディングカードゲームのプレイヤー”と名乗る異能者と、現地帝国軍とのレートゲート平原における初遭遇についての様相を、従軍記者が記した文章より抜粋したものである。

 なお帝国国内では、全文は未だ機密指定解除に及んでいないことを、追記しておく。

ーーー

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