21話 ボッチ 勝者の行方
このタイミングでかよ!?
20cmくらいの小型カマキリが卵から、わらわらと出現してくる。
……数百匹はいるだろうか? それらが折り重なり、一つの塊となって蠢めいてる。
その塊の上には『べビーマンティスLV1』と表記されていた。
数は多いが、レベル1だけあってHPは少ない。
ならば【エクスプロージョン】を放って地面にたたき落とし、まとめて落下ダメージで始末しようと行動に移ろうとした時、ボスがこちらを妨害するように風の刃を飛ばしてくる。
その攻撃をカウンター移動で避けながら俺は舌打ちをする。
くっ、まだ物理的な攻撃であれば【パリィ】で弾き返しつつ、ベビーマンティスにぶつけれるのだが、魔法攻撃に対して、それが出来ない。
卵は全部で10個ほどある。
それらが、すべて孵化して周りが敵だらけの状態でボスと相対するのはまずい。
これがパーティー戦ならボスを引きつける人、卵を破壊する人と役割分担ができるのだが、ぼっちの俺に難しい。
だったら卵が孵化しきる前にボスを倒そうとカウンター移動で一気に詰めよる。
しかし、ボスは俺から距離を離すように後方へ飛ぶ。
なら、この隙に卵を破壊しようと標的を変えると、遠距離から魔法による風の刃で妨害してくる――間違いない、ボスは卵の孵化までの時間稼ぎを徹底して行っている。
モンスターだから知恵はそこまでないと思っていたが、なかなか嫌らしい戦い方をしてきやがる。
俺は、ふと疑問に思った。
LV1程度の小型カマキリがLV20を超える通常プレイヤーに対して、攻撃が通じるのか?
俺なら、どんな雑魚の攻撃を受けても即死してしまうが、通常プレイヤーは20回以上のレベルアップボーナスによる防御力があるはずだからダメージは無いはずだ。
これがゲームである以上、俺のような存在のためだけに卵があるとは考えられない。
戦闘を行いながら疑問点にいて思考していると、その解答が返ってきた。
孵化して、蠢いていた数百匹の小型カマキリに変化が見えた。
ん? あれは何をやっているんだ? 驚くことに、小型カマキリ達が共食いを始めたのだ。
やがて全長1,5メートルくらいの一つの塊となり、その姿を覗かせた。
ソイツの見た目は白銀の鎧を身に纏った中型のカマキリで頭上には『ソルジャーマンティスLV15』と表記されている。
……なるほど、そういう訳か。
これなら、LV20程度のプレイヤーなら十分に攻撃が通じるな。
卵は全部で10個はあったはず――つまり、LV15の中型カマキリ10匹とLV25のボスを相手にしながら戦わないといけないってことだ。
時間制限つきとはいえ、第一拠点のボスに比べて難易度上がりすぎじゃないですかね?
パーティーなら役割分担で卵を破壊して、このような状況になることもないだろう。
このボスは、まさに……ぼっち殺し!
だけど俺は勝ちたいと願う、諦めるくらいなら最後の最後まで足掻いて悔いのないように全力で尽くせ!
気づけば俺の周囲には九匹の『ソルジャーマンティスLV15』が集っていた。
「九匹? 後、一匹はどこにいるんだ?」
辺りを観察してみるが、見つからない……落ち着け、今は、目の前の敵に集中しろ。
現状、かなり危機的状況で、俺の勝ち筋は、この包囲網の隙を突いてボスに一撃を入れることだ。
そして条件を満たしたことでスキル【蠱毒の覇者】が発動し、赤いオーラを纏うと攻撃力が50%上昇する。
この攻撃力なら、一撃入れることさえできればボスとて貫くだろう。
現在の状況は、地上から離れた高さにある大樹の枝に俺は足を着けて構えている。
正面に中型カマキリ3匹、右に2匹、左に2匹、頭上に3匹と囲まれていて、幸いにも俺の死角は幹を背にしているため敵はいない。
この包囲網を抜けるとしたら――下だ!
「【エクスプロージョン】」
俺は、大樹の枝から足を離すと、そのまま逆さまに落下する。
もちろん、中型カマキリ達も俺を逃がすまいと追随してくるが、俺は【エクスプロージョン】を自身の足下に放ち、下へと更に加速する。
二匹はボスの『クイーンマンティス』の近くで守護をしているが、残り七匹全て、こっちに向かっている。
よしよし、ちゃんとついてきているな
後はタイミングが鍵だ!
高速で落下したことにより、地上との距離は僅かしかない。
すぐ、そこに迫る死の気配に緊張が極度に高まり、心臓が高鳴る。
お、落ち着け……臆するな! 引いたら未来はない、恐怖を飼い殺せ! ただ冷静に最良の瞬間を見極めろ。
――今だ!
「【エクスプロージョン】【カウンター<瞬空歩>】」
空中で体勢を整え、地面に数ミリでぶつかる瞬間に大鎌を振るい、カウンターを発動させると前方に加速して衝突を避ける。
俺の後を追随し、一番近くにいた中型カマキリは、突然に軌道を変化させた俺に反応が遅れ、抵抗虚しく地面にキスをした。
その後ろにいた中型カマキリ達も、同じ運命を辿り、地面に潰れている者を更に押し潰しながら小さな山を築いた。
「よしよし、釣れた、釣れた。大漁だぜ!」
本来、現実世界においても、カマキリという生き物は飛行するという行為はあまり得意ではない。
直線上に飛ぶことはできるが、旋回などの能力は低いため、その隙を突くように、俺はギリギリの賭けにでたのだ。
こうも絶妙なタイミングで成功させると気持ちがいい。
とりあえず状況確認だ。
一番下に潰れている中型カマキリは戦闘不能だな、上の方にいる奴らは下の仲間がクッションになりダメージは抑えられているが、すぐには動けないだろう。
だとしたら、ボスを守護している中型カマキリ二匹とボスを短期決戦で決めるしかない。
ボスは頭上にある大樹の枝にとどまっている。
よし、あの場所まで一気に距離を詰める!
カウンター移動で接近するが、やはりボスが魔法による風の刃で妨害を行ってくる。
それらを一つ一つ見極めながら死線を掻い潜り、チャンスを待つ。
そして、その時がついに来た。
ボスが、この攻防に焦れて何らかの動作を行い、守護している中型カマキリ2匹に指示をだしたのか、俺に向かって突っ込んできた。
俺はカウンター移動でボスと中型カマキリが直線上になる位置まで上手く誘い込む。
そして、正面から突っ込んできた中型カマキリに向かって俺はカウンター移動で勢いをつけると、大鎌が側面になるように構えて振り抜いた。
ドゴォと鈍い音が響くと、後ろに追随してたもう一匹にぶつかり後方へと吹き飛んでいく。
勢いは止まることなく、そのままボスが居る場所まで運ばれて、盛大に衝突した。
この瞬間を待っていた!
ボスが二匹の中型カマキリの重みで身動きがとれなくなって、更に視界を塞がれている……この僅かな隙を俺が逃すはずがない。
「これで、お終いだぁぁああああああっ――――!!」
俺はカウンター移動で加速し、空中で体を思いっきり捻ると、呪毒の大鎌をボスに向かって――――【投擲】した。
前話から一ヶ月以上も更新していない間にも、感想、ブクマ、評価、としてくれる方がいて、感謝しきれません。
その方々達には、もう足向けて寝ることが出来ないですね。
うん?だったらどの向きで作者は寝たらいいのだろうか? 南側?北側?東側?西側?
やべぇ、このままじゃ、寝ることが出来ないぞ!
そうだ、下に足を向けて立ったまま寝ればいいのか!
いや? もしかして地底人の可能性もあるかもしれない……どうすればいいんだ!
――発想を逆転させよう!
上に足を向けて寝ればいいんだよ!
ってことで今日から作者が逆立ちしたまま寝るってよ!(嘘です)