7. 結界
風邪引いたっぽくてあまり頭が廻っていない状態です。あらかじめご了承ください。
「魔術を張るって、どういうこと?」
ルクスの後に続くシフォン。しかし未だルクスの言葉を理解出来ない様子で。
一方のルクスも、シフォンが訊く度「まあ付いてこい。」と言うばかり。
そしてルクスは立ち止まり、「ここでいいか。」と言った。
「ここで何するの?」
今いる場所は町の凡そ中心。だが人気のないとある茂み。
大通りから一歩入ったところに位置するそこは、だがまるで異世界のように静かだ。
「……そろそろいいか。」
ルクスはシフォンに振り返り、口を開く。
「実は魔術は仕掛けておくことが出来るんだ。」
魔導具があるんだしまあ当然だけど、とへらへらと言うルクス。
しかし少し前に錬金術がちゃんと使えるようになったシフォンには理解しにくい話で「お、おーい、大丈夫かー?」「はッ!?」まだ少し早かったかと思うルクスだった。
「仕掛けておく、って?」
ところがシフォンは想像以上に知識欲があるようだ。
「例えばお前、俺が仕掛けた罠に掛かって落ちて来ただろ? あれ、あの罠、魔術で出来てるんだ。」
「?」
……知識欲はあっても理解力は乏しいらしい。
「……口で言ってもわかんないだろうから実際にやってみよう!」
そう言ってルクスは地面に何かを書き始める。
先ず円を二重に描き、内側に複雑な模様を並べる。
次に内側の円の外にアト語を書いていく。
宛らそれは美術品のように美しい。
そして仕上げに円の周りに装飾をして、
「完成。」
ほんの一、二分で完成されたそれは、だがかなり時間を掛けて描いたように繊細な印象がある。
それに見惚れているようなシフォンを無視してルクスはそれを起動させる。
「『結界起動』!」
するとそれは僅かに光る。
「これで完了!」
「今、何したの?」
何が起こったのか理解が追い付かず目を点にするシフォン。
その様子にルクスは丁寧に説明していく。
「この魔術を張る方法、これを俺は結界と呼んでいる────」
────結界を作る手順として、先ず陣という絵を描かなければいけない。
陣の描き方もあるが、ここでは一度飛ばそう。
陣を描いたら向きを決定させる模様を外側に描き足して準備は完了────
「────最後に結界を起動させて完成だ。」
「ふんふん。それだけ?」
「そう。簡単でしょ?」
実は省略した陣の描き方こそが最も難しい。ということは敢えて言わないことにした。
┣■┫#7 結界┣□┫
「でさ、どんな結界を作ったの?」
シフォンの質問に過剰に反応し、ビシッと指差して「よくぞ訊いてくれた!」「うおビックリした!」「あっごめん。」上がりすぎたテンションを抑えて答える。
「常識改変魔術だ。」
大人の漫画でありそうな響きだが気にしないこと。
「?」
「何故人同士衝突があるのか、それは人それぞれ価値観が異なるからだ!よってこの結界で全員に同じ価値観を追記することで衝突を防ごうというものだ。」
じゃあ試しに……とルクス。
「俺の所有物になれ。」
「……何言ってんの?」
真剣に聴いてた自分がバカみたいじゃないかと訴えるシフォン。だが続く言葉に自身すら驚いた。
「まあ、ゲームやって勝てたらいいよ? ……ん?あれ?」
「気付いた? これがこの結界の効果。所有諍いを全てゲームの勝敗で決する、って言う常識を町全体に付けたんだ。」
実験成功!と喜ぶルクスを、シフォンは半目で見やった。