13. 水族館へ
翌日。
今日はリアから教えてもらった水族館に行ってみようと思う。
昨夜見事なコミュ障ぶりを発揮したルクスは、シフォンを使って三人から間接的に情報を集めた。
シフォンに訊いて欲しいことを紙に書いて伝え、シフォンが訊いたのをルクスが聴くという、なんとも面倒なやり方であったため、見事な苦笑いをされたことはメンタルが持たないので不問とすることにして、なかなかに有益な情報が得られた。やはりあの席は当たりだった。
漁師のアクト曰く、余り魚は取れなくなってきているようだ。
この日も朝早く漁に出たらしいが、一ヶ月前と比べると圧倒的に漁獲高は少なくなっているという。
試しに海に潜ってみたところ、少し前はそこら中にいた魚がほぼいなくなっていたという。
学者のカールによると、これは未曾有の問題だそうだ。
カールは以前に暇潰しにフィツァルリの歴史資料を読み漁ったというが、どこにもそのような歴史は載っていなかったようだ。
学者の知識欲というものだろうか、カールもこの事態について詳しく知りたいようだ。
さて、先述の通り、今日は水族館というものに行ってみようと思う。
まだこの町に着いたばかりなので、フィツァルリの面白い場所はないかと訊いたところ、そこがいいと言われた。
水族館というと、海洋生物を展示している場所のことだが、この大陸には合計で五つしかなく、その内のフィツァルリの水族館は、特に大きいらしい。
これは期待できそうだ。
「行くぞ、シフォン。」
「あ、ちょっと待って。」
心に期待が満ち、いざ行かんとするルクスをシフォンが止める。
ルクスが振り返ると、どうやらシフォンはまだ準備の途中だったらしい。
「……化粧なんかしてどうしたんだ?」
みると、薄くではあるが化粧をしていた。
「い、いいじゃん、そういう気分なんだよ。」
ルクスは心の中で変なやつ、と呟き、シフォンを待つことにした。
┣□┫
「ここがリアの言っていた水族館か。」
意外と宿の近くにあり、予想より早く着いた。
外観は全体的に青くっぽく、まさしく海のようだ。淡水魚も展示されているだろうが、気にしない。
そして何より、大きい。
民家の凡そ10000倍以上の面積はありそうだ。
「よしッ」と、ルクスは気合いを入れて館内へと入る。
なぜ気合いを入れたのかわからない様子のシフォンだが、直ぐにわかるだろう。
何せ彼はコミュ障で群衆恐怖症なのだ。