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24話 ボッチ 修行と再会

 少しして、精神が回復したので修行を再開した。

 早速【鷹の目】で上空から360度を視界に収めて観察する。

 うん、これなら背後、頭上からの死角を確認できていいな。

 ただ、視界を飛ばすということは、俺自身の二つの目から見える光景も見えなくなっている。

 

 上にある瞳か、俺自身の目から見える視界、どっちか片方しか選ぶことができない。

 視界はどっちかに切り替えることができるので、状況に応じて選ぶべきか。

 俺は感覚のズレを確認してみるため【鷹の目】を発動しながら、歩いてみる。


 うっ……なんだこれ?

 真っ直ぐに歩こうとしている筈なのに、酔っ払いみたいに蛇行だこうしてしまう。

 歩きかたを忘れてしまったみたいに、イメージと体の動きが噛み合わない。

 これは思っていたより、キツいな……。

 戦闘用として使われないっていうのは、こういうことだ。


 それでも俺は、諦めるっていう選択肢はない。

 現実でも、親父に何度も死ぬような武術の修行をさせられたが、俺は生きている。

 あの時、なんども無理と思ったが、人間追い詰められると何とかなるもんだ。

 できるできないじゃない、やるんだよ!


 感覚のズレによる気持ち悪さを堪えながら、一歩、一歩進めていく。

 初めてハイハイができるようになった赤ちゃんのように。

 闘病生活で鈍った体をリハビリで克服する人のように。

 ノロノロと体を動かしながら、その姿を上空の瞳から見下ろす。


 なんていうか地味な絵面だ。

 まさかゲーム世界で・・く修行をするとは思わなかった。

 【鷹の目】と【探知】を使い、モンスターに見つからないように戦闘を避ける。

 地味ながらも、一歩、一歩進めていくことで、感覚のズレを修正していく。

 少しずつだが、フラフラと揺れていた体が安定していくのが感じられる。


 断崖絶壁の峡谷きょうこくを、目隠ししながら綱渡りさせられた親父の修行に比べると楽なもんだ。

 なんたって命の保証があるのだから。

 あの時の感覚を思い出しながら歩くことで、その日を終えた。


 二日目。

 次の日も『はじまりの草原』に俺は来ていた。

 昨日、一日中歩き回ったこともあって大体の感覚はつかめた。

 後は戦闘できるレベルまで、もっていくだけだ。


 というわけで今日は武器を手に持って修行をする。

 両手に『木の枝』を装備して【鷹の目】を発動させる。

 俺は脳内で人型を仮想敵にして、虚空こくう見据みすえると、動いた。

 半身になって、右手の枝を仮想敵の頭に叩きつけるように振り下ろす。

 そこから体の軸を動かし、追撃するように左手の枝を横から胴体に向かって振るう。


 一瞬の攻防だった。

 正面の攻撃は避けられ、横からの攻撃は防がれるとカウンターを食らって俺は負けた。

 うーん、親父の道場に通っている門下生をイメージして戦ったのだが、みごとに負けてしまった。

 いつもなら、親父の修行ごうもんの差もあって、片手で倒せるレベルなのだけどな。

 やはり感覚のズレで、イメージよりも攻撃がワンテンポ遅れているように感じる。


 これは致命的だ。

 すぐさま、脳内の門下生さんと戦いながら感覚のズレを修正していく。

 何度も続けることで、だんだんと自身の動きがイメージに追いついてくる。

 集中していて気づかなかったが、辺りを見渡すと日が暮れてしまっていた。

 ……そろそろ帰るか。


 脳内戦闘の戦績は門下生さん<32勝>俺<99勝>という結果で終わった。 

 前半は、脳内門下生さんにボッコボッコにされる。

 後半は俺の感覚もマシになってきたので片腕とまではいかないが、両腕で圧勝できるまでになった。

 

 三日目

 修行の成果もあり、ある程度動けるレベルまでになった。

 なので今日はスキルの練習に移る。

 俺の移動手段である【カウンター<瞬空歩>】だ。

 

 「【エクスプロージョン】【カウンター<瞬空歩>】」


 爆発の威力は最小限に抑えて自分に放つと、カウンターを発動する。

 が、上手く発動のタイミングが合わず、飛ぶことは叶わなかった。

 やっぱ、技術が要求されるスキルは【鷹の目】と相性悪いな。

 まあ、できるまでやるだけだ。

 

 何度か同じことを繰り返して、ついに成功した。

 体が宙に浮き前方へと加速する。

 スキルが切れるタイミングで、次のカウンターが――できなかった。

 スキルのデメリットで硬直し、頭から地面にスライディングした。

 地面とキスをした俺は口の中の砂を吐き出す。

 なんていうか懐かしい感触……。

 

「あっ……」


 落下ダメージを受けたことで、髑髏の形をした瘴気が俺に襲い掛かってくる。

 抵抗する間もなく、優しく包まれると死に戻りした。


 ゲートを潜り、元の場所まで帰ってくる。

 まだカウンター移動の連続成功できるまで感覚が合っていないな。

 まあ、数をこなせば慣れてくるだろう。


 それから何度も、飛行して地面とキスして瘴気に包まれて死ぬ……を繰り返していた。

 最初の頃は、【致死の一撃】で髑髏の形をした瘴気が襲い掛かってくる演出に恐怖を感じたものだ。

 虚ろな眼光が輝き、歯をカタカタと鳴らし、怨嗟の声を零してくるのだから。


 だが、何度も繰り返した俺は慣れてしまった。

 今ではこんな感じになっている。

 襲ってくる瘴気に対して、『ああ、はいはい。ちょいと演出が長いので早く殺してくれませんか? 俺も時間を無駄にしたくないので、サクッといきましょう!』と思ってしまっている始末である。


 自分で言うのもアレだが、適応能力が高すぎる気がする。

 そして、日が沈むまで練習を繰り返して、以前の感覚に近い形まで、カウンターが成功できるようになった。

 明日は実戦といこう。


 四日目

 今日は【パリィ】を加えて実際に戦いながら練習をするぞ。

 そして、その修行相手を探すため【探知】を発動した。 

 ……見つけた!

 久々の再会に俺は胸を躍らせる。


 俺の視線の先には……。

 水滴状の身体に、くりくりとした目と半開きの口という、とぼけた風貌ふうぼうをした愛嬌あいきょうのあるモンスター――師匠スライムがいた。

 俺は姿勢を正すと、師匠スライムに向かって頭を下げる。


「ボスに敗北し、恥ずかしながら帰ってまいりました。俺にもう一度、ご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願い致します」


 優しい風が草木をなびかせると、師匠スライムが弾力性のある体をぽよんと弾ませた……。 

突然だが、作者はあることに気がついてしまった。

作品によっては、タイトルを略して愛称で呼ぶことがある。


例えば、某ライトノベル。

『この素晴らしい世界に祝福を!』→『このすば!』

『僕は友達が少ない』→『はがない』

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』→『俺ガイル』

と、呼びやすく覚えやすい!


もし作者の作品タイトルを略して呼ぶ場合。

『変態PSさんのVR冒険譚』→『変態冒険』『変態VR』『へんたいたん』

これはヒドイですね!

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