表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/73

22話 ボッチ 反省とその先を見据える

 全力の一撃を込めた投擲は、空気を切り裂き、すさまじい音を奏でながらボスに飛んで行く。

 そして、おおい被さっている、中型カマキリを一匹、二匹と貫き、死の一撃がボスに届かんとした時、俺は勝ちを確信した。

 いや、確信をしてしまったのだ……。


 その瞬間に、緊張が緩み、僅かな隙ができてしまった。


「――えっ?」


 俺の背中に一筋の線が走り、でた。

 突然の出来事に理解が追いつかず、疑問の言葉が口からこぼれ落ちる。

 その正体は、黒装束を身にまとった中型カマキリの鎌だったのだ。

 ……俺は、切られたのか? 一体、こいつは……いつのまに背後にいたんだ?


 思考が現実に追いついた時、装備している<悪神の黒衣>によるデメリット【致死の一撃】が発動する。

 髑髏どくろの形を成した瘴気しょうきが、ゆっくりと俺の体を覆っていく。

 ……ああ、負けてしまったのか。

 俺の視界が完全に瘴気に覆われてしまう前に、黒装束を身にまとったカマキリに視線を向ける。

 その、頭上には『アサシンマンティスLV15』とあった……。


 ■


 久しぶりに、死に戻りをしてしまった俺は、ゲートに運ばれ『はじまりの町』にいた。

 またも、俺の格好を見て、ちょっとした騒ぎになっていた。

 しかし、今回の戦いについて思考していた俺は、意識をそちらに向いておらず、メンタルが削られることもなく、気がつけば『はじまりの草原』に来ていた。

 

 悔しいな……あと少しで勝利できたのだけどな。

 おそらく最後に現れた『アサシンマンティス』は名前の通り、暗殺を目的としたモンスターなのかもしれない。

 飛行時の音や気配すら消していたため、俺は気付くとができず、背後を切り裂かれた。

 あの身に纏っていた黒装束に特殊な能力があるのかもしれないな。


 卵は全部で10個あったはずだが、孵化して俺の前に現れたのは9匹だった。

 あの時すでに、アイツは、気配を消して、俺の警戒が薄れるのを瞬間を虎視眈々と狙っていたのだろう。

 自身の主であるボスすらも囮として利用し、俺が勝利を確信して僅かに出来た隙を見極めた一撃。

 敵ながら見事だと、素直に感心する。


 もう一度、挑戦すれば勝てると思う。

 ネタさえ分っていれば、暗殺者に注意しつつ、同じ戦法をとればボスを倒すことはできるだろう。

 だが、それではだめだ。

 やるなら、圧倒的な勝利で先に進む。

 でなければ、この先を生き残っていけるとは思えない。


 今回の戦いを通して、俺の欠点が見えてきた。


 一つ目。

 前から分っているが、一人で攻略を進めているため、多対一の戦闘が多くなってしまい、手数が足らない。


 二つ目。

 同様に、囲まれることも多くて死角が出来やすい。

『大樹の森』は、枝や葉も多く障害物となり、更に死角も増えてしまう。

 今後も、こういったステージがあるかもしれないから、対策を考えておきたい。


 また、一撃を受けたら死亡する俺は、奇襲に弱い。

 視覚外からの攻撃っていうのは、どうしても反応が僅かに遅れがでてしまう。

 一人で戦うなら全ての敵の位置を把握し、360度全てを視界に収めておきたい。


 三つ目

 魔法攻撃に対して、こちらが避けるという行為を強要されることだ。

 俺の防御手段は【パリィ】を主に使い、攻防一体として戦うのが主軸だ。

 だが、【パリィ】は物理攻撃には対応できるが、現象といった形が定まっていないものには弾いたり、受け流すことができない。


 例えば、魔法でも氷の魔法、土の魔法といった形が固定されており、物理的に干渉できるものは【パリィ】を発動することができる。

 しかし、炎の魔法、水の魔法、ボスが使ってきた風の魔法などといった形が定まっていないものは干渉できないため発動ができない。

 他にも沢山の属性魔法が有り、そのほとんどが干渉できないものばかりだ。


 これが、知恵の回る相手だと、こちらが魔法攻撃に対して避けるという手段がない場合、それを想定することで、わざと魔法攻撃を避けさせて誘導し、逃げ道を塞くなどされてしまう。

 対策を考えておかないと、この先厳しくなりそうだ。


 四つ目

『呪毒の大鎌<死月>』の能力で、体力を1にして、武器の攻撃力に変換するまでの時間がネックになっている。

 相手によっては、時間経過によって厄介になる奴も出てくる筈だ。

 これについても対策を考えていく必要がある。


 以上のことを踏まえた上で、これらの欠点を克服していこうと考えている。

 ではどうやって、克服する?

 ……このVR世界は現実には存在しない不思議な力があるだろう?

 それは――<スキル>だ!


 俺はスキル習得画面を開く。

 俺が求める条件に合致するスキルを探して吟味していく。

 そして、1時間ほど悩んで決定キーを押した。


『【クイックチェンジ】を習得しました。影法師の特性によりSP消費が15Pから30Pになりました。』


『【鷹の目】を習得しました。影法師の特性によりSP消費が25Pから50Pになりました』


『【探知】を習得しました。影法師の特性によりSP消費が25Pから50Pになりました』


『【両手装備】を取得しました。影法師の特性によりSP消費が10Pから20Pになりました』


『【手加減】を習得しました。影法師の特性によりSP消費が5Pから10Pになりました』


『【マジックプロテクト】を習得しました。影法師の特性によりSP消費が5Pから10Pになりました』


 SPスキルポイント170P → 0P


 結構貯まっていたSPが、影法師さんが頑張りすぎて、あっという間になくなってしまった。

 だが、これで準備は整った。



 ――さあ、修行の始まりだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一回、ポチッとしてくれると嬉しいな
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ