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魔導録 ─グリモア・ログ─  作者: リリエル
プロローグ
2/16

2. 流浪に生きる

 ルクスに案内された先にあったのは、紙の海だった。

「…なに…これ…」

 その紙の全てに何か書かれているのがわかると、シフォンは顔を引き攣らせながらそう言った。

 先程紙は少ししかないと言ったが、あくまで研究で得た知識に比べたら、という相対的な考え方に過ぎない。

 実際はこの幾十倍もの研究成果を上げている。


 ところで、

「…何語?」

 峙つ紙の山の一枚を手に、シフォンが訊いた。

 何やらそれには不思議な文字のようなものが書かれていて、どうやらエルフとアルムの共通言語でも、廃止されたエルフ語でもアルム語でもなく、それは最早暗号であった。


「アト語。精霊の言葉さ。」

 返ってきた言葉は、シフォンの目を点にした。

「…は?」

 アト語はともかく、精霊とは何ぞやという思いを込めて言った。


「エルフは魔導具変換を。アルムは錬金術を使えることは知っているだろ?」

「まあ。」

「どちらの能力も、使うときは必ず光が発生する。」

 例えばこんな風に───と、ルクスはその辺の石ころを魔導具に変化させた。

 その時、微かにだが光が生まれる。


「で、この光はどうして発生するのかなー?っていう研究を四十年。その結果見つけたのが、精霊ってわけだ。」

「……?」

 残念ながら今の説明は、シフォンには理解能わなかったようだ。

 精霊についてはそんなのが居るんだなー程度に聞き流した。


「で、それとこの散らかり様はどう関係が?」

 シフォンのその質問にルクス。

 まあ見ておけと言って右手を出し、何やら唱える。

「『我が手に炎を』」

 すると手から炎が出た。

「ナッ?!」

 眼前の出来事に素直にシフォンは驚いた。


 だってだって、手から炎が出たんだよ?

 絶対熱いよね、いや、そういうレベルの話じゃないよね。

 抑手から炎───は?! どうなってんの?!


 本当に驚くべき箇所を瞬時に気付けない程には冷静でなかったらしい。

「今のが魔術。」

 当然のように遣って退け、また出来て当然と言うような目をするルクスに、冷静でないシフォンでも流石に苛っとしただろう。


 だがこの魔術という技術は世界で彼しか出来ないのだ。シフォンを慰める訳ではないが、これは出来なくて当たり前なのだ。ルクスがおかしいのだ。

「あんた何者よ……」

 またもフリーズしそうになったシフォンだが、辛うじてそう口にすることが出来た。


┣■┫#2 流浪に生きる┣□┫


「これを魔導書として纏めたいんだ。」

 ルクスが紙の山を指して言った。

 確かに、これだけ量があると必要な紙を探すのも一苦労だ。

 そこで───

「今から街へ行こうと思う。」

「まあ、別にいいけど。」

 そして二人は街へ出掛けて行った。


Q.なんでシフォンも付いていったの?

A. (゜⊿゜) シラネ。


 ところで……

 ちゃんと読んでいる方ならわかるだろう。

 別にルクス達は町へ行く必要はなかったのだ。

 そう。アルム種は錬金術を使うことが可能だ。

 詰まり、シフォンに材料を作って貰えば良かったのだ。

 実は可成重要なことなのだが、ルクスが気付くのは少し後となる。


┣■┫


「……やける」

 百十年間洞窟に隠っていた弊害。

 久しぶりに浴びたその強烈な光が身体を蝕む。ように感じる。

 だが実際、早く陽を回避しなければいけないだろう。長い洞窟生活によって皮膚の機能が退化していないとも言い切れない。

 そんな状態の身体に容赦なく日が射している訳だから。

「さっさと済ませよ…」

 洞窟を出て三歩。既に疲れきった様子のルクスだった。


┣□┫


「でさ、」

 一通り買い揃えたところでシフォンが切り出した。

「何で買ったの?」

「………はえ?」

 そう。先程の。

 アルムのシフォンは錬金術使えるんだし作って貰えば良かったのでは?というあれだ。

「言ってくれれば作ったのにって話。」

「…………!」


 ハッ、なぜ思い付かなかった?!

 そうじゃないか。シフォンはアルム。錬金術を使えるんだ。

 なんなら頼めば良かったのだ。

 なぜしなかったッ!

 そそ、そうだ、流石に初対面の相手に要求するのもあれだから。そう言うことだ。と思うことにする。


「だ、だって初対面だったろ?」

「でも一応は命を救ってもらったお礼したいし、紙とインクくらいなら作るの難しくないし。」

 結構考えた結論も、一瞬で砕かれた。

「な、なぜ事後に言うのだ……」

「ごめんごめん、知っててやってるのかなーと思っててさ。」

 そして溜め息一つ吐いて洞窟へと帰っていった。


┣■┫


 洞窟に着いたらしい二人は、目を疑った。

「ね、ねえ、道間違えた?」

 外出なんて慣れないことするからーなんて言い出すシフォン。

 だが、ルクスは決して道を間違えてなどいない。

 詰まり。

「ま、まさか、崩れた?!」


─────遡ること三十分。


「地震か?」

 それは町の文房具店で買い物をしていたとき。

 町の端の方にあるここですら聞こえるほどの大きな唸るような音と地揺れが起こっていた。


 その時はまあ別に気にしていなかったが、まさかここに繋がって来ようとは。

「ハハ……」

「どうしたの?」

 急に吹っ切れたように笑いだしたルクスをシフォンが心配する。

「どうしたもこうしたも、家が無くなったんだぜ? どうしようもねえじゃねえか。」

 そう。ルクスの家は今さっき崩れた洞窟。実質ルクスは今ホームレスということになる。

「…………こうなっちゃ仕方ねえ。流浪に生きるか。」


 斯くして、白金髪の少年(?)はアルムの少女と共に旅をすることになった。

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