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17話 ボッチ 新たな戦法

 あれから一晩寝ることで精神的に受けたダメージを回復した。

 俺はもう覚悟を決めた、目立ってしまうのは仕方がないしゲームをするためならそのくらい我慢できるさ……たぶん。


 そのうち見慣れてきたら奇異の目もなくなると思う、人という生き物は同じ経験をすれば案外簡単に適応してしまうのだ。


 あのすさまじい攻撃力を知ってしまった俺は目立ってしまうからという理由でこの防具を手放すのはあり得ない。

 コラテラル・ダメージということで納得するしかない。


 まあ、だからといって平気な訳ではないからログインしたら精霊と大樹の町の探検は諦めて直ぐにフィールドに入ろうと思う。


 レベルアップの確認とか新しいスキルも入手したいし、やることは沢山ある。

 そうと決まれば早速ゲームの世界へと行くとしますか。

 俺はVRゲーム機具を装着しスタートボタンを押すと意識を電脳世界へと飛ばした。


 目を開けると、そこは衆人環視しゅうじんかんしの中、なんとか逃げてきた人目のない場所だ。

 フィールドに出るためには大通りを歩かないといけないため、またあの拷問を味わうことに――

 

 ……よし、心を落ち着けて覚悟は決めた! 俺は一歩踏み出すと重い足取りで大通りへと出た。


「おい、アレって噂の死神じゃないか?」


「うひゃあーー実際に間近でみると迫力あるな!」


「目合わせるとヤラレルかもしれんぞ、おまえら刺激すんなよ!」


 思っていたとおり目立ちまくっていたけど人を危険生物みたいな扱いはやめろよ……ボッチのメンタルは繊細なんだぞ! 

 俺は奇異の視線を受けながらも割れる人波を歩いてフィールドへと向かった。

 

 よし、フィールドに出ればこっちのもんだ! 俺はカウンター移動で町から距離が離れるまで急いで移動する。


 このフィールドは鬱蒼うっそうとした大樹の森だ。

 馬鹿みたいに高い大樹が辺りにそびえ立ち、成長した枝や葉が伸び重なって日差しを隠してしまっているので周りは薄暗い。


 そして、この森の特徴は蟲や昆虫型のモンスターなどが多く生息しており毒、麻痺などの状態異常攻撃をしてくる厄介な敵が多い。

 そこらに生えている草木や木の実さえ擬態したモンスターや食中植物だったりしたりで油断ができない。


 状態異常の回復薬、軽減アイテム、防具などで対策をしていないと麻痺で動けなくなった体に毒攻撃を受けて死んでしまうなど初心者がつまずきやすい場所だ。


 だが俺は悪神の呪縛黒衣を装備しているので、その心配はない。

 まあ一発でも状態異常以外の物理なり魔法なりを受ければ即死だけどな。


とりあえず、薄暗いがモンスターもおらず広い場所を見つけるとステータスを確認する。

 おお、ボスを倒してレベル13まで上がっているな。


 職業<影法師ドッペルゲンガー>LV13

 HP:001/750

 MP:630/750

 ----------------------------

 攻撃:+1030(140×2+750)

 防御:0(呪)致死の一撃

 魔攻:0(呪)下降補正(大)

 魔防:0(呪)致死の一撃

 速さ:0(呪)行動制限

 ----------------------------

 e:『悪神の呪縛黒衣』

 (呪い、状態異常無効、攻撃倍加)

 (耐久:無限<ユニーク>)

 e:『呪毒の大鎌<死月>』

 (攻撃+1→+750)

 (耐久98%)<ユニーク>

 ---------------------------

 FPフリーポイント30P→0p

 SPスキルポイント90P

-----------------------------

『スキル』:

【パリィ】

【カウンター<瞬空歩>】

【エクスプロージョン】

【致死の一撃(呪)】

-----------------------------

 もちろんFPは攻撃に極振りした。

 ついに、武器込みで攻撃力四桁いくぞー! 見てるだけでテンションが上がってくる。


 SPも順調に増えているのでそろそろスキルも習得するか。

 もう習得するスキルは決めているが、その前に武器の扱いをもう少し慣らしておきたい。


 この『呪毒の大鎌<死月>』は変わった形状をしている武器だ。

 まず、武器自体が俺の身長と同じくらい大きく、長いの先端には鋭く尖っている刃がついており、先端近くの柄の横から大鎌の刃がついている。


 つまり大鎌と槍が合わさったような形をしているわけだ。

 先端の刃で槍のように突き刺したり、大鎌の内刃で抉るように切り裂いたり、大鎌の刃のない側面で相手を殴ってやれば打撃もできそう。


 刺突、打撃、斬擊と様々な立ち回りをして柄の部分を上手く使えば棒術としても応用が利きそうだ。

 というわけで、今からこのフィールドでモンスター相手に、これらの練習をしようと思う。


 歩きながら辺りを観察してみるが薄気味悪いなと素直に思う。

 道中に生えている茸は毒々しい色をしていたし、美味しそうに実っている果実も近づけば三日月のような口が開き噛みついてこようとする。

 その上、蟲型モンスターも多いため女性プレイヤーから蛇蝎のごとく嫌われているステージというのは納得できる。


 お、練習に丁度良さそうなモンスターを発見!

 見た目は大きなクワガタっていう感じで甲殻が紫色だ。

 頭上にある名前を確認すると『ポイズンスタッグ・ビートル』LV15と表示されていた。


 おそらく名前や見た目の様子から頭にあるはさみで相手を挟んで毒を注入するタイプだと思う。

 そんなモンスターが3匹、一つの大樹に貼り付いて樹液を吸っている。

 お食事中悪いけど、ちょっと練習相手になって貰えるかな?


 俺は大鎌の刃のない側面が大樹に当たるように大きく振ると鈍い音が辺りに響き渡り揺れが起きる。 

 その大きな揺れに振り落とされたモンスター達は威嚇をしながら俺に襲いかかってきた。


 正面から飛行しながら突っ込んできたモンスターの攻撃をしゃがんで躱し、すれ違いざまに甲殻の薄い下から、槍のように突き刺すと光に包まれ消える。


 続いて右方面から突っ込んできたモンスターを挟まれる前に大鎌の刃のない側面で遠心力を使い弾き飛ばす。

 弾き飛ばした先で目論見もくろみ通り俺を後方から狙ってきたモンスターにぶつかる。


「【エクスプロージョン】【カウンター<瞬空歩>】」


 俺はその隙を利用して一気にカウンター移動で近づくと大鎌の内刃をモンスターの頭部と胴体を繋ぐ箇所に突き刺し円軌道を描きながら抉るように切り裂く。

 打ちつけられ、切られたモンスター達は光に包まれ消える。


 よしよし、良い感じで戦闘出来ているな。

 次は新しいスキルを絡めて戦闘をしていこう。

 俺はメニューを開くとスキル一覧から二つのスキルを選択する。


『【マジカルチェイン】のスキルを取得しました。影法師の特性によりSP消費が10から20になりました』


 このスキルはMPを消費して魔法の鎖を具現化できるスキルだ。

 鎖の長さはMPの消費量に応じて調節でき、伸縮自在に操れる。

 鎖自体に攻撃力はないが相手を拘束したり、物を掴んだりと様々な用途がある。


『【投擲とうてき】のスキルを習得しました。影法師の特性によりSP消費が10pから20pになります』


 このスキルは名前の通り、物を投げる時に使用するスキルだ。

 攻撃力依存で飛距離が伸び、命中率に僅かな補正は入るが対象に当てるにはプレイヤーの腕が要求される。


 俺の戦法は相手に近づかないと攻撃ができないため、遠距離攻撃と範囲攻撃の面をこの二つで補おうと考えていたのだ。 

 この二つのスキルをどうするかって? ……こうするのだよ!


「【マジカルチェイン】【投擲】」


 俺は【マジカルチェイン】で魔法の鎖を具現化すると、それを大鎌の柄に絡みつかせる。

 そして、大鎌を掴むと体を思いっきり捻り槍投げのように真っ直ぐモンスターに向かって投擲した。

 助走もつけたかったが、この装備では走れないので仕様がない。


 そのモンスターは蜂に似ているが大きさは1.5メートルは超えているだろうか。

 飛んでいった大鎌の先端が上手く当たると思ったが危険を察知したモンスターは横にズレ回避するが、羽根を掠めてバランスをくずす。


 ――まだ終わりじゃないぜ!


 俺は大鎌の柄に絡みついた魔法の鎖を引き戻すように操ると飛んでいった大鎌が戻ってくる。

 その直線上にいたモンスターは後ろから迫ってくる大鎌に気付かず刃が突き刺さると光に包まれ消えた。

 そして、戻ってきた大鎌の柄を掴みながら体を回転させて勢いを殺す。

 

 思いつきだけど上手くいったな。

 これによって遠距離攻撃が何度も行えて手元にも戻ってくるので消耗品扱いにはならない。

 投擲が外れたときには上手く鎖を操ってやれば軌道を修正できる。


 このスキルの組み合わせも剣士系と魔法系で本来なら同時使用できないので影法師ドッペルゲンガーが上手く仕事をしてくれてる訳なのだよ!


 いやー、これは案外楽しいな!

 これからは、このコンボも上手く戦闘に組み込みながら練習していこう。


 

 さあ早く次の獲物を探して練習だ!   

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