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魔導録 ─グリモア・ログ─  作者: リリエル
アモルファの町
5/16

5. アモルファへ

「……これは?」

 出来上がったそれを見てシフォンが言った。


 ルクスから言われた通りのものを言われた通りの形に錬金。

 それをルクスが作った設計図通りにエリュートが組み立てる。

 斯くて出来上がったそれは、どうやら自動で走る装置らしい。


「これを使えば歩く必要がない上、馬車馬と違って疲れない。これ以上の完璧装置があろうかッ!」

 ルクスは天を仰ぎ自画自賛する。

「え?! ちょっとそれ凄くない?!」

 まあ実際ルクスがやった事は凄いんだが。

「なんて名前なの?これ。」

「そうだなー。馬を使わない馬車だから、車かな。」

「車、かぁ。」

 それの名前が決まったところで、アモルファへと出発していった。


┣■┫


「も、もう着いたの?!」

 アモルファに着き、車の速さにシフォンは驚いていた。

 どうやらケカルトからアモルファまでの道のりは馬車で半日かかる程度には遠いらしいが、車ならほんの数時間で着いた。

 ……そんな距離を歩かせようとしていたシフォンには顔面にグーの一つでも見舞ってやりたい気分だが。


 町に入ると、何やら騒がしい声がする。

「まじか。」

 声の方には人が集まっていて、声の内容や人の間から見える光景から、誰かが喧嘩していることがわかる。


 こういうのは無視するのが一番だが、ルクスは面白そうだからと、それを見に行った。

「おー(笑)」

 文字通り見に行っただけ。止めようとは思わない。


 なかなか激しい喧嘩のようだが、ルクスはニヤニヤしながら歓声をあげている。

「……止めさせようとか思わないわk───」

「いいや、全く。これっぽっちも。」

 シフォンのその質問にやや食いぎみに答える。

 ですよねーとシフォンは苦笑い。


 そしてルクスから、寧ろ、と訊いた。

「何で止めさせる必要があるの? プロレスみたいで面白いじゃん。それに……」

 そこでルクスは言葉を切った。

「それに?」

「なんでもない。」


 結局喧嘩は三十分以上続き、最後は治安維持隊(警察みたいなもん)が出動した。


「……ねえ、主人公として(・・・・・・)どうなの?」

「……は?」

 シフォンからかの唐突なそれに、ルクスは気が抜けた返事をする。

「いいや、やっぱなんでもない。返事なんて、言わずもがなだもんね……」

 はて、シフォンは何を言っているのだろうと思いつつ、ルクスは気にしないことにした。


┣■┫#5 アモルファへ┣□┫


「何してるの?」

 急に路地で何かを始めたらしいルクスにシフォンが声を掛ける。

「魔術の開発。」

「へー。どんなのを?」

「気持ちを静める魔術。」

 なんださっきの事やっぱ気にしてたのか、とシフォン。

 うっせ、とルクス。


 そんなやり取りをしながら、ふとルクスはこんなことを考え始めた。

 これが生きるって事なのかな?と。


 産まれてから十四年。

 常に側には誰か居て、行動を監視される。

 普通の事は何一つすることができず、発言も最低限しかさせてもらえない。

 果たしてこれは、生きていると呼べるのだろうか。

 多分、死んでないってだけだと思う。


 そう思えてきたとき、無性に施設(おり)の外に憧れた。

 自分らしく、生き物らしく生きてみたいと、そう感じた。


 そしてついに檻から出たとき、自由というものを実感出来た。

 やりたいことが出来るって素晴らしい、自分の意思で自分を動かせるって素晴らしい。

 そんな感動を覚えた。


 しかしそれから十年。ついに気づいてしまった。

 確かに自由になった。なら何故、こんなところに隠っているのか。

 答えは既に知っていた。でも、認めたくなかった。

 究極的な自由など、存在しないから、なんて。


 斯くて白金髪のエルフの少年は、世界というのもを知った。

 世界なんて混沌で理不尽で不条理で、そこに個の意見などなく、多数派が正義で、少数派が悪とされる。


 そんなの……絶対に………


「……なあシフォン。世界ってなんだろうな。」

「どうしたの急に。」

 日に当たりすぎて具合悪くなった?と心配してくるシフォンを軽く殴りたいと思わなくもないが、そんな自分の思考をくだらねえと一蹴し、続ける。

「多数派が正義で、少数派が悪とされる。どう思う?」

「……間違ってる?」

「ああ。そう思えるお前は正しいよ。」

 やはり皆そう思ってる。

 今まで独りで考えてきたこの哲学は、訊かれれば皆同じように考えるのだと。

 ルクスは心の奥にあった何かが一つ、解けていくのを感じた。


 質問の意図が未だ掴めず、きょとんとしたままのシフォン。だが、ルクスの顔がどこか柔らかくなったような気がして。

「……私は他人(ひと)の昔の事は知らないんだけどさ、その分、()をよく知りたいんだ。」

 だからさ───


「私に出来ることならなんだってするよ。もっと頼っていいよ。私を。ルクス(・・・)。」


 シフォンが初めてルクスを名前で呼んだ日、ルクスは仲間というものを知った気がした。

 それと共に……


「……言質、取ったぜ。」

「…………はい?」

「という訳で、これからバンバン頼らせて貰うぜ☆」

 シフォンの馬車馬行きが決定した。

いい雰囲気を一番最後に台無しにしていくスタイル。

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