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13話 ボッチ はじまりの神と出会う

 俺は驚愕きょうがくしながらも、なんとか体勢を整えると足から地面に上手く着地して止まる。

 影と俺でお互い距離が開いた状態で睨みあう。


 少しの間だけ影はこちらを警戒したように動きを止めていたが、すぐに行動に移した。なんと影はさっき俺がやった動きを真似るように【エクスプロージョン】を自分に放った。

 こいつ、まさか【カウンター<瞬空歩>】を使う気か!?

 

 やばい、攻撃に備えないと!

 俺は動揺をあらわにしながらも【パリィ】で防げるように構える。

 影が爆発をカウンター攻撃する瞬間に神経を集中するが…………こちらに飛んでくることはなかった。


 まさかのカウンターに失敗した影は硬直して身動きができなくなっていた。

 なぜだ? 影はさっき【パリィ】を成功させていたぞ?

 まさか……こいつは俺との戦闘中に、こちらが何度も使った【パリィ】を見ていたからこそタイミングを学習していたのではないだろうか?

 

 さっき俺がやった【エクスプロージョン】と【カウンター<瞬空歩>】のコンボはまだ一回しか見せていない。だからAIはそのタイミングを学習しきれていなかったのでは?

 

 今なら身動きできない影を攻撃すれば簡単に勝利してしまうだろう。

 だが俺はそれをしたくなかった。

 なぜなら、もし影が【カウンター<瞬空歩>】を学習できれば、お互いに宙を飛びながら戦闘を出来るかもしれないからだ!  


 そんなロマン溢れる戦いを俺はやってみたい。

 漫画やアニメで見たような空中戦を出来るかもしれないんだぞ! 想像するだけで背筋が震える。

 

 よし、善は急げだ。

 まずはこの影にカウンターのタイミングを覚えさせる!

 俺は身動きできない影から離れたところで自分に爆発の攻撃判定がこない位置に魔法陣をセットして【エクスプロージョン】を放つ。


 そして爆発する瞬間にナイフを振るう。

 わざとカウンターを使わずに当てるタイミングだけ見せる。

 カウンターを使ってしまうと影とこちらの距離が近くなり接近戦になってしまうかもしれないからだ。

 

「今のタイミングでカウンターを発動させれば成功するはずだ。やってみてくれ」


 正直、敵の影相手にこんなことを言って通じるか分からなかったけど試すだけなら別にいいだろう。

 だが、影はその言葉を無視するように、こちらに遅いスピードで走ってくる。

 やっぱだめか? そう思いつつも近づいてきた影との距離を離すためカウンター移動する。


 おまえの速さではこちらに近づけないぞ、とアピールするように。

 ただ、移動中に四角い大きな塊が宙に大小様々にそこら中に浮いているから被弾しないように気をつける。


 それから同じことを三度繰り返して影はこちらに近づくのをやめた。

 なぜだろうか……顔がないから表情は分からないけど、どこかいらついているようにも感じとれる。

 

 影はしぶしぶ々、また自分に【エクスプロージョン】を放つと【カウンター<瞬空歩>】を行うが失敗して硬直していた。

 

「違う! このタイミングで攻撃を振るうんだ。」


 俺は再度、自分から離れた位置に魔方陣を設置すると、爆発する瞬間に初心者のナイフを振るう。

 そんなやりとりを十数回は繰り返した時にやっと状況は動いた。

 ついに、影はカウンター移動に成功したのだ。

 

 ――おまえは、やれば出来る子だと思っていたよ! なんたって俺の影なんだから!

 俺は今、成長した息子の姿を見守る父親のように感激している。

 おっとと、感動してる場合じゃない、こっちに向かって飛んでくるから【パリィ】で受け流さないとな。


「【パリィ】!」


 宙に浮きこちらに加速してきた影を、上手く角度を調整して【パリィ】を使うと、斜め上方向に受け流す。

 さあ、楽しい空中戦といこうじゃないか!

 だが、俺はここで重大なミスを犯してしまったことに気がついた。

 影を受け流した先には四角い大きなかたまりが宙に浮いていたのだ。


「おい、影、避けるんだ! そのままだと危ない! 自分に【エクスプロージョン】をあて――――あっ…………」


 俺の必死の叫びも虚しく、影は四角い大きな塊に正面からぶつかると光に包まれ消えた。


 くそぅ! 俺がちゃんと影に飛び方を教えてやっていたらこんなことには……おまえのことは決して忘れないぞ。

 次に戦うことが、もしあったら……今度こそ空中戦しようぜ!




 予想外の結果で勝ってしまったが、これで試練はクリア? ……でいいのだろうか。

 俺は、影からドロップしたアイテム、SPの巻物をアイテムボックスに仕舞うと影が守っていたドアに手を掛ける。


 そして扉を開くと、真っ暗な空間に星々が煌めいてる宇宙にも似た場所に出た。

 いきなりの変化に戸惑いながら俺が辺りを観察していると、どこからか声が聞こえた。

 

「よくぞ試練を乗り越えました、勇敢ゆうかんなる者よ。貴方に善神の祝福を与えましょう。」

「よくぞ己が自分に打ち勝ちし欲深き者よ。貴様に悪神の呪いを与えよう」


 そして、目の前に現れたのは二つの圧倒的存在感。


 片方は腰まで流れるような綺麗な金髪に慈愛に満ちた表情を浮かべた整った容姿、背中には純白の羽が生えており、頭の少し上には光の輪っかが浮いている。


 片方は黒いローブを身にまとい、体から赤黒いオーラが辺りに漂っている。

 手には大きな鎌を携えておりローブから露出している唯一の顔部分は皮膚や肉がついておらず白い骨だけが存在していた。


 あれが、はじまりの神か……二人? いるんだな。

 片方は天使みたいな女神で、もう片方はまるで死神みたいだな。

 というか、祝福は分かるけど呪いってどういうことだよ?

 そんなことを考えていると、メッセージ音が聞こえた。


『善神から武器と防具を選ぶか、悪神から武器と防具を選ぶことができます。なお、装備の特殊能力及びステータスは確認できますので後悔のない選択を。』


 とりあえず、悪神の方をみるのは怖いから先に善神の方から確認してみるか。


 <善神シリーズ>

 ・七色の魔道書

 ・隼の剣

 ・光の戦人斧     ↑

 ・双炎氷剣      ○

 ・光天使の羽衣    ↓

 ・風神のローブ

 ・光竜の------

 ・----------

 ・----------


 モニターに表示されている文字を下にスクロールしてみると、かなりの種類の武器、防具があるようだ。

 ある程度確認してみたが善神の方は特にデメリットのあるものはなかった。


 特殊能力で光の刃を遠くまで飛ばして攻撃できるものとかもあったし、面白そうなものなどは二回攻撃ができたり、宙を二回ジャンプできたりと行動制限を取っ払うものもあった。


 さすがはユニーク装備だ、どれもこれも強いな。

 どれにするか悩むが……そのまえに悪神の方の武器、防具も確認しておこう。


 <悪神シリーズ>

 ・悪霊の呪縛槍

 ・悪神の呪縛黒衣

 ・呪毒の大鎌<死月>  ↑

 ・禁忌の魔道書    ○

 ・暗影蛇混      ↓

 ・邪蛇の黒鱗鎧

 ・悪神の-----

 ・---------- 

 ・----------


 悪神の方は全部の武器、防具に必ず何かしらのデメリットが存在するかわりにメリットも大きいといった感じだ。

 ただ、そのメリットの部分もいろいろ偏っていたり尖っていたりで、なかなか扱いが難しそうなものが多いといった印象。


 デメリットがないことを考えれば無難なのは善神シリーズだろう。

 けれど、職業<影法師ドッペルゲンガー>の俺が今更、他のステータスを少し上げたところで職業レベルアップボーナスがないから後が続かないと思う。


 ならば悪神の武器と防具のデメリットを負うリスクも受け入れ、よりステータスを尖らせていった方が今後に生きてくるはずだ。

 よし、そうと決まれば悪神シリーズから俺に合いそうなものを探すとしますか。





 あれから2時間ほど武器や防具の特殊能力やデメリットの説明文を読んでは悩みを繰り返して……ついに武器と防具の選択を終えた。



 ――これが俺の選択だ! 

ちなみに、はじまりの試練の影に負けてしまうと次にプレイヤーが同じ場所にくるときには学習した影はリセットされ、また新しい影と戦います。

AIが学習し続けるとプレイヤーが無理ゲーになりそうなので。

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