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65話 ボッチ それは心の汗

 何も無い草原に突如、扉が出現した。


 それは瘴気を放つ漆黒の扉。長方形型の扉の四隅を髑髏が彩り、中央部には紅い大きな瞳がギョロリッと周囲を睥睨する。


 やがて扉がゆっくりと開け放たれ、中から骸骨が飛び出して来た。

 ニメートルほどある体躯、手には骨で作られたであろう長剣を携えている。


 人体模型にも似たその姿形は『スケルトン』と呼ばれるモンスターだ。

 こちらに敵意を向けるわけでもなく、ただ俺を見つめて棒立ちしている。


『骸王の仮面』

 冥界王の遺骨。冥界の扉を繋ぎ、死者を呼び寄せ使役する能力を得る。


 死者を使役するとあるが、操れるのは『スケルトン』だけらしい。

 仮面が半分に欠けている様子から察せられるが、弱体化で一部の力しか使えない設定だ。


 あのイベントボスのような能力がそのまま使えたとしたならば、ゲームとしてぶっ壊れどころの話ではないからしょうがない。


 一度に出せるゲートの数は最大十個まで。

 つまり『スケルトン』を同時に十体まで召喚して使役することができるわけだ。


 一度使った扉は再使用までクールタイムが発生する。

 なので上手く時間管理しながら扉の数を使い分けることが必要かもしれないな。


『スケルトン』は【カオス・ゲート】を使用したプレイヤーのステータスを十分の一のみ受け継ぐ。


 プレイヤーが武器、アイテム、スキルなどで上昇したステータスは反映されないらしいから、十分の一というのはあまりにも弱すぎる。


 格上や同レベルの相手には一蹴されて終わる未来しかみえない。


 ただ、このスキルの面白いところは別にある。

 この『スケルトン』は、召喚したプレイヤーが所有するスキルを任意で二つまで習得させることができるのだ。


 召喚時に俺の所有する【パリィ】を習得させたらどうだ?


 もし上手く操ることができれば、例えゴミステータスでも優秀な肉壁になれそうだとは思わないか?

 いや、肉は無いから骨壁かな。スケルトンジョーク。


 はたまた、【エクスプロージョン】と【カウンター<瞬空歩>】を習得させれば――『空飛ぶスケルトン集団』なんていう面白可笑しい光景も実現できるかもしれない。


 ――夢が広がる! 妄想が滾る! 心が躍る!


 そのためにも検証が必要だな。どこまで俺の意志で『スケルトン』を操れるかが鍵になるだろう。

 もし駄目だったとしても他にも面白い使い道があるし問題無い。


『スケルトン』は使役するときに二つの方法を選択することができるみたいだ。

 一つはオートモード。

 一つはマニュアルモード。


 オートモードは『スケルトン』が自動で敵を判断して攻撃。

 マニュアルモードはプレイヤーの意志で『スケルトン』を操作できるというものらしい。


 まずはオートモードから試してみますか。

 俺はシステムウィンドウを操作して待機状態からオートモードへと移行させる。


 すると、『スケルトン』はウロウロと俺の近くの周囲を彷徨って歩き始めた。

 恐らく周囲に敵が居ないからプレイヤーと離れすぎない位置を維持し、敵を探索しているのだろう。


【探知】のスキルを使用。

 一番近くにいる敵を捕捉して、目的の場所へ俺が歩き始めると、その後ろに『スケルトン』が追従してくる。


 何かこうやってモンスターを後ろに従えて歩いていると、某RPGゲームを思い出して感慨深いものがあるな。

 確か最弱モンスターを+99まで配合してラスボスに挑んだっけ。懐かしいな。


 思い出に花を咲かせて歩くこと数分、モンスターを発見。


 愛らしい兎の姿に不釣り合いなほど大きな角を額に生やした特徴を持つモンスターは『ホーンラビット』さんだ!


 俺の唯一の友達――こはるちゃんがモフモフを堪能するためにテイムされたのだから印象深い存在である。


 今頃、こはるちゃんは元気にしているだろうか?

 家族で海外旅行に行くと言っていたけど、事故や事件に遭っていないだろうか?

 ……心配だ。


 俺が側に居れば、バスジャックだろうがハイジャックだろうが直ぐさま鎮圧できるし、飛行機が事故で無人島に着陸になったとしても幼少期を生き延びたサバイバル術で力になれるんだけどな。


 ……友達恋しさのあまりに思考が脱線してしまっていた。

 今は『スケルトン』の性能テストに集中するとしよう。


 俺が『ホーンラビット』に近づけば、『スケルトン』が敵を認識して戦闘態勢に入った。

 この仮面が目に入らぬかッー! スケさん、やっておしまい!


『スケルトン』がノソノソと駆けて『ホーンラビット』さんに骨の長剣を振り下ろす。


 その一撃を『ホーンラビット』さんは後ろに飛び跳ねて回避し、両足に力を溜めて跳躍すると無防備な『スケルトン』の胴体へと一撃を与えた。


 そして『スケルトン』のHPバーが一瞬で吹き飛び、骨が辺りに爆発四散した。

 アイエエエ! スケルトンナンデ!?


 こうなったら物量作戦だ。俺は【カオス・ゲート】を使用し、眼前に八つのゲートが開かれ、八体の『スケルトン』が召喚される。

 戦いは数だよ兄貴!




「…………全滅。うちのスケルトンさん、弱すぎッ!」


 結果から言うと『ホーンラビット』さんが無双ゲーの如く暴れ回り、『スケルトン』は憐れにも粉砕玉砕大喝采の刑に処された。


 これには色々と理由がある。

 まず俺のステータスが攻撃力以外ゴミすぎるということもあり、機動力が圧倒的に足りていなかった。


 本来ならば数の利を生かして囲んで叩く戦法で終わっていた筈だったのだが、機動力がない故に囲むまえに各個撃破され、数を多く減らされたことにある。


 おまけに防御力は紙耐久(0)でHPは俺の十分の一というステータスだ。圧倒的に脆い。

 これでは肉を切らせて骨を断つこともできない。骨しかないけどな!


 それと『スケルトン』のAIがお馬鹿さんなことも原因の一つだ。

 こいつら連携が全くというほどできていなかった。


 統率の無い動きで仲間の視界を塞いでしまうわ、お互いに誤って攻撃するわ、もつれて転げたりと酷い有り様だ。


 一体、一体の練度も低い。

 攻撃に技術は無く、ただ近くにいる敵に向かって武器を振るうだけの知能しか有していない。


 うーん、オートモードは使えなさそうだな。やはり、マニュアルモードで何とかするしかないようだ。


 俺はシステムウィンドウを開き、『スケルトン』をオートモードからマニュアルモードに変更した。


 説明欄によれば、対象を視界に捉えて動作をイメージするとあるが、本当に可能なのだろうか?

 俺は半信半疑ながらも試しに右手を持ち上げるイメージを描く。


 ――おお!? 本当にイメージ通りに動くッ!


 元々は脳治療のために発展した技術らしいけど、その副産物としてこのVRゲームが開発されたらしい。

 この程度の技術は朝飯前ということか。


 次に、武器である骨の長剣を斜め下に向けて振るう動作でイメージしてみる。


 ……ん? 少し違和感があるな。


『スケルトン』は確かに武器を振り下ろしたけど、重心が安定していないのかフラフラと僅かに揺れているように見受けられる。

 何度か試しに武器を振るうイメージをしてみたが、結果は変わらない。


 訝しんだ俺は、『スケルトン』を片足立ちにさせて観察し、そこでやっと重心が安定しない理由に推察が至った。


 ――軽い、のだ。


 何しろ『スケルトン』は骨しかない。

 俺のイメージは、あくまで人間の動きを投影しているに過ぎないのだ。

 人間には筋肉や臓器があり、血液が流れている。それ故に、重い。

 

 これは盲点だったな。まさかそこまで再現するとは露ほどにも思っていなかった。

 だが、面白い。


 難易度は飛躍的に上昇してしまうが、人間ではない生物を本当に操っているという実感が湧いてワクワクする。


 ふふふ、俺の操りテクが試されるときだな!

 幼少期、友達が居ない俺は自作の人形を作成して、指と糸を巧みに操っては人形を華麗に踊らせたものだ。


 あれれ、なぜか視界が潤んできたのは気のせいだよね。きっと心の汗に違いない。

     

ぼっちくん(´・ω・`)


《とある英雄さんの演説》


さあ戦士(読者)達よ!堅牢なる城門は開かれる寸前!

ここで押さなければ、いつ押んだッ!(評価ボタン)


憎き王(更新が遅い作者)を城から引き摺り出し、愛する民に救い(更新)の手を伸ばそうじゃないか!


さあ押す(評価ボタン)のだッ!


戦士(読者)「ぐへへ、城門ちゃんの大事なところ押してやるぞッ!」


堅牢なる城門「らめぇええええええええええ!!」


……うわぁ、読者さんマジ変態すぎてドン引きですわ。

少しは作者のピュアっぷりを見習って欲しいものです。


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